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【FGO EpLW 殷周革命】第十一節 六賊絶蹤断腸藪

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(あらすじ:アーチャー・メーガナーダの魔球により、鼎に乗って蚩尤の体内にマスターたちが潜入! ランサーを解放し、四つの鼎を獲得せよ!)

「……生きているか、カルデアのマスター」
「……もうやだ、こんな生活……」

落ちて来たのは、濛々と蒸気の立ち昇る、広大な洞窟じみた空間。胃袋の中と思しい。プラズマ球が浮かんでいるのは、煮え滾り沸騰する胃液。鉄と銅と硫黄の海。地獄そのものだ。鼎とエピメテウスとシールダーと、アーチャーのプラズマ球シールドなくば、マスターは即死していただろう。

「「「「「「ざッけンなこらァ、アーッ?」」」」」」

一同の耳に、上空から汚い濁(だみ)声のヤクザスラングが飛び込んで来る。敵だ!見上げると、角と翼を生やした獄卒めいた鬼たちが、巨大な包丁や凶悪武器サスマタを手にして向かって来る。スモトリめいた体格。裸の上半身は入墨だらけだ。コワイ!

「おうおうおう、ここをどこだと思ってやんでェ、ナメとンか?」「目ン玉ついてンか? 飾りか?」「くっせェ! くせェ! クソの臭いや!」「聴いて驚けや、クソどもがァ。ここァ俺ら『暴狂六賊』様の縄張りよ」「命(たま)と鼎、欲しいから置いてけやァ」「はァ、めんどくせェ……こんなとこまで攻めて来ンなっちゅーんや」

口々に勝手なことを喚く鬼たち。セイバーがこめかみに青筋を浮かばせ、無言で双剣を投擲する。霊能を用いるまでもない雑魚だ。

眼看喜(がんみ)「眼に看(み)て喜ぶ!」眼球貫通殺!「アバーッ!」
耳聴怒(じちょう)「耳に聴いて怒る!」耳孔貫通殺!「アバーッ!」
鼻嗅愛(びきゅう)「鼻に嗅いで愛(め)でる!」鼻骨貫通殺!「アバーッ!」
舌嘗思(ぜっしょう)「舌に嘗めて思(した)う!」口奥貫通殺!「アバーッ!」
身本憂(なやむ)「身(おのれ)の本(ため)のみに憂(なや)む!」正中線上両断殺(まっぷたつ)!斬れ味国宝級(ばつぐん)!「ゴッツァン!」
意見欲(ふくろう)「意(こころ)に見(かんがみ)て欲しがる……泡(アワ)ワ」失禁(じょろりら)

六賊のうち五賊が殺され、蚩尤の胃液の中に落ちた。たちまち肉が溶けて骨だけになり、それも数秒で溶かされてしまう。ナムアミダブツ……。
「一匹残したぞ。道案内をさせよう」
「ご苦労さん」
アサシンが残った一匹の首に縄をかけ、魂を喰らって情報を引き出す。彼もフラフラと胃液に落下し、消え去った。

◇◇◇◇◇

プラズマ球に護られた鼎が、後方へプラズマジェットを放って推進力とし、胃壁へ進んで行く。チャーナキヤの魔術だ。時間がない。この鼎が蚩尤に渡れば、それこそ最悪。その前にランサーと鼎を見つけ出し、奪わねば!

「さっきの野郎から獲た情報によりゃ、この胃壁をぶち破って、心臓部まで行くしか無いね。セイバー、行けるかい」
「造作もない。『真鋼』!」
セイバーが再び双剣を投げ、異様な金属的光沢をした分厚い胃壁を切り裂く。何物であっても切り裂く宝具の霊能あればこそだ。

胃液と血液がドボドボと溢れ出し、出て来た先は肝臓の上。目指す心臓はその上方、横隔膜の向こう側。双剣はこれをも切り裂いて、道をつける。アサシンは血管や神経に縄を絡ませ、鼎ごと飛び跳ねるように上昇。異物を排除するため集まってきた鬼や妖怪たちも、次々と撃墜される。

◆◆

『『『ググググワーッ!?!』』』

蚩尤が悶える! ライオンの中の虫めいて、体内から攻撃されているのだ!
臓器からアンテナじみて砲が伸び、プラズマレーザーやマイクロスリケンを射出! しかし鼎を護るプラズマ球に阻まれる!

『『『グワーッ……オノレ……!!』』』

アーチャーが雷鳴のごとくに大気を震わせ、嘲笑う!

「「「どうだ、おれの魔球の味は!! 内と外から心臓をぶち破ってくれようぞ!!」」」

◇◇◇◇◇◇◆

「ランサー! 生きてるか!」

アサシンが心臓の壁に縄を突っ込み、どうにかランサーを釣り上げた。メンポはつけているが、甲冑は脱ぎ捨てたまま。肘から先、胸から下は、心臓と融合していて引き出せない。
「……おお、マスター殿、ご一同……かようなブザマを晒し、面目次第も……」
「生きてんならいいさ。この化物をブッ殺すついでだ」

言うが早いか、心臓の壁から多数の竹槍が伸びて一同を襲う! プラズマ球をも貫くが、シールダーが防御!
「やっぱ、あいつもいるか!塗山で鼎三つを護ってた敵側のランサーだ!」
「どっから攻撃して来てるんだい。心臓の中?」
アサシンの問いかけに、ランサーは……苦悶の表情を浮かべる。
「拙者の中だ。奴は怨霊となり、拙者に取り憑いている……!」

アサシンはそれを聞き、歯を見せて笑う。
「怨霊? なら、アタシがひっぺがせるかも。アタシこれでも死神よ、幽霊の扱いにゃ慣れてるの……」

0oo0o0ooグググoo0o0…oo0o0…させぬわ!!

ランサーの目つきが豹変! オニめいたメンポがざわざわと蠢き、両眼が赤く発光!竹槍を操る敵のランサー『木内惣五郎』だ。アサシンの縄がブツブツと切断される!

『わしは既に、こやつと霊肉一体。引き剥がすことなど出来ぬ! ましてこの心臓を破壊するならば、こやつも共に滅びるばかりよ!!』

「やってみなけりゃ……!」
心臓の壁から無数の竹槍が射出!ランサーの姿は竹槍の森に隠れてしまう!心臓のまわりに電磁バリアが出現! 迫り来るは無数の体内妖怪!
「埒が明かねえ。先に他の臓物をブッ壊して回るか……」
「鼎も心臓に集まっている。あれをやらねば意味はない。即時に修復してしまう。おそらく『断水』で斬ってすら……」
なるほど、下の横隔膜も既に元通りだ。何よりここで蚩尤にトドメを刺さねば、決死の潜入の意味がない。殺るか殺られるかだ!

◆◆

「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』
「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』
「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』
「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』
「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』
「「「イヤーッ!!」」」『『『グワーッ!!』』』

悶絶する蚩尤にマウントを取り、メーガナーダは六臂でもって痛烈な重爆拳の嵐! 大地が揺れ動く!だが蚩尤の眼は死なず! 多数の腕を生やしてメーガナーダに喰らいつき、強引にマウントを裏返す! そして重爆拳!

『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」
『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」
『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」
『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」
『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」
『『『イヤーッ!!』』』「「「グワーッ!!」」」

ゴジュッポ・ヒャッポ! この勝負、互いに譲らずだ!

◆◇◇◇◇◇◇

「うおおおお!?」
外での戦いの震動が、蚩尤の体内も揺るがす! 鼎に乗った一同は、アサシンの縄で飛び回りながら内臓を切りつけ、心臓を狙う!
「こ、こうなりゃ、外のアーチャーがこいつの胸をぶち破って、心臓を毟り取るのを待つか……!」
『ほしたら、アーチャーが鼎を八つ手に入れて、ランサーもおっ死ぬだ。残り一つの鼎もアーチャーが呑み込んで、おらたちはお陀仏……』
「だからあいつじゃ、このバケモノを殺せないんでしょうが。アタシらが殺るしかないんだよ! いや、アタシは神霊だからダメか」
「斬っても斬っても竹槍が次々と伸びてきて、キリがない! 最悪、ランサーを犠牲にしてでも……!」

「……!」
シールダーがギリッと歯を食いしばる。アーチャーは一応今のところ味方だが、彼には彼の野望がある。蚩尤の心臓を潰せば、ランサーも死ぬ。自分たちが生き延び、人理を護り、先輩を救い出すには、やむを得ないのか……!
「マスター! 彼と念話を……!」
『念話が届いただ。中継するだ』
シールダーの発言と同時に、エピメテウスが念話を繋げて来た。全員の思念が繋がり、ランサーの視界も共有される。

◇◆◆

仲間の救援に勇気づけられ、強い意志の力とチャドー呼吸で木内惣五郎を抑え込んだランサーだが、竹槍や蚩尤までは止められない。脱出することはもはや不可能。ならば、ならば、これしかない。彼は覚悟を決めた。
「マスター殿! ご一同! 事ここに至れば、拙者が為すべきケジメは只一つ! 御照覧あれ!」

ランサーのオニめいたメンポが変形し、ランサー自身の口が開く。その口から、ドス・ダガーめいた恐るべき刀が現れる。
「千子村正作、『半蔵之刀(ハンゾウ・ソード)』……イヤーッ!
シャウトと共に刀を射出! 精密に計算された軌道で竹槍に当たり、反射し、反射を繰り返す! 速度が増す!

「おい、まさか!」「やめろ!」「ランサーさん!」「……!」

竹槍に乱反射した刀が回転して戻り、ランサーの心臓、霊核を貫通! インガオホー!

「モハヤコレマデー!!」

ハラキリ・セプク! 謎めいたシャウトと共に、ランサーの両眼が金色の光を放つ!
「南・無・阿・弥・陀・仏!」

『o0o00o0oo00oグゥワァ00o0ooァァー0oo00oo000ー00o0ooーッ!!!000oo0oo』

ランサーに取り憑く木内惣五郎が絶叫! 蚩尤の心臓を覆っていた竹槍群が抜け落ちていく! その穴から毒々しい血液が勢い良く噴き出す!

『『『AAAAAARRRRRRGGGGGGGHHHHH!!!』』』

蚩尤絶叫!! 心臓崩壊!! その中から四つの鼎と、将門公本体が姿を現す!
瘟(オーン)!
キャスター・チャーナキヤが幻力を放ち、乗っている鼎を巨大なガルダに変化させ、心臓目掛けて高速で飛行!

『AAAAAARRRRRRGGGGGGGHHHHH!!!』

鼎を守ろうと、太刀を構え狂乱する将門公! ガルダが迫る!
疾(チッ)!
すれ違いざま、セイバーの双剣が一閃! 将門公を首・胸・下半身の三つに分断! ガルダが両手両足で四つの鼎を掴む!

「ランサーさん……!」
シールダーが唇を噛み締める。勝利だ。だが、苦い勝利。―――ガルダはそのまま、蚩尤の腹に空いた大穴を抜け、外へ。夜明け前の空へ。

『『『AAAAAARRRRRRGGGGGGGHHHHH!!!!!!』』』

蚩尤の肉体が崩れていく。霊核が砕け、全身が光の粒子に変化する。
アーチャーは傲然とそれを見下ろし、ガルダに乗った一同は振り返って見る。蚩尤の最期を。


『『『サ!』』』


『『『ヨ!』』』


『『『ナ!』』』


『『『ラーッ!!!』』』


平天大聖・蚩尤将門公、壮絶に爆発四散! ナムサンポ! ナムアミダブツ!! インガオホー!!

新皇、暗ニ神鏑ニ中リテ、終ニ託鹿之野ニ戰ヒテ、獨リ蚩尤之地ニ滅シヌ。――――将門記

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