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【聖杯戦争候補作】Neo-Yakuza for Sale

「なかなか風情があって、ええとこじゃのう」

夜。ネオンきらめく歓楽街の真ん中を、一人の酔漢が歩いていく。
年齢は二十代前半。中折れ帽にティアドロップサングラス、ダボシャツにダボズボン。腹巻きに雪駄履き。口には爪楊枝代わりのマッチ棒。黒髪の短髪にゲジゲジ眉毛。背丈はそれなり、筋骨もしっかりした男だが、その顔たるや兇悪そのもの。口から出るのは広島弁。三百六十度どこから見たって、昔の任侠映画から抜け出てきたような、完全なヤクザである。しかもチンピラや三下ではない。強烈な殺気が全身から溢れまくっている。平和な日本ではなく、海外の紛争地帯にいる方がよく似合うほどの。

通行人はざわざわと遠巻きにし、彼の前に道を開ける。カメラで撮影しようとする者もいるが、ぎろりと睨まれて逃げて行く。サングラスを帽子にかけ、ヤクザは周りにガンたれながら、がに股でのたりのたりと道路を闊歩する。

「ふん、人はいまいちじゃな。健全と不健全のバランスがとれとるのはええが、どいつもこいつも軟弱じゃ。これからでっかいケンカがあるっちゅうに、こんなもんで生き残れるんかのう、こいつら」

ヤクザはぶちぶちと呟き、肩を怒らせて歩く。次第に顔が綻び、否、引き攣り、大型肉食獣じみた兇悪な笑顔を浮かべる。口角がつり上がり、歯を剥き出し、危険に輝く瞳にはぐるぐる渦巻き。気の弱い者が見れば小便をちびり、腰を抜かすだろう。

「しっかし、まあ……ようもわしをこんなとこに放り込んでくれたのうーーッ!

ヤクザが足を止め、右拳を夜空に突き上げて叫ぶ。群衆がさらに遠巻きになる。そう、彼はこの京都での聖杯戦争に喚ばれたマスターの一人だ。先程記憶が戻り、己が誰であるかを思い出したところだ。だが生憎、彼は魔術師でもなんでもない。ヤクザ、極道でしかない。しかしながらこの男は、ただの極道ではない。極道の中の極道である!

「要は、敵を見つけて殺しまくればいいんじゃな! 殺ったるわい! なにしろわしは人殺しが三度の飯とオ●コより好きじゃけぇのうーッ!!」

群衆がざわつき、警察に電話しようとする者もいる。しかし、武器も持たぬ酔漢の戯言と思い直し、そそくさと逃げて行く。

その一人が突如、全身から出血し倒れた。

数秒後、事態を認識した群衆が恐慌! 悲鳴を上げて散っていく!

ひゅん。ひゅんひゅん。ひゅひゅひゅん。風切り音と共に、群衆の手足が飛び散り、顔の皮膚がずるりと剥け、指が散らばる! 響き渡る絶叫!

「なんじゃあ?」

ヤクザが振り向く。彼は別に何もしていない。と、群衆の中から怪しい兇相の男が歩み出て来た。背は高いが猫背。異様に痩せこけ、全身傷まみれ。髪はざんばら、髭はぼうぼう。病的に黄色い顔。目つきは胡乱で、目の下に濃い隈があり、ボロボロの黒い長衣を纏う。その右手には、七本に分かれた革鞭に多数の刃を埋め込んだ、奇怪な鞭剣。これを振り回し、群衆を無造作に斬り裂きながら向かってくる!

「おどれもかい。おれも人殺しが大好きじゃ。気が合うのうーっ」

分厚い唇から乱杭歯を剥き出し、その男はそう言った。やはり全身から強烈な殺気を撒き散らしているが、ヤクザが陽ならこちらは陰。双方ともに、明らかに狂人。そして鞭剣男の方は、幽鬼のように輪郭がぼやけている。つまり、人間ではない。

対面したヤクザは……ビビらない。彼がこんなものにビビるものか。小指で耳をほじり、無言で睨みつけ、相手に先に名乗らせる。鞭剣男は陰気に笑い、念話で名乗った。下から睨め上げるような、暗い目つきで。

【おれは、おどれの手下(サーヴァント)、剣士(セイバー)の『張献忠』っちゅうもんじゃ。よろしくな、親分(マスター)よう】

張献忠。その名を知っている人は、その恐ろしさをも知っていよう。明末清初の中国で大虐殺を行った男、流賊の頭目から一地方の皇帝に成り上がった男だ。生憎、ヤクザの方には全く彼に関する知識はない。ただ中国系のヤクザであろうと思っただけだ。道路にタンを吐き、肉声で名乗り返す。

「わしは天下無敵の極道兵器、『岩鬼将造』じゃ!」

将造には、この張という男が、どうも気に入らない。自分の手下にこんな野郎をつけてくれるとは。なるほど、確かに自分は人殺しが好きだ。ヤクザやマフィアは勿論、無辜のカタギも数え切れぬほど巻き添えにして殺しただろう。しかし……こいつのように、ではないはずだ。相手を通して自分を省みるという珍しいことを、将造は少し行った。

群衆が遠巻きにする中、二人の男は睨み合っている。互いを値踏みするかのように。一触即発。足元には無惨な死体がごろごろ。

「……張よお。おまえ、なんでこいつらを殺したんじゃ」
将造が口火を切る。セイバーは暗く嗤う。
「なんで、と来たか。おどれ、それでも侠客、極道かい。道の邪魔しよったからよ。どいてもろうただけよ」
「ほうか。おかげでちいっと静かに、いや、騒がしゅうなったのう」
「ビビっとんのかい。これからお宝巡ってケンカが始まるんじゃろ。ほしたら、このシケた都(まち)の人間は、どうせ屠城鏖殺(みなごろし)じゃあ! ほうして、おれは人を殺せば殺すほど、人が苦しめば苦しむほど、魔力(ちから)を増すんじゃ! おれがやらんでも、誰かがこの都(まち)でやればのうーッ!」

セイバーが左掌を地面に翳すと、身の丈ほどある禍々しい石碑がアスファルトを割って出現した。
殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺し、殺せ! それが人の使命、存在意義じゃあ!」
凄まじい殺気に当てられ、群衆の目つきがおかしくなる。殴り合いのケンカが始まる。掠奪が起こり、石や即席の武器を手にして殺し合う。地獄絵図だ。その群衆から、死体から、ぞわぞわと魔力が煙めいて溢れ、セイバーに集まっていく……。

それを見て、将造が鼻を鳴らす。こういう手合いは、ガツンといってやらねばならん。令呪なんぞ、もったいない。サングラスを帽子から取り、ずい、と歩み寄り、顔を近づける。そしてニヤつくセイバーの鼻柱に、思い切り頭突きを見舞った!

「!?」

不意を打たれて、セイバーが鼻血を流し、うずくまる。将造はセイバーの胸を雪駄で蹴倒し、踏みつけ、見下ろし、怒りもあらわに言う。

「軍隊にいた頃、おまえみたいな人間を、よう見たよ。よほど欲求が満たされないんじゃろう、そいつらは……銃を持たせると、急に強くなりよる。 その銃がでかけりゃでかいほど、人が変わったように相手につっかかっていき! 自分を誇示したがりよる!! しかし、相手が自分以上の器だともうダメじゃ! ガタガタ震え、怯え……鳴きよる。鳴いたらしまいじゃ」
「おどれは……!」

セイバーの目に畏怖の色が浮かぶ。ただの男に言われたなら、嗤って殺していただろう。だがこいつの目は、見たことがある。天下人の目だ。闖王となり、明朝を滅ぼした、李自成の目だ。いや、あれよりも……!

「確かに、人殺しはわしの最大の楽しみじゃ。人が死ぬ時の悲鳴がわしの耳から身体中を駆け巡るんじゃ……。じゃがのう……こんなわしでも、わしなりの仁義っちゅうもんはある」

将造の目に、怒りと哀しみと、覚悟と狂気がないまぜになって浮かぶ。彼はそういう人間なのだ。

「この日本国(シマウチ)で大量の人間を死なせるわけにゃいかねえ。それだけはさせん。命をはってもじゃ。何故なら……それが日本国(シマ)を預かる首領(ドン)のつとめだからよ!」

セイバー・張献忠は、びりりと全身を震わせる。こいつは、おれと真逆だ。他人の意見や疑心ではなく、己の仁義で動く男だ。ああ、かつてはおれも、こういうどでかい侠客に、天下人に、憧れていたはずだ。力強く笑い、応える。

「……気に入ったで、親分。確かに、あんたの器はおれよりでけえ。おれの命、あんたのために使うてつかあさいや」
「おまえはわしの手下じゃろ。当然じゃ。当然わしもおまえを助けちゃる。極道一匹、命はとうに捨てとるわい」

セイバーが宝具をおさめ、殺し合いをやめさせる。将造の覇気に賭けてみたくなったのだ。将造は、セイバーに手を差し伸べる。

「おれは、弱い男じゃ。敵も大勢殺したが、身内や手下も大勢殺した。皇帝になってからは疑心暗鬼にかられて、歯止めがきかんようになった。おれが手に入れたもんじゃから、自由に殺しまくれると思うちょった。殺した。殺して殺して殺しまくった。妻も妾も、子も友も、疑わしきは皆殺し、癇に障れば何千何万と殺してきた。おれは無敵じゃと自惚れちょった。自惚れようとしちょった」

薄暗い廃ビルの中。自嘲するセイバーを、将造は腕を組んでじっと見つめている。

「……おれは、自分の手足や内臓をもいでおったようなもんじゃ。皇帝が、官吏や身内、働いて食わしてくれる人民を殺しとったんじゃ。そんな男が、天下を治められるわけがねえ。治めていいはずがねえ。気づけば、歴代の皇帝と同じことをしちょったんじゃ。いや、もっとひどいか。李自成っちゅう男は、おれは気に食わんかったが、それとは真逆をやりよった。皆殺しにはせん、税金を取らんというので、皆従った。したがよ、皇帝を自殺に追いやって都を獲ったが、治めることはできず、すぐに滅びてしもうた」

将造に難しいことは分からないが、言っていることは分かる。セイバーの語気が熱を帯びる。
「親分、大将よ。あんたは天下の器じゃ。李自成よりでかい器じゃ。おれはあんたに天下を獲ってもらいたい! じゃけえ……!」

セイバーの言葉に、将造は頷く。満面に怒りがみなぎっている。
「わぁっとる。わしは天下を獲る男じゃあ。いずれは日本ばかりでなく、世界の首領(ドン)にもなったるわい。じゃがのう。聖杯っちゅう器は、天下の器か? それでわしが天下獲って、満足するか?」

その怒気に、セイバーが震える。おお、心地好い怒りだ。
「おまえも考えてみい。わしですら分かることじゃ。聖杯っちゅう餌で殺し合いを煽って、裏でこそこそ動いちょる連中がおるわけじゃろ。さっきのおまえみたいに嘲笑って、わしらを見て好き勝手言っとる連中がな。わしにはそれが気に食わん。気取りくさって、胸糞悪い」

将造が右手で自分の左手首をつかむ。ぐいっと引っ張ると、肘から先が抜けた。義手だ。その下には、異様な鉄製の機関銃がある。彼は顔と銃口を天井に向け、大声で宣言する。

見とるか、おい! わしはおまえらに従わんぞ! 殺しはしちゃる、聖杯はもらっちゃる! そのかわり、おまえらもわしらと同じ舞台に引きずりおろしちゃるわい! 気持ちよう殺し合えるようにのう!」

宣戦布告だ。この戦場を用意した主催者に向けての、大胆極まる挑戦だ!
なにしろ彼は、超高層ビルの最上階に立て籠もる敵を、面倒だからとビルを爆破崩落させて物理的に引きずり下ろした男なのだ。やるといったらやる。

「お、親分、その腕は……」
「ああ、言わんかったかのう。わしゃ極道兵器、改造人間じゃ。左腕に機関銃、右膝にロケットランチャー、右目はレーザーサイトよ。ちゅうても、これで英霊は殺せんちゅうし、銃弾や砲弾は使い切ったら補充せにゃならんがのう。まあ腕力だけは無尽蔵じゃが……」

セイバーが力強く笑い、左手を床に翳して、先程の石碑を出現させる。
「親分、ほしたら、おれの宝具を使ってくれ」
将造が訝しんでいると、その石碑からゴロゴロと武器弾薬が転がり出て来た。弾帯に手榴弾、火炎放射器やロケットランチャーまでも。
「この『金神七殺碑』のもうひとつの効果じゃ。魔力が続く限り、親分が望む通りの武器弾薬が湧いて出て来る。あんまりでっけえもんは出んが、宝具から湧くもんじゃけえ、英霊にも効くはずじゃ。筋金入りの人殺しの道具じゃ」

それを聞いて、将造が満面の笑みを浮かべる。大型肉食獣じみた兇悪な笑顔だ。
「ほっほう、そりゃ便利じゃのう。最高じゃあ! これでわしも、英霊をぶっ殺せるんじゃな!」

まずは、カネと情報、手下、そして足だ。彼らは早速手頃な中堅ヤクザの事務所を襲い、ぶんどった。殺しはしない。今日から彼らも、日本全土をシマとする「極道連合岩鬼組」の一員だ。とりあえずの準備は出来た。

「よし、行くぞ張! 天下を賭けた大ゲンカじゃあ!」
「おうよ、親分! 地獄の底までついてくぜえ!」

【クラス】
セイバー

【真名】
張献忠@近世中国

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具B+

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
無辜の怪物:C
本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。このスキルを外すことは出来ない。虐殺鬼、殺人魔王として悪名高いが、彼が殺したとされる人数には清軍による殺戮、飢饉や疫病による死、逃亡による戸籍上の減少なども多々含まれる。とはいえ彼の近くにいた宣教師の報告などからも、実際にかなりの虐殺を行ったことは確からしい。中国史ではよくあること。このスキルと宝具の影響により、舞台となる街で死人や負傷者が増えるほど「彼の仕業」とされ、魔力が勝手に増していく。

殺戮嗜虐狂:A+
猟奇殺人と拷問が好きすぎて、人を殺さないと落ち着かないという異常な欲望。対人ダメージが増加し、対峙した人間に強い恐怖を抱かせる。同ランクの精神汚染と同様の効果も持つ。マスターはあいつなので大丈夫である。

皇帝特権:D
本来持ち得ないスキルを、本人が主張することで短期間だけ獲得できる。該当するのは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、と多岐に渡る。曲がりなりにも大西皇帝に即位しており、李自成よりは長く在位したが、国が早く滅んだためと本人の所業のせいであんまり高くない。

黄金律(兇):B
掠奪&浪費癖。他人の財産を好き勝手に奪い取り浪費する賊徒の生き様そのもの。他者から奪うことで一時的に大金持ちになれるが、身にはつかない。当初は四川に安定政権を作ろうとした形跡はあるが、相次ぐ反乱と漢中での敗戦の繰り返しで自暴自棄になり、敵に渡すぐらいならと破壊と殺戮を行った。

【宝具】
『金神七殺碑(チンシェンチーシャーペイ)』
ランク:B+ 種別:対人-対軍宝具 レンジ:1-77 最大捕捉:777

七殺碑。セイバーが建立したと伝承される石碑。高さ2m、幅1m、厚さ20cmほど。本来は『聖諭碑』といい、実物は四川省徳陽市広漢の房湖公園に現存。大順2年(1645)2月13日の落款があり、「天生萬物與人、人無一物與天、鬼神明明、自思自量(人の行いは神々が見ているぞ、自省せよ)」と刻まれている。だが後世の悪評によって禍々しく捻じ曲げられ、この宝具の文字は「天生萬物以養人、人無一善以報天、殺殺殺殺殺殺殺」と書き換えられている。「天(おれ)が万物を生んで人を養っているのに、人(民)は一善も天に報いぬ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ」という意味である。殺伐金気を司る西方の神・蓐収の力が加わり強化されている。この宝具を発動させると、周囲の人間の疑心と憤怒と殺戮欲を増大させ、無目的な殺し合いを行わせる。

また、この宝具からは、セイバーやマスターが望むままに武器や銃器、銃弾や手榴弾が出て来る。ただし手で持てるものに限り、戦闘機や戦車や巨大ロボは出せない。宝具から出た武器は英霊にも効果があり、他人に装備させることも可能だが、丸一日で消滅する。その間に誰も殺さなかった場合、武器は爆発して装備者が死ぬ。幸いセイバーとそのマスターにそうした制限はなく、ただの武器庫として活用可能である。周辺の死者が増えるほど、怨念が溜まって魔力に変換され、武器が湧き溢れる。相当数の人間が死ねば、大型兵器も出せるように進化する可能性はある。ゲッター線とか出てそう。

『屠蜀凌遅刀(トゥシュウリンチータオ)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-7 最大捕捉:77

セイバーが殺戮に用いた刀剣。対「人」特攻。完全に呪われており、セイバー以外が装備すると発狂するが、マスターはあいつなので大丈夫である。多数の刃を埋め込んだ鞭を七本伸ばし、一振りで多数の標的に斬りつけることができ、手足をもいだり背骨に沿って断ち割ったり、串刺しにしたり生皮を剥いだりできる。女性の足を切断したり、赤子を投げ上げて貫いたり、一寸刻み五分刻みにして生き地獄を味わわせたりするのが大好き。標的が苦しめば苦しむほど、標的を殺せば殺すほど、魔力を吸い上げ強力になる。自分を傷つけても魔力が高まる。

【Weapon】
宝具である『屠蜀凌遅刀』。また『金神七殺碑』から様々な武器を湧き出させる。

【人物背景】
明末の農民反乱軍の指導者。字は秉忠、号は敬軒。万暦34年丙午(1606)生まれ。陝西省延安衛柳樹澗堡(現陝西省楡林市定辺県劉渠村)の出身。もと軍籍にあったが法を犯して免職され、崇禎3年(1630)に王嘉胤が反乱を起こすと、米脂でこれに呼応して挙兵、八大王を自称した。背が高く顔が黄色かったので「黄虎」と呼ばれた。

崇禎4年に王嘉胤が死ぬと一旦官軍に降ったが、5年には背いて王自用に属し、王自用が死ぬと闖王高迎祥と合流した。7年には湖広から四川へ攻め込もうとしたが、女将軍の秦良玉(63歳)に敗北を喫している。8年には高迎祥と共に東方へ進出し、山西、河南、安徽を転戦、明朝の祖陵を焼いた。9年に高迎祥が敗死すると、闖王を継いだ李自成と別れ、長江流域を荒らし回った。10年、湖広に侵入して襄陽を囲んだが、明の総兵官左良玉に破れて負傷し、11年再び明に降る。しかし12年にはまたも離反。湖広と四川の境を転戦し、14年には襄陽を陥落させ、16年には武昌で「大西王」を称した。長沙に進軍して免税三年を約束し、従う者はますます増えた。

17年(1644)に大軍を率いて四川に攻め込み、秦良玉はこれを阻もうとしたが衆寡敵せず、敵中の要害に孤立して抵抗を続けた。張献忠は同年8月に成都を陥落させて秦王を号し、国号を「大西」として大順と建元。次いで皇帝を称し、成都を西京と号した。

この頃、李自成は北京を落として明朝の崇禎帝を自殺に追い込んでいたが、清の入関によって追い出され、華北は清の手に落ちつつあった。焦った張献忠は陝西省を確保しようと四川から漢中へ攻め込むが、二度に渡って敗北を喫した。張献忠は動揺を収めようと厳しい粛清を行ったが、余計に民心は離れた。冠婚葬祭の儀礼の制限、五日一験・三日一点といった厳罰つきの人民点呼制度、成都城内にスパイを放って市民の行動を監視するといった政策も行った。

それでも相次ぐ反乱と清の圧迫で疑心暗鬼に陥った張献忠は無意味な虐殺に走り、大順3年(1646)8月には西京及び四川を放棄して陝西に向かった。この時「おれが手に入れたのだから、他人のために一人でも生かしておくものか」と大虐殺を行った(屠蜀)が、部下の劉進忠が裏切り、清軍を迎え入れた。粛親王ホーゲ率いる清軍は陝西から漢中を経て四川に入り、10月に西充の鳳凰山(四川省綿陽市塩亭県)で張献忠と戦闘、これを射殺した。享年41歳。ホーゲはそのまま四川の大部分を平定したが、李定国・孫可望・劉文秀・艾能奇ら張献忠の残党は雲南へ逃れ、南明と結んで清への抵抗を続けた。

張献忠とその軍勢は残虐で、殺戮や拷問を好んだ。四川に入る前から、陥落させた城を住民ごと焼き払ったり、住民数万人を皆殺しにして屍体を川に投げ込んだり、命を助ける代わりに手足や耳を切ったり、目や鼻を潰したり削いだりは当たり前であった。四川を奪って皇帝になると明朝の官制に擬した官僚組織を作り、善政を敷こうとした。だが貧民出身であったことから官吏や知識人を憎悪しており、虐殺が始まった。

まず官吏を集めて犬を連れ出し、犬が誰かの臭いを嗅ぐと「天殺」と言って殺した。科挙を行うと言って知識人数万を集めると、身長四尺(120cm)以下の者以外を皆殺しにした。生き残ったのは子供二人だけであった。武科挙を行うと言って千人あまりの若者を集め、全員を兇猛な悍馬に乗せ、配下の兵士らに銅鑼・太鼓・大砲を鳴らさせて落馬させ、馬に踏み殺させた。経穴を示した人体模型に紙を貼って穴を隠し、医者を集めて正確な経穴に針を刺せと命じ、少しでも間違えたら容赦なく殺した。僧侶に布施を行うと言って数万人を集め、十人ごとに縄で縛って皆殺しにした。呼び出しに応じない者は勿論殺された。

殺戮は身内にも及び、後宮に集めた女たちの纏足を切り取って山のように積み上げ、頂上には愛妾の足を切って載せた。部下に命じて自分の妻子を皆殺しにし、翌日妻子を呼ぼうとしたがいなかったので、部下に「何故止めなかった」と怒って皆殺しにした。友人たちを招いて宴会を開いた後、彼らの帰り道に刺客を送って殺し、その首を持ち帰らせて卓上に並べ、話しかけて笑った。四肢の切断を「匏奴」、人体を背骨の位置で縦割りに切り離すのを「辺地」、空中に投げ上げ、背を槍で貫くのを「雪鰍」、子供たちを火の城で囲んで炙り殺すのを「貫戯」と呼んだ。

また皮剥ぎの刑を好み、生きた人間の後頭部から肛門までを切り、左右に皮を剥がせた。受刑者は蝙蝠が翼を広げたような姿で一日近く苦しんだ末に死んだ。皮剥ぎの最中や執行直後に死んだ場合、あるいは剥がした皮に少しでも肉片が付着していた場合は、執行人が皮剥ぎに処された。張献忠の養子であった孫可望は皮剥ぎの名人で、南明に降った後も皮剥ぎを繰り返し、剥いだ皮に草をつめてぬいぐるみにしたという。

万暦6年(1578)に四川省の人口は310万あったが、この大虐殺とその後の戦乱・疫病・飢饉により、康煕24年(1685)には1万8090人に激減した。40万人を数えた成都の人口は20戸まで減り、都市は草が生い茂って虎や豹や熊が闊歩し、人民は高楼に逃げ延びて命を繋いでいたという。共産党政権下では「漢族農民起義の英雄」に人民虐殺の罪を負わせないよう、異民族にして封建主義勢力たる清軍がなすりつけたのだとする主張もなされているが、清と無関係なイエズス会宣教師や体験者の報告などから、実際にかなりの規模で張献忠による組織的虐殺が行われたことが明らかになってきている。虐殺が可能になったのは、皮肉なことに彼の政権が当初はかなりの支持を得ており、統治機構が整備されていたせいであるという。

清の康煕帝は三藩の乱(1673-1681)の頃から四川への大規模な移民誘致を行ったが、特に湖広からの移民が多かったので、これを「湖広填四川」という。明初には江西から湖広への大規模移民「江西填湖広」が起きているため、現代の四川人の多くは江西人の末裔である。こうして張献忠の虐殺の影響は現代にも及んでいる。

バーサーカー、アサシン、アヴェンジャーの適性もある。セイバーとしては並み以下ながら、死傷者が増えれば魔力が勝手に増す。しかもマスターがあいつである。

【サーヴァントとしての願い】
親分(マスター)に天下を取らせたい。

【方針】
親分に従い、武器弾薬を補給してサポートする。殺しの許可が出たら喜んで殺しまくる。敵は苦しめ苛んで殺し、魂喰いをして魔力に変える。大量の兵士や使い魔を呼び出す術や宝具など、彼にとってはボーナスゲームに等しい。

【マスター】
岩鬼将造@極道兵器

【Weapon・能力・技能】
重武装サイボーグヤクザ。左腕に小型機関銃、右膝にロケットランチャー6発を内蔵。右目には自動ロックオン機能付き高性能義眼を搭載。左腕の武器は銃弾をも弾く高性能な義手で隠しており、鞘のように義手を抜いて露わにする。アタッチメントを取り替えることで重機関銃や火炎放射器にもなる。
銃弾や砲弾には限りがあるため、どこかで調達せねばならないが、幸いにもサーヴァントの宝具で補充可能。通常のドスやハジキも装備している。だが真に恐るべきは素の身体能力、生命力、戦場での勘、悪運、恐れ知らずの狂った精神力、そして馬鹿力である。時空の彼方から石川先生のご加護があるかもしれない。

【人物背景】
石川賢の傑作漫画『極道兵器』の主人公。モデルは任侠映画『仁義なき戦い 広島死闘篇』の大友勝利、名前の元ネタは広能昌三か。西日本で一、二を争う武闘派極道「岩鬼組」の御曹司。許嫁が22歳で多分同年代。余りに過激な性格から父に勘当され、海外で傭兵となり殺戮の日々を送っていた。父が死んだと聞かされても嘲笑っていたが、父を殺した男・倉脇の背後に世界征服を狙う「デス・ドロップ・マフィア」が存在すると知らされる。新たな抗争を求めて帰国した彼は倉脇のもとへ攻め込むが、デス・ドロップ・マフィアとの戦いで重傷を負う。そこへ現れた男・赤尾により、彼は「極道兵器」に改造されたのである!

人呼んで「狂犬(マッド・ドッグ)」。サイボーグ化する前から「極道兵器」を名乗る。大胆不敵で傲岸不遜、兇暴・兇悪・破天荒な戦闘狂。敵からよく「くるってる」と言われる。趣味はケンカと人殺し。人が死ぬ時の悲鳴が大好きで、捕虜は吊り下げて皆殺しにし、歯向かう奴らにはとてもいい笑顔で機関銃やロケットランチャーをぶっ放す。超高層ビルの最上階に人質と共にいる敵に対しては「お前が降りてこい」とビルに爆弾を仕掛けて崩落させ、ミサイルや核兵器による脅しにもビビらない。勝手に改造された際も(痛みで泣いてはいたが)「よくもこんなスバラシイ身体にしてくれたのう!最高じゃあ!!」と大喜びし、右目を潰されても「箔がついたぜ」と怯む様子もなし。身体能力も高く、銃弾の嵐に突っ込んでも「弾なんぞ怖いと思うから当たるんじゃあ!」と叫んで実際当たらず、敵将の顔面に兇悪なスパイクシューズで蹴りを叩き込む。二丁拳銃の一丁で銃弾を弾きつつ敵を撃ち、崩れるビルの斜面を敵をボードにして滑り降り、核ミサイルにロデオしてビルに突っ込み……とやりたい放題。

敵がいればカタギを巻き込もうと構わず攻撃し、パトカーやビルをふっ飛ばしても平然としているが、一応は積極的にカタギを皆殺しにしたいわけではない。日本国を自分のシマと考えており、シマを預かる首領(ドン)の務めとして、シマウチでの無差別大量殺人は命をはってもさせないと宣言してはいる。敵は皆殺しにするだけである。狂人ではあるが人間味に溢れる人物でもあり、少年時代の恩人で親友の安否を気遣い、肉親の泣き落としには弱く、婚約者や子分たちを信頼し大切にする(盾にはするが)立派な任侠者である。頭は悪いが本質を掴み、度胸や覚悟が足りない者には極道者のなんたるかを激しく説き、人間性や社会の有り様にも一家言を持つ男。作者は彼を「最も動かしやすくてお気に入り」と呼んだ。また単なる重武装サイボーグヤクザながら「石川作品最強、根性が違う」との公式発言があるので、ゲッターエンペラーやラ=グース、時天空より強い(「進化」の末にそうなる?)とも言われる。連載が続けば脳みそごとふっ飛ばされて全身が機械に置き換えられる予定だったというが、彼なら悩むことなく大喜びするであろう。OVA『真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ』では、なんと内閣官房長官として彼の名が。実写映画版『極道兵器(YAKUZA WEAPON)』では坂口拓が演じた。

【ロール】
風来坊の極道。ついさっき中堅ヤクザの事務所をぶんどって組長になり、「極道連合岩鬼組」を立ち上げた。

【マスターとしての願い】
主催者も引きずり下ろしてぶっ殺し、元の世界へ帰って天下を取る。

【方針】
ケンカは先手必勝。新興ヤクザとしてシマを広げつつ、敵マスターやサーヴァントを発見したら率先してぶっ殺す。手を組める奴がいれば組む。

【把握手段・参戦時期】
原作(全3巻)。石川賢作品入門に最適。絶版なので手に入れにくいが、電子書籍があるので是非とも天下万民に読んで頂きたい。作品コンセプトは「任侠映画文体での仮面ライダー」。物語自体は掲載誌ごと虚無っているが気にしない。実写映画版もとってもB級でグッド。右目がレーザーサイト化しているので、2巻「人間核野郎編」「鉄男編」以後の時系列での参戦。

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ステータス表が長すぎた。まあそういうやつだ。秦良玉はFGOで出たそうだが、こいつがFGOとかに出てもいいだろう。さてマスターは、と探したところこいつが出たので、侠客としての格で従えさせた。動画は以前真の男のあれで出したな。まあいい。こいつらを野放しにすれば地獄絵図になるので多少歯止めはきかせた。どのみち地獄絵図になることに変わりはなさそうだ。エピロワ第三部では野良英霊なので、やりたい放題に殺しまくるサンシタにした。

【続く】

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