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忍殺TRPGリプレイ小説【ファイア・ユアセルフ・アップ】

邦題:己に火をつけろ(Fire Yourself Up)

これは、ニンジャスレイヤーTRPGの三笠屋=サン作オリジナルソロシナリオ「ニンジャの火事場泥棒」を元にしたリプレイ小説です。かなり自由に改変していますが、一応ネタバレにご注意下さい。

◆ニンジャ創造◆

久しぶりにサンシタを物理ダイスで創造してみましょう。まずは基礎能力値を決めるため4D6を振ります。[3,6,2,5]。すなわちカラテ3、ニューロン6、ワザマエ2、ジツ5-3=2となりました。副次能力値は体力3、精神力6、脚力2。ジツは3、カトンです。いかにも火事場泥棒らしいですね。

ついでにサイバネも入れてみましょう。出目は1、テッコです。カラテが3なので強化したのでしょうが、ワザマエは2しかありません。初期装備アイテムは4、ウイルス入りフロッピーです。ニューロンが高いのでハッカーでしょう。なんかHB=サンとIP=サンを足したようなやつになりました。

この間プラグインに追加された生い立ち表を振ってみましょう。2D6を2回振ると[11]=ジンクス、[16]=ブラインドタッチ。後者が相応しいのでそれにしましょう。彼は元UNIX技術者のハッカーで、キーボードが使えるハッキング時に判定ダイスを+1できます。やはり闇落ちしたIP=サンでしょうか。

ニンジャネームは公式の表で振って決めましょう。2D6を2つで[41][16]。表を見るとAの41はクイック、Bの16はランナー。つまり、クイックランナー。シャープウォーカー=サンと被りすぎる上に脚力2で何を言っているのでしょうか。振り直すと[25][25]=ドゥームアイズ。カナシバリも使えません。

ロングウルフ。ポイズンキラー。全然だめなのでもう勝手に決めます。火事場泥棒なのでファイアシーフ。完璧です。ここに新たなサンシタニンジャ、ファイアシーフが無から発生しました。略称はFTです。

◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)        PL:つの
カラテ       3    体力        3
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      2    脚力        2
ジツ        2    万札        0
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
◆カトン・ジツLv2:隣接する3×3マス内の敵に1ダメージ、中心にはD3ダメージ
▶テッコ:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失
○ブラインドタッチ:キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1

能力値合計:15 総サイバネ数:1

ではリプレイの様子から、このニンジャのアトモスフィアを感じ取っていきましょう。例によってパルプ小説仕立てでやります。

◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇

◆これまでのあらすじ◆

ネオサイタマ南部、オハナ・バロウ十七番地。霧に揺らめくドクロめいた満月を暗雲が覆い、工場の煙突から墨めいた有毒煤煙が常に注ぎ込まれ、重金属酸性雨を降らせる。ここは暗黒メガコーポ、サカイエサン・トーフ社の巨大工場だ。そして今、この工場は滅びようとしていた!

ソウカイ・シックスゲイツのニンジャ・ビホルダーに煽動された多数の貧民が暴徒と化し、セキュリティを抜けて工場内へ突入、破壊の限りを尽くしたのだ。これは報復である。数日前、サカイエサンの敵対企業ニルヴァーナの工場でも同じことが起きた。それはソウカイヤによって鎮圧されたが……。

騒乱の中、ビホルダーはニンジャスレイヤーによって倒され、ニンジャスレイヤーはダークニンジャによって撃退された。否、ニンジャスレイヤーはダークニンジャとのイクサを途中で切り上げ、ソウカイヤの襲撃が告げられたドラゴン・ドージョーへ向かって跳び去ったのだ。残るは暴徒と死体。

『ダークニンジャ=サン、後はどうしますか。ビホルダー=サンの計画は、ジェネレータをメルトダウンさせることでしたが』IRCに通信。「それでは被害が大きすぎる。オハナ・バロウが丸ごと吹っ飛ぶぞ。セキュリティを復帰させろ。後は暴徒とマッポに任せ、脱出しろ」『了解しました』

ダークニンジャは潜入させた女ニンジャ・マーダーシュトロムに指示し、工場のセキュリティをハックさせ、復帰させていく。かなり厳重なセキュリティだったが、内側に入れば脆いものだ。ジェネレータを守るために隔壁が閉まり、モーターヤブが再起動する。これで暴徒らは抑えられよう。

……同時刻!

「へへへ……!すげえ!トレジャーだらけだ!」その工場を這い回る影がひとつ。ボロボロの服装、右手に安物のテッコ。全身は赤と緑の血液、白いトーフエキスでまだらに彩られている。彼の名はツネビキ・モズラ。胡乱なるアナキストにしてハッカーである。たった今、死から蘇生したばかりの。

ビホルダーの煽動によりこの暴動に参加した彼は、この日のためにテッコで武装し、ウィルス入りフロッピーを懐に忍ばせ、物理論理両面で暗黒メガコーポに破滅をもたらし、かつは金目のものを奪い取ろうと目論んでいた。しかし彼は死に、ニンジャとなった。新たな名は、ファイアシーフ

目の前には無数の死体。奥ではアナキストたちがまだ暴れている。溢れ出したトーフエキス。アナキストから逃げ惑う労働者。あちこちから火の手。まさにケオス、アーマゲドン、マッポーカリプスの一側面。彼は両腕を広げ、産声めいて高らかに笑う。今こそ日頃の鬱憤を晴らすチャンスだ!

これから誰をどれだけ殺しても、金庫やUNIXを荒らして金目のものを奪っても、薬物や大豆100%トーフを貪っても、全部自由だ。なぜかは不明だが、その力もある。自分はニンジャだ。ニンジャになったのだ!自分の邪魔をする者は誰もいない!この世の王になれる!さあ、火事場泥棒の始まりだ!

◆ソロアドベンチャーパート開始な◆

「アイエエエ助けてーッ!私は高い学歴があり社会的貢献性が高くここで死ぬには惜しい人間なんだーッ!」気分がいいところへ、職員と思しきサラリマンが労働者を突き飛ばしながら走ってきた。「うるせェーッ!邪魔だ!」苛ついたファイアシーフ(FT)は右腕のテッコを振るった!慈悲はない!

3+1で4D6。[1,1,2,4]=危うく成功。

「アバーッ!」サラリマンはテッコを顔面に食らい、頭部が360度回転して即死!ナムアミダブツ!「カチグミならカネ持ってるだろ。俺のために役に立て!」FTは死んだサラリマンのスーツから財布を奪った。しかし既に奪われた後か、入っていた万札は1。「クソが!ついてねえな。次行こう」

獲得 万札:1 DKK:1

気ままな殺人を堪能し、リラックスした気分で金目のものを探す。やがて壁に貼られた工場の見取り図を発見した。重役室。この場所で一番カネがあるとすればそこだ。金庫にUNIX。万札、トロ粉末、カケジクやカタナ、コケシなど、山ほどトレジャーがあるに違いない。ワクワクして来た!

早速目指して走る。彼の脚力は常人とさほど変わらない。ワザマエも低く、連続側転やスリケン投擲も覚束ない程度だ。だが彼にはテクノカラテと高いニューロンがある。「ん?」ニンジャ聴力が不快な電子音声をとらえた。『ドーモ、モーターヤブです。降伏を受け入れました。感謝します』

BRATATATATATATATATA!「「「アババババーッ!」」」銃声と断末魔。あれはオムラ社のロボニンジャ、モーターヤブだ。ガトリングガンとショック・サスマタ、マシンガンを装備した火力の化身。セキュリティとしてアナキストたちを始末しているというわけだ。労働者も巻き込んで。

どうする。自分はニンジャになったが、モーターヤブ相手では少し不安だ。しかもあの鉄クズは、腹立たしいことに目的の部屋へのルート上に居座っている。なに、無理に破壊する必要はない。スキを見て突破すればいいのだ。「アイエエエ!?ニンジャ!ニンジャナンデ!?」傍らで悲鳴。

「あ?」訝しんで振り向くと、薄汚い労働者がへたり込んで失禁している。FTは理解した。常人がニンジャを見れば腰を抜かす。フィクションの怪物が目の前に現れたなら、それはそうだ。「ちょうどいい」「エッ?」FTはニタリと笑い、無造作に労働者の首根っこを掴んで持ち上げた。「せーの」

FTは右腕を大きく振りかぶった!「イヤーッ!」投擲!『アナキスト発見』モーターヤブが空中の労働者を発見し、ショック・サスマタを突き出す!『排除!』「アバーッ!?」哀れな労働者は即死!ナムアミダブツ!FTはこのスキに、しめやかにその前を過ぎ去った。なんたる邪悪!

獲得 DKK:3 合計4

◆廊下◆

細い一直線の廊下を走り、工場の奥へ奥へ進むFT。目的地はもうすぐだ。

ニューロン6で難易度HARD判定。[1,2,4,5,5,6]=成功。

だが、彼の鋭敏なニンジャ第六感が何かを告げた。急停止し、素早くバック転!ガゴンプシュー!突如として隔壁が降りてきて、廊下を封鎖した。中にドボドボと何かが注がれる音。この腐敗臭は、廃棄トーフエキスだ。

「ひでえトラップもあったもんだ」ニンジャでなければ気づかず、引っかかっていただろう。先程のモーターヤブといい、セキュリティはまだぼちぼち残っているようだ。気をつけねば。「アイエエエ!助けてーッ!」隔壁の中から誰かの声がする。労働者かアナキストでも巻き込まれたのだろう。

助けるか?何の得になる?女なら助けてネンゴロにでもするが、声は男だ。男なんぞに用はない。が……助けて恩を売り、手下にすればどうだ。自分はニンジャであるが、持ち運べるお宝には限りがある。いざとなれば囮にも出来るし、今後ニンジャとして生きていくにも奴隷は必要だろう。

FTはそう状況判断し、隔壁の周囲を調べる。フクスケに偽装された制御端末があった。自分はハッカーであり、多少のトラップなら解除出来る。気まぐれな慈悲心などではなく自分のためだ。リスクもない。失敗すれば、そいつの不運だ。FTはあくまで冷静に、制御端末をハッキングにかかる。

ニューロン6で難易度NORMAL。ブラインドタッチで+1され7D6で振る。[2,2,2,5,5,5,4]=成功。

ガゴンプシュー。「アイエエエ!」隔壁が開き、中から腐ったトーフエキスにまみれた薄汚い男がまろび出た。「ブッダ!生きてる!助かったナンデ!ブッダ!」服装からすると労働者。面倒だがせっかく助けた命だ。活用してやろう。「おい」「アイエエエ!?ニンジャ!ニンジャナンデ!?」失禁!

「黙れ。俺はファイアシーフだ。お前を助けたのはこの俺だ。手下になってお宝を運べ」「ハイヨロコンデー!ナムアミダ・ファイアシーフ=サン!」男は深々と頭を下げた。「私の名はイマノウチ・ゼンザです!」「お前の名などどうでもいい。背いたら殺す」「しません!」妙な仲間が増えた。

利己的な理由なので別にDKKは減らない。

◆重役室前◆

重役室の前に辿り着くと、先客だ。ガンガン!ガンガン!「デテッコイオラーッ!」「スッゾコラーッ!」「チャルワレッケオラー!」「頭髪が奇妙だ!」多数のアナキストたちが頑丈なドアを叩いている。中のトレジャーを狙っていることは明らか。彼らに協力し、ドアを破壊するか?しかし。

やつらを残してドアを開ければ、自分の取り分が減る。ニンジャであることを示せば逃げ出すだろうが、囲んで棒で殴って来るかも知れない。ならこうだ。FTは指の先に熱が集まるのを感じる。人間を、非ニンジャを、モータルを殺したくて、ニンジャソウルがウズウズしているのだ。よかろう。殺す。

カトン・ジツ!イヤーッ!

8D6で[1,2,3,5,5,6,3,6]=成功。残精神力5。

KABOOOOOM!「「「「アバーッ!!」」」」FTの手から爆炎が放たれ、多数のアナキストたちが瞬時に消し炭と化す!ナムアミダブツ!「アイエエエ!?」「爆発しちゃったァー!?」「ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」「オタスケーッ!」生き残ったアナキストたちは算を乱して逃走!

獲得 万札:4 DKK:1(アナキストは邪悪だが、ここまでされるいわれはない)
現有 万札:5 DKK:5

FTは平然と焼死体を漁る。「これでよし、と。多少は素子を持ってたな」「アイエエエ……!」イマノウチが腰を抜かして再失禁した。「さて、再びハッキングだ」周囲を調べ、マネキネコに偽装された制御端末を発見する。

難易度HARD。7D6で[1,3,3,4,4,5,3]=ギリギリ成功。

ピピピピ……カシュッ。手慣れた手付きで端末をハックし、ドアを開ける。

◆重役室◆

ズンズンズンズズポーウ! ズンズンズンズズポポーウ!! 飛び込んできたのはボリュームMAXのサイバーテクノ。重役室には不似合いだ。オーディオ機器の故障だろうか。目の前には、蹴破られたフスマ。

突き破られた防弾ガラスやショウジ戸から、重金属酸性雨が降り注ぐ。散乱する死体。遅かった。既にアナキストたちが乱入した後のようだ。だが取り残しがまだ充分ある。札束やトロ粉末、コケシやタヌキの置物、大きなショーギ駒。そして音楽に合わせて踊り狂う何体ものオイランドロイドたち。

「充分!充分!」FTは舌なめずりし、散らばったトレジャーをイマノウチと共にかき集め、発見したバイオフロシキに詰め込んでいく。置物は嵩張るため、黄金製や宝石で飾られた小型のものを優先する。札束とトロ粉末は出来る限り回収。最新型オイランドロイドは高値で売れる。全員連れて行こう。

「「アハハハ!スゴイ!スゴイ!」」FTもイマノウチも大笑い。今日はなんて素晴らしい日だろうか。最高だ。最高だ!

獲得 万札:500(トロ粉末や置物含む) オイランドロイド:10

「さあ行くぞ!俺はこの世の王だ!スシもサケもオイランも思いのままだ!アーッ!」FTはまずここで達した。自分はこのために生きてきたのだ。

……その時。

びくん。FTは突如として怖気を感じた。強大ななにかが近づいている。彼のニンジャソウルが怯えている。何事だ。まさか、ニンジャ。ナンデ。

ずるり。ずるり。べちゃり。べちゃり。

水気の多い何かを引きずるような音が、壊れたフスマの向こうから聴こえてきた。ぞぶぞぶぞぶぞぶ……腐ったトーフエキスの臭い。まさか。エキスは床を濡らし、水かさを増す。足首を濡らし、膝まで浸かる。まさか。

ごぷん。トーフエキスの中から、それは姿を現した。死体。死体。死体。多数の死体。その一つがびくんと震え、トーフエキスがそいつに集まって行くではないか。みるみるうちにそいつはトーフエキスからニンジャ装束とメンポを生成して身に纏い、全身から凄まじいカラテを発し、光を放った!

ニンジャソウル憑依現象。FTの身に起こったのと同じ。しかしこのパワーはただごとではない。ニンジャの中でも強大な「アーチ級ニンジャソウル」が死体の一つに憑依し、甦ったのだ!それはFTを見出し、アイサツした!

「ドーモ……ホワイトリキッドです……!」

◆ホワイトリキッド(種別:ニンジャ/アーチ級)
カラテ       1    体力       40
ニューロン    13    精神力      32
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        9    万札        0

◇装備や特記事項
◆装備:生成装束(タクティカルニンジャスーツ)と生成メンポ(パーソナルメンポ)
◆スキル:『●マルチターゲット』『●時間差』『●臨機応変』
◆ジツやアーチ級能力:
「★★★半神的存在」「★★★即死無効と欠損部位即時再生」「★★★共振装束生成」
「★★★不滅」「★★★アーチ級トーフ・ジツ」「★★トーフ肉体再生」
「★★死体吸収」「★トーフ触手」「★トーフ移動」「★トーフ触手拘束」
「☆トーフ・ジツLV3」

デスドレインのコンパチ・リペイント版。白いデスド。謎の白い液体。
アーチ級ニンジャ「トーフ・ニンジャ」のソウルが瀕死のアナキストに憑依して蘇った。
現在は大量のトーフエキスを飲み込んで暴走中だが、次第に落ち着いて行くであろう。
生い立ち表は「44:未覚醒のアーチ級憑依者」だったと思われる。
イメジはPicrewの「じんがいめーかー」で作りました。

「ドーモ、ホワイトリキッド=サン。ファイアシーフです」FTは半ば本能的にアイサツを返した。ニンジャにとってアイサツは神聖不可侵の行為。FTのニンジャソウルはそれを知っている。「あ………アイエエエエ!」イマノウチが重篤なNRSを起こしフリークアウト!服を脱いで全裸に!

戦闘開始、1ターン目

イニシアチブ:WL(13)→FT(6)

じゅるじゅるじゅる……床を浸すトーフエキスが蠢き、ユバめいて固まり、イマノウチとFTの足を拘束せんとする!

トーフ触手。アンコクトン触手と同じ。視界内の標的に対して、ジツ値に等しい数のトーフ触手を生やして攻撃する。マルチターゲットは使えるが時間差攻撃は出来ない。ホワイトリキッド(WL)は9本の触手のうち1本をイマノウチに、残り8本をFTに向ける。まとめて回避可能だが難易度はHARD。FTはニューロン6に加えテッコで+1され回避ダイスは7。だが万一食らえば8ダメージをまともに食らって即死する。精神力を消費して自動成功回避。FTの残り精神力4、回避ダイス6。

「イヤーッ!」FTは一瞬早く気づき、その場からジャンプ!壁にテッコでしがみつき攻撃を避ける!だが!「アバーッ!」イマノウチはモータルゆえ回避できぬ!膝から下が溶け崩れ、腰から下がトーフエキスに飲み込まれる!「アバッ、助け、ウブバッ、アババァーー……」ナムアミダブツ。溶けた。

触手がFTの体をかすめ、バイオフロシキやアタッシュケースを奪い取った。「アッ」それらはトーフエキスの中に落ちた。溶けた。万札もトロ粉末も置物もオイランドロイドも、全てを飲み込み、溶かしてしまう。災厄そのものだ。これがニンジャ。真のニンジャの世界。FTは震え、失禁し、絶望した。

略奪したものをほとんど失った。イマノウチも死んだ。この世の王になるなど、ひとときの夢だった。助けは?来ない。こんな怪物に、災害に、誰がどう対処出来るというのか。イマノウチの死に際の悲鳴と絶望の表情が脳裏を過った。自分もああなるのか。溶けて跡形もなくなるのか。嫌だ。嫌だ!

「GRRRRRR……」WLは標的のひとつが攻撃を避けたことを訝しみ、FTの方を見ると、奇妙な構えをとった。超自然の風圧が巻き起こり、トーフエキスがボコボコと泡立ち、不穏な気配が発せられた。なんらかのジツ。それも恐らくヒサツ・ワザ級の攻撃を放つ気だ。逃げるしかない。だが、窓が遠い。

無駄に広大な重役室は、膨大なトーフエキスで足の踏み場もない。脚を触れれば最期だ。一瞬だけならニンジャ耐久力でしのぎ、連続側転で割れた窓の外へ飛び出せるかも知れない。だが次の瞬間にWLのヒサツ・ワザが解き放たれ、為す術なく死ぬだろう。ほんの一瞬、怯ませれば。FTは覚悟を決めた。

壁から離れ、飛び降りながら両手を向ける!「カトン・ジツ!イヤーッ!

8D6で[1,1,1,4,5,5,2,4]=成功。残精神力3。

KA-BOOOOOOOM! FTが放った爆炎は今まさにヒサツ・ワザを繰り出そうとしていたWLへ強烈なカウンターとなって突き刺さった!「グワーッ!」ジツを発動寸前に中断されたWLは、行き場を失った力を制御できずにもがき苦しんでいる!今だ!

2ターン目

「オタッシャデー!」連続側転!FTは気力を振り絞る!失敗すれば死だ!

ワザマエは2しかないが、精神力を消費して自動成功。残精神力2。

破壊された防弾ガラスの大穴を潜り抜け、重金属酸性雨が降り注ぐ外へ!ゴウランガ!脱出成功!大部分のお宝は失ったが、懐には万札と、宝石を散りばめた黄金コケシ。換金すれば遊んで暮らせる。命も拾った。後は知るか。WLが暴れまわろうが、ジェネレータが爆発しようが。俺は自由だ!

戦闘終了、脱出成功

「イヤーッ!」「アイエエエエ!?」FTが勢いよく丸太の上に着地すると、反動で反対側にしがみついていた薄汚い男が空中高く飛ばされた!彼と目が合った。ジーザスめいて痩せた髭の男。その腕は。「ハ」FTは笑った。モータルは無力だ。自分もそうだった。ニンジャが救いだ。「アイエエエ……」

薄汚い男は落下し、遠くの倉庫の屋根を突き破った。生きているか死んでいるか。どうでもいい。急いでこの場を立ち去らねば。FTは工場の敷地の外へ逃げ延びると、車を止めて運転手を脅し、最高速度で走らせた。「どこまで行けば!」「どこまでもだ!飛ばせ!飛ばせ!どこまでも!アハハハ!」

◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇

◆エピローグ◆

「……あ?」WLは周囲を見回す。ここは……下水道だ。彼に宿っていたアーチ級ニンジャソウルは、憑依直後の暴走をやめ、宿主のニューロンに人格が溶け込んで消えてしまう前に、辛うじてWLを下水道へ逃したのだ。しかしアーチ級ともなれば、宿主の危機に際して何らかの反応を返す可能性もある。

彼はアナキストだ。偉大な暴力、ニンジャの力が自分に宿ったのを感じる。暴力と破壊こそ真の革命だ。全てを破壊し、カネモチを殺し、カチグミを殺し、この世を白く塗りつぶす。「オレは選ばれた。選ばれた!」下水道に、彼の声が殷々と響く。……と、パチパチという音。誰かの拍手だ。

「おめでとう。きみはニンジャになったのだ」奥から声。敵意は感じない。そちらへ向かい、アイサツを行う。アイサツは大事だ。「ドーモ、ホワイトリキッドです」その者はアイサツを返す。

「ドーモ、ホワイトリキッド=サン。バスター・テツオです」

【ファイア・ユアセルフ・アップ】終わり

リザルトな

◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)        PL:つの
カラテ       3    体力        3
ニューロン     6    精神力       6→2
ワザマエ      2    脚力        2
ジツ        2    万札        5
DKK       5    名声        0

◇装備や特記事項
◆カトン・ジツLv2:隣接する3×3マス内の敵に1ダメージ、中心にはD3ダメージ
▶テッコ:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失
○ブラインドタッチ:キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1
◆宝石を散りばめた黄金コケシ(換金すれば万札50)

能力値合計:15 総サイバネ数:1
◆忍◆
つの版ニンジャ名鑑
【ファイアシーフ】
トーフ工場で暴動中に死んだ胡乱アナキスト・ハッカー、ツネビキ・モズラにニンジャソウルが憑依。右手にテッコを装備し、カトン・ジツを操る。無軌道な火事場泥棒を繰り返す邪悪なサンシタであるが、悪運とニンジャ第六感は侮れない。
◆殺◆
◆ホワイトリキッド(種別:ニンジャ/潜在アーチ級)
カラテ       2    体力        5
ニューロン     6    精神力       9
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        5    万札        0
DKK       5    名声        0

◇装備や特記事項
◆装備:生成装束(体力+4)、生成メンポ(精神力+4)
◆アーチ級能力:「★★★共振装束生成」「★★★不滅」
☆トーフ・ジツLv3:カトン扱い、粘着性白濁液を投射
★トーフ・ジツ・マスタリー:精神力消費なしでジツ発動、消費すれば2連発
★トーフ触手:ジツ値に等しい数の遠隔武器、各ダメージ1&回避ダイスダメージ2
◆ニンジャソウルの闇(カラテ+1、精神力-1):暗黒カラテ衝動「破壊衝動」

◆潜在アーチ級能力(覚醒時のみ使用):「★★★半神的存在」
 「★★★アーチ級トーフ・ジツ」「★★★即死無効と欠損部位即時再生」
 「★★トーフ肉体再生」「★★死体吸収」「★トーフ移動」「★トーフ触手拘束」

能力値合計:22(ニンジャソウルの闇によりカラテ+1)
◆忍◆
つの版ニンジャ名鑑
【ホワイトリキッド】
トーフ工場で暴動中に死んだアナキスト、スドー・ロヨタにアーチ級ニンジャ「トーフ・ニンジャ」のソウルが憑依。トーフエキスを吸収して暴走、多数のモータルを殺戮した。現在はイッキ・ウチコワシに所属。
◆殺◆

◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇🎲◇

ニルヴァーナ・トーフ社の工場ではなく、サカイエサン・トーフ社の方にしてみました。マーダーシュトロム=サンはちょい役でしたが、あの後ダークニンジャ=サンの部下扱いになったようです。ラストでシガキ=サンがちらっと登場しましたが、なんか絡んでくるかは不明です。ファイアシーフ=サンは幸い脱出に成功しましたが、DKKが5もあるうえソウカイヤでもないのでノーフューチャーです。そのうちスカウトや赤黒が来るかも知れません。

ホワイトリキッド=サンはデスドレインとかヤモトを参考に作成しました。潜在アーチ級形態でもノーカラテですが、ジツや生成装束&メンポがあるのでサンシタチーム程度ならあしらえるでしょう。倒したら「不滅」で復活して今回のような災厄をもたらします。ソウカイヤやザイバツばかりでもなんなのでテツオに拾わせてみました。ホワイトなのにレッドになってしまいそうです。アナキストはブラックですが。ウチコワシを抜けてフリーになったり、ソウカイヤやザイバツに引き抜かれる可能性もあります。

以上です。つの産のこうしたニンジャたちを、あなたは自由に活用して下さい。つのはとても喜び、あなたの記事にスキをつけたりするでしょう。

【以上です】

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