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【ジ・オーメン・オブ・メイルシュトローム】(全テキスト版)

 これは、つのの忍殺TRPGリプレイ「ジ・オーメン・オブ・メイルシュトロム」のうち、あらすじやステータス表、ダイスロールやコラム書き、イラストなどを除去した小説テキスト部分のみをまとめたものです。実際どれぐらい文量があるか確認するためにやりました。やや整形しましたが文量は同じです。ただしルビは使用していません。
 noteの下書きの右上に出る文字数カウントで見たところ、ナンバリング、◆、最後のタイトルコールを含めて11206文字でした。それらを除けば11171文字です。01は1664字、02は3084字、03は3345字、04は3039字でした(◆含む)。ニンジャスレイヤー原作小説ではだいたい5000-6000字ほどを1セクションとしていますから、4記事書いてもせいぜい2セクションでしかないわけです。1エピソードは最近は10セクションです。結構書いたつもりでも、実はそれぐらいなのですね。
 しかしあらすじやステータス表、ダイスロールやコラム書きなどを加えると、1記事が1万字を超えることもしばしばあります(今回の04は1万4000字もありました)。そのため、あまり多くのキャラクターをいっぺんには出せません。なんらかのソリューションが必要だとは思いますが、つののやりやすいようにやります。あとこうしたまとめは読み返すと結構面白いので、他のやつもたまにやってみます。誤字などがあれば都度訂正します。

01

 ZZZT……不気味な暗雲から遠雷が轟く。雲の彼方には黒い空が垣間見え、蛍光緑色の格子や01がちらつく。ここはネオサイタマの西、フジサンの麓。セキバハラの東、ヴァレイ・オブ・センジンからここまで、どれほどの時間と距離がかかったか、もはやわからない。三人はフジサンを目指して進む。

 海を右手に線路沿いで歩いて来たものの、新幹線が通ることはなかった。街はみな廃墟で人影はなく、蠢くのはジゴクのゾンビばかり。動く車さえもなく、歩いて進むしかない。ヒデリ・ニンジャを制圧したため異常な暑さは収まりつつあるが、今度は急に冷え込み、雪がちらつき始めた。

「晩秋……暦の上では冬だしねェ。高地なら雪ぐらい降るか」ポイズンバタフライが独り言つ。現世は紅葉の美しい季節だろうが、ここはオヒガンとの狭間だ。山麓の紅葉は灰色で、時々蛍光緑色に光っている。「俺たち、オバケになったのか?」「ニンジャなんて、オバケみたいなもんでしょ」

 ハウスバーナーとポイズンバタフライに守られ、ヤモト・コキは周囲に警戒しながら山道を進む。彼女に憑依した神代の存在「シ・ニンジャ」は、ここフジサンを支配していたという。……雪に混じって、時ならぬ桜の花びらが舞う。一行は神秘的なカラテを付与され、桜色の光を帯びる。

 干上がった川を遡り、無人の荒野を北へ。目指すは常人が足を踏み入れぬ難所、フジサンを西側で引き裂くヴァレイ・オブ・オオサワ。そこに、何者かの気配がある。周囲の闇はますます濃く、ホタルめいて飛び交う01はますます多くなる。時々地面が振動し、熱を帯びる。

「おい……まさか、噴火しようとしてるんじゃあねえよな」「あり得る。誰かが、フジサンに悪さをしている」ヤモトの声。「そいつはニンジャか」「そんなことできるなら、そうでしょ」その時。「「「イイーアアー」」」「「「アーイイイー」」」不気味な声が谷間に響く。

 闇の中から姿を現したのは、奇妙に歪んだゾンビーの群れ。ヤマブシめいた服装だが、首が長く伸びてねじれ、垂れ下がっている。ヒデリ・ニンジャが操っていたジゴク・ゾンビーとはやや異なるが、所詮は非ニンジャだ。「切り抜けるぜ」「「了解」」一触即発アトモスフィア!

「「イィヤーッ!」」SLASHSHSHSH!ハウスバーナーがナイフに炎を宿らせて斬りかかる!ポイズンバタフライがブラッドカタナを振るう!「行けッ!」ヤモトが周囲の01を集めてフェニックスを射出!KA-BOOOOOM!「「「「「「アバババババーーーッ!」」」」」」ゾンビーたちが爆散!

「「「「「イアイアバババー!」」」」」「「イヤーッ!」」襲い来るゾンビーたちの攻撃を難なく躱す!所詮ゾンビー、動きは緩慢だ!「「イィヤーッ!」」SLASHSHSHSH!ハウスバーナーが斬りかかる!ポイズンバタフライがブラッドカタナを振るう!

「「「「「「アバババババーーーッ!」」」」」」ゾンビー全滅!「へっ、雑魚どもが」「こいつらは、フジサンで悪さしてるニンジャが使役する番人ってわけかしら」「たぶん」ヤモトはゾンビーの額を調べる。額に、文様めいた傷がある。

「もとは人間。ニンジャがジツで歪めて、こうしたんだ。ニンジャでもジツにかかるとこうなるよ」「気色悪いな」「お祈りしよう」三人は合掌し、ゾンビーにされた者たちの冥福を祈る。『このジツは、ゴグウ・ニンジャ=サンのジツだ。カトンを使う油断ならぬ者』

 ヤモトの口から、シ・ニンジャの声。『彼は、平安時代以前にイクサに敗れて眠りについたはず。時々目覚めては悪さをしていたとも聞くが、今回は少々規模が大きい』「そいつが黒幕か。なら、カラテで黙らせてやるぜ!」『だが、彼だけではない。さらに誰か、よからぬ者がいるようだ……』

「わかったわ。気をつけましょう」ポイズンバタフライは頷く。ズズズ……闇の彼方、白く輝くフジサンが鳴動している。その彼方には黄金の立方体が静かに自転し、01を撒き散らしている。果たして、自分たちは現世へ、ネオサイタマへ戻れるのだろうか。彼は唾を飲み込み、背筋を寒くした。

02

 ヴァレイ・オブ・オオサワ。フジサンの真西面、頂上火口から深く切れ込んだ危険な侵蝕谷だ。毎日何百トンもの土砂や岩石が崩落し、近づけば落石に押し潰されて死ぬ。僅かに存在した登山道は、Y2K時の噴火で埋まった。ニンジャでなければ通れぬ難所だ。「結構、吹雪いて来たぜ」

 ハウスバーナーは山頂を見上げる。シ・ニンジャの加護があり、ニンジャであるとはいえ、冬のフジサンに登山道を外れたルートから装備なしで登るなど危険もいいところだ。「カラテがあればダイジョブよ。カトン使いでしょ」「寒いもんは寒いンだよ」『体内にカトンの熱を巡らせなさい』

 シ・ニンジャが、ヤモトの口を借りて命じる。「アッハイ」ヤモト自身のカラテやワザマエはさほどでもないが、憑依したニンジャは規格外だ。その自我はヤモトに溶け込んでいるというが、今はどうなっているのか。「あっちにジンジャがある」「噴火や土石流でよく潰れなかったわね」

 その時!ガラララ……!アブナイ!落石だ!「「イヤーッ!」」ハウスバーナーはヤモトを担ぎ上げ、ポイズンバタフライは華麗に跳躍し、危険な落石の群れを回避する。「ありがとう」「どういたしまして。あのジンジャには、かすりもしてねえな」

 シンピテキなアトモスフィアと、邪悪なアトモスフィアの両方を感じる。あそこにいるのだ。

 落石や土砂、強風や吹雪にも動じることなく、そのジンジャはそこに存在した。近づけば相当に広く、平安ゴシック様式の立派なトリイ・ゲートの奥には、ブディズム系本殿がそびえている。ジンジャ・カテドラルだ。現世にも存在するのか、オヒガンのものか、それとも両者の境にのみあるのか。

「「「オジャマシマス」」」一行は一礼し、南側トリイを潜った。その時。「イイーアアー」「アーイイイー」不気味な声が響く。トリイの陰から姿を現したのは、奇妙に歪んだゾンビーたちだ。ミイラめいた体にはニンジャ装束をまとい、首が長く伸びてねじれ、垂れ下がっている。

「またか」「今度はニンジャ。気をつけて」トリイ・ゲートのシメナワが不気味に輝き、結界を作る。彼らを倒さねば先へ進めないということらしい。「蹴散らすわよ!」一触即発アトモスフィア!

「「「イイイヤーーッ!」」」ハウスバーナーはナイフに炎を灯し、ポイズンバタフライはブラッドカタナにカラテを乗せ、ヤモトは愛刀ウバステに桜色のカラテ・エンハンスメントを纏わせて、歪みニンジャを切り刻む!猛攻!猛攻!SLASHSHSHSHSH!「アバババババーーッ!」ゴウランガ!

 だがゾンビー耐久力は凄まじく、ギリギリで耐えきる!「「アバー!」」歪みニンジャたちが反撃!

「アミーゴ!」ハウスバーナーはサソリ・キックを繰り出し、重傷を負った歪みニンジャの脳天を砕く!「サヨナラ!」歪みニンジャ一体が爆発四散!「い、イヤーッ!」ポイズンバタフライは致命的な鉤爪チョップをアドレナリンをみなぎらせてブリッジ回避!「ちょっとヒヤッとしたわ。油断大敵」

「イイイヤーーッ!」SLASHSHSHSHSH!「アバババーッ!」ハウスバーナーのカトン・ナイフが歪みニンジャを切り裂く!そして!「スゥーッ……ハァーッ……!」ポイズンバタフライはカタナを鞘に納め、イアイの構えをとる!「ヒサツ・ワザ!イイイヤァアアーーーッ!」一閃!SLAAASH!

「アッバーーッ!」ポイズンバタフライは一瞬で敵の背後に移動し、両脚と首を切断した。タツジン!「これが、ムーンシャドウよ」キョート駐留部隊のヴァンガードから教わった、イアイドーのヒサツ・ワザだ。歪みニンジャは断末魔をあげ、バラバラになって崩れ落ちた。「サヨナラ!」爆発四散!

 バシュン……!トリイのシメナワが断ち切れ、結界が解除される。だが周囲にはまだ敵の気配が多くある。歪みニンジャやゾンビー、それらを操る邪悪なリアルニンジャ、ゴグウ・ニンジャの!彼の強大なニンジャアトモスフィアが正面の本殿から漂ってくる。「行こう!」「「了解!」」

 木造の本殿は、屋根の高さ十数メートル。縁側を含む総床面積は、タタミ百枚をくだるまい。南と東西にはショウジ戸があり、屋内のボンボリの灯りが微かに漏れ出している。ターン!南側正面のフスマを開くと、床は板張りで、中央には緑と赤の畳が敷かれ、厳かなドージョーをなしている。

 ドージョーの北に正しく配された大仏像の首はなく、その周囲を守る二十四体のニンジャ神話の神々の像は、いくつかが砕かれている。大仏像の光背は白く塗りつぶされ、そこに「闇」の漢字が書かれている。門の彼方からかすかに音が聞こえることを表すという神秘的な文字だ。そして、その下に。

「ウフフフフフ……!来たか、シ・ニンジャ=サン」平安時代以前の装束に身を包んだニンジャが、超然とザゼンしていた。左右には鳥籠が置かれ、意識を失ったモータルが入れられている。ドージョーの左右の壁には、歪んだゾンビーたちが合計八体!「ドーモ、ゴグウ・ニンジャです」

「ドーモ……シ・ニンジャ、ヤモト・コキです」「ハウスバーナーです」「ポイズンバタフライです」三人はアイサツを返した。「ウフフフフ、愛らしいハチミツダンゴ……然様な脆弱極まるモータルの肉を借りねば、この世に干渉できぬか。左右のハトリのハラキリ者めらもな。おれは生身ぞ」

 ゴグウ・ニンジャは可笑しくてたまらぬ様子だ。「歪ませたニンジャの番兵どもはちと惜しかったが、そこの二人を歪ませてもよいか?」『ダメだ』ヤモトは、シ・ニンジャは決断的に答え、問い返す。『フジサンはシ・ニンジャの領域だ。ここで何をしている』「クッフフフフ!ムフ!ムフフフ!」

『答えよ!』これは問いを交互に応酬するいにしえのニンジャ作法だ。一つ問えば、一つ返さねばならない。「話せば長くなろうぞ。我らが前方後円墳に身を潜めて幾星霜。地には鉄の自走機械が蠢き、天に鉄のマグロが泳ぐ。夢を飛ばし、モータルの文明果実の熟するさまを愉しむは格別……」

『答えよ!無礼者!』「これはしたり」ゴグウ・ニンジャは居住まいを正した。「単刀直入に申せば、こうだ。いまフジサンの頂上に、大きなトリイがあろう。その上空に、裂け目がある。モータルどもが何かしでかして、ああなったようだが。そこからニンジャソウルが漏れ出しておるのよ」

 ゴグウ・ニンジャは上を指差す。「上空にキンカク・テンプルが見えるであろう?我が君、我らニンジャの神祖、あの御方はかしこにて安らいでおられる。それゆえ招き降ろす」『……復活させるというのか』「然様!まことにこの地はふさわしかろう!再び我らニンジャの世が来る!」

 ヤモトは、シ・ニンジャは、ぎり、と歯を食いしばる。ハウスバーナーとポイズンバタフライにも直感的にわかった。それは人の世が終わり、太古の神々、リアルニンジャたちが地上を闊歩する、マッポーカリプス……ジゴクの到来だ。「そのために、我らは儀式を行っておる。邪魔はさせぬぞ」

『他に、誰がいる』「それは口外するわけにはいかぬ。山頂へ向かい、貴様も儀式に加わるがよい。歓迎しようぞ。さもなくば、そのモータルの肉体を贄として捧げるのだな」『断る。お前たちを止めねばならぬ』ヤモトは、シ・ニンジャは断言した。もはやモンドムヨー!「ウフフフフフ!」

 ゴグウ・ニンジャは両腕を広げて哄笑した。「ならば、あの御方のための贄となるがよい!ウフフフフフハハハハ!お慕い申し上げまする!お待ち申し上げまする!一日千秋の思いにて!いざ、いざ、いざ、いざ帝国へ!帝国へ!帝国へ!ハハハハハ!」カラテが満ちる!一撃必殺アトモスフィア!

03

「カカレ!」「「「イイイアー」」」「「「アーイイー」」」「「イアー」」ハヤイ!ゴグウ・ニンジャが指先を動かすと、周囲のゾンビーたちが三人のニンジャより速く動き、一斉に襲いかかる!「「イヤーッ!」」ハウスバーナーとポイズンバタフライはとっさに回避!「アバーッ!」迎撃!

 しかし!「ンアーッ!」ウカツ!ヤモトは躱しきれず、鋭い鉤爪で傷つけられる!「クッフフフ!なんたる脆弱!まだその肉をうまく制御できぬか!イヤーッ!」ゴグウ・ニンジャは嘲笑し、跳躍して色付きの風と化す!

 バシュシュシュッ!ゴグウ・ニンジャはヤモトの頭上から鎖つきクナイを放つ!「イヤーッ!」キィン!ハウスバーナーがかろうじて撃墜!「チッ」ゴグウ・ニンジャは舌打ちし、もとの位置へ飛び戻る。「まずは雑魚からだな!イヤーッ!」ハウスバーナーは両手のナイフに炎を宿す!

「イイイヤーーッ!」SLASHSHSHSHSH!「「「「アバババーッ!」」」」ハウスバーナーのカトン・ナイフがゾンビー四体を切り裂く!「キエーッ!」「「アバーッ!」」ポイズンバタフライのブラッドカタナがゾンビー二体を切り裂く!「行け!」KBAMKBAMKBAMKBAM!「「アバーッ!」」

 ヤモトのカラテミサイルが炸裂し、歪んだゾンビーたちはたちまち全滅した。「次はテメエだ、イービルスピリットめ」「ウフフフ!さすがにモータル奴隷ではダメか!」ゴグウ・ニンジャは嬉しげに笑う。

「イイイ……」ゴグウ・ニンジャは複雑なニンジャ・サインを結び、火のエテルを凝縮する。ここはフジサン、神秘的な火山のパワーが彼を強化しているのだ!「インフェルノ・ジゴク!イヤーッ!」KA-BOOOOOM!爆発的なカトンが本殿を満たす!ハウスバーナーはヤモトをかばいナイフを振るう!

「イイイヤーーッ!」ゴウランガ!カトン・マワシ・ウケにより、ジゴクの爆炎を完全防御!タツジン!ポイズンバタフライもブラッドカタナで火炎を切り払う!まさに古事記に描かれしニンジャ神話の再演だ!「なんと」

「ナメんじゃねえ!イイイヤーーッ!」ハウスバーナーはゴグウ・ニンジャの懐へ飛び込み、サソリ・ファイティング・スタイルでなます切り!「グゥワーッ!?」命中!しかしゴグウ・ニンジャの体内からは燃え盛る炎が噴出し、ハウスバーナーに降り注ぐ!「グワーッ!?」「ウフフハハ……!」

 ゴグウ・ニンジャの傷口からは燃える重油めいて炎が噴き出し、ボタボタと地面にこぼれ落ちる。なんたるジゴクめいた光景か!「ちょっと面倒ね。なら!」ポイズンバタフライはスリケンを構える。

「イヤーッ!」投擲!「イヤーッ!」回避!そこへヤモト!燃えるショウジ紙やフスマをキネシスで集め、フェニックスの形に折りあげる!「行け!」KABOOOM!「グワーッ!」命中、爆発!しかしリアルニンジャの耐久力は凄まじく、これも軽傷にとどまる!「ウフハハ、ヌルいぞシ・ニンジャ!」

「イヤーッ!」BOMB!ゴグウ・ニンジャは両腕に炎を纏わせ、空中に飛び上がると爆発とともに姿を消し、ヤモトの背後に出現!周囲に爆炎を放ちつつ恐るべきカトン・チョップを繰り出した!「イイヤーッ!」アブナイ!二人は爆炎を躱すが体勢を崩している!ポイズンバタフライがかばう!

 KA-BOOOM!「グゥワーッ!」赤熱したチョップが脇腹をえぐる!強烈なダメージだ!ポイズンバタフライは超自然の炎に包まれるが、必死で振り払う!「グワ、グワーッ!」「ハハハハハハ!」ゴグウ・ニンジャが嘲笑う!「クソが!イヤーッ!」ハウスバーナーが飛びかかる!

「イイイヤーーッ!」SLASHSHSHSHSH!「グワーッ!」一発が命中!ゴグウ・ニンジャの傷口から炎がほとばしる!「イヤーッ!」ハウスバーナーは難なく回避!「当たらなけりゃいい話だろうが!」「そうね。アタシも……ヒサツ・ワザ!ムーンシャドウ!」ポイズンバタフライがイアイ!一閃!

「イヤーッ!」ゴグウ・ニンジャはアドレナリンを過剰分泌し、間一髪でブリッジ回避!ゴウランガ!「アタイも!イヤーッ!」愛刀ウバステに桜色の光が灯る!「イヤーッ!」壁や天井を飛び跳ね、イアイ!「イヤーッ!」ゴグウ・ニンジャはこれを弾く!

「貴様のジツもカラテも、随分ヌルくなったものよ!」「くっ……!」本殿が炎に包まれ、周囲はジゴクめいた光景と化す!マッポーカリプス・ナウ!

 ゴグウ・ニンジャは南のフスマ前へ飛びさがり、複雑なニンジャ・サインを結び、火のエテルを凝縮する。「インフェルノ・ジゴク!イヤーッ!」KA-BOOOOOM!今度はヤモトへ多数の火球が収束!アブナイ!「イイヤーッ!」ハウスバーナーはとっさにかばう!KABOOOM!一発が命中!

「グワーッ!」炎に包まれ大きなダメージ!ハウスバーナーは必死で振り払う!「アタイ、かばわれてばかりだ」「一人でも欠けたら全員死ぬンだ!」ハウスバーナーは叫び、ヤモトの弱気を振り払う!「必要なんだよ!」「わかった!」「行くぞ!イヤーッ!」サソリ・ファイティング・スタイル!

 SHBABABABABABA!「アババババーッ!」捨て身の攻撃がゴグウ・ニンジャを切り刻む!だが!「アババババーッ!」ナムサン!ハウスバーナーを燃え盛る炎が包む!インガオホー!「「ハウスバーナー=サン!」」ギリギリで立ち上がるが相当の重傷!このままでは!「しょうがないわねェ!」

 ポイズンバタフライがイアイの構えをとり、色付きの風と化す!「ヒサツ・ワザ!ムーンシャドウ!イヤーッ!」SLAAASH!「アッバーッ!」フスマごとゴグウ・ニンジャを袈裟懸けに切り捨て、心臓を断ち割り、燃え盛る本殿の外へ飛び出す。噴き出す炎はかすりもしない。「……まだ、だ」

 ゴグウ・ニンジャは全身から炎を噴き、輪郭も定かならぬ姿となる。リアルニンジャの生命力は凄まじい!「ゴボ……ウフフフフ……!」

「イヤーッ!」ヤモトが飛びかかり、エンハンスメントされたウバステを振り抜く!KRAASH!「アバーッ!」ゴグウ・ニンジャは本殿の外へ弾き飛ばされ、トリイの下、石畳の参道に落ちた。まだ……生きている!「そのまま逃げるか、ゴグウ・ニンジャ=サン」ヤモトが問う。「ウフフ……否!」

「イヤーッ!」BOMB!ゴグウ・ニンジャは両腕に炎を纏わせ、空中に飛び上がると爆発とともに姿を消し、ヤモトの背後に出現!周囲に爆炎を放ちつつ恐るべきカトン・チョップ!「イイヤーッ!」二人は爆炎を躱すが体勢を崩す!ハウスバーナーがヤモトをかばう!KRASH!「アッバーッ!」

 ナムアミダブツ!ハウスバーナーの胸板をカトン・チョップがえぐり、肋骨を破壊!ギリギリで即死は避けるが、燃え盛る本殿の中央に仰向けに倒れ戦闘不能!「フフフ、ようやく一人」「よくも!」「やってくれたわね!」彼はZBRアドレナリン注射器を常備している。それを使えば!

「「イヤーッ!」」二人はカタナで斬りかかる!「くどい!イイヤーッ!」「グワーッ!」ゴグウ・ニンジャは巧みに腕を動かしてカタナを捌き、ポイズンバタフライにカウンターを食らわせる!「残るは、貴様らだけだなァ」太古のリアルニンジャは傲然と笑う。ハウスバーナーはその背後で瀕死!

「ウフフフフフ……クッフフフフ……!」ゴグウ・ニンジャは周囲の火炎を吸収し、急速に負傷を癒やし始めた。ズズズ……!大地が揺れる。フジサンが揺れている。「我が君の再臨は近い……!エテルが強まる!いざ、いざ、いざ、いざ!暗黒のカラテ帝国(ダークカラテエンパイア)へ!」

「ブッダ……オーディン……クライスト……!」ハウスバーナーは必死であらゆる神々に祈った。彼は迷信深い。懐のZBRを射てば立ち上がるぐらいはできるだろうが、体が動かない。どのみち重傷だ。このままでは、残り二人もアブナイ。残ったゾンビーや歪んだニンジャが近づいているかも知れない。

 誰かが欠ければ全滅すると言っておきながら、いの一番にやられてしまった。ここで自分たちが全滅したら、ネオサイタマは、世界は、人類は。インパーミアブルや、スズリたちは。ソウカイ・シンジケートは。「誰か……助けてくれ……!」ハウスバーナーは、炎の中で祈った。……その時だ!

「Wasshoi!」

04

「え」首なしの大仏像の陰から、色付きの風が飛び出した。赤黒の風が。それは燃え盛る本殿を飛び回り、ハウスバーナーの脇をすり抜け、再生中のゴグウ・ニンジャの背中へ飛びかかった。

 KRAAASH!壁を蹴って勢いをつけ、放たれたのは暗黒カラテ奥義ダブル・ポン・パンチだ!「アッバーッ!?」KRAAASH!ゴグウ・ニンジャは流星のように本殿南西の柱へ叩きつけられ、柱が凹み、へし折れる!だが体内から炎が噴き出し、アンブッシュ者を焼く!「ヌウーッ……!」

 アンブッシュ者は唸り声をあげると、威圧的に掌を合わせ、ジゴクめいた声でアイサツした。「ドーモ、ゴグウ・ニンジャ=サン。ニンジャスレイヤーです」

「ドーモ、ゴグウ・ニンジャです。貴様、こいつらの仲間か?」ゴグウ・ニンジャが問いかける。「私は通りすがりの者だ。ニンジャは殺す」彼は狂っていた。ニンジャスレイヤーはジュー・ジツの構えをとり、ゴグウ・ニンジャを睨み据えた。ハウスバーナーとポイズンバタフライは戦慄した。

 なぜ彼がここに。否、問うている暇はない。ゴグウ・ニンジャが死ねば、次は自分たちが殺される!「逃げるわよ!」「了解!」

「「イヤーッ!」」二人はハウスバーナーの傍らに着地し、手早く彼の懐からZBRアドレナリン注射器を探り出すと、注射した。「ゴボッ……!」強烈なアドレナリンが心臓をキックし、彼を立ち上がらせる。逃げるぐらいはできそうだ。ニンジャスレイヤーは、彼らに背を向けたままアイサツしない。

「ゴグウ・ニンジャ。主君カツ・ワンソーに殉じて死ぬこともできずコソコソと逃げ隠れ、墳墓に眠り、しばしば起き出しては世をかき乱す臆病者よ。欧州にてはウィッカーマンと呼ばれ、モータルを薪としてザゼンを組み、カトンを修行したと聞いている」ニンジャスレイヤーは敵を威圧する。

「な、なぜ知っている」ゴグウ・ニンジャは動揺した。「説明などせぬ。オヌシらニンジャの悪行は、全て知っている。オヌシの愛する主君カツ・ワンソーともども縊り殺し、ジゴクへ送ってくれよう。全ニンジャ殺すべし!」「オノレ……!我が君に敵する胡乱者めが!」一撃必殺アトモスフィア!

「イヤーッ!」KBAM!ゴグウ・ニンジャはカトン・ジャンプで瞬間移動!周囲に爆炎を放ちながら恐るべき赤熱カトン・チョップを放つ!ニンジャスレイヤーは爆炎を浴びるが意に介さず!「イヤーッ!」ジュー・ジツの技術で巧みにリアルニンジャのカラテを捌く!タツジン!

「イイイヤァアアーーーッ!」ニンジャスレイヤーは凄まじい連続攻撃を繰り出す!ゴグウ・ニンジャは必死で捌くが躱しきれぬ!「アバーッ!」サツバツ!左膝を踏みつけられ、折られた!燃え盛る炎が噴出してニンジャスレイヤーの脚をも焼くが、意に介さず!「ジゴクの炎など私のうちに在る!」

「「「オタッシャデー!」」」三人は本殿東側の窓を突き破り脱出!ここはニンジャスレイヤーに任せるしかない!

「イヤーッ!」KBAM!カトン・ジャンプ!爆炎とチョップが襲う!「グワーッ!」命中!ニンジャスレイヤーはチョップを回避し反撃!「イヤーッ!」「グワーッ!」命中!KBAM!火炎が噴出!「グワーッ!」命中!なんたる厄介な相手か!だがスリケンでなんとかなる相手ではない!

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは燃え盛る本殿を飛び渡り、猛烈な連続攻撃を繰り出す!「グワーッ!」ポン・パンチが命中!ゴグウ・ニンジャは火炎を噴射しながら壁に激突!KRAASH!「グゥワーッ!」ニンジャスレイヤーは爆炎を浴びる!ともに重傷!「クハハハ……!ハハハハハ……!」

 ゴグウ・ニンジャは嘲笑いながらカトン・ジャンプ!「死ね!ニンジャスレイヤー=サン!死ねーッ!」ドクン!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはニンジャアドレナリンを過剰分泌し、間一髪ブリッジ回避!タツジン!「ハイクを詠め、ゴグウ・ニンジャ=サン!イイイヤァアアーーーッ!」

 KRAASH!ニンジャスレイヤーは壁を蹴って渾身のチョップ突きを叩き込む!「アッバーッ!」KA-BOOOOM!ゴグウ・ニンジャの全身から爆炎がほとばしり、ニンジャスレイヤーを包む!「グゥワーーッ!」ゴウランガ!ゴウランガ!これは相打ちか……!否!「ウフフ……グフッ……ハハハハハハ!」

 ナムサン!炎の中から立ち上がったのは、ゴグウ・ニンジャだ!全身は溶岩のごとく煮えたぎり、装束やメンポは焼け落ち、満身創痍!「アバッ……ギリギリで……おれの……!」炎の中で倒れ伏すニンジャスレイヤー!ああ……ニンジャスレイヤー!ニンジャスレイヤー!『グググ……グググハハ!』

「え」ニンジャスレイヤーが、不気味な声を放ち、キリングオーラを纏って立ち上がった。全身を包む炎は黒く変わり、メンポは奇妙に溶け、変形し、牙のように変わる。片目の瞳はセンコの火のようにすぼまり、邪悪な輝きを放っている。それは両掌をあわせ、アイサツした。

『ドーモ、ゴグウ・ニンジャ=サン。ナラク・ニンジャです』

「ドーモ、ナラク・ニンジャ=サン。ゴグウ・ニンジャです」彼は少し驚いたが、アイサツを返す。先ほどのニンジャスレイヤーと名乗ったモータルに憑依していたニンジャソウルだろう。『グググ……やはり惰弱なモータルの肉体では、儂のカラテを完全には引き出せぬか。ブザマなイクサであった』

 ナラク・ニンジャは不愉快そうに嗤う。『グググ……では、ゴグウ・ニンジャ=サン。イクサの続きだ。儂が直接くびり殺してやろうゆえに』ゴグウ・ニンジャは震えた。なんだ、これは。『くだらぬ企みであったが、ちょうどよい。カツ・ワンソーは儂が殺す。全ニンジャ殺すべし!』

 ナムアミダブツ!ナムアミダブツ!一撃必殺アトモスフィア!

「キエーッ!」ゴグウ・ニンジャは死力を振り絞り、カトン・ジャンプでワン・インチ距離へ飛び込む!だが瀕死の重傷ゆえチョップに威力なし!当たらねば無意味だ!『惰弱なカラテよ』ナラク・ニンジャはたやすくチョップをはねのけると、黒い不浄な炎を両腕に燃やし、鉤爪チョップを繰り出す!

「アババババーーッ!」サツバツ!右膝を踏みつけられ、折られた!同時に心臓と喉笛を掻き割かれ、凄まじい炎が火山噴火めいて噴出する!ナラク・ニンジャはそれを浴び、黒い炎に変えていく。モータルを薪とする炎など、彼にとっては……!『ハイクを詠むがいい、ゴグウ・ニンジャ=サン』

「アバッ……ヌンジャが代……千代に八千代に……とこしえに……!サヨ、ナラ!」KABOOOM!KRATTOOOOM!ZZZZTTTM!ゴグウ・ニンジャは爆発四散!凄まじい爆炎が本殿を吹き飛ばす!彼のニンジャ存在感によって保たれていたジンジャ・カテドラルが、崩れ落ちる!『グググハハハ……!』

 ナラク・ニンジャは本殿を飛び出し、哄笑する。彼は炎を背に、鳴動するフジサンの頂上を見上げた。上空には濃密な01の渦が逆巻き、黄金の立方体が揺れ動いている。『グググググ……!カツ・ワンソー……殺すべし……!』

 ハウスバーナー、ポイズンバタフライ、ヤモトは、ヴァレイ・オブ・オオサワを駆け上る。ヤモト以外はかなりの重傷だが、ここまでくれば逃げ帰るわけにはいくまい。ニンジャスレイヤーが追って来れば、それまでだ。止めるのが不可能であれば、せめて何が起きるかを見届けねば。

 ゴーン……ゴーン……超自然的な鐘の音が鳴り響く。フジサンの上空に暗雲が渦巻き、01の雪を撒き散らす。マッポーカリプスが迫っている!

【ジ・オーメン・オブ・メイルシュトローム】終わり

つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。