見出し画像

若手も活躍、Xtendチーム (後編)

X線分光撮像衛星XRISMに搭載されるミッション機器の一つ、Xtendの開発チームのメンバーへのインタビュー、後編です。今回は、下記のXtendチームの若手メンバー3人にお話を伺いました。(所属などは、2022年11月23日現在のものです。)

野田 博文 (大阪大学大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻,助教) 
小林 翔悟 (東京理科大学 理学部第一部 物理学科 助教)
金丸 善朗 (宮崎大学 農学工学総合研究科 森研究室 博士課程3年)

Xtendチームは非常にメンバーの距離が近く、風通しがよさそうな印象です。

野田)私はいろいろなチームを経験しました。Xtendチームはいろんな世代と一緒に作業する機会があって、いろいろな話ができた。鬼滅の刃の話も(笑)

 そういう環境で、ファミリー感がありました。若手であってもXtendのマネージャクラのスタッフと遠慮なく議論できる、作業しやすい環境でした。CCDチームに初めてきていきなり最前線を任されましたが、戸惑いながらも皆の教えを受けながら、自分自身もノっていけるいい環境だったと思います。

小林)野田さんと同じ印象です。Xtendチームは多くの学生が関わっていて、自分の大学以外の学生とも関わるので、皆同期という感じです。新型コロナのために、人と会うのが制限された時も、その繋がりには非常に助けられました。学生も含め、作業の合間で学生・教員限らず、いろんな話ができて、上から下まで風通しのよいチームでした。

金丸)私は、正直、一番最初にミーティングに出席したときは、「これはすごいところに来てしまった……」、と思いました (笑)。参加者が皆、激しく・活発に、それも何時間も議論していて、こういう世界があるのかと面食らいました。

 その後、チーム員の人となりを知って、真摯にやってる結果がああいう活発な議論になるのだなと理解しました。

開発は、予想外のことも起こりますし、上手くいかない時期もあると思います。気持ちを切り替えたいとき、どうされてますか?

野田)体を動かすのが好きで、新型コロナの流行前までは剣道でリフレッシュしてました。阪大に教員の剣道の集まりがあり、そこでストレス発散してました。。新型コロナの流行で一時中断していましたが、最近再開して、ストレス発散しています。

小林)私はテニスで気分転換してます。ボールを打つとストレス発散になります。

雨の日はエレキギターを弾いたりも。ヘビーメタルとハードロックが好きで、1970-1980年代の曲はよいですねぇ。

金丸)私は大学構内を散策するのが好きです。いつも同じ道を散策するのですが、同じ時間に歩くので、定点観測みたいで面白い。隣が農学部なので、研究のことを考えて歩いていると、馬や牛、ときには野生動物に出くわすこともあります。

皆さんからXtendチームへメッセージあれば。

野田)Xtendチームは、シニアメンバーも非常に若手の能力を買ってくれて、任せてくれて、こちらが言ったことも真摯に受け止めてくれました。非常に働きやすい環境を作って頂いたと、感謝です。今後も同様にお願いします!

小林)右に同じ。

金丸)森さんの直属なのでいろいろ言いづらいが(笑)。
 チームの皆さんには国際学会での発表を認めてもらったり、発表・論文執筆の際たくさんアドバイスしてもらったりしたのはとてもありがたかったです。今後もよろしくお願いします。

皆さんは開発者であるとともに、サイエンティスト。打ち上げ後、XRISMでどんなことしたいか、夢とかやりたいことを教えてください。

野田)学生の頃から超巨大ブラックホール周辺からのX線やその他の波長の観測を組み合わせた研究しています。XRISMではそれをさらに進展させたいという気持ちです。

例えば、超巨大ブラックホールに質量降着が激しく起こった際に現れる活動銀河核。私は活動銀河核において超巨大ブラックホール周辺がどういう構造になっているかを調べたいと思っています。特に空間分解が難しいブラックホールの近辺の状況を知りたいとき、重要になるのは精密分光です。XRISMの精密分光によって、超巨大ブラックホールに物質が飲み込まれてく仕組みを理解したいです。

XRISMの精密分光で、高温プラズマの運動や化学組成、電離状態などがわかります。これを活かすことで、超巨大ブラックホールと銀河・銀河団のつながりなど、超巨大ブラックホールが宇宙の進化に果たす役割の理解にも貢献できると期待しています。

小林)私は野田さんより天体のサイズが小さくなりますが、ULX (Ultra-Luminous X-ray source)と呼ばれる激しくモノを吸い込む天体を主に研究しています。

ULXは1980年代に見つかったのですが、30年以上経過した今でもその大多数が正体不明で、謎の多い天体です。中心に何があって、その周りで物質がどのように降着しているのかなど、基本的なことですら全くわかっていないのです。私は、XRISMの精密分光でULXを調べる新しいウィンドウが開けると期待しています。

金丸)私は、超新星残骸やパルサー星雲といった超新星爆発後に形成される天体を研究しています。
 超新星残骸の研究は、爆発した星やその周りにあった物質からなる高温プラズマをXRISMで超精密分光することによって、元素の組成や爆発の様子といった面で必ず新しい地平が開けるはず。それから、Xtendでは、広い視野を使って、ぼやっと拡がったパルサー星雲の観測で面白いサイエンスをやっていきたい。

新しい時代が到来するという、その面白い時期に、最先端でデータを触れられるような場所にいるっていうのがラッキーだなと。世界中のいろんなサイエンティストがユニークなアイディアで勝負すると思っているので、皆がどんな研究をするのかも楽しみです。

インタビュー日:2022年3月29日
インタビュアー・編集:堀内貴史・生田ちさと


この記事が参加している募集

仕事について話そう