わたしが大失恋をした彼が選んだひとは
ほんとうに申し訳ないけれど
どうしてわたしが負けたのか
わからないような相手だった。

ほんとうに申し訳ないけれど
容姿も
知性も
Facebookで見る写真や
友人たちから聞くようすから判断しても
わたしのほうが数段上だった。

若いころのわたしは
それがぜんぜん腑に落ちなくて
今は久しぶりの再会で盛り上がって結婚したけど
いつかつまらなくなって
わたしのところに戻ってくるだろうと
高をくくって
待ち続けて十数年が過ぎた。

今はわかる。
「こういうところだよ、と」
会ったこともない相手を
外からわかる情報だけで判断して
ジャッジした上に、
自分が勝っていると思っていたところ。

プライドの高い彼のこと。
知的ですてきな奥さんを連れて歩くことよりも
日々、安心できる相手といることを選んだのだ。

わたしにはない
彼を受け入れる器のあるひとなのだ。

ここにたどりつくまでに
ずいぶん長い旅をしてしまった。
いや、立ち止まったままだったのかもしれない。

ビュッフェにて
作詞：松任谷由実
作曲：松任谷由実

『昨晩お会いしましょう』 1981/11/1