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ファンを育てるということについて考えてみる

コロナ禍にあって、自分の生活の中で大きく変化したことといえば、テレワークメインの働き方になったことで通勤時間が(ほぼ)なくなったことと、現場(ライブ・観劇・寄席)に行けなくなったことと、毎日のように推しの配信をどこかで見たり聞いたりするようになったことだと思う。

配信の有無や頻度については推しによってさまざまなので、まったく配信がない推しもいれば、毎日のようにどこかしらで何かしら配信している推しもいる。そのあたりは推しのスタンスで変わって当然だと思うので、全員に「会えないから配信してほしい!!」と強く求めるものでもない。

配信というものは、ラジオにかなり近いものだと思っている。コンテンツの内容というよりは「コミュニケーションの取り方」という面において、だけど。もちろん、配信者によってはコメントを拾わない(あるいは拾えない)人もいるので全部が全部そうとは言わないけれど、少なくともわたしが視聴している配信の殆どは、コメントやらツイートやらを拾っては視聴者とコミュニケーションを取ってくれる。大変ありがたいものである。

さて。わたしがメインで張り付いている配信というのが、松竹芸能所属のお笑い芸人である、ラジバンダリ西井さんのSHOWROOMである。

https://www.showroom-live.com/nishii_shochiku

元々は西井さんがおひとりで空き時間を使って配信されていたルームなのだけど、コロナの感染拡大の影響で劇場に出られなくなった頃、彼の先輩であるアメリカザリガニ柳原さんと二人で配信をされるようになった頃から、わたしはこの配信を視聴し始めた。というのも、わたし自身がアメザリさんの20年来のファンだから(実は間10年近くブランクがあるのだけれど)。そして、彼が参加することによって、この配信はただの(というと失礼だけれど)トーク配信から、「リスナーを育てる場」へと変貌を遂げた。

お二人の配信は、たわいもない話をダラダラと(いい意味で)喋る「トーク」と、リスナー参加型のネタコーナーで構成されている。柳原さんがとにかくおしゃべりが好きな人なので、時にはトークで2時間近く使ってしまうこともしばしばあるのだけれど、それでもとにかくめちゃくちゃリスナーのコメントを拾う。コメントから次の話題が展開することもあるほど、とにかく拾うのだ。そんな配信がネタコーナーに移るとどうなるかということは、想像に難くないと思う。

そうなるとどうなるか。リスナーのコメントのセンスが、日に日に向上していくのだ。

そもそも、アメリカザリガニのファンはお笑い力が高い人が多いように思う。というか、彼らが発信するものは往々にして「視聴者を育てる」ものなのだとおもう。大阪のラジオ局でレギュラー番組を持っていた時も、ボケ担当である平井さんが主導しているゲーム配信番組でも、ひいては彼らのライブでも、とにかく「視聴者と作る」ものが多い。ラジオならばネタコーナーへの投稿、配信番組であれば視聴者からのコメントでその日プレイするゲームを決める、ライブであれば「即興漫才」でお客さんから事前にアンケートにお題を書いてもらったものをその場で引いて、漫才の中に入れ込むキーワードを決めて、まったくの即興で漫才を展開する。ちなみに彼らはVtuberとしても活躍していて、配信で行うVR漫才ライブの際には、リアルタイムで視聴者から投稿されたコメントの中からスタッフにお題を拾わせ、即興で漫才を披露するのだ。

当然、その場ですぐ対応できるアメザリのお二人のとんでもない実力あってのことではあるけれど、こんな環境におかれた視聴者としては「うまいコメントをすれば拾ってもらえる」という意識よりも「自分のコメントがこの場を作ることに加担している」という意識で頭をフル回転させることになり、結果、参加すればするほどお笑い力が鍛えられることに繋がっていく。そして、「上手い」視聴者が増えれば増えるほど、コミュニティは強固に成長していく。

この構図は、まさに「ハガキ職人」が育っていく構図そのものだと思うのだ。タレントさんの中には、ラジオのレギュラーをとても大切にしている人も少なくない。テレビよりも視聴者=ファンとの距離感が近く、限りなく素の状態でものごとを発信できるということもあるだろうし、何よりも密なコミュニケーションが取れることで「ファンが育つ」というところに、その理由があるような気がしている。

まだしばらくは続きそうなコロナのあれこれではあるけれど、この時間をうまく使ってファンを育てれば育てるほど、現場に来てくれるファンは多くなると思われる。配信だけがすべてではないけれど、どんなときであってもこういうことができるタレントさんは強いのだろうなと感じた、というお話でした。


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