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【聖杯戦争候補作】United We Stand

ライダー。おれの望みは――――『おれのおやじを殺す』ことだ」

夕刻の自室。喚び出したばかりの己のサーヴァントに望みを問われ、学生服の男、『虹村形兆』は、そう告げた。万能の願望器にかける望みとしては、あまりにささやかな、個人的な願い。

ライダーは少し沈黙した後、口を開く。
「……恨みでも、あるのか」

無表情のまま、ふん、と鼻を鳴らす形兆。見知らぬ男だが、これから命を託す相棒だ。しっかり説明しておかねば、相手も納得はできまい。特に善良な奴であれば。手の中の宝石、ソウルジェムを弄びつつ、答える。

「恨みねえ。なくはねーなあーッ。おれがガキの頃にでけー借金抱えて、お袋は病気で死んじまった。いつもイラついてて、理由もなくおれや弟を殴ったよ……。完全に負け犬のクズだった……」

形兆は俯き、吐き捨てる。狭くはないが、そう広くもない家。一人暮らしの身ながら、きちんと整理整頓されている。ここに、この見滝原に、彼の父親や弟はいない。母親も。親の遺産で生活しているという点だけが同じだ。

「しかし……ある時から、急におやじの羽振りがよくなった。後で知ったことだが、『DIO』って男の手下になったせいだ。だが、いいことばかりじゃあねえ。そのDIOがくたばったら、おやじは……不死身の化物になっちまった。知能は犬並みで、体はグチョグチョでよ。DIOの……『吸血鬼』の不死身の細胞が、脳ミソに埋め込まれてたせいらしい。自業自得さ」

ライダーは黙って聞いている。吸血鬼。不死身。自分が英霊という存在になっていることからすれば、あり得ない存在でもなかろう。

「それから10年間、おやじはそのままさ。殺そうとしても絶対に死なねえ。あのまんま永遠に生きるだろう。だからおれは、あのおやじを『フツーに』死なせてやりてえ。家族としてな。いや、そうしなけりゃあ、おれ自身の人生が始まらねえ。おれはそう思ってる。生まれつき几帳面なタチでよ、物事にはきちっと始末をつけてえんだ。納得してえんだ」

ぽつりと、ライダーが尋ねる。
「治す、のでは、ダメなのか」
「治せたらな。そうしてもいい。――――おれ個人としては、殺してやりてえがな。とにかく、望みはそれだけだ。殺し合いで得られる聖杯ってのも、どうせろくなもんじゃあねーだろーし、欲かいて無理に手に入れることもねーかもな。どのみち、おやじのいる元の世界へ戻らにゃあなるまい。手間のかかる弟もいるしよ」

形兆は話を終え、ライダーに無言で顔を向ける。ライダーは……髭面を苦悩に歪ませ、拳を握りしめている。
「……お前も、家族という鎖に繋がれているのだな」
「ほう?」
「お前も不幸だが、俺から見れば幸福だ。お前から見れば、俺は幸福に見えようがな」
「不幸自慢をしてるんじゃあねえ。さっさとあんたが何者かを教えりゃあいいんだぜ、ライダー。真名だけでもいい」

ライダーは無言で右掌を形兆に向け、思念を放った。
形兆の目の前が暗くなり、ライダーの生涯が……神話が、英雄叙事詩が展開する。

古代インド。ライダー……『バラーラデーヴァ』は王族に生まれついた。彼の父本人は王になれず、その弟、ライダーの叔父が王位にあった。叔父が死んだ時、叔父の息子、ライダーの従弟も生まれた。父は王位を継げず、その妻、ライダーの母が国政を執った。ライダーと従弟は兄弟として育てられ、どちらが王位に相応しいか比べられる日々が始まった。

母は優しくも厳しく、公平だったが、父は彼をえこひいきした。何が何でも彼を王位につけようとした。だが、彼の弟……『アマレンドラ・バーフバリ』は、彼より遥かに優秀だった。父と彼は策略を巡らし、弟が王座につけぬようにした。弟も王座にはこだわらぬ男だった。彼は王位についたが……国民は彼を望まなかった。父と彼は焦り、再び奸計を巡らして弟を排除した。母と弟を殺し、弟の妻を監禁して、ライダーは王位を安泰とした。

だが……。

眼の前に、弟が立っている。若々しい、あの時の姿のままで。俺に怒りを向け、拳を握って立ち向かってくる。そうだ、そうしろ。俺と闘え。俺は今度こそ負けはせぬ。人である俺は、神であるお前に、負けはせぬ。この時を待っていた。

断崖を登り、城壁を飛び越え、奴が来た。奴が来た。囚われの母を、妻を、取り戻すため。復讐のために。暴君から王国を取り戻すため、奴が来た。生まれ変わった、奴が来た。俺の子を殺した、奴が来た。

俺は! お前を打ち倒す! 乗り越える! そうしなければ、俺は真の王になれぬ! さもなくば、俺を殺せ! 殺してくれ! 俺をこの業苦から、解き放ってくれ! 神よ! 弟よ!

数分が過ぎ、形兆はライダーの事情をおおむね理解する。一言では語り尽くせぬ、複雑な事情を背負っていたようだ。
「……なるほどな。おれの弟は無能でアホだが、あんたの弟は優秀過ぎたってわけだ」
「ふん。俺が英霊となっているなら、当然弟もだろう。弟の妻や、その子、俺の母もなっておっておかしくない」

ライダーが腕を組み、嗤う。形兆も無言で同意する。確かに、それほどまでに凄まじい連中だった。インド神話には詳しくないが、まさに神話伝説の英雄そのものだ。
「そうすると、あんたの望みは何だ? 生き返って、今度こそ弟を超える王になることか? だとしても、おれは別に構わねーが」

ライダーは目を閉じ、鼻から息を吹き、首を振る。
「違う。俺はもう、二度と王になどなりたくない。王族に生まれたくもない」

しばしの沈黙。形兆は無言で待つ。ライダーが再び目と口を開く。
「……俺は、弟と……弟の息子と戦って、敗北し、死んだ。俺自身のカルマと因縁は、それで清算されているはずだ。死後も縛り付けられて使役される身になるとは腹も立つが、どうしようもなかろう。これはこれで、俺のカルマだ」

カルマ。業、か。己が納得するために随分人を殺した。おれはたぶん、ろくな死に方はすまい。形兆はそう考える。
「……英霊ってのは、どっかに登録された情報から引っ張り出されてくるんだろ? つまりあんた自身の魂は、既にどっかへ輪廻転生してんじゃあねえか? インド人ならよ」
「そうでもあろうな。そうしたわけで、俺に聖杯にかける望みはない。マスターであるお前の命令に従い、護り、敵と戦おう。それでいいな」
「ああ。助かる。第一目的はおれの帰還。シンプルになったな」

ふ、と互いに微笑む。肩の荷が降りたといった表情だ。
「こちらも気が楽で助かる。しがらみを背負わず、一人の戦士として戦えるのだからな。無論やるからには真剣にやるが」
「おれには身を護る程度の能力はある。だが英霊を相手取るにゃあ不足だろう。その時は存分に力を振るってもらうぜ、ライダー」

改めてステータスを確認したところ、ライダーの能力はなかなかのものだ。
戦闘力も知能も水準以上。敵に無用な情けをかけるタイプでもない。暴君であったとは言え、敬意を払うに足る人物だ。ただ……少々、精神的な弱さが見える。彼があのような死を遂げたのも、因果応報とは言えよう。

「――――あんたの生涯を見て、おれが偉そうにこう言うのもなんだがよ」

ぽつりぽつりと、形兆が呟く。顔を合わせずに。
「人は『成長』してこそ生きる価値がある、と思っている。前よりも強く賢くなること、過去を反省して未来に活かすことだ。おれの弟はアホで、無能で、おつむが成長しねえ。そのうちマシになるとは思うんだがな。おやじは……あれ以上成長も変化もしねえ。しても困るが。だから、殺してやった方がいいと思ってる。余計なお世話かも知れんがな。おれは……さあな、生きる価値があるのかどうか。おやじをどうにかしねえことには決められねえ」

ゆっくりと、ライダーに顔を向ける。目を合わせる。
「あんたは、どうかな。生きてた頃よりゃあ、成長してくれるといいんだがよ」
「肝に銘じよう、マスター。互いにな」
どちらからともなく手を差し出し、握手する。契約は成立した。

聖杯戦争の本戦は、まだ始まらないらしい。学校へ行き、街を出歩いても、他のサーヴァントに出会うことはない。それまでにNPCを殺すなりして、サーヴァントの魔力を増やすことは可能だが……目立つ。リスクの方がよほど大きい。まずは情報を集めることだ。1999年にはそれほど普及していなかったPCや携帯端末も、不自由ないほどには使いこなせる。見滝原の地理。人やカネのおかしな動き。テロや殺人、行方不明、不審な火事や爆発事故。そういったものをそれとなく探っていけばいい。手を組めそうな奴とは組む。むやみに殺して恨みを買うのも厄介だ。いずれにせよ見滝原から脱出せねばならない。

なにより――――『スタンド使いは引かれ合う』。DIOやエンヤ婆の足跡を辿り、『弓と矢』を得てスタンド使いとなり、身をもって知った法則。この見滝原に『スタンド使い』が、おれの他にもいるとするなら……かなりの確率で、そいつもマスターだろう。スタンドとサーヴァント。この二つの似通った能力を使う人間は、相当な脅威だ。手を組めるなら組んでおいたがいい。ヤバい敵がいたとしても、団結すれば立ち向かえる。おれのスタンドそのままに。

聖なる川を、黄金の巨像の頭部が流れていく。
滝から落下し、水を浴び続けるリンガの前に崩れ落ちる。
滔々たる大河をさらに下り、大海へ。
火と水によって、罪業を浄化するように。生まれ変わるように。

【クラス】
ライダー

【真名】
バラーラデーヴァ@バーフバリ

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運D 宝具B

【属性】
秩序・悪

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

騎乗:B
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。自前の宝具に乗って自在に飛行する。

【保有スキル】
皇帝特権:B
本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事で短期間だけ獲得できる。該当するスキルは騎乗(習得済み)、剣術、芸術、カリスマ、軍略等。人並みを超えるカリスマは持っているのだが、都合によりこのスキルに圧縮されている。

ダヌルヴェーダ:B
古代インドの正統総合武術・兵法。様々な武器や軍勢を自在に操り、格闘術にも優れる。

黄金律:A
身体の黄金比ではなく、人生においてどれほどお金が付いて回るかという宿命を指す。莫大な富を保有し、一生金に困ることはない。在位中に自らの巨大な黄金像を建設した。

【宝具】
『暴帝制覇鉄輪宝(チャクラ・ラタ・サムラージャン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:1000

ライダーたる所以の宝具。前方に回転する巨大な卍型の鎌が複数ついた恐るべき戦闘牛車。無数の矢を発射する機構も備え、自在に疾走して敵陣を蹂躙する。宝具化することでさらなる強化を遂げており、左右に羽撃く翼を展開して空を飛び、望遠レンズに魔力を集束させてレーザー光線を放ち、周囲に多数の卍型の鎌を手裏剣めいて撒き散らすなど、完全に超常の兵器と化した。モデルはレオナルド・ダ・ヴィンチの兵器スケッチ。閻浮提洲のみを統治する最下級の転輪聖王「鉄輪王」であることを示す鉄輪宝(ローハ・チャクラ・ラトナ)と融合しているが、本人の徳は低い。なお古代マガダ国の暴君アジャータシャトル(阿闍世)は、前方に槌矛を備えた戦闘馬車を開発して国土を広げたという。

『鉄鎖牢縛金剛棍(ヴァジュラ・ガダー・サムラージャン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:100

ライダーが振るう巨大な棍棒(ガダー)。俗称チュッパチャプス。柄に鎖が仕込んであり、これを伸ばして大鉄球を射出、敵を薙ぎ払う。宝具化することでさらなる強化を遂げており、鉄球からも鎖を射出して敵を絡め取り、電撃を放って焼き滅ぼす。柄自体も伸縮自在。雷神インドラの武器・金剛杵(ヴァジュラ)と融合している。インド神話において、棍棒(ガダー)は猿神ハヌマーンや死神ヤマの武器として知られる。

【Weapon】
二種の宝具。虚空から槍や弓矢、刀剣なども召喚する。戦闘時は甲冑を身に纏う。

【人物背景】
傑作インド映画『バーフバリ』の名悪役で、マヒシュマティ王国の国王(皇帝)。演:ラーナー・ダッグバーティ。父はビッジャラデーヴァ、母はシヴァガミ。愛称はバラー。大柄で筋骨隆々な髭面の男。身長192cm体重95kg。額に太陽の紋章(ティラカ)がある。父と共に奸計をもって従弟アマレンドラ・バーフバリから王位を奪い、追放・暗殺させた。その後25年に渡り圧政を敷き、苛烈な暴君として君臨していた。アマレンドラの遺児シヴドゥ(マヘンドラ・バーフバリ)は、これを聞いてマヒシュマティに攻め寄せ、彼を激戦の末に打倒し、自ら王位を継いだのであった。

性格は生真面目で寡黙。文武ともに優秀だが、両親とのしがらみ、弟がほぼ神、惚れた女が弟のものだったなど、いろんな要因をこじらせて煮詰まってしまった可哀相な人。主人公バーフバリ父子が神とすれば、バラーラデーヴァは神に挑む人間であると評される。なお生涯独身で、息子バドラは養子。

【サーヴァントとしての願い】
なし。

【方針】
マスターの指示に従う。

【把握手段】
映画『バーフバリ』伝説誕生&王の凱旋。

【マスター】
虹村形兆@ダイヤモンドは砕けない

【Weapon・能力・技能】
『極悪中隊(バッド・カンパニー)』
破壊力、スピード、持続力:B 射程距離、精密動作性、成長性:C

ミニチュアの歩兵60名、戦車(M1エイブラムスやT-55)7台、戦闘ヘリ「アパッチ」4機、グリーンベレー等から構成される、遠隔操作可能な群体(軍隊)型スタンド。歩兵はM16カービン・ライフルで武装し、パラシュートを装備している。本体の几帳面な性格を反映して規律正しい行動を取り、数体破壊されても本体に影響はない。一体一体の破壊力はさほどでもないが、歩兵の一斉射撃や戦車砲、アパッチのミサイルは壁や手足を吹っ飛ばすほどの威力。攻撃の精度や反応速度も高く、小型地雷を敷設するなど小技も使う。物陰が豊富な暗い室内での防衛戦は独擅場。想定外の奇襲に対しては反応できない。

【人物背景】
『ジョジョの奇妙な冒険』第四部「ダイヤモンドは砕けない」に登場するスタンド使い。CV:志村知幸。年齢は18歳(1999年当時)だが、表情は荒んでおり老成した雰囲気。金髪で筋肉質な長身の男で、改造学ランを纏う。性格は極めて几帳面で冷酷非情、計算高く物事を進め、目的のためには手段を選ばない。『人は成長してこそ生きる価値あり』との哲学を持つ。かつてDIOの手下であった自分の父親が、肉の芽の暴走で不死身の怪物となってしまい、10年かけて全てを調べた。その過程で『弓と矢』を手に入れ、弟億泰と共にスタンド使いとなる。そして「父親を殺せるスタンド」を生み出すため無差別に『弓と矢』を使い、数多くのスタンド使いを生み出し、適合できなかった多くの人間を死に至らしめた。悪人だが信念を持ち、心の底では家族を大事にし、己の所業に罪悪感を抱く男。

【ロール】
高校三年生。原作通り親の遺産で生活している。両親や億泰はいない。

【マスターとしての願い】
現世に帰還し、可能なら聖杯の力で親父を普通に死なせてやりたい。もしくは治したい。

【方針】
生存と帰還を第一目的とする。対主催に回るか否かは状況次第。なるべく敵を増やさず、利用できる味方や駒を増やす。無差別に殺戮を行うような危険な奴は、可能なら殺す。できれば聖杯を持ち帰りたいが、余計な欲はかかない。

【把握手段・参戦時期】
原作29巻&30巻。杜王町でスタンド使いを増やしている最中に参戦。

◆◆◆

ジョジョとバーフバリ、虹村形兆とバラーラデーヴァだ。しっくりくる。動画もぴったりだ。動画は気に入ったのでエピロワでも使った。「弓と矢」でかなり殺してるし(アンジェロみたいに選んではいたようだが)聖杯目当てにマーダー化させてもよかったが、なんかこうなった。形兆もプロシュートも「成長しろ」と弟分に言うが、バーフバリみたいな弟だったらどうだろうか。バラーラデーヴァにはメーガナーダやカニシュカを載せてこうした。バーフバリが鯖化したら伝説補正でもっとすごいことになるだろう。アマレンドラはターメリックかけた象の上からブラフマーストラを放ってくる

【続く】

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