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忍殺TRPGリプレイ【フライ・ミー・トゥ・ザ・ネオサイタマ】(全テキスト版)

 これは、つのの忍殺TRPGリプレイ「フライ・ミー・トゥ・ザ・ネオサイタマ」のうち、あらすじやステータス表、ダイスロールやコラム書き、イラストなどを除去した小説テキスト部分のみをまとめたものです。文字数カウントで見たところ、3491+4024+4052+3785+2798+1816+1957+3582=2万5055字でした。およそ5セクションです。ダイスを振らずに書いている部分も多いため、もはやリプレイと言っていいかどうかわかりませんが。


01

 西暦2035年8月中旬、夏のオールド・オーボンの夜。

 重金属酸性雲の切れ間から、それはネオサイタマを睥睨した。「おい、なんだあれ!?」「城!?」「城、マ!?」「スゴイ!」「スゴイスギル!」「クール!」「ワオ……ゼン……」それに気づいた人々は歓声をあげ、携帯IRC端末を向けて撮影した。ブッダやオーディンに祈りを捧げる者たちもいる。

「なんかのCMか?」「どこの会社?」「株価を……」「あれは……キョート城のようにも見えるが?」サイバーサングラスで観察していた者が呟いた。「キョート城?」「キョート共和国の?」「マ?」IRC-SNSに無数の情報が流され、錯綜し、陰謀論や終末論がインターネットを駆け回っていく。

 キョート城は旋回し、大きく震動した。鉢から抜いたボンサイをシェイクした時のように、岩盤の下部から土や岩がボロボロと落下する。KRAAASH!「「「アバーッ!」」」「「「ペケロッパ!」」」見上げていた市民が巻き込まれて即死!岩盤の下から現れたのは、数十本の銀色オベリスクだ!

 ジジジジ……バチバチ!空気の焼け爆ぜる音を立てながら、オベリスクの先端部がセンコの如く赤熱し、不吉な光を放ち始める。城の真下の重金属酸性雲が激しく渦巻き、ぽっかりと穴を空けた。……キャバァーン!虹色の光線がネオサイタマに降り注ぐ!「アバーッ!」光線が市民に命中!即死!

 即死市民の死体は灰色に変わり、黄金のエクトプラズムが放出され、城へ吸い上げられていく!「「「あ……アイエエエ!?」」」市民たちはパニックを起こし、蜘蛛の子を散らすように逃げ回る!否、踏みとどまってIRC端末を操作し、決定的な瞬間をIRC-SNSに投稿してバズを狙う者も多数!

 キャバァーン!キャバァーン!キャバァーン!上空のオベリスク群から、凄まじい頻度で無作為に殺人ビームが降り注ぐ!無数の光線はコンクリートを貫通して無差別にモータルを殺し、ソウルを吸収する!「マッポーカリプスだ!」「ヤッター!」天を仰ぎ歓喜の声を捧げる終末論者たちの声!

 放出される何十本ものビームは基板配線めいた鋭角パターンを空に刻む。キョート城は神々しい金色の光を放ち、暗黒の太陽の如く夜を照らし始めた。オベリスク群の周囲には「大」「法」「祝」「稲」などの巨大な漢字が現れ、ネオンめいて瞬いては消えていく。古事記に予言された終末の光景!

「おお……ロード!マイロード!」片腕片脚を失ったパラゴンは、白大理石の制御水盤にすがりつき、歓喜の涙を流す。ギンカクから吸い上げたモータルソウルを全てロードの回復にあてたため、キョート城は現世へ降下し、ネオサイタマからモータルソウルを吸い上げ始めた。これが在るべき姿だ!

「ムフォーフォーフォー……クルシュナイ。クルシュナイ」ナラク・ニンジャは……キョジツテンカンホーの直撃を受け、ロードの足元に平蜘蛛のごとく平伏し、ドゲザしている。薄汚いモータルの怨念の集合体は、ついに真の支配者にひれ伏したのだ。これが、これこそが、格差社会の在るべき姿。

「ナラク・ニンジャ=サン。再びキョート城の燃料となるべし」血で汚れ、赤黒い炎で焦げた白いタタミがくるりと90度回転し、ナラク・ニンジャは再び奈落の底へ落下していく。「クルシュナイ」タタミはさらに回転し、もとのように収まった。ナラクが空けた穴も超自然の白いタタミが塞いでいく。

「万事解決ぞ。徳川エドワード家康の末裔なる余は、今より、この穢土なる魔都ネオサイタマを浄化し、東のキョート……東京都と改名せん」ロードは厳かに宣言した。それに呼応するかのように、地上に螺旋状の光が走る。

 カスミガセキ・ジグラットは、かつての日本の支配者の住処である江戸城を覆うように建設されている。400年以上前、徳川エドワード家康は各地に点在した霊地・霊脈を繋ぐように川や道、堀や寺社を配置し、ニンジャの侵入を防ぐ霊的結界を築き上げた。それは長年の乱開発で失われたが……。

 ザイバツは古文書によって、このネオサイタマに眠る霊的結界を解明し、利用する計画を立てていた。派遣した駐留部隊に命じて各地に魔術的なビーコンを仕込み、ロードのキョジツテンカンホー・ジツをネオサイタマにも及ぼさせる計画を。そして今、ロードとキョート城がここに在るからには!

『ヒカエオラー!』キョート城から、ロードのジツが解き放たれた。ジツはネオサイタマの、東京都の、江戸の霊的結界に作用し、増幅される。……その時、モータルは思い出した。ニンジャに支配されていた恐怖を。鳥籠の中に囚われていた……安寧を。市民たちは涙を流し、一斉にドゲザした。

「ハァーッ!ハァーッ!」キョート城底部。天守閣最上階から飛び降り、ここに駆けつけたドラゴン・ニンジャは、吐き気を催すような頭痛に苛まれていた。ヌンジャ……カツ・ワンソーの凝視に晒されたのだ。「いつつ……ど、ドーモ……」衝撃で頭を打ち、気絶していた大柄な男が目を覚ました。

「ドラゴン・ユカノ=サン。ディテクティヴです」「ディプロマットです」「アンバサダーです」近くにいた双子もアイサツした。アイサツをされれば、返さねばならない。だが。……どくん。彼女の中で「ユカノ」が目を覚ました。ワンソーの凝視、キョジツテンカンホー、そしてユカノの名。

 名を呼ばれたことで、眠っていた半身が自我を取り戻したのだ。しかし!「……ドーモ、ドラゴン・ニンジャです。ユカノは我が半身じゃ」彼女は「ユカノ」を抑え込んだ。ユカノの自我を守るために。「何がどうなってる。磁気嵐でIRCも通じねえし……」「この城を、止めねばならぬ」

 ドラゴン・ニンジャは歯噛みした。「さもなくば、この世界は破滅じゃ」「ナムアミダブツ!どうすりゃいいんだ!ブッ壊すのか?」「ウカツに壊せばオヒガンのエネルギーが暴走し、手がつけられぬ。制御下に置かねばならぬ。そなたらの言うところの『ハッキング』を行ってな」彼女は思い出す。

 彼女の記憶と自我はモザイク状、あるいはグリッチ状に混ざり合い、かつての状態には戻り得ない。キンカクへ不完全な形でアセンションし、不完全な姿でディセンションしたためだ。他にも多くの記憶をオヒガンの何処かへ封印保存している。数千年の時を生きつつ、記憶と自我を保つために。

 対ヌンジャ兵器であるこの城を破壊してもならないが、現世に留め置くわけにもいかない。愚かなニンジャやモータルに再利用されてはならない。だとすれば……このままオヒガンと現世の狭間に留め置くしかない。誰か管理する者は必要だが……かくなる上は責任上、自分がやるしかないのか。

「ハッキングだと?LAN端子穴はあるのか?」「そうではない。キョート城のシステムにアクセスするには、メイブツ級の茶器が必要じゃ」江戸戦争。セキバハラ。徳川エドワード家康とトョトミ・イデヨシの決戦。燃え上がるオオサカ城。……アザイ・チャチャ。そして、キョウゴク・ドラゴン

「茶器!ヨウヘン・テンモク茶碗!」ドラゴン・ニンジャは上を見上げた。「そうじゃ!あれを手に入れねばならぬ!行くぞ!」「「「アッハイ」」」3人は上を見上げた。その時!……何かが、上から落ちてくる。赤黒い火が。

 ゴーン……ゴーン……終末を告げ知らせる除夜の鐘めいた音が、ネオサイタマ全域に響き渡った。夜空はキョート城のさらに上空に在る黄金立方体の輝きを受けて黄色く染まり、黄金の光が真昼のように下界を照らし出した。

 ……フジオ・カタクラは片方の口角を吊り上げて嗤い、眼を閉じた。「イヤーッ!」彼は妖刀ベッピンを、おのれの肉体から引き抜いた!「何!?」ケイトー・ニンジャは目を剥いた。「ならぬ!ハラキリ儀式を完遂させねば契約に背くことに!」「馬鹿めが!」ダークニンジャは邪悪に嘲笑った!

「俺は、俺の運命を認めたのだ!お前の運命など知ったことか!世界の都合など知ったことか!」ゴウランガ!ダークニンジャはコトダマによる契約を欺いてのけた!「俺の運命は!カツ・ワンソー=サン!貴様に逆らい、その心臓にこの刃を突き立て、今度こそ滅ぼすことだ!俺がそう決めたぞ!」

 ニンジャソウルが憑依した時のように、ダークニンジャの新陳代謝は加速し、臓腑と血液が体内へ戻っていく。その欠片は溶け合って形をなし、超自然的な黄色いニンジャローブとなり、彼の肉体を覆った。それは、まるで。『俺は、ヌンジャを殺害する者。これよりサツガイ・ニンジャと名乗ろう』

「お……おお」ケイトー・ニンジャは震え、思わず跪いた。マッポーの世にさらなる混沌をもたらすべく再臨した、新たなるあるじに。

02

 本丸上層部。デミニンジャを蹴散らしながら最上層へ向かっていたハウスバーナーたちも、解き放たれたキョジツテンカンホー・ジツを浴びる!

 罪罰罪罰罪罰……「「イヤーッ!」」ナンシーとポイズンバタフライはキアイではねのけるが、他の4人は一斉にドゲザ!ナムアミダブツ!だがデミニンジャたちも一斉にドゲザ!その方向にこそロード・オブ・ザイバツがいるはずだ!「ち、チクショウ!もう少しだってのに!」エーリアスが抗う!

 ポイズンバタフライはブラッドカタナを構え警戒した。彼はソウカイ・シンジケートに、ラオモト・カンとチバに対する強固な忠誠心を保っている。

 デミニンジャたちは素早くドゲザ姿勢から跳躍し、カラテを構えた。さらに前方から何かが接近してくる。巨大な刃物を装備した巨漢と、獣じみた姿のニンジャ。いずれもザイバツ紋をつけている。『ドーモ、レッドクリーヴァーです』『ワッチドッグです』彼らは無感情な声でアイサツした。

 この2人のザイバツニンジャは、キョート城内を徘徊し、警備を行う者たちだ。かつて何らかのシツレイを犯したために自我を破壊され、思考能力を失った奴隷として生かされている。2人が揃えば、アデプト位階であれば太刀打ちできまい。だが!「ドーモ、我々はソウカイ・シンジケートです」

 ポイズンバタフライは代表アイサツした。背後でドゲザしていた4人もよろよろと立ち上がる。「この城にカチコミに来ました!」『カチカチカチ』ワッチドッグは涎を垂らしながら牙を打ち鳴らし、レッドクリーヴァーは巨大なナタを構えた。相手にとって不足なし。一撃必殺アトモスフィア!

「私の物理肉体は守ってね」ナンシーは不敵に微笑むと、キツネ・サインを突き出す。そして生体LAN端子を介し、周囲の濃密な電子とエテルの流れ……すなわちインターネットにアクセスした。0101010101……キンカク・テンプルから流れ出す01。キョジツテンカンホーの罪罰の網目。それが、視える!

『だいぶわかってきたわ』彼女の自我は、キョート城の外へ飛翔した。01の流れに乗り、網目をすり抜け、ネオサイタマを一望する。魔術的なエテルの奔流と、それを制御するシステム。つまりこれはインターネットとUNIX。20世紀後半にUNIXが発明される以前に、それはシステムとして存在した。

 彼女はキョート城のワイヤーフレームモデルを視野に収める。罪罰の網目が最も濃密なのは、天守閣の最上層。その下に、カバラ・ボンサイの世界樹モデルめいたエテルの流れが視える。莫大なモータルソウルの奔流。根本から上方へ飛翔するのは、ドラゴンとカラス。下降するのは赤黒い火だ。

 ナンシーの視界と意志は、エテルの流れを介して仲間たちに伝わる。エーリアスはこめかみに指をあて、マインドブラスト攻撃!「TAKE THIS!」ZZTZZTZZT!『『『グワーッ!』』』デミニンジャたちは狂い悶える!だが自我を破壊されている2人のザイバツニンジャには無効だ!実際厄介!

「イヤーッ!」ライトウォッチャーは三角形のスリケンを生成し、デミニンジャへ投擲!肉体はモータルでも、ニンジャが憑依したならニンジャとなるのだ!SMASH!『グワーッ!』命中!だが浅い!ハッカーニンジャの彼女には物理戦闘力は乏しい!「任せときなさい」ポイズンバタフライが構える!

「イイイヤァアアアーーーッ!」SLAASH!!ワッチドッグめがけて必殺のブラッドカタナが鞘走る!どくん……ワッチドッグは本能的に死を直感し、アドレナリンを過剰分泌してジグザグ回避!『GRRRRR!』だがそこへハウスバーナーが斬りかかる!「イヤーッ!」SLASHSH!『AARGHH!』命中!

「行けッ!」ヤモトは周囲のエテルを凝集し、カラテミサイルとなして射出!射出!射出!PAPAPAPAPAM!『『アバーッ!サヨナラ!』』KABOM!デミニンジャ2体が爆発四散し、残る1体も01分解しかかる!これが神話級のアーチニンジャ「シ・ニンジャ」の力だ!「カカッテコイ!」挑発!

『GRRRR……イヤーッ!』レッドクリーヴァーは突出したポイズンバタフライへ駆け寄り、斬りかかる!SMASH!「グワーッ!」命中!だが浅い!『GRRRAARGHH!』ワッチドッグは壁や天井を色付きの風と化して駆け回り、後列のエーリアスへ飛びかかる!アブナイ!「うおおッ!」回避!

『イヤーッ!』残るデミニンジャはハウスバーナーへ飛びかかる!「アミーゴ!」難なく見切って躱し、サソリ・キックで迎撃!SMASH!『アバーッ!サヨナラ!』KABOOOM!デミニンジャたちは全滅!ナムアミダブツ!だがキンカクから降り注ぐニンジャソウルは城内のあちこちで実体化し始める!

 罪罰罪罰罪罰……「グワーッ!」ハウスバーナーはキョジツテンカンホーを受けて悶絶!だが他の5人は回避!おそらく網目に引っかかるか否かには一定のマナーに従ったプロトコル、ルールがあるのだ!まるでキョート貴族同士の複雑怪奇な礼儀作法のように!ナンシーはそれを全員に共有する!

 010101010101……ナンシーはネオサイタマ全域を覆う電子ネットワークにアクセスし、情報を流していく。磁気嵐をものともせず稼働を続けるカスミガセキ・ジグラットに。湾岸警備隊に。ヨロシサン製薬に。オムラ・インダストリに。ソウカイ・シンジケートに。『SOS』『共通の敵』『一致団結』

 断片的な情報は、受け取られる側によって解釈され、読み解かれ、それぞれの都合の良いように結論づけられる。彼らはキョート城を、ザイバツを共通の敵であると状況判断し、決起する……はずだ。キョジツテンカンホー・ジツを克服できた者がいくらかでもいれば。例えば……ダイダロス!

「「イイイヤァアアアーーーッ!」」SLASHSHSH!ポイズンバタフライとハウスバーナーの斬撃がワッチドッグを襲う!ナラク・ニンジャをも退けた刃の嵐!『アバババーッ!』異形のニンジャは斬り刻まれ、苦悶の叫びをあげる!その自我が破壊され精神攻撃を受け付けずとも、苦痛は感じるのだ!

「ヒカエオラー!」ヤモトはパワーワードを放ちながらカラテミサイルを連射!連射!連射!『イヤーッ!』レッドクリーヴァーはワッチドッグをかばい、全弾をその巨体で受け止める!PAPAPAPAPAM!カラテと筋肉の鎧により弾かれて無傷!なんたる堅牢なビッグニンジャ耐久力か!『GRRRRR!』

『『AARGHHHH!』』レッドクリーヴァーとワッチドッグは恐るべき叫び声をあげながら襲いかかる!「「イヤーッ!」」ハウスバーナーとポイズンバタフライが飛び出し、刃を振るって防ぐ!キキキキキキィィン!全て防御!カラテだ!「流石に少々手こずるが、この程度ならよォ!」

 罪罰罪罰罪罰……「「グワーッ!」」「ンアーッ!」ポイズンバタフライ、エーリアス、ヤモトがキョジツテンカンホーを食らいよろめく!『グワーッ!?』だがレッドクリーヴァーもよろめく!ナンシーがザイバツ電算室からハッキングで奪ったドローンによる射撃を食らったのだ!ナムサン!

「ザッケンナ……コラー!」ポイズンバタフライはヤクザスラングを叫び、罪罰の網目を払い除け、ブラッドカタナでワッチドッグへ斬りかかる!SLAAASH!『アバーッ!』ワッチドッグは重傷を受け昏倒、戦闘不能!残るはレッドクリーヴァーだけだ!「行くぞ!」「シ・ニンジャ!」

「「イイイヤァアアアーーーッ!」」ハウスバーナーとヤモトがジツでエンハンスした刃で斬りかかる!SLASHSHSHSHSH!『グワ、アバババーッ!』猛攻をまともに受け、巨体が傾く!だが堅牢な筋肉の鎧で致命傷を防いだ!

『ゴアオオオオン!』レッドクリーヴァーは獣めいて咆哮し、ハウスバーナーめがけて力任せに大鉈を振り下ろす!「アミーゴ!」ハウスバーナーは見切って躱し、敵の脳天へサソリ・キック!SMAASH!『アバーッ!』痛烈!非人間的なメンポが割れ砕け、自我ケジメ手術を受けた素顔が露出した!

 罪罰罪罰罪罰……「「「グワーッ!」」」ハウスバーナー、ポイズンバタフライ、エーリアスがキョジツテンカンホーを食らいよろめく!BRTTTT!レッドクリーヴァーへドローン射撃!『ウオーッ!』筋肉の鎧で防ぎ意に介さず!オヒガンの接近が彼のニンジャソウルの力も高めている!だがもはや!

「イヤーッ!」エーリアスは倒れ伏したワッチドッグへ駆け寄り、カイシャクの踵落とし!SMAASH!『サヨナラ!』KABOOOM!爆発四散!「イヤーッ!」ライトウォッチャーはレッドクリーヴァーへスリケンを投擲!『グワーッ!』命中!チャンスだ!「イイイ……イイイヤァアアアーーーッ!」

 SLAASH!ポイズンバタフライのイアイが、巨漢ニンジャの胴体をトランスアキシャル面切断!サツバツ!臓腑と血液が流れ落ち、巨体が傾き、崩れ落ちる!『サヨナラ!』KABOOOM!爆発四散!

 戦闘は瞬時に終わったが、異変は解決していない。このまま最上階へ突入しても、ロード・オブ・ザイバツのジツが直撃すればドゲザさせられるだけだ。ナンシーとエーリアスは城内の記憶を探り、ディテクティヴたちとアクセスし、ニンジャスレイヤーの敗北を悟る。ならば……ハッキングだ!

「俺たちがジツを抑える。その隙に物理でカチコミかけてくれ」エーリアスの指示を受け、ハウスバーナーとポイズンバタフライは頷く。「アタイは」「俺たちの物理肉体を守ってくれ。俺とライトウォッチャー=サンはニンジャだが非力だ」「わかった」ヤモトは頷く。『ハッキングなら任せて』

 ナンシーの論理肉体は磁気嵐と罪罰の網目を躱しながら、ネオサイタマを飛翔して支援を呼びかけ、キョート城のセキュリティに穴を空けていく。城を攻め落とせば宝物が、機密情報が手に入ると噂を流す。電脳の魔都ネオサイタマに潜む有象無象が、邪悪な格差社会のシステムに牙を剥くのだ!

03

 カスミガセキ・ジグラット最上層。ネオサイタマ知事代行シバタ・ソウジロウは、窓の外に映る異常な光景に対して怒りをあらわにしつつ、全力で対抗していた。彼に宿るゼウス・ニンジャの力が、ジグラットに張り巡らされたテックの力で増幅され、強固な物理・論理防御壁を形成しているのだ。

 キョート城と思しき共和国の浮遊兵器は、ジグラットのキモン(北東)方向……マルノウチ・スゴイタカイビルのやや北、ツチノコ・ストリート上空に出現し、その真下に殺人光線を重点的に発射している。幸いにも治安レベル最悪の猥雑な暗黒街だ。焼き払ってもらった方が治安改善にはよい。

 しかし、すでにマルノウチ地区などカチグミ居住区にも市民の犠牲者が出ている。あれをなんとかしなければ、ネオサイタマは破滅する。ならば、やらねばならない。「アマクダリ・アクシス精鋭部隊、潜入調査開始」彼は部下に命令を下した。ジグラットの守りも必要だが、攻撃は最大の防御だ。

 ネオサイタマ東部、オムラ・インダストリ本社要塞。

「システム総じ緑な」「谷」「弾薬」「殴り薬」「沈痛」……HUD表示が次々に浮かんでは消え、目の前の光景が徐々に解像度を増してゆく。ネブカドネザルは適切に注入される人工ニンジャアドレナリンが血管を巡る感覚を捉える。カタパルトデッキの地面には雷神の意匠が白く描かれている。

『やっつけろ。いっぱいやっつけて殺せ』モーティマー社長のIRC通信をネブカドネザルは粛々と聴いた。『わかっていると思うが、プレゼンテーションが必要だ。たくさん壊して殺せばオムラの凄さが伝わりV字回復する。簡単なんだ、経営なんてものは!』『イエスボス』ネブカドネザルは答えた。

『前回の戦闘時のデータ解析精度は高く、白兵戦時に遅れを取る可能性は極めて低いです』『絶対やっつけろ。パパは間違っていた。僕が正しい。そうだな?』『イエスボス』『オムラは大丈夫だ。だろ?』『イエスボス』会長のアルベルト・オムラはもういない。先日心臓発作で逝去したためだ。

 彼の死は秘匿されていたが、内部の裏切り者に密告され、オムラの株価は危険水域まで下落していた。ネブカドネザルもオナタカミ勢力との戦闘で不覚をとり、逃げ戻る始末となった。起死回生の一策はキョート共和国首都への総攻撃だったが、その前に向こうからキョート城がやってきた。好機だ。

 ここはネオサイタマ中心部から遠く、キョート城の殺人光線も、キョジツテンカンホーも、キンカクからの凝視も届かない。だが、異常事態は伝わっている。社長はモーター理念によって、社員は鋼の忠誠心によって、オムラは歯車の群れの如く一致団結し、一つの目標に向かって動くのだ!

「モーターツヨシ、デバイス接続シーケンス。MAAA(モーター・アブナイ・アットー・アグリゲイト)システム、連結成功な」合成マイコ音声が告げた。ネブカドネザルに背部脊髄接続したモーターツヨシに、さらに連結されたのは、神話モンスターめいたロケットエンジンの集合物である。

『そのMAAAが、お前を一気に運ぶぞ。あっという間だ。くだらない安全保障上の物議を醸すから、当然、実地テストは行っていない。今回、ぶっつけ本番だ。データ上は100%問題ない。お前はニンジャだしな』『イエスボス』『こっちは社運がかかっているんだ。旅客機以外の障害物は撃墜して進め』

『イエスボス』ルルルルルル、多種多様なシステム起動音がテクノ・トラックめいて次々に重なり、カタパルト前方に設置された巨大めくりショドー台の「五」の文字をスタッフがめくった。「四」「三」「二」陽炎が前方の夜景を歪める。「一」「炎」ドウ!カタパルト射出!MAAA点火!

『モ……モーターヤッター!飛んだァ!』モーティマーの通信音声をロケット音とノイズがかき消す。ネブカドネザルは飛んだ。西へ。キョート城へ!

「ムッハハハハ!」オムラ本社要塞と物理的に癒着した、黄金鬼瓦ツェッペリン上に聳える天守閣。ソウカイ・シンジケート仮本部最上層で、総理大臣ラオモト・カンは哄笑した。ネオサイタマ中心部の状況を扇形モニタで悠々と観賞し、オイランたちをはべらせ、酒を呑み、スシを食べながら。

 彼は弱者が虫けらのように苦しんで死ぬのを見るのが大好きなのだ。たとえそれが敵の侵略によるものであり、職責として守らねばならないネオサイタマの市民であろうとも。「あれの解析は済んだか、ゲイトキーパー=サン、ダイダロス=サン!」「ハイ」ゲイトキーパーは深々とオジギした。

 キョート城から送られてきた匿名のメッセージは、ダイダロスのもとにも届いていた。彼はそれをソウカイヤ上層部に報告し、ネオサイタマ全土に欺瞞プロパガンダ工作を行いつつ、キョート城電算室に電子攻撃を開始した!『電脳の魔都を統べる者、ダイダロスの力を見せてやりましょう!』

「ニンジャ戦力を向かわせますか?」「否。捨て置け。防衛に専念せよ。混乱に乗じてネズミどもに足を噛まれてもつまらん!」ラオモトは状況判断した。「仰せのとおりに」ソウカイヤにもオムラにも敵は多い。オナタカミとの戦争においてイッキ・ウチコワシが仕掛けた武装蜂起は記憶に新しい。

 ネオサイタマ各地に存在するソウカイヤのシマにおいても、前と同じくウチコワシやザイバツ、オナタカミが襲撃を仕掛けて来る可能性は高い。外敵に対して一致団結するなど、ソウカイヤだけで十分だ。「しかし、プロパガンダは必要だな。武田信玄の鎧を着て市民にアピールしてやろう!」

 ラオモトはカタナめいた目を光らせた。株価下落を続けるオムラとの提携関係も、そろそろ潮時かも知れぬ。あるいはオムラを見限り、オナタカミやヨロシサンと手を組むか。

「なんじゃ、これは……」ネオサイタマ北東部、ヨロシサン製薬本社要塞。ヨロシ・バイオサイバネティカCEO、ヤイミ・コナギバは慄然とした。ネオサイタマ中心部の監視モニタに映るのは、目を疑うようなマッポーカリプスの光景だ。ヨロシIRC-SNSには匿名のSOSコールや情報が舞い込んでくる。

 オムラ本社要塞と同じく、ネオサイタマ中心部から離れたここまでは、殺人光線もキョジツテンカンホーも届かない。だが、異常さは伝わる。彼女のニンジャソウルそのものが怯え、悲鳴をあげている。『防衛に専念し給え』ヨロシサン取締役会と、その姿見えぬ代行者からの連絡が届く。「ハイ」

 彼女は歯噛みをしながら防衛の指揮をとる。代行者の告げるところによれば、敵の重点目標はネオサイタマの暗黒メガコーポ、特にヨロシサン製薬だという。理由は不明だが、ザイバツ・シャドーギルドがあれに関与しているのなら、何か不興を買うことをしでかしたのだろうか。なんたる迷惑!

 ……その時。ヨロシサン本社要塞の地下冷凍チャンバーで、冷凍睡眠状態にあったニンジャが何かに呼応した。彼の名は、ケジメニンジャ

 罪罰罪罰罪罰……キョジツテンカンホーの網目は傘のようにキョート城を覆い、キンカク・テンプルからの「凝視」をガードする。ヌンジャの骨から作られし三神器と地上の霊脈が、ロードのジツを増幅しているのだ。「ハァーッ!ハァーッ!ヤンナルネ」パーガトリーは頭を抑え、頭痛をこらえた。

 スローハンドは……いない。見回せば、夜だというのに真昼のように明るい。上空から黄金の光が降り注いでいる。中庭の石垣の彼方には、貪婪なブッダデーモンの宝石箱の如くに輝くネオンサインの洪水が地平線の彼方まで続いている。見慣れたガイオンの夜景ではない。だとすれば、ここは。

 パーガトリーは頭を振り、混乱した状況を整理する。やるべきことは変わらない。ホウリュウ・テンプルを攻め落とし、ムーホン者を滅ぼすことだ。防御は堅牢な上、貴重な古文書が無数に収蔵されており、火をかけることもジツで破壊することもまかりならない。ロードの怒りを買うであろう。

 無理に攻め込めば被害も増える。となれば有毒ガスか。パーガトリーはそのたぐいのジツに長けた者を呼ぼうとした。……その時!ゴオオオオオ……!何か巨大な物体が、超高速で接近してくる!それは、ニンジャだ!背中に巨大なジェットパックを背負った、ニンジャである!「なんじゃ!?」

 ヒュルルルルル……KABOOOM!KABOOOM!KABOOOM!飛来ニンジャは背負ったジェットパックから多数のミサイルを射出!射出!射出!キョート城底部から突き出したクリスタル数本を破壊し、本丸中庭上空に突入!空中高くにホバリングしながら威圧的なアイサツを繰り出した!

『ドーモ、キョート共和国のテロリスト諸君。私はオムラ・インダストリの所有するニンジャ戦闘兵器、ネブカドネザルです。あなた方からのアイサツは省略し、全滅させます。降伏受付期間は終了しました』ナムサン!「ドーモ、ザイバツ・シャドーギルド、グランドマスター、パーガトリーです!」

 パーガトリーは代表アイサツを返した。スローハンドは……どこか別方向からテンプルを攻めようとしているのだろう。忌々しいが、ここは自分たちがこのニンジャを相手どるほかなし!「あの無礼なオムラのカトンボを撃ち落とせい!」「「「ヨロコンデー!」」」一触即発アトモスフィア!

「思いもよらぬ援軍じゃな!」ムーホン者の指揮者ニーズヘグは、外の様子を伺いながらほくそ笑んだ。しかし、このままではホウリュウ・テンプルやキョート城もろとも叩き潰されかねない。キョジツテンカンホー・ジツがなおも残り、強まっているということは、ダークニンジャは返り討ちか。

「裏手から別働隊が来ます!」「スローハンド=サンの派閥のようです!」ニーズヘグの部下、フェイスフルディミヌエンドが報告した。「厄介じゃな。本丸に突入してやりたいが……」ニーズヘグは腕をさすった。傷はまだ完全には治癒していない。「毒に気をつけい!迎撃じゃ!」「「ハイ!」」

 ネオサイタマ各地の勢力は、一致団結とはいかず、牽制し合いながらも、侵略者に対処し始めた。キョート城でのイクサも激化する!

04

『アバーッ!』ナムアミダブツ!キョジツテンカンホーの直撃を受け、最上階から再び奈落へ落下したナラク・ニンジャは、今度は背中から銀色オベリスクに突き刺さった!たちまち彼を介してギンカクからモータルソウルが吸収され始める!『アバババババーッ!』無慈悲!なんたる無慈悲な機構か!

『オノレ……ニンジャ……殺スベシ……!』ナラクは血涙を流しながらもがき、最上階のロードへ、その先のキンカクへ手を伸ばす。だが彼が憎悪を燃やせば燃やすほど、キョート城には膨大なエネルギーが注ぎ込まれ続けるのだ!「に、ニンジャスレイヤー=サン!」ディテクティヴが呼びかける!

 罪罰罪罰罪罰罪罰……だが真上からキョジツテンカンホーが降り注ぐ!「「グワーッ!」」ディテクティヴとディプロマットは直撃を受け悶絶!しかしアンバサダーとドラゴン・ニンジャは見切って躱す!「う、ウカツに近づけば危険じゃ!あれはニンジャスレイヤーの内なるニンジャソウルぞ!」

 ドラゴン・ニンジャは警告する。だが「ニンジャスレイヤー」の名を聞き、口にしたことで、彼女の内なる「ユカノ」が動き出す!「フジキド!」彼女は、名を呼んだ!「フ……フジキド……!フジキドーッ!大変です!」……どくん。串刺しにされたナラクは、大きくのけぞる!『アバババーッ!』

010101010101

 01010101……フジキド・ケンジはフートンの中で覚醒した。ここは彼の自我の内に存在するチャノマ、ローカルコトダマ空間だ。だがフートンは黒い鎖で縛られ、壁も窓も黒く塗りつぶされている。旧式テレビの画面には、彼の妻子が殺される様子が無限ループする。ジゴクだ。ここは彼のジゴクだ。

 窓や壁を塗りつぶしているのは、無数の罪罰紋だ。それは犠牲者たちが加害者を見る目で、フートンに横たわるフジキドをさいなむ。『あの時、ああしていれば……』『ニンジャに殺された』『苦しい』『助けて』『おとうさん』『おかあさん』『おにいちゃん』『おねえちゃん』……無数の声。

 それは、彼が常に聴いている声。ナラクの奥底から、ギンカクから響いて来るジゴクの亡者たちの声だ。彼はそれゆえ狂気に陥り、無限にニンジャを殺し続ける殺忍鬼と化した。仇討ちをせねばならぬ。復讐をせねばならぬ。燃え尽きるまで。ニンジャが殺したモータルの数だけ。ナムアミダブツ。

「フユコ……!トチノキ……!」ああ、彼はまだ、妻子の仇討ちさえできていない。ラオモト・カンも、ダークニンジャも、ロード・オブ・ザイバツも。ダークニンジャは大恩ある師匠、ドラゴン・ゲンドーソー=センセイの仇でもある。幾度となく戦い、追い詰めたが、トドメを刺すには至らなかった。

 ラオモトにはカラテを届かせることもできず、手下に敗れた。ゲンドーソー=センセイに託されたユカノを救うためにロードに立ち向かえば、ジツに敗れてこの有様だ。なんたるブザマ。『全くだぜ』銀色の影が、枕元に立った。『ドーモ、俺は……俺だ。思い出してくれや』影は朦朧としている。

「ドーモ……シルバーキー=サン」彼はフートンの中からアイサツした。銀色の影はやや明瞭な形となり、若い男の姿になる。『やれやれ。随分遠回りしちまったが、ここからだ。あんたのカラテが必要になる時だ』窓や壁を覆う罪罰紋が退き、消えていく。フートンを縛る黒い鎖も消えていく。

『ハッキングなら任せて』シルバーキーの傍らに、金色の女性が出現し、ウインクした。「ドーモ、ナンシー=サン」彼はフートンから起き上がった。『ドーモ、ライトウォッチャーです!』見慣れぬ黒髪の女性が現れ、アイサツした。彼はアイサツを返す。「ドーモ……ニンジャスレイヤーです」

『アババーッ!』串刺しにされたナラクから、黒い炎が四方八方に伸びた。それはディテクティヴとドラゴン・ニンジャに絡みつく!「アイエッ!?」ディテクティヴは慌てた。ニンジャソウルの暴走か!否!炎は強靭なロープと化し、2人を引っ張る!『Wasshoi!』ナラクは再起動し、飛び上がった!

 ナラクは……ナラクと共振状態になったニンジャスレイヤーは、黒い炎のドラゴンと化し、再び最上層へ駆け上る!2人をロープで引きずりながら!「グワーッ!?」「アナヤ!?」琥珀ニンジャの間を、本丸天守閣の下層・中層・上層を突き抜け、一気に上昇!上昇!上昇!上昇!上昇!

 上から絶え間なく降り注ぐキョジツテンカンホーの網目は、シルバーキー、ナンシー、ライトウォッチャーにより次々と破壊されていく。肉体を捨て、コトダマ体となった彼らにも、キンカク接近による能力のバフがかかっているのだ!『Wasshoi!』SMAAASH!超自然の白いタタミを突き破る!

「なにッ!?」パラゴンがうろたえた。強化されたロードのジツは決して破れぬはず!『ドーモ、ニンジャスレイヤーです。ジゴクから戻って来たぞ』赤黒のニンジャはジゴクめいてアイサツを繰り出した。「ドーモ、ドラゴン・ニンジャです。忘れ物じゃ。この城を奪い返させてもらうぞ!」

 さらに、新手。「いつつ……ドーモ、ディテクティヴです。シキベ=サンの仇をとらせてもらうぜ、パラゴン=サン」「……ドーモ、ロード・オブ・ザイバツです」「パラゴンです。ヒカエオラー、下郎ども!」「主君の虎の威を借りる死に損ないめが。まずはオヌシからジゴクへ送ってくれよう!」

 罪罰罪罰罪罰……キョジツテンカンホーの網目が、3人のニンジャの周りを避けている。肉眼では視えぬものたちが防御しているのだ。ロードの目には視える。「随分大勢でやって来たものよ。ヤンナルネ」ZANKZANKZANK!ロードとパラゴンの周囲に、デミニンジャ3体が降り立ち実体化する!

「問題なし。真の支配者の前に三度屈するがいい」ロードはダブル・ドス・ダガーを構えた。一撃必殺アトモスフィア!

「「イイイヤァアアアーーーッ!」」ロードとパラゴンはディテクティヴへ飛びかかる!SLASHSHSHSH!「グワーッ!」命中!だが浅い!「キエーッ!」「イヤーッ!」ドラゴン・ニンジャとニンジャスレイヤーはパラゴンへ猛攻!「イイイヤァアアアーーーッ!」全て見切って回避!タツジン!

 ディテクティヴ……タカギ・ガンドーは、流れるような動きで両手に49マグナムを構え、体勢を大きく崩したパラゴンに突きつけた。千載一遇のチャンスだ。BLAM!BLAM!SMAASH!「グワ……アバーッ!」サツバツ!銃弾がパラゴンの臓腑をえぐり、胴体に大穴を空けた!おびただしい出血!

「グランド・オモシロイでシキベ=サンを撃ったのは、テメエだ。同じ場所にブチこんでやったぜ」ガンドーはさらに反動を利用し、大きく身をひねって回し蹴りを繰り出す!パラゴンとロードめがけ!「イイイヤァアアアーーーッ!」「ヌウッ!」ロードは跳躍回避!だが!SMAASH!「アバーッ!」

 パラゴンは回し蹴りをまともに受け、水盤に激突!ヨウヘン・テンモク茶碗が揺れ動く!アブナイ!「アバッ……テメエ……俺とオヤブンの……理想を!復讐を!くだらねえ感傷で邪魔しやがって……!」パラゴンはキョート貴族じみた演技をかなぐり捨て、ヤクザ口調で毒づく。「スッゾコラー……!」

 瀕死の重傷。彼はもはや助かるまい。「ヤンナルネ」ロードは幾度目かの溜息をつきながら、ディテクティヴへ斬りかかる!SLASHSHSHSH!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがジュー・ジツでかばい迎撃!「ヌウーッ!」ダメージを受けたのは……ニンジャスレイヤーだ!「クルシュナイ」

『『『イヤーッ!』』』3体のデミニンジャ、フェイスレスたちがロードを助けるべく飛びかかる!狙うはニンジャスレイヤー!「グワーッ!」2体の攻撃を受けよろめく!「キエーッ!」ドラゴン・ニンジャがインターラプトし、サマーソルトキックを繰り出す!ドラゴン!SMASH!『グワーッ!』

 フェイスレス1体が直撃を受け、のけぞってよろめく!「そなたの頼みとする手下はこの程度か。なんともおぼろげで頼りないのう!」ドラゴン・ニンジャは不敵に笑う。だがパラゴンを倒し、茶碗を獲得してキョート城のシステムをハッキングしない限り、ロードは無限に回復し続ける。無敵だ。

 ZANKZANKZANK……さらにフェイスレスたちが顕現!きりがない!1体ずつは弱いとはいえ、囲んで殴られれば不覚を取りかねぬ相手だ。実際厄介!「クルシュナイ。ニンジャの支配者、ヌンジャである余には、エイトミリオンのニンジャが従う。江戸時代のように。これぞ真の格差社会なり!」

 ロードは水盤からモータルソウルを吸収し続ける。あれを破壊するわけにもいかない。エネルギーが溢れ、現世とオヒガンのバランスがゆらぎ、致命的な大爆発が起こりかねぬ。「骨董品め。博物館にでも眠っているがいい」ニンジャスレイヤーは怒りを燃やし、ジュー・ジツを構えた。

「何がヌンジャか。オヌシは神でもブッダでもない。そこの死にかけた男と同じ、ただ私欲のために数多の命を弄ぶ、一人の邪悪なニンジャに過ぎぬ。私は、ニンジャスレイヤーだ。ニンジャ殺すべし!」

05

「イヤーッ!」ロードは状況判断し、パラゴンの守る制御水盤の傍らへ飛び下がった。ともに自らの命綱だ。守らねばならぬ!「ロード……マイロード……!」パラゴンは感涙に咽び、制御水盤にしがみつく!「キエーッ!」ドラゴン・ニンジャは連続側転を繰り出し、水盤を踏み台にして三角蹴り!

 SMAASH!「グワーッ!」パラゴンは必死で水盤を、茶碗をかばう!これこそがロードの力の源泉なのだ!「イイイヤァアアアーーーッ!」ニンジャスレイヤーがパラゴンに飛びかかる!「……イヤーッ!」BAMBAMBAM!パラゴンの周囲の白いタタミが立ち上がって盾となり、攻撃を受け止めた!

 これはパラゴンのジツにあらず、ロードのもうひとつのジツ「タタミ・ジツ」だ!「マイロードォォ!」「カイシャクしてやる!くたばりやがれーッ!」ガンドーは常人の三倍の脚力で白いタタミを跳び越え、パラゴンめがけピストルカラテ正拳突き!BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!」一発命中!

「イイイヤァアアアーーーッ!」ロードはダブル・ドス・ダガーを構え、回転しながらガンドーへ斬りかかる!狙うはアキレス腱!ニンジャスレイヤーがかばう!「イイイヤァアアアーーーッ!」ガガガガガガッ!目にも止まらぬ速さでドス・ダガーを捌き、弾き、逸し、躱す!ゴウランガ!タツジン!

『『『イヤーッ!』』』『『『イヤーッ!』』』フェイスレスたちは乱戦から距離をとり、スリケンを投擲!「「イヤーッ!」」回避!だがさらに3体のフェイスレスが降臨、顕現する!『クソ!早くしねえと……』シルバーキーが焦る。現状では3人がかりでロードのジツを抑え込むのが精一杯だ!

 その時!「「Wasshoi!」」SLAASH!白いタタミを斬り裂き、2人のニンジャがエントリーした!「ドーモ!ソウカイ・シンジケート、シックスゲイツの『六人』の一人、ポイズンバタフライです!」「同じくハウスバーナーです!待たせたな!」「……ドーモ、ロード・オブ・ザイバツです」

 ロードは無感情にアイサツを返した。「ダークニンジャ=サンが引き込んだ犬か、あるいは……ヤンナルネ」「クソが!パラゴンです!」「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」「ドラゴン・ニンジャです」「ディテクティヴです」それぞれにアイサツを返す。シルバーキーたちの姿は彼らには視えぬ。

 だが、存在は感じ取れる!意志は通じる!『ドーモ、俺はエーリアス改めシルバーキー!いまナンシー=サンたちとジツを抑え込んでる!そっちの雑魚たちは任せたぜ!』「「了解!」」『攻撃も必要ね。パラゴン=サンに生体LAN端子がある。ハッキングをかけられるわ』ナンシーが提案する。

 ロードへの直接のハッキングは、ジツがニューロン防御に回されているため難しい。しかし、瀕死の重傷のパラゴンならチャンスはある!『じゃあ、一瞬だけ任せるぜ』『ええ!』論理ナンシーはタフに笑った。

sudo_kill-9!』論理ナンシーは01の流れに乗り、パラゴンの生体LAN端子からニューロン内へ潜入!ハッキング攻撃を仕掛けて脳をシェイクする!ZZTZZTZZTZZT!「グワ……アバババーーッ!?」パラゴンの目・鼻・耳・口から出血!大きく体勢を崩す!「アナヤ」ロードは無感情に彼を見た。

「クルシュナイ。そなたが死すともニンジャソウルは滅びぬ」ロードは超然と告げ、ダブル・ドス・ダガーでガンドーへ斬りかかる!SLASHSHSHSH!「グワーッ!」命中!「ハイ!マイロード!」パラゴンは決死の力を振り絞り、懐からドス・ダガーを抜いてガンドーを狙う!「シネッコラー!」

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーがインターラプト!全身全霊をこめたパラゴンの一撃を……SLAASH!「グワーッ!」肉を斬らせ、飛び下がって威力を殺し防御!「キエーッ!」ドラゴン・ニンジャはロードめがけトビゲリ!「イヤーッ!」BAMBAMBAM!白タタミが立ち並び、堅固な盾となる!

「イイイヤァアアアーーーッ!」ニンジャスレイヤーは壁にウケミをとり、反動を利用して跳び戻る!立ち並ぶタタミを踏み台とし、パラゴンへ致命的な踵落とし!BAMBAMBAMBAM!ロードは白タタミを空中に生み出して防御!だが!SMAAASH!「グゥワーッ!」踵落としがタタミを突き破った!

「マイロォォード!」パラゴンは叫ぶ!01010101……彼の視界は暗闇に包まれ……いつの間にか、瓦屋根の上に立っていた。「え」ここは。鴉たちがゲーゲーと鳴く声が聴こえ、遠くの水面から届く涼しい風が顔を撫でる。0101ハッキング攻撃が彼のニューロンを焼き始めていた。ここは、あの夜の。

0101010101010101

 金髪の女ハッカー、ナンシー・リーは、罪罰の網目を巧みにすり抜け、パラゴンのニューロンに潜り込んでいた。彼女だけではない。タカギ・ガンドー、そしてシキベ・タカコがいた。時は8月、オールド・オーボンの夜。現世とオヒガンが接近し、死者が生者とともに現世を踊り歩く神秘の夜だ。

『ドーモ。お久しぶりッスね!』シキベはアイサツした。彼女はユーレイではない。彼女のニューロンチップは、ガンドーの頭蓋骨の中で生きている。「バカな」パラゴンは慄然とした。あの夜、彼は三神器の一つ「聖なるメンポ」を手に入れるため、ここに潜入し、そして……01010101010101010

「ようやく事件解決だ。10年越しの難事件だったぜ」タカギ・ガンドーは、シキベの背後に立って笑った。ガンドーのコートが、ナンシーの金髪が、黒い鴉の羽根に変わっていく。「テメエのせいで、無実の罪を被った野郎もいたんだ。そいつのぶんも味わってもらうぜ。インガオホーを!」ナムサン!

 ガンドーとシキベは、同時に二挺の49マグナムを構えた。ここはローカルコトダマ空間、夢の中だ。小さく華奢な女だろうと問題なく、イマジネーションのままに、夢は実現する。「AARGHHHHHH!」パラゴンは絶叫した!四つの銃口から無数の黒い銃弾が吐き出される!BLAMBLAMBLAMBLAM!

BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM

「アババババババババーーーーッ!」ナムアミダブツ!パラゴンの論理肉体は瞬く間に蜂の巣となり、01に分解されていく!「マイロード!オヤブン!罪罰サ罪罰ヨ罪罰ナ罪罰ラ!」KABOOOM!グランドマスター・パラゴンは論理肉体・物理肉体ともに爆発四散!インガオホー!インガオホー!

06

 ガンドーはパラゴンをカイシャクし、白大理石の制御水盤からヨウヘン・テンモク茶碗を回収した!「お命頂戴!イヤーッ!」ポイズンバタフライは状況判断し、フェイスレスたちを飛び越えロードへ斬りかかる!SLASHSH!「グゥワーッ!」サツバツ!ロードの片腕が斬り飛ばされて宙を舞う!

「イヤーッ!」ロードは茶碗を奪還すべくガンドーへ攻撃!「キエーッ!」ドラゴン・ニンジャがかばい迎撃!BAMBAMBAM!白いタタミがせり上がり迎撃を防御!「ウオオオーッ!」ハウスバーナーがサソリ・ダガーで斬りかかる!BAMBAMBAM!白いタタミがせり上がり防御!ナムサン!

「ムフォーフォーフォー……クルシュナイ、クルシュナイ」制御水盤からはなおもモータルソウルのエネルギーが吸い上げられ、重傷を負ったロードの肉体を急速に修復させていく。宙へ舞った腕が飛び戻り、元通りに繋がる。なんたるチートか!「虚像ウッソだろ」ハウスバーナーは唖然とした。

『『『イヤーッ!』』』『『『イヤーッ!』』』『『『イヤーッ!』』』フェイスレスたちは一斉にスリケン投擲!「「「イヤーッ!」」」ニンジャスレイヤーは見切って躱し、ハウスバーナーとポイズンバタフライはドラゴン・ニンジャとガンドーをかばう!ZANKZANKZANK……さらに3体が顕現!

「ハッキングは頼む」ニンジャスレイヤーは告げた。「私はロード・オブ・ザイバツを倒す。倒さねばならぬ!」

「イイイヤァアアアーーーッ!」ロードは再びダブル・ドス・ダガーを構えガンドーへ斬りかかる!SLASHSHSHSH!「グワーッ!」命中!出血!だが茶碗を手放さぬ!「た、頼むぜ!」彼はドラゴン・ニンジャに茶碗を託す!「おう!スゥーッ……!ハァーッ……!」彼女は奇妙な呼吸を行い始めた。

 これぞドラゴン・ニンジャクランに伝わる秘技「チャドー呼吸」。ドラゴン・ニンジャがニンジャの始祖カツ・ワンソーより伝授されたという。ニンジャスレイヤーもドラゴン・ゲンドーソーより教わっているが、彼女のチャドーはさらに上!ゴゴゴゴゴ……!キョート城が揺れ動き、機能停止した!

「イイイヤァアアアーーーッ!」ニンジャスレイヤーはナラクの力を瞬間的に引き出し、拳に赤黒い金属製のブラスナックルを生成!ロードへ猛攻を繰り出す!どくん……ロードはアドレナリン罪罰罪罰罪罰BAMBAMBAMBAM!白いタタミをせり上がらせ防御!「ウオオーッ!」ガンドーが正拳突き!

 BLAMBLAMBLAM!BAMBAMBAM!49マグナムとピストルカラテを白いタタミが受け止める!「モラッターッ!」ポイズンバタフライが斬りかかる!SLAAASH!「グゥワーッ!」ブラッドカタナがロードを斬り裂き、無視できぬダメージを与える!そしてもはや無限回復は封じられた!「オノレ!」

 ロードは……状況判断し、フェイスレスの群れの中へ飛び込んだ!「ヒカエオラー!余をかばえ!」『『『ヨロコンデー!』』』ナムサン!自我の薄いフェイスレスたちには状況判断力は乏しい!彼らを盾としてこの場から逃げ延び、下にいるザイバツニンジャたちと合流すればこちらの勝ちだ!

「逃がすか!イヤーッ!」ハウスバーナーが後を追って斬りかかる!フェイスレスたちがかばう!SLASHSHSHSH!『アバーッ!サヨナラ!』KABOM!1体が爆発四散!『アババーッ!』もう1体も重傷!『『『イヤーッ!』』』『『『イヤーッ!』』』『『『イヤーッ!』』』スリケンの雨が降る!

「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは躱しきれず一発を食らう!自我なき脆弱なニンジャもどきと言えど、これだけの数では……!「ムフォーフォーフォーフォー……ショーグンとは軍勢を率い、指揮する者なり。余の軍勢はそちらより多い!」ZANKZANKZANK……さらなる新手のフェイスレスが!

 ……その時。

 SLAAASH!ロードのアキレス腱を、フェイスレスの1体が斬りつけた。「な」ぐらりとよろめくロードの背中に、カタナが突き立てられた。胸から飛び出したその刀身は無数の呪いをこめた漢字で覆われ、禍々しいカラテを放っていた。すなわち、ヌンジャ殺しの妖刀ベッピンである。「な……!」

 フェイスレスではない。黄色くうねる異様なローブを纏い、恐るべきカラテとワザマエを備えている。彼はロードの心臓をえぐりながら、一方的にアイサツした。『ドーモ。俺はサツガイ・ニンジャです』ナムアミダブツ!

07

「アバッ……アナヤ……!」ロードはキツネオメーンの下で血を吐いた。ニンジャソウルが、吸収したモータルソウルのエネルギーごと、妖刀ベッピンに吸い上げられていく。ドクン。ドクン。ドクン。ロードは罪罰罪罰罪罰罪罰心臓からベッピンを引き抜き、サツガイ・ニンジャをタタミで弾き飛ばす。

『グワーッ!』サツガイ・ニンジャは壁に叩きつけられる。「クルシュナイ。ドーモ、ロード・オブ・ザイバツです」ロードはアイサツを返した。『サツガイ、ニンジャ……!?』シルバーキーは困惑した。ダークニンジャが、あのヌンジャの影と融合したとでもいうのか。だが、今は敵の敵だ!

「イイイヤァアアアーーーッ!」ニンジャスレイヤーは憎悪を燃やし跳躍!ロードへ禍々しいブラスナックルを叩き込む!罪罰罪罰罪罰『『『アバババーッ!サヨナラ!』』』KABOOOM!フェイスレス3体が薙ぎ払われ爆発四散!『キリステ・ゴーメン』サツガイ・ニンジャは体勢を立て直す!

彼は妖刀ベッピンを揺らめかせ、タタミを蹴ってロードをカイシャクせんとす!SLASH!罪罰罪罰罪罰『『アバーッ!』』斬られたのはフェイスレス!『サヨナラ!』1体が爆発四散、もう1体も負傷!「クソッタレ!」ガンドーは無防備状態のドラゴン・ニンジャを守りつつ、二挺拳銃を構える!

 BLAMBLAM!『アバーッ!サヨナラ!』KABOOM!負傷したフェイスレスが銃撃を受け爆発四散!「こっちは任せろ!頼むぜ!」ガンドーは叫んだ。彼は水盤の傍らでチャドー呼吸を続けるドラゴン・ニンジャを攻撃からかばわねばならない!「任せられたわ!」ポイズンバタフライが動く!

「イイイヤァアアアーーーッ!SLAAAASH!フェイスレスがかばう!『アバーッ!サヨナラ!』KABOOM!『アバーッ!』1体が爆発四散、もう1体が重傷!罪罰罪罰罪罰BAM!「サラバ!」ロードは足元のタタミを跳ね起こし、ドンデンガエシで階下へ逃れた!もはやなりふり構ってはおれぬ!

「Wasshoi!」KABOOOOM!ハウスバーナーはカトン・ジャンプを発動してロードに追いつき、斬りかかる!SLASHSHSH!「グワーッ!」命中!だがカイシャクには至らぬ!このままでは逃げ切られる!……その時!

 0101010101……ロードの目の前に、同じくキツネ・オメーンを被ったニンジャが現れた。フェイスレスでも、ザイバツニンジャでもない。そればかりか実体を持たぬ。ユーレイか。『ドーモ、ロード・オブ・ザイバツ=サン。俺は……ケジメニンジャです』彼はそうアイサツした。そして、消えた。

 KA-BOOOOOOOOOM!キョート城の外壁が破壊され、巨大な何かが突入した!それは、ニンジャだ!背中に巨大なジェットパックを背負ったニンジャである!『ドーモ、キョート共和国のテロリスト諸君。私はオムラ・インダストリの所有するニンジャ戦闘兵器、ネブカドネザルです』ナムサン!

『中庭上空での戦闘中、城内からの救援信号をキャッチしました。これより殲滅および救出活動を開始します』ナムアミダブツ!ナンシーのしわざだ!

『受信したテロリストの外見情報と一致。あなたのアイサツは省略します』ネブカドネザルは相手のアイサツを待たず、両腕の赤熱モーターブレードを展開、ジェット噴射を行いながらロードへ斬りかかる!『ネブカドネザルは賢く強い!イイイヤァアアアーーーッ!』SLAAAASH!「アババーッ!?」

 サツバツ!赤熱モーターブレードはロードが放つ白いタタミを斬り裂き、片腕を切断せしめた!「アババババーッ!」ロードは悶絶しながらタタミを蹴って加速!地下の琥珀ニンジャの間へ、あるいはその下の動力炉へ!琥珀ニンジャから三神器を、支配のメンポを取り戻せば、全ては……!

 その時、赤黒い炎がロードの眼の前に迫った。上からではなく、下から。琥珀ニンジャの間から。その下の動力炉から。シルバーキーの念話を受けた2人のニンジャが開いたポータルから。制御水盤に飛び込んだニンジャスレイヤーは、動力炉に転送され……オベリスクから跳躍した!「Wasshoi!」

 ニンジャスレイヤーの拳には、禍々しい「忍」「殺」の漢字をかたどったブラスナックル。ロードはタタミをSMAAAAASH!「グワ……アバ罪罰罪罰罪罰罪罰ーーーーッ!」ナムアミダブツ!インガオホー!インガオッホー!『キリステ・ゴーメン』ニンジャスレイヤーの背後にサツガイ・ニンジャ。

 ほぼ同時にオベリスクから跳躍したサツガイ・ニンジャは、妖刀ベッピンをゆらめかせ、ロード・オブ・ザイバツの首を罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰罪

罪罰罪罰罪罰罪罰

08

 キョート城本丸、天守閣。最上階から地下琥珀ニンジャの間を経て底部の動力炉までは、まっすぐに竪穴が貫き、吹き抜けとなっている。城内には、吹き抜けに沿って真鍮の螺旋階段があるが、最上階までには達していない。

 ニンジャスレイヤーがロードの肉体を粉砕し、サツガイ・ニンジャがロードの魂を妖刀ベッピンで吸い上げた。その瞬間、無数の罪罰の漢字が三者を包み込んだ。ソガ・ニンジャソウルの最期のあがき。キョジツテンカンホーの暴走。彼のジツを抑え込んでいたシルバーキーたちは、最上階にいる。

 ネブカドネザルはジェット噴射の勢いでキョート城を横に貫き、救援信号をキャッチして最上階へ飛んだ。彼の鋼鉄の愛社精神はキョジツテンカンホーを受け付けない。「イヤーッ!」KABOOM!ハウスバーナーはとっさにカトン・ジャンプを行い、真鍮の螺旋階段に飛びついた。下には黒い渦。

「に、ニンジャスレイヤー=サン!」彼は呼びかけた。ソウカイヤの敵ではあるが、このまま彼があれに飲み込まれては、良くない気がする。おそらくロードは死んだ。では、ダークニンジャ……サツガイ・ニンジャは?彼はなぜここにいて、ムーホンを起こし、ああなったのか?彼には何もわからぬ。

 ゴゴゴゴゴ……! 制御水盤によって機能停止したキョート城は、残ったモータルソウルのエネルギーを燃焼させながら上昇していく。上昇?オヒガンへ?……ハウスバーナーは戦慄した。戻れなくなる。「ハウスバーナー=サン!」ヤモトが彼を発見し、呼びかけた。「決着はついた。逃げるぜ!」

「……Wasshoi!」渦の中心からニンジャスレイヤーが飛び出した!彼は空中で回転し、琥珀ニンジャの間へ前転着地を行う。シルバーキーが黒い渦へ飛び込み、01分解される運命から彼を救出したのだ。広間に集まっていたザイバツニンジャたちは、悶絶し、混乱し、嘔吐し、うずくまって震えていた。

 キョジツテンカンホーによる洗脳を解かれたのだ。そしてキンカクからの「凝視」が再び彼らを襲っている!『殺して回る必要はなさそうだな。その時間もねェ』シルバーキーはニンジャスレイヤーを導く。『確か、地下にヘリポートがあったはずだ。こいつらが逃げる前にそっちへ急ごう』「うむ」

『ああっと、肉体を忘れるところだった。下にあの兄弟がいるから、一緒に向かってくれ!』シルバーキーはストーカーの肉体へ飛び戻っていく。ニンジャスレイヤーは上空の吹き抜けにとどまる黒い渦を見上げ……ナラク・ニンジャが空けた穴から城の底部へと飛び込んだ。「イヤーッ!」

 最上階。ポイズンバタフライとガンドーは、フェイスレスの攻撃をしのぎながらドラゴン・ニンジャに呼びかける!「……決着は、ついたみたいよ!この城をなんとかして逃げなきゃ!」「おい!頼む!」ドラゴン・ニンジャは煮えたぎる水盤を前にチャドー呼吸を続けている。「……わかりました」

 彼女は……「ユカノ」は答えた。「ドラゴン・ニンジャ」の自我はパワーを使い果たしたのか「凝視」のゆえか、ユカノの自我の奥底へ沈んでいく。「先に逃げて下さい。私は、このまま」「ダメだ!地上に戻るぞ!ニンジャスレイヤー=サンと約束しちまった!あんたを連れ戻すってな!」

 ガンドーはユカノに叫んだ。「頼む」「……はい!」KABOOM!白いタタミを突き破り、フェイスレスの群れを吹き飛ばしながら巨大な何かがエントリーした!『ドーモ、救援信号を受信しました。私はオムラ・インダストリの所有するニンジャ戦闘兵器、ネブカドネザルです』「アイエエエ!?」

 ガンドーは驚愕した。救援信号はナンシーが送ったようだが、彼に助けられれば、オムラに連れて行かれてしまう!「ドーモ、ソウカイ・シンジケート所属、シックスゲイツの『六人』の一人、ポイズンバタフライです」彼は代表アイサツした。「いいところに来てくれたわ。仲間がいるの」

「カカカ……!こいつは……!」中庭、ホウリュウ・テンプル。ニーズヘグはキョジツテンカンホーの消滅を……ロードの死を直感した。スローハンドとパーガトリーも。ならばおそらく、パラゴンも生きてはいまい。ザイバツ・シャドーギルドはどうなる?城は上昇し、再びオヒガン空間へと向かう!

「……退くぞ」スローハンドは状況判断し、部下ともども地下ヘリポートを目指して駆け去った。彼はヨロシサン製薬と関係が深い。これだけの手勢を率いて行けば、受け入れてくれるだろう。共和国との戦争をやめさせ、キョートへ戻ることもできよう。ロードの後釜としてギルドを掌握できる!

「アナヤ……待たれよ!」パーガトリーたちもふらつきながら後を追う。「逃げていきますよ。どうします?」ディミヌエンドはニーズヘグに問う。「カカカ……!このムーホンのあるじはダークニンジャ=サンじゃ!置いて逃げられるか!あやつが戻るまで待つとしようぞ!」「ハイ!」

 フェイスフルは……胸騒ぎがした。何がどうなっているのかはわからないが、このままダークニンジャやニーズヘグたちと同行すれば、ユカノやバンブーエルフとの合流は難しくなるだろう。ならば!「……スミマセン!オタッシャデー!」彼女はオジギしてテンプルから飛び出し、駆け出した!

『信じられません!これは凄い!』バラバラバラバラバラ……夜空をNSTVの報道ヘリコプターが飛んでいる。リポーターがTVカメラで中継を行う。『御覧ください!キョート城が空を飛んでいます!なんということでしょう!しかも殺人光線を乱射しています!そしてあちこちで火災、暴動です!』

『何が起きているのでしょうか!? 総理大臣のラオモト=サン、ネオサイタマ知事代行シバタ=サンからは、キョート共和国の秘密兵器による攻撃であるとの見解が示され……現在、オムラ・インダストリの戦闘兵器が迎撃……湾岸警備隊も共和国との戦闘を……』ヘリコプターは遠ざかっていく。

 バラバラバラバラ……! 上昇し続けるキョート城から、蜘蛛の子を散らすように多数のヘリコプターが飛んでいく。それを追ってキョート城からネブカドネザルが飛び出し、ミサイルを射出した。ヘリコプター群からもカラテミサイルやスリケンが飛び、迎撃する。彼らは北東へ飛び去っていく。

 カスミガセキ・ジグラットから、湾岸警備隊の基地から、オムラ・インダストリやオナタカミの本社要塞から、キョート城を脱出したヘリコプター群への攻撃部隊が飛び立った。ヨロシサン製薬も、こうなれば彼らを迎え入れるわけにもいくまい。ヘリコプターは次々と撃墜され、墜落していく……!

 ネブカドネザルの巨大な背中にしがみつくのは、ハウスバーナー、ポイズンバタフライ、そしてヤモト・コキとライトウォッチャーだ。彼らはソウカイ・シンジケートに所属しており、オムラとソウカイヤは提携関係にある。ヤモトの親友アサリは、ソウカイヤが庇護している。戻らねばならない。

 ガンドーはともかく、ユカノやナンシー、シルバーキーをオムラやソウカイヤに回収させるわけにはいかない。ポータル兄弟やニンジャスレイヤーはなおさらだ。ポイズンバタフライは状況判断し、ネブカドネザルに載せても問題ない仲間たちを回収させ、一足早く飛び去らせることにしたのだ。

 ヤモトは背後を振り返る。キョート城は崩壊しながら上昇し、黒い渦に飲み込まれていく。ニンジャスレイヤーたちは……脱出できただろうか。

 ……キョート城本丸、地下秘密ヘリポート。ザイバツニンジャたちが急いで載って逃げたため、ヘリコプターは残り少ない。隠れて集まっているのはナンシー、シルバーキー/エーリアス、ガンドー、ユカノ。遅れて駆けつけたのはポータル兄弟とニンジャスレイヤー、それにフェイスフルだ。

 向かう先は同じであったため合流できた。「ユカノ=サン!ナンシー=サン!」「良かった……!」「ドーモ、久しぶりね」3人は抱き合って再会を喜ぶ。「バンブーエルフ=サンは?」「ガイオンに残っている」ニンジャスレイヤーは手短に状況を伝えた。いずれ回収に向かわねばなるまい。

「それじゃ、ずらかるとするか。急がねえと」確保できたヘリコプターは1台きりだ。少々人数が多いが、地上に降りることぐらいはできるだろう。罪罰罪罰罪罰……黒い渦が迫ってくる。時間はない!「行くわよ!」ナンシーはヘリコプターとLAN直結した。バラバラバラバラバラ……!ローター回転!

 7人は座席に乗り込む。地上からの迎撃は……先に逃げたザイバツニンジャたちが引き付けてくれるだろう。迎撃が来れば撃墜するのみ。……そして。ザイバツは滅んだが、ソウカイ・シンジケートは健在だ。サツガイ・ニンジャも……おそらく、生きている。滅ぼさねばならぬ。必ず。

 ニンジャスレイヤーは混沌の魔都ネオサイタマを見下ろした。彼は戻って来たのだ。だが……内なるナラク・ニンジャは、沈黙している。

【フライ・ミー・トゥ・ザ・ネオサイタマ】終わり

◆つの次元AoS第二部・完◆

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