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【聖杯戦争候補作】Temple of the Black Pharaoh

アラもう聞いた?誰から聞いた? そのウワサ

もっぱらのウワサ 皆ご存知 知らないなんてオクレテル!
ウワサによればね…

(誰もほんとは知らないの その本質がなんなのか
 誰が流して、誰が得する? 信じるばかり?疑わないの?)

ジークハイル!


夕暮れの見滝原。とある博物館の一室で、その男は不意に記憶を取り戻した。今までの平和な人生が偽りで、その記憶の方が本物だと直感する。
これから争奪するのは『聖杯』だ。万能の願望器。世界を手に入れることも可能な聖遺物。

「ふふ…………くっくく……ははは……」

よかろう、手に入れてくれる。この俺が世界を支配するのは当然だ。そう言わんばかりの凄惨な嗤い。

彼は……30年近く前に死んだはずの男。もしも彼を、彼の名を知る者がいれば、驚愕するだろう。武器を向ける者も、ひれ伏す者もいよう。その男がなぜここに? 理由は簡単、ソウルジェムだ。あらゆる時代、あらゆる時空にランダムにバラまかれたそれは―――よりにもよってこの男を、死の運命から救い出した。そればかりか、彼にチャンスを与えてしまった。


人間は死にたがるよりは、生き続けたがる動物である。生きるためには食べなくてはならない。そのために『道具』をつくった。

―――石器、骨角器、棍棒、槍、投槍。生きるための武器だ。

ところが今度は道具の性能がよくなりすぎ、人口が増え始めた。

―――例えば『石器時代の自動小銃』と呼ばれた投槍器。

当然、食べ物が足りなくなる。さて、どうするか。もちろん「法律/社会」をつくる。

―――動物を狩猟するための道具を、同じ人類に向けて、共同体を害する暴力を抑制する。

その結果、どうなるかというと……法律の「効率の良さ」でもって、どのタイプの法律が生き残るかの勝負になる。理想主義者なら「良い法律が残る」と言うだろうが、実は違う。残るのは「他人をたくさん操る法律」である。

―――暴力による支配だけでは限界がある。

それは……たくさんの人間を、宗教や文化やら噂やらといったもので「何かに信じこませ、熱中させ、考える時間を与えずに」あやつり、動員させ、
彼らが働いた結果を「自分のほうが偉いからと信じ込ませることによって」全部かすめとるシステムである。

―――魔術、神話、伝統、倫理、道徳、思想、カリスマ、王、神。国家、国民、企業、金融、マスコミ、インターネット。社会という大いなる詐欺。

これを、古代エジプトの現人神王にならって『ファラオ・ゲーム』と呼ぼう。

ファラオ・ゲームの「ファラオ」は、上手になればなるほど、使われる者=駒に比べて知識の量がケタ違いに大きくなり、またこれを操作できる。

駒は、ファラオが何を目指しているのか、何が彼にとって『勝ち』なのかさえ、情報操作によって解らなくさせられてしまうので、勝ちようがない。他の法律も、ファラオ・ゲームを前にしては、遅かれ早かれ倒されて、その駒になってしまう。なぜなら両者が対決したとき、動員効率の良いファラオのほうが結局は勝つからである。要するに人類の歴史とは、より優れたファラオ・ゲームをめざす道のりであったといえる。


……これを開催している連中は、気に入らん。要は俺を手駒にして、遊んでいるも同然だからな。『聖杯戦争』はまさにファラオ・ゲームだ。ウワサを流し、情報を握っているのは主催者どもだ。奴らはデスゲームを見て楽しみ、優勝者に賞品を与えるだけの暇な連中か? 馬鹿め、そんなものであるはずがない。当然、奴らには奴らの目的がある。たとえば、殺し合いによって作られた聖杯を総取りするとか、だ。

しかしこのゲームは、前提条件を変えれば容易に崩壊する。手駒が盤面をひっくり返せる。聖杯は手に入れる。その上で奴らをも出し抜き、俺が奴らを操って、全てを手に入れてくれよう。

ここは蓬莱学園ではない。知力こそあるが、権力、武力、財力は今の自分にはない。裕福な旧家の出身ということになっているが、所詮はただの学生。
『応石』を介して人を操る『傷石』も失われているが……手元にあるのは『ソウルジェム』という、別種の宝石。

内側に魂を封入・保存し、これに七騎の英霊の魂を納めれば『聖杯』となる。しかし、それで即座に現世へ還れるわけではない。聖杯に願えば帰還できようが、それでは意味はない。聖杯はおそらく「幾つか」作れる。それをどう用いるか。そして聖杯を作れそうな連中から、どうやってそれを巻き上げるか。

―――まずは、俺の手駒である英霊を喚ぶとしよう。いかなる奴が来るか。


【我は汝… 汝は我… 我は汝の心の海より出でし者… 力を貸そうぞ…!】

闇の中に言霊が轟く。手の中の宝石が輝き、金色の粒子が空中に凝集、黒い影を形作る。現れ出たのは―――ダークスーツに身を包んだ長身の男。黒髪短髪でサングラスをかけ、顔の左右には裂傷。ヤクザの類か。あるいは現世風の装いをした悪魔の類か。

「……お前が、俺の従僕か。まずは名乗るがいい」
「そのようだな、マスター。俺は『神取鷹久(かんどり・たかひさ)』。クラス名は……『アルターエゴ(もうひとりの自分)』だ」
「知らんな。一体誰の『アルターエゴ』だという」

アルターエゴ・神取は、サングラスを外す。眼窩はぽっかりと空いており、眼球のない闇だ。
「フフ……俺の『ペルソナ』であった存在、『ニャルラトホテプ』。俺はその化身だ」
「ほう! かの邪神か! それは心強い」
口角を吊り上げる。自分に相応しい、強力なサーヴァントというわけだ。

「俺は『南豪君武(なんごう・きみたけ)』だ。よろしく頼む」

神取のステータスを確認し、南豪は大いに満足する。なかなかの当たりだ。人を騙し、利用するには、もってこいの能力だ。


「マスター。俺はニャルラトホテプの傀儡に過ぎぬ男。聖杯は君にやろう。好きにするがいい」
「欲のない奴だ。いや、俺がそうすることが、かの邪神の思惑に沿う、ということかな」
「その通りだ」

南豪は至極気分が良さそうだ。神取は虚無的な表情で、それを見る。
「……言っておくが、君は俺に似ている。ということは、ニャルラトホテプにも似ている。君の行動はきっと、破壊と殺戮と破滅と狂気への道行きだ。それが奴の望みなのだからな」

神取は自らの本質について呟く。覚悟を試すように。
「俺を操る『ニャルラトホテプ』は、クトゥルフ神話にいうあの邪神そのもの、ではない。人類の集合的無意識に潜むネガティブマインド、悪意、破滅願望そのものだ。似たようなものだろうが。その目的は、人類を嘲笑い、苦しめ、自滅させること。人類を『支配』することは、その手段に過ぎない」

南豪にも、それは感覚的に分かっている。自分がここに生きていることは、ニャルラトホテプの仕業だろう。あるいは……自分自身、ニャルラトホテプが―――人類が生み出した影ではないか。神取のように。記憶はあるが、かつての自分とは違うのかも知れない。それでも、それでも。

南豪は嗤う。

「悪くないな。全人類の悪意を飲み込めんような貧弱なエゴでは、世界征服など出来まい!」


空に瞬く黄金の星に
止まった刻は動き出す

享楽の舞
影達の宴
異国の詠

贖罪の迎え火は天を照らし
偶像の咆哮はあまねく響く

冥府に輝くは聖なる杯
天上に輝くは聖なる骸

天に昇りて星が動きを止める時
魔法の乙女の鼓動も止まる

後に残るは地上の天国
そして刻は繰り返す

【クラス】
アルターエゴ

【真名】
神取鷹久@ペルソナ2罰

【パラメーター】
筋力C 耐久C 敏捷C 魔力EX 幸運D 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラス別スキル】
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。事実上、現代の魔術師では傷をつけられない。

狂気:EX
詳細不明。理性や人倫による枷が外れている。攻撃力を上昇させるパッシブスキル。彼の「本体」は、存在自体が狂気そのものであり、さらにそれを周囲に無遠慮にばら撒く混沌そのものである。

正気喪失:EX
深淵より滲み出た狂気は、人間の脆い常識と道徳心をいとも容易く崩壊させる。敵全体を恐怖させ防御力を下げる。

【保有スキル】
幻術:A
人を惑わす魔術。精神への介入、現実世界への虚像投影などを指す。Aランクともなると精神世界における悪夢はもちろん、現実においても一つの村程度の虚像を軽く作りあげ、人々を欺く事ができる。「陣地作成」スキルも包含しており、ウワサ(言霊)や魂喰いで得た魔力を用いて幻の城「デヴァ・ユガ」を作り上げる。

反骨の相:EX
生粋のトリックスター。あらゆる権威を否定し嘲笑う無法者。何者にも従わず、己の欲することを行う虚無の道化。カリスマや皇帝特権等、権力関係のスキルを無効化し、逆に弾き返す。令呪についても具体的な命令であれ決定的な強制力になりえない。このクラスになると「精神異常」も含まれ、虚言癖あるいは典型的なサイコパスとなる。契約と禁忌に理解を示さず、平然と誓いを踏み躙ることができる精神性を持つ。他人の痛みを感じず、周囲の空気を読んだ上であえて読まない。精神的なスーパーアーマー能力。正確には彼ではなく、「本体」が持つスキル。

深淵の邪視:EX
深淵の闇を覗き、また覗かれてしまった者の末路。その眼は変貌し、眼球のない暗黒の眼窩となった。暴力、威圧による恐怖ではなく、あくまで相手自身の内側にある"未知への恐れ"を沸き立たせるもの。ロストサニティ。敵全体に恐怖を与え、目の前の人間の欲望や真理を見抜き、暴きたてる。

【宝具】
『神気取不滅ノ暗黒(ゴッド・カンドリ)』
ランク:EX 種別:渾沌宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

アルターエゴのペルソナ。ガワが割れた仏像の姿で、黒くて吸盤のついたアレがニャルっとはみ出ている。「ガルダイン」「ジオダイン」「ザンダイン」「刻の車輪」「不滅の黒(全員の体力半減)」「刹那五月雨撃」などを放つ。人類のネガティブマインドの化身であり、周囲の人心が不穏になるほど魔力を増す。また「ウワサを現実化させる」能力を持つ。アルターエゴが戦闘不能になると、本体を乗っ取って異聞録での姿になったり、這い寄る混沌になったりする。

【Weapon】
宝具と日本刀。

【人物背景】
ゲーム『女神異聞録ペルソナ』及び『ペルソナ2罰』の登場人物。CV:小杉十郎太。11月8日生まれ。血液型はA。身長182cm、体重71kg。名家の出身で、聖エルミン学園元生徒会長。20歳でオックスフォード大学を卒業し、28歳でSEBEC日本支社長に就任。実はペルソナ使いであったが、自らのペルソナ『ニャルラトホテプ』によって心の闇につけ込まれ、乗っ取られてしまっていた。物質転移装置「デヴァ・システム」と謎の少女「あき」の力を用いて現世を支配し、人類抹殺を目論んだが、主人公たちに倒される。

『ペルソナ2罰』では秘密結社「新世塾」幹部の一人で、「神条久鷹」の偽名を使い、須藤竜蔵の秘書をつとめている。ペルソナの力を欲した竜蔵が「噂の力」で復活させたとされ、眼球のない眼窩をサングラスで隠している。実際はニャルラトホテプ(邪神そのものではなく、人類のネガティブマインドの化身)によって作られた偽物である。己がニャルラトホテプに魅入られた者であると自覚しており、単なる駒に過ぎない新世塾に忠誠を誓うように見せかけながら、その先にある事件の本当の意味を知り、障害となる役割をあえて演じている。「狂気に飲まれた」存在なのでフォーリナーではない。

【サーヴァントとしての願い】
なし。ニャルラトホテプの願いは……?

【方針】
聖杯を獲得する。自ら戦うことは控え、他人を操って戦わせる。
まずは街に流れるウワサを利用し、不安を養分として魔力を蓄える。

【把握手段】
原作。

【マスター】
南豪君武@蓬莱学園シリーズ

【Weapon・能力・技能】
なし。悪魔的カリスマと話術、知略と行動力によって人心を誑かす。

【人物背景】
遊演体によるPBM(プレイバイメール)『ネットゲーム90 蓬莱学園の冒険!』に登場した悪役NPC。中村博文のイラストでは黒髪を真ん中分けにした切れ長の目の美形で、額にほくろがある。学園内に絶大な力を持つ四大家系「四天王家」の血筋。

1971年(昭和46)7月5日、米国に生まれる。蓬莱学園に入学後、すぐさま非常委員会生活指導(SS)本部に入部する。これは大正時代に発足した整理整頓(SS)委員会、終戦直後に改組された生活指導(SS)局の流れを組む政治組織で、70年台以来学園を支配していた。南豪は己の血筋と悪魔的カリスマを武器に副本部長の地位にのし上がる。のち本部長の風間神平を愛人宅で暗殺し、本部長職を簒奪。生活指導本部を私兵集団に変え、機械化部隊「武装班(武装SS)」を組織、学園を事実上の独裁支配下に置いた。その真の目的は、蓬莱学園に伝わる「地球最後の秘宝」を独占し、世界を支配することであったという。

1990年、犀川静がSS解体を公約に生徒会長に当選すると、これを不服とした南豪は突如として「生活指導(SS)委員会」を設立。非常委員会を有名無実とし、自らを第一生徒官に任命して、協力体制にあった査問委員会と共に戦車部隊等の武力による学園クーデターを引き起こした。これが「90年動乱」の一幕「6・4内戦」の始まりである。

だが第16SS機動大隊隊長であったアブラハム・カダフィ、第二生徒官離修竜之介らが離反し、SSは学園中央部占拠に失敗。新生徒会勢力とSS勢力による大規模な武力衝突により、学園全土は戦火に包まれた。のち南豪は愛人であった神代鏡子に刺殺され、SSは求心力を失い瓦解。一連の内戦による学園生徒の死者は5000人から1万人に及んだ。この後、生活指導委員会は公安委員会などに吸収・合併されたが、SS残党は現在も南豪を神格化して活動を継続している。異母妹を含め何人もの女性を侍らせ妊娠させており、ご落胤伝説も多い。南豪本人も容姿や経歴を変えて生存しているとも噂されている。

父から受け継いだ「ファラオ・ゲーム理論」を振りかざす悪の独裁者。人間性が全く欠如しており、独善、利己、権力欲のかたまり。「根っからのイヤな野郎。信念のある高貴な悪ですらない、無責任と自信過剰の権化」と評される。

【ロール】
高校3年生。裕福な旧家出身。

【マスターとしての願い】
世界征服。

【方針】
聖杯を獲得する。手段は問わないが、戦闘はなるべく他人に行わせる。

【把握手段】
「90年動乱」を纏めた『蓬莱学園の復刻!』等。現在入手は困難。webで情報を集めるか、最寄りの蓬莱学園関係者に聞いてみよう。

【参戦時期】
「6・4内戦」の終盤。何らかの理由でソウルジェムを手にした。

◆◆◆

エクストラクラスで残ってるやつがフォーリナーとアルターエゴぐらいだった(ビーストは禁止)ので、どうしようかと思って考えたらこいつがいた。我は汝、汝は我。ニャルラトホテプのフォーリナーは京都聖杯に出したので今度はアルターエゴだ。さてマスターはと探すとこいつがいた。おれはあまり詳しくないが、調べたところなかなか面白いやつで、名前も南条に似ている。そしてファラオ・ゲームだ。ブラック・ファラオ。まさにこいつに相応しい、となった。音楽も気に入っている。最後のポエムはペルソナ2の「マイアの託宣」のジョジョめいたもじりだ。

さて、これでおれが亜種聖杯に投下した主従は、いまのところ全部だ。また募集があって暇なら投下しなくもない。おれのアーカイブはまだまだあり、次回からは……お楽しみに。

【ひとまず終わり】

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