尋稀

ことばを使った作品を創作しています。

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マガジン

  • ことば

    最近の作品をまとめています。

  • ことば 00's

    2000年以降の過去作品です。

  • ことば 90's /state

    1990年代にstateというユニットで千葉宏樹名義で活動していた頃の作品たち。 若気の至り。

最近の記事

ひかりの環

伝播する恐怖 乗じる憎悪 踏みつけにされるささやかな過ち 粉々に砕けてちりと化すまで だれもが意識を失い 昏倒し そこは無意識の帝国となる われ先に群がる人の波が うねるたびに間違った方向へと現象を導いて あたりまえだったことたちは いつだって顧みられることはなく もちろんいまでも ・・・ 目を覚ませ 踏みとどまれ ぬるぬるとすり抜けろ 騒乱の中からひとつのちいさな声をさがして 耳をかたむけ そこに向かえ それは待っている ずっと前から そしてこの先も つねにそこにいる

    • 殘形の身體

      どんなに強く求めても わたしはわたしを手に入れることはできない なぜならわたしの内側は常に空っぽだから だからわたしは うつろな自分にぴったりの 美しい時計仕掛けの身体を手に入れる がらんどうの身体で空っぽの心をしっかりと包み込む つるりと透明感のある無垢の外観と たくさんのぴかぴかな歯車 内側はフラクタルな装飾で隅々まで埋め尽くされている あなたからは見えないわたしのがらんどう 空っぽな心の代替となる秘密の裡面 複雑な装飾ひとすじひとすじが 心の機微のかわりをつとめる どこ

      • こども王国

        裁判 こどもは勉強しないのが一番だ なのにおとなはやれやれ言って ごほうびもくれない そんなことやるわけないでしょ ふつう 皿洗いの刑 こどもと遊べの刑 こどもにテレビをずっとみさせろ あとゲームをずっとやらせろ これはお話じゃないよ ほんとにあるんだよこども王国 おとなが来たらザッと矢をむける

        • 重ね合わせ(Work in progress.)

          第一段階 凪 誰かに内側からずっと見られている感覚 少しずつ自分が透明になっていく 失うのではなく透き通っていく 逆相位のホワイトノイズ 知っていることすべて 感じたことすべてが 見えない光がゆっくり射してきて みな透き通っていく 透明になることに恐怖し 飛び降りて死のうとした男は 飛び降りていく自分を上から眺めている自分に気づき 気がついたらその上から眺めている自分になり 飛び降りた「かも」しれない自分と世界ごと重ね合わせられる そこから彼はずっと落ち続ける感覚を内在し 永

        ひかりの環

        マガジン

        • ことば
          12本
        • ことば 00's
          6本
        • ことば 90's /state
          23本

        記事

          overwriting.

          ことばで世界を上書きする あったことをなかったことにするんじゃなくて あったことの意味そのものをあるがままの形にするために 閉じた理解をもういちど僕たちの手元に引き寄せて それがまだ生きてるってことをたしかめて 神経をつなぎ直し 呼吸がしやすいように胸元のボタンをひとつ外して そうすればきっとまた きみは光を身にまとい 過去も未来も引き連れて違う姿で現れる ことばは壁じゃなく 皮膚に沿って走る皮膜のように 僕たちそのもののすぐそばにいて 僕たちとは決して交わりはしないけど 僕

          overwriting.

          Ghosts of Mars.

          ぼくらの目にする、通りのあちこちにこびりついている残像は、目の錯覚なんかじゃなく実体があって、それがエネルギーの残滓で出来ている以上、ぼくらの存在と同じくらいにはリアルで、どちらも常に過去に捉われ、未来に置き去りにされていて、結局のところどちらにもたいした差は無い・気がつけば簡単にすりかわってしまうほどに希薄な意思・どうやらぼくらははじめから記憶の中にだけ存在するみたいだ・もっと計り知れなく恐ろしいのが生命だと思ってた・価値を創造することに幸福があると思っていた・詰まるところ

          Ghosts of Mars.

          ことば for 3331

          2012千代田芸術祭「3331 アンデパンダン」にて 千葉弘美と共同で作成・出品したインスタレーションの映像パート 生活の場でもある東池袋再開発地域での2007年と2012年の記録 及び そこかしこにこびりつき、漂うことばたちの収集 3331/2012;おのれが誇らしげに提示した仮説に溺れるおまえ ・最近、わたしの周りでは毎日の様に風景が変わる ・昨日あったはずの建物が速やかに解体され、 ・更地になり、アスファルトで舗装され ・グリーンのフェンスで囲まれる ・風景が消え

          ことば for 3331

          瘋狂 Part1

          1 この宇宙のほとんどは、わたしのいない時間でできている かつて、わたしの生きていた時間があったと もはや過去のこととして、いまそう断言したっていい 全てのものに終わりがあるとしたら 全てのことはどこかでもうとっくに終わっているのだ わたしたちは皆、そこに向かう なにもかも約束の下に束ねられ なにもかもがたったひとつの言葉からできていて なにもかもがその変奏である その限りにおいて この宇宙はたったひとつであり まあ、よく言ってちょっと高度なレベルで折りたたまれたしつこい一筆

          瘋狂 Part1

          2011年2月10日。

          乾いた瞳 襲いかかる日々の光景に 無防備にさらされて 指先で神経をなぞられるような 吐き気のする外の寒さに放り込まれて 生きることそのものが 執拗な痛みを伴う様になって 悲しみが もはや激しい感情を伴わなくなって 懐かしい全てのものが 腐れ落ちて 息ができない 自分がかつてなりたかったものが なれなかったものに変わって 思うままに言葉を発したり 形づくったりすることすら規制されて 怒りが過大な体力と努力を必要とするようになって 美しいものすべてがそれほどでも

          2011年2月10日。

          2010年8月19日。

          1 さざなみひとつ立てない頑なな水面 いつだって流動的だと思っているようだけど液体にだって言い分はある 今日は何があったってぜったいに揺れないと決めた 無為無謬 内側でどんなに渦巻いたって たちまち逆向きにねじれて ぜんぶ無かったことにしてしまう 心を動かしたり何かを感じ取ったりすることに そうたいした意味があるとは思えない 意図が読みきれないって察しの通りそれは意図が無いって事 今日いちにちは何も感じないし何にも感動しないと決めた 今日いちにちわたしの心は静かに眠っている

          2010年8月19日。

          ★AUSTRALIA 「カンガルーと稲妻」劇中詩

          ★AUSTRALIA オン★サンデイ★モーニング カーテン越しに乱反射する春の太陽 腰のあたりをくすぐる温もり 目を醒ますのは とても簡単なことだ まぶたを開いて 差し込む強い光を受け入れ スポイト一滴分の頭痛に耐える勇気があればよい 一日はもう勝手に始まっている、と考えてみよ しっかり見てはいけない ぼんやり捉えて すばやく引き上げろ そして出会うのは 手をついて 腰を深く沈め 首を左に傾げて ぼくを見おろす 自信に満ちたきみの顔

          ★AUSTRALIA 「カンガルーと稲妻」劇中詩

          MUD. /state1998

          このままもう少し眠っていたい 燃えつきて何年も放ったらかしになっている テクノロジーが僕らを孤独にしたのだと 明け方のテレビがいっていた その一方で テクノロジーこそ僕らをつなぐ最後の手段だと 夜更けのテレビでいっている それはもう現実離れした現実 疲れているから 望んでもいない記憶ばかりが目の前で踊る 聞きたくもない歌 どうでもいい出来事 退屈でどうしようもない記憶の数々に埋め尽くされて 僕は消モウする つらい追憶の方がまだましだ アポトーシス

          MUD. /state1998

          生成1 /state1998

          弱い者にはどこまでも強く 尊大さを努力の結晶とみなし チャンスさえあれば足元をすくい ひとの思いやりには感情を交えず 受け取るものは受け取り 加味すべきでないものは加味せず 原因は探らず 問いかけは愚かさの象徴であると肝に銘じ 信じることを止め 疑うことを禁じ 酸欠に耐えうるだけの大きな肺と 考えすぎることのない脳を持ち アクションに対していちいちリアクションを伴わず かかる暴力には全て甘んじ 愛は知らず 全ての希望は夢でしかなく 決して分析せ

          生成1 /state1998

          irf. /state1998

          横暴な世界のおきて 目の前に飛び込んだ置き手紙 ・・・約束しない    約束事なんてないのだから 日付変わって金曜日 例えば夜で池袋で それは味覚に対する挑戦か 迷走する豚のように彼女たちは叫び声をあげる ときどきそれは呪いのように耳に飛び込む 手当たり次第に感動を漁る あるもので満足しなければならないということばは いつの時代にも囁かれ続ける 今僕に必要なことは何だろう 血の気をどこかで抜きに行くことなのか 数十時間君に会わなくったって 僕らは

          irf. /state1998

          haveagoodsummer. /state1998

          *都市の病巣のすぐ側に暮らす *貧血ぎみだ *ハヴァグッドサマー *封じ込められた怒り *心を慰めようにも心が見あたらない *彼女の指さすものがわたしには見えない * *やや青みがかった灰色の午後 *オフィスビルの窓際に立つ僕は *外の熱から見放され *細かい汗の粒を浮かべる * *ほとんど完璧なまでに役に立たなかったあの旅 *いずれ到着の案内もなしに山手線がホームに滑り込む *確かなものはある *それは君にもわかっている *ただそれが君の期待

          haveagoodsummer. /state1998

          STATE/ami(e) /state1998

          》 自由の上に立ってそこから飛び上がる ひとは自由になるのではない またひとつ自分が自由であることに気付いてしまうだけなのだ 否応なしに自分が自由であることに気付いてしまう 全ての出来事が、ひとをそうした方向に仕向けている だから、大切なことは、自由を求めることではなく 自由の上に立って、では何を始めるかという事だ 全てのプランは役に立たない その上に立ったときに初めて考えを持つことができる 何故ならば自由とはその度=その旅に自分が立つことになる全くただひと

          STATE/ami(e) /state1998