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忍殺TRPGリプレイ【ア・センス・オブ・ユニティ・オブ・パーツ】02

 前回のあらすじ:ケオサキに突如現れた巨大戦闘兵器「モーターサスガ」と「モータースゴサ」を、なんとか撃退した三人のニンジャ。どうやらオムラ・インダストリのプロダクトのようだが、戦闘兵器に襲われていたのは、聞き捨てならない名を持つ中年男であった。カラダニキヲツケテネ!

「ケッ、なんだってんだ」ボーンピッカーはキツネ・サインを向けた。「無事か、おっさん」「アイエエエ……」腰を抜かし、失禁している。無理もあるまい。「事情がありそうだな。聞かせてもらおう」「アッハイ……」マーダーシュトロムに肩を貸され、男は立ち上がる。「私はイヌイ。貴方は?」

 男は震える唇で、名前を告げた。「モーティマー……オムラです……!」

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ダンゴウ

 三人は顔を見合わせた。モーティマー・オムラ。確か、オムラ・インダストリのCEOその人だ。まさか、本人なのか?「……聞き捨てならねェな。ちょっと、来てもらおうか」「ハイ」三人は野次馬をかき分け、アジトへ戻る。

AZはニューロン判定、難易度UH。11D6[32622141344]成功。

「ン」アズラーイールはサイバネアイを光らせ、モーターサスガの残骸破片から目ざとく何かを発見した。謎めいたICカードだ。とっさに拾い上げ、ポケットにしまう。何か情報の手がかりになるはずだ。「こういうのは、ボーンピッカー=サンの役目だと思うけどなあ」「ア?呼んだか?」

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 三人はアジトに戻り、この地域の管轄責任者であるラオモト・チバに連絡する。『モーティマー・オムラ=サンだと?本人か?』「彼はそう言っています。お話しを」憔悴した中年男は、IRC端末画面に映るチバと対面する。「ドーモ、モーティマー・オムラです」『ドーモ、ラオモト・チバです』

 互いにアイサツ。『オムラ・インダストリに確認したが、モーティマー・オムラ=サンは長期休暇中で不在とのことだ。父君のアルベルト=サンは入院中で、一族のカネダ=サンが代理人となっていると聞いたが』「ハイ。そのカネダ=サンに、追放されたのです……!」モーティマーは涙を流す。

 モーティマーは「モーター理念」なる概念の信奉者で、「凄くて強い。だから凄い。だから売れる」をモットーとしてオムラを経営していた。しかし旧来の重役たちには反対派が多く、モーティマーは彼らを次々にケジメやセプクに追い込んで改革を行い、社を傾かせつつあった。『クーデターか』

 チバは腕組みし、鼻を鳴らす。『当然の報い、インガオホーではないか』「アイエエエ……」『ネコソギ・ファンドとしては、オムラの株価が回復すれば、経営や人事に口出しはしないスタンスをとっている。父上はどうおっしゃるかわからんがな』「じゃあ、彼はどうしましょう」『捨て置け』

「アイエエエ……」モーティマーは顔を覆った。『貴様が虐げた下層労働者の生活を味わい、庶民の苦労を体験することだな』チバは冷徹に宣告する。『モーターサスガ、モータースゴサとやらは、オムラの新製品だろう。ケオサキを実験場にして、サイバーツジギリをやらかしたというわけかな』

「それならそれで、抗議しないと」『当然だ。ケオサキはこのぼくのシマだからな。よそでやれ』「……あの」モーティマーが挙手する。『なんだ。まだいたのか』「カネダ=サンは……オナタカミと戦争を始めるとか、言ってまして」『勝手にしろ』「それが、ヤバいんです。ネオサイタマが」

「どういうことだ」モーティマーは震えだした。「モーターオムラ計画、というのが、進められていまして。僕もあまり知りませんでしたが、一部の過激な社員が暴走していたらしくて。ああいう、戦闘兵器で、世界を征服するとか」「「え」」『……カネダ=サンが、世界征服を?バカバカしい』

 チバはため息をついた。狂人の戯言か。モーティマーがCEOに返り咲きたい一心での方便か。「本当なんです!ぼ、僕、偶然それを知ってしまって!殺されかけたんです!誰に言っても信じてくれなくて!」「それは、そうだろうけど」「ヤバいんです!巨大ロボットが!カイジュウみたいなのが!」

『娯楽映画の見過ぎじゃないか』チバは半信半疑だ。だが、半分は信じた。彼の人間観察の経験上、モーティマーは嘘を吐けるほど器用な男ではない。『証拠はあるのか』「ええと……」「あ、僕、さっきモーターサスガの破片からICカードを入手しました」アズラーイールが助け舟を出す。

『ほう。解析してみろ。なにかわかるかも知れん』「ヨロコンデー」「プロテクトがかなり堅いですよ。数時間か、数日かるかも」『急げ』「ハイ」

ハッキング判定、難易度UH。BPが挑戦。「知識:サイバネティクス」で+1され16D6[4156622545254512]2成功。もう一度、16D6[1366356522534462]成功。

 ボーンピッカーはUNIXとLAN直結し、慎重にICカードの解析を行う。……その結果、モーティマーの言っていたことが真実であると判明した。「つまり、あいつらは『モーターオムラ』のための試作機で、実戦データ収集用。スポンサーへのプロモーションも兼ねてました」ボーンピッカーが解説。

「スコーチャーってニンジャは、あいつらの実地試験の監督で、ついでにモーティマー=サンを監視し、場合により拉致するために派遣されたようですね。どうするのか知りませんが。で……三番目のプロダクトとして、モーターカナリってのが秘密工場で生産中。座標データがICから判明しました」

 ボーンピッカーはICを指で弄ぶ。「スゴサ、サスガ、カナリってのは、確かオムラ・インダストリの社歌にあるんでしたっけ」「そ、そうです」「それにちなんでの命名でしょう。三つの機体は電子的にリンクしていて、データも同期させてるようです。カナリは未完成っぽいですが……」

「そういや、スゴサとサスガが合体して、変な装甲車みたいになって逃げていったね」「合体。そうか、合体だ」モーティマーの瞳に異様な熱が灯る。「巨大ロボットといえば、三つの機体が合体する……電子戦争以前から、そう決まっているんだ。モーターオムラも」『カートゥーンの悪影響だな』

 チバがため息をついた。『まあいい、だいたいわかった。その秘密工場とやらへ行って、爆破してこい。くだらんモーターマニアどもに、現実世界の厳しさを思い知らせてやれ』「「「アイアイサー」」」「えと、僕は……」「あー、あのニンジャが襲ってきたら面倒か」「連れていくのもなあ」

 チバは少し考え、答える。『護衛のニンジャチームを派遣する。カネダとやらの野望が潰えた後、こいつをCEOに返り咲かせれば、我々ともWIN-WIN関係だ。アルベルト会長に恩も売れるな。そいつらに引き継ぎしてから出発しろ』「了解」

全員の緊急回避ダイス+1。ある程度休息したとして、アドレナリン・ブーストの使用回数や精神力も回復する。

秘密工場

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 ゴンゴンゴンゴンゴン!クレーンが左右にせわしなく行き来し、コンベアーが獰猛に唸る。地下ガレージ空間を満たすのはインダストリ音と息苦しい熱気だ。「ドーモ」「ドーモ」「ドーモ」かなり深いオジギをクルー達が一斉に繰り出し、出迎えた。「ドーモ」彼は会釈を返した。

「手ひどくやられたな」「アッハイ、ニンジャは相当強いです」「けど、戦闘データは取れました。次は必ず」クルー達は熱っぽく語る。「そうか」彼は早足に歩き、リペア作業中のモーターサスガを見上げた。薄暗いガレージに溶接の火花が閃き、小刻みなドライバー回転音がインダストリ音を彩る。

「次はモーターカナリも出します」クルーが奥のブースにスタンバイしている巨躯をボールペンで示す。両脚と腰、脊椎部のスケルトン。「三体がじきに揃います。このまま量産してもいいくらいだ」「この三体が揃うと、試算ですがデータ取得速度は15倍にもなります。圧倒的ですよ」……

 日没頃、雨。金網で囲まれた敷地を三人は眺める。広い駐車場スペースと、運送会社の拠点じみた社屋。受付に「集約センター」とだけ書かれている。「座標はここの地下だ」「で、どうやって潜入する」「いろいろ手段はあるもんさ」三人は周囲を調査し、秘密の通路がないか探る。

ワザマエ判定、難易度UH。BPは10D6[3612615561]成功。もう一度、[4113664424]成功。

 ……やがて、駐車場の一角に怪しい場所を発見した。車のわだちが途中で消えている。付近のマンホールを開けて調べると、脇道が隠されていた。三人はしめやかにそこから潜入する。秘密の物資を運び込むための通路だ。暗黒メガコーポの工場などには、しばしばこうしたものが存在する。

全員ワザマエ判定、難易度UH。10D6[2555655115]10D6[5135665611]13D6[3462125123166]全員成功。

 監視カメラやセンサー、トラップなどをくぐり抜け、三人は通路の奥へと進んでいく。ニンジャにかかれば、この程度はどうということはない。ダクトを匍匐前進し、警備員をやり過ごす。みなクローンヤクザだ。通路の先にあったのは、緩やかに下るスロープ。三人は早足でスロープを降りる。

 徐々に空気が蒸し暑くなってきた。そしてくぐもった駆動音らしき響き。やがて三人は広大な空間に到達した。ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!もはやインダストリアル音は頭を揺さぶる程だ。安全柵の張られた通路から、三人はガレージを見下ろした。行き来する作業員たちと機械の稼働音。

「どうですか!我が社の生産施設は」背後から声!「イヤーッ!」

アンブッシュ。全員回避判定UH。12D6[563535263543]10D6[6656545522]13D6[5554366245654]全員回避!

「「「イヤーッ!」」」三人はニンジャ第六感で察知し跳躍回避!回し蹴りアンブッシュを繰り出した背後の敵は、ムーンサルト回転ジャンプで三人の頭上を飛び越え、進行方向を塞ぐように着地!ワザマエ!「ニンジャか!」黒帯、メンポ、埋込式サイバーサングラス。見るからにニンジャである!

 彼は両掌を合わせアイサツした。「ドーモ、はじめまして。私がオムラ・インダストリCEO、カネダ・オムラ。プロダクト名、モーターカネダです」

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◆モーターカネダ(種別:ニンジャ/戦闘兵器)
カラテ      13    体力       16
ニューロン     7    精神力       -
ワザマエ     13    脚力        5/N
ジツ        -    万札       20

攻撃/射撃/機先/電脳  13/13/7/7
回避/精密/側転/発動  13/13/13/-
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0

◇装備や所持品
◆サイ二刀流:素手/カタナ/カタナ二刀流/アサシンダガーのうち、
 いずれかを装備しているとみなす 装備・所持ペナルティなし
▶全身サイバネ化

◇ジツやスキル
●連続攻撃3、連射3、マルチターゲット、時間差
◉忠誠心:オムラ×5
●戦闘データフィードバック
 視認した戦闘・移動スタイル、ワザ、ヒサツ・ワザを使用可能
◉◉戦闘兵器:体力+3、精神力なし、即死耐性、精神攻撃無効、交渉判定難易度+2
●脆弱性:電磁(2)

能力値合計:33
 ニンジャソウルが入っているかどうか原作では定かでありませんが、凄まじい強さです。モーターヤッター!原作では上半身裸で、胸板に雷神紋が刻まれていますが、この次元ではスーツをまとっています。

「ドーモ、ボーンピッカーです」「マーダーシュトロムです」「アズラーイールです」アイサツを返す。「素性はすでに調べがついているぞ、不法侵入者ども。だがソウカイ・シンジケートと我がオムラ・インダストリは、これからもWIN-WIN関係を結んで共存共栄と考えている。ここは撤退したまえ」

 三人は周囲を見回す。「カネダ=サンが、世界征服を企んでるって与太話を聞いてな」「与太話?真実だよ。我がカラテ、モーター三天使、そして偉大なるオムラの雷神、モーターオムラがあれば可能だ!モーター理念に後退の概念はない!」モーターカネダは襟を正し、ボキボキと首を鳴らした。

 首筋の切れ目部分が蒸気を吹き、有機皮膚プレートが数インチ外側へ浮き上がり排熱を行う。モーターカネダは懐からスシを取り出す。ナムサン……オーガニック・トロだ。覆面をずらし、咀嚼する。なんたる人間味……!「これがインダストリであり、テックだ。たゆまぬ改善と進歩!」

「具体的に、どうやって世界征服するんですか?」アズラーイールが挙手する。「うむ。まずは、目障りなオナタカミ本社要塞を徹底的に破壊する。然る後、湾岸警備隊の武装を全てオムラ・インダストリの製品に置き換える。オナタカミ製品は全て破壊し、廃棄だ。後は簡単なことだ!」

 マーダーシュトロムは、無言でIRC端末を向ける。『ドーモ、ラオモト・チバです。はじめましてカネダ=サン』「ドーモ、ラオモト・チバ=サン。我々の理想をおわかりいただけただろうか?」『だいたいわかった。貴様の野望は迷惑千万だ。モーティマー=サンは保護している。彼に権限を返せ』

 カネダは鼻で笑った。「断る。モーティマーはオムラ直系の血筋を持ちながら、モーターイズム体現に際しあまりに人格的資質を欠いた!だが私は違う!わかるか!アルベルト会長をも超える真のモーターイズム時代を、私の手でもたらすのだ!その夢をだな、絶対阻害したらダメ!ダメなんだよ!」

「CEO!」チーフエンジニアが叫んだ。ブースには見覚えがある形のツジギリ殺戮機械。モーターサスガとモータースゴサだ!心臓部のエンジンを震動させ、起動可能状態である!「退避を!貴方は社の宝だ!貴方の経営手腕とオムラ思想は本来、万に一つも危険に晒されてはならんのです!」

 彼はUNIX接続されたレバーに手をかけ、引き下ろす!「「ゴウオオオーン!」」二体のロボットが同時に両腕を振り上げ咆哮した。「否。モーターカナリも出せ!」カネダはバック転で飛び離れ、後方の隔壁スイッチを入れる!ガゴンプシュー……現れたのは両脚と腰、脊椎部のスケルトン!

「危険だ!未完成です!」「構わん、やれ!CEOの絶対命令だ!実戦試験が行えるいいチャンスだ!この程度のニンジャたちに敗れるようでは、モーターオムラの完成には程遠い!」カネダはクルー達に厳しく命令!「「「ハイヨロコンデー!」」」カネダの目が激しく明滅する!「IRC承認!」

 三体のロボットが応答!モーターサスガとモータースゴサがカナリめがけ走る!そしてモーターカナリを中心に、二体のロボットはそれぞれ右半身、左半身と化し、接合!そこには歯車盾とドリルアームを装備する悪魔的殺戮ロボットが現出した!シーケンス完遂!ゴウランガ!ゴウランガ!

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「「「オームラ!オムラ!オームラー!」」」エンジニア達は泣き叫び、その場でバンザイを繰り返す。狂気!「「「モーターヤッター!」」」

「イヤーッ!」カネダが跳躍し、合体殺戮ロボットの頭頂部に着地。センサーに親指を押しつけてオムラ血族指紋認証を行う。「アイサツ機能は未実装ゆえ紹介してやる。これが三天使の殲滅形態!モーターガッタイだ!貴様らは死ぬ!」「死ぬのはテメエだ!」一撃必殺アトモスフィア!

戦闘開始​

【続く】

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