Google退職します

2019/3/15が最終出社日でした。インターン期間も含めると4年ちょっと勤めたことになります。

ちょうど昇進してプロジェクトも一区切りついたタイミングで他にすごくやりたいことができたので転職という形です。

素晴らしい環境なのに情報が少なくて、入ると良さそうなのに敬遠している人を何度か見たので、この記事が参考になれば幸いです。辞める人が言うのも変な話ですが。

あと、IT業界は最近良くなりつつあるものの、世知辛い話が世の中に溢れていて、ポジティブな話があまりないというのも悲しく感じていました。日本でエンジニアとして2000万円稼げる環境があるというのを知ってほしい。いずれ海外に行ってみようかと考えている場合の第一歩としてもかなりオススメです。


何してたの?


いわゆる(ソフトウェア)エンジニア(社内用語だとSWE; “すうぃ”と読む)です。

たまに勘違いしている人がいて悲しいのですが、Googleの日本拠点(東京オフィス)はエンジニアは結構大量にいて募集もしていますし、仕事のレベルも本社や他の海外オフィスと同等です。

こういう基本的な情報ですらあまり外に出ていないのは悲しいことですが、仕方なくもあります。というのも、Google社員が迂闊なことを言うとすぐにメディアが近寄ってくるので、在籍中に所属を明かすメリットは基本的には無いんですよね。

私は、大学院生時代にGoogle Playチームで2ヶ月ほどインターンをして(当然給料は発生します)、その後新卒でフルタイムでGoogle MapsのUGCチームに入ってそれから今まで4年いました。

Google Mapsをよく使っている方なら気づいたかもしれませんが、最近数年で写真や口コミがかなり増えたのはMapsのUGCチームの仕事ですね。

私自身は、写真関係を触っていることが多かったです。ログ分析・ユーザターゲティングの実験・AndroidクライアントへのUI追加とそれに伴うバックエンド実装・アップロード推薦機能のパイプラインとかそのへんですね。

最後の1年ぐらいはフロントエンドのテックリードとしていくつかの機能を外に出す機会があって、一番最近だとそこそこ大きい機能をクライアントエンジニア5人ぐらいのチームでスクラッチで書けたので結構面白かったです。

どんな場所なの?


多様な人々
私が普段一緒に仕事するのはほとんどがソフトウェアエンジニアかプロダクトマネージャーなので偏った視点になりますが、エンジニアだけ見ても本当に多様です。

近くを見渡してみると、私が思いつく任意の話題について、無限に話のできる人がいる感じがします。技術よりの話題だと、computer scienceの話、最強のプログラミング言語でも、カーネルでも、CPUでも。これは情報系の大学とかでも得られる雰囲気だと思います(私は情報系出身じゃないので伝聞ですが)。

Googleでユニークだと思ったのは、謎の趣味を持っている人がかなり多い点です。写真撮影とか、パスタのこね方とか、不動産運用の話でも。アウトドア系でもりもりやってる人も結構いて、なぜかダイビング免許持っていたりする。

そして当然のようにいろんな国に住んでいた人がいる。さすがに全社的にdiversityを推進しているだけのことはあります。インドで2ヶ月ヨガやってくるわ、みたいなことをネタとしてではなくてナチュラルにやる同僚がいる。

海外から日本に一時的に来ている人、永住権を得ようとしている人、逆に日本から海外に行った人、戻ってきた人、といろいろいるのですごく具体的なイメージがわきますし、ビザ取得や税金手続きの経験談や支援も豊富です。これが冒頭に書いた海外に行きたいと思っている場合にオススメという理由ですね。

そして、オフィス内での雑談は多めの文化です。固定デスクがあって、フリーアドレスではないですが、無料飲み物とお菓子を取りに行くために頻繁に歩き回る人も多いし、そもそも業務時間という概念がかなり希薄です。

こういう多様性のある環境で、(少なくとも私が接した)SWE全員がまともにソフトウェアの話をできるし、コードを書けるというのはかなりすごいことだと思います。

ただ、これらの恩恵をまともに受けるためには、英語が結構使える必要があります。日常会話が一番難しい。仕事するだけなら、読み書きできて会話はぎりぎり技術面接に通るレベルでも何年か経てば問題なくなる人がほとんどですが、雑談するほど慣れられるかは人によります。

異世界技術スタック

Googleは創業から20年経っていて、社内で時間をかけて有機的にできてきたソフトウェアが数多くあります。クラウドとか、ビッグデータという言葉ができる何年も以前から、ユーザー数的にそれらを必要としていたのである意味必然ですね。

入社初日はチームの人が何言ってるのか分からなくて、異世界に来てしまったんではと思うぐらいには独自ソフトウェアが多いです。

G SuiteやGoogle Cloud Platformとして外部に提供されているものもありますが、内部にしか無いものも多いです。Googleはほぼすべてのコードと設定を単一のリポジトリ(内製)で管理していることもあって、テスト環境、リリースマネージメント、サービス管理などの開発プロセスに関わるものは特に独自性が高いです。

社内の既存システムに統合するため歴史的経緯で仕方なくというものもありますが、未だに外界に存在しない概念や、需要を数年間先行していそうと思う物も多くあります。残念ながらここには書けないわけですが。

社内のミームで使われるフレーズで、“5TB? I forgot how to count that low” (5TB? そんなに小さい数え方は忘れた)というのが少なくとも私がインターンした2013年にはあって、それが真かはさておき、Googleが扱っているスケールの大きさと技術的挑戦の独自性を伺い知れるかと思います。

ただ、自分は本当に仕事できるんだろうか、社内システムでしかソフトウェアを作れない人間になっているのではという不安がだんだん増してくるのも事実でした。

待遇

健康に生活する上では一番重要な要素です。

SWEとしてまっとうな業務評価をもらっていれば給与はどんどん増えます。具体的には一回昇進した時点で、収入1000万円は超えていましたし、二回目の昇進後に2000万円を超えました。

昇進プロセスですが、各レベルに対する基準が明文化されているので、それを見たりマネージャーと相談して、自分が次のレベルに達してそうと思えば”昇進したい”と申告することができます。そうすると通常より精密な業績評価が行われて、運良く基準を満たせば昇進、そうでなければまた次回以降という感じになります。

給与に関して、東京はマウンテンビューよりは安いです。仕事の内容や評価基準自体は全世界で共通なのですが、評価に対応する給与は各国の市場や生活コストに相対的に決まるようです。給料もっとほしければ引っ越せばいいという考えですね。私はこの方針には不満はないです。

面白い要素として、給与の何割かはAlphabet社の制限付き株式ユニットなのですが、USの証券会社の口座に付与される(=源泉徴収されていない)ので否応なく確定申告する必要が出てきます。

組織構造

ティール組織という本の用語を使うなら、Googleはティール要素の多いオレンジ組織です。マネージメントのツリー構造はあるけれども、パフォーマンス評価が上司ではなくて独立性のある委員会によって行われるのと、ツリーの組み換えの頻度が多いので、権限が比較流動的に回っている感じです。組織より広い目的意識や価値観を持っている人も多いですが、それを汲み上げる部分は(まだ?)システム化されていません。

また、大企業ならわりとそうなのかもしれませんが、教育が充実しているが強制はされていないというのも良い点です。いろんな技術・マネジメント・ソフトスキルの実践的な講習が数多くあります。そう望むのなら無限にいい人材になれる場所だと思います。

ソフトウェアエンジニアの話に限定すると、よく世間で言われる世知辛い話として、マネージャーにならないと給与が上がらないという話がありますが、Googleはそうではないというのも良い点です。

SWE関係の職能として3つの要素があります。
Individual Contributor (IC) 自分の書くソフトウェアに責任を負う。デザインしたり、コード書いたり、メンテナンスしたり。
Tech Lead (TL) チームがつくるソフトウェアに責任を負う。複数のICと自分を合わせたアウトプット全体を長期的に最大化するのが仕事。できそうなこと、できなさそうなことを予測して、Product Managerと仕様をすり合わせたり、計画を立てるのに協力する。
Engineering Manager エンジニアのチームの評価に対して責任を負う。計画を立てて承認を得る。それにチームメンバーが満足して実行する状態を作る。人間関係の問題解消・キャリアパス支援もマネージャーの仕事。

ICからTLっぽくなっていく人もいるし、TLとManagerを兼任する人もいるし(TLMと呼ばれる)、Managerに特化していく人もいます。最近読んだThe Manager's Pathという本は、IC → TL → Manager → ... →VP of Engという変遷をわかりやすく描いていて、少なくともManagerぐらいまでは自分のGoogleでの印象と近いので読むと参考になると思います。

専門性の高い領域だとICやTLのままインパクトのある仕事をしてどんどんレベルが上がっていくパターンがあります。研究っぽいものやレンダリングエンジンとかコンパイラみたいな難しいけど良いコードを書けばなんとかなる部類のエンジニアリング問題はこの傾向が強く見えます。

一方で、製品よりの領域だと、他のチームがもっている知見や戦略との摺合せが重要になってきます。なので、社内の情報を集めやすいTL/TLM/Mのほうが価値がある仕事がしやすく、結果的にレベルも上がりやすくなります。

私がいたのはどちらかというと後者の領域で、最終的にはTLをやっていました。正直、入社した頃には自分がチームがどうこうみたいなことを考える人間になっているとは思っていなかったけど、面白い体験でした。


最後に


結局の所、悪い要素は特に無いです。少なくとも個人的には。

私が辞めるのは、今やりたいプロジェクトが日本になかった(私はあんまり海外に住みたくない)というのと、組織がまだ確立していない小さい環境を体験してみたくなったという、個人的な相性が原因です。

というわけで、Googleは今でも全力でオススメできる会社です。貯蓄という意味でも、色々な文化と情報にふれるという意味でも、かなり選択肢を増やす方向に働くと思います。運良く相性の良いプロジェクトが会社的にも優先順位が高ければ、長期的に社会的インパクトのある仕事ができる可能性もあります。

careersで募集中なのでぜひどうぞ。

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eqsan

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