見出し画像

ゲームマーケット初出展の危機との戦いから学ぶこと<ゲーム制作編>

 4月23日にゲームマーケット2022春(以降ゲムマ)に出展しました!

 ゲムマには初めての出展で、全体を通してトライアンドエラーばかりでした。これから出展しようと思う方の参考、あるいはそうでない方が興味を持つきっかけになれば、と思ったので自分向けのメモを兼ねて記します。

前提:ゲームマーケットとは?

 年に複数回開催しているアナログゲームの大型即売会です!

ゲームマーケットは、“電源を使用しない”アナログゲームのイベントです。

出展者が製作した、さまざまなジャンルのボードゲームやカードゲーム、テーブルトークRPG、シミュレーションゲームなどが販売されており、 また、ゲームに関わる解説書やコマ、サイコロといったグッズも豊富に扱われています。

体験卓があるブースでは、そうしたゲームを実際に遊ぶことができるほか、小さいお子さんが遊べるコーナーがあったり、謎解きゲームが遊べたりと、 老若男女どなたでも、1日中アナログゲームを楽しんでいただけます。

ゲームマーケット公式サイト「ゲームマーケットとは」より

 ちなみに公式の来場者数発表によると、ゲムマ2022春は私が出展した23日だけでも10,000人近くの来場があり、2日間両日で合わせると来場者は15,000人を上回っていたようです。

私自身、アナログゲームを買いに参加した経験もあり、一度は出展してみたい特別な場所でした。

前提:つくったもの

 今回は私自身が見たことが無い、新しい遊びを作りたいと考えて制作に取り組みました。その結果として生まれたのが30cm超のタワー型コンポーネントに紐を張り巡らせる対戦ゲーム、Ultimmate Cat Towerです。詳細はリンク先をご覧ください。

2021/11/20-12/19:「やりたい」を「やれる」に変える

 11月20日に開催されたゲームマーケット2021秋に知人のymkさんが出展していたことが事の始まりでした。

元々、「過去にコミックマーケット(以降コミケ)にサークル参加していた」「幾度か仲間内でボードゲームを作って遊び合う機会があった」という2つの理由でゲムマ出展に興味はありましたが、これまで踏み出せずにいました。「やりたい」気持ちはあるものの「やれる」確信がなかったのです。
 それを変えてくれたのがymkさんの出展であり、下記の2つの点で私の出展申し込みを後押ししてくれました。

  • 知人の出展を直に目撃して”ゲムマ出展”の解像度が一気に上がった

  • 将来的に疑問点を尋ねられる相手ができた

とはいえこの後もゲムマ春の申し込み締め切り、12月19日まで悩み抜いた上で決断して出展申し込みを送信しました。決断する上で有難かった最後の出来事は共同出展を提案してくれた前田さんの存在です。

 「出展費用を折半できる」「初出展ながら2作品を陳列できる」という2点で安心感が凄まじく、大きくリスクを軽減してくれました。更に以降の出展ブース準備や進行上のタスク管理、モチベーションの維持など様々な方向性でお世話になりました。

 ちなみに今回の私の背中を押してくれたのは外的要因でしたが、それが無ければ踏み出せないかというとそうではありません。背中を押してくれた「解像度の上昇」と「リスク軽減」は知人との交流のみでなく体験することや調査でも達成可能なものです。ゲムマ出展に限った話ではなく今後の新しい挑戦でも励みたいです。

メモ:
交流や体験、調査が「解像度の上昇」と「リスク軽減」に繋がり、”やれる”確信をもたらす

2021/12/19-2022/2/11:「面白いか?」の繰り返しと「作れなくね?」の絶望

 「やれる」と確信したら万事が上手くいくか?というとそう易々とはいきませんでした。

2022/1/12 Ultimate Cat Towerの発想

 まずは着想したコアとなる体験を元にルールを作成、そしてひたすらにプロトタイプでのテストプレイを重ねながらルール修正を繰り返しました。ここから「面白いか?」の自問自答が始まっています。

メモ:
終始テストプレイが重要
テストプレイが全てを解決する

左:タワーと紐だけが決まっていた頃の検討用プロトタイプ
右:タワーでの取り合いだけが決まったルールテスト用プロトタイプ

 上記、ルールテスト用プロトタイプの時点で「タワーを立てる」「紐を張る」の2点が決まりました。最終形でもここが変わることはありませんでした。また、この段階では既存ゲームのコンポーネントを利用していますが安定性に難がありました。タワー型コンポーネントの安定性はプレイ時の体感に直結します。制作の中盤まで安定性の課題と闘い続けることになります。

 この時点で1月中旬、気づいてなかったのですが尻に火が付いています。印刷入稿の〆切が近づいています。後に知りましたが4月下旬開催のゲムマ春の入稿〆切はギリギリまで延ばしても2月末が限界でした。しかし、虫の知らせか天の恵みか、このタイミングで印刷所の方と相談する機会を得ました。株式会社萬印堂様の無料相談会です。

 こちらの会は数多のボードゲームコンポーネントの印刷を請け負ってきた萬印堂さんに直接コンポーネント作成の諸々を相談できる機会です。特に初めての制作だった私は得るものが多く、これなくしてUltimate Cat Towerの実現はなかったほどです。
 この場で改めて感謝したいです。心からありがとうございます。

メモ:
餅は餅屋。コンポーネントの相談は印刷所へ

2022/1/22 相談会にて提案していただいた構造案。これがほぼ完成形となる

 ほぼ完成形と近しい構造を提案して貰い、タワー型コンポーネントの不安定さもほぼ解消できました。しかし同時に現実を教わった場でもありました。
 Ultimate Cat Towerは目新しいタワー型コンポーネントがウリのゲームでしたが、目新しいということは前例が無いこと、つまり効率化された製造法がありませんでした。これにより特注の加工が必要となったのですが、この時点で2月中旬に見える依頼〆切と特注加工による製造コストは到底達成できるものではありません。一時期はゲムマ春での販売は絶望的な状況になりました…。

 これに対する回答が「コンポーネントの内製化」でした。タワー部分の厚紙部分の加工を全て自身で行う判断をしました。これは実質的には対応の先送りでしたが、コストと納期、両方の問題を一気に解決しました。
 これにより、未来の自分の作業時間をいけにえにゲムマ春での販売を実現したのです……!

メモ:
新規性の高いコンポーネントはコストが高い
内製化が解決策となる場合がある

2022/1/23-2/28:〆切との闘いと振り返り、そもそも…

 内製化でゲームの制作ステップは2つに大別できました。

  • 2/28 〆切:印刷所依頼物のデザイン

    • 化粧箱デザイン

    • カードコンポーネントのデザイン

    • 説明書のデザイン

  • 3月末目標:内製コンポーネントの加工

    • タワー柱パーツ他全て

 後者の内製コンポーネントの加工は私の時間さえ確保すればいつでもできることです。前者の完了後にとりかかることにしました。まずは前者の印刷所依頼物のデザインです。
 この時点で私はAdobe Illustrator(以降イラレ)をほぼ未経験でした。必要こそが勉強の最も大きな原動力。ことここに至って初めてイラレの参考書を購入しました。最終的には下記「Illustrator 10年使える逆引き手帖」に落ち着いていますが前段階として、図書館で類似書籍「Illustrator しっかり入門」「Illustrator スーパーリファレンス」を併読してみました。本との相性は人それぞれなので、併読が可能なら併読してから購入対象を決めるのが無駄ないでしょう。

メモ:
参考資料は同種の資料を併読して選ぶのがよい

 これでイラレの使い方を学びながら入稿用データの作成を進めます。なお、この段階でも変わらずテストプレイは重要でカードデザインやUI的な意見をもらいながら調整を繰り返します。

仮制作したコンポーネントに被せてデザインを確認

なおこのタイミングでゲムマのカタログに掲載するサークルカットを作成しています。

 この段階で前田さん作のBLACK COINの紹介画像ではモデリングしたコンポーネント画像を活用していました。Ultimate Cat Towerについては今回のゲムマでは作成できませんでしたが、後のブース準備時などモデリングしたデータがあると役立つ場面が多かったので作成するのが良さそうです。

 調整を重ねて最終的に2/28に入稿を完了したのですが、この〆切はあくまで最終締め切りです。制作コストを下げるためには一か月半ほど手前にある早割の〆切を目指すのが重要です。このことは今回目指すことすらできなかった私自身、肝に銘じます。

メモ:
早割価格が本来の値段。通常価格は割り増し印刷と思って臨むべし

 ここまでで前編「ゲーム制作編」は終わりとします。実際はブース準備と並行する形で内製化したコンポーネントの制作作業が並走することになるのですが…。
 後編「ブース準備編」についても追々記述してアップします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?