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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第291回 花のごとき容ならび無く(大伴旅人)

花のごとき容(かほ)雙(ならび)無く、光(てれ)る儀(すがた)匹(たぐひ)無し。柳の葉を眉の中に開き、桃の花を頬の上に発(ひら)く。意気雲を凌ぎ、風流世に絶(すぐ)れたり。
 
 万葉歌人、大伴旅人(おおとものたびと、665~731)が九州の松浦(まつら)地方の伝承をもとに作った神仙の世界。旅人が玉島を遊覧しているとき、偶然魚釣りをしている数人の常世の乙女に出会った。『万葉集』巻5に収められている。
 旅人が花のような妙齢の美女に「あなたたちは神仙ですか」と問うのに対し、娘らは「児らは漁夫の舎児(こ)、草庵の微(いや)しき者にして、郷も無く家も無し」と答える。
 旅人は728年、太宰帥として太宰府に赴任した。そこで山上憶良らと交流し、筑紫歌壇を形成した。翌729年に長屋王の変が起こり、その翌年に大納言となり帰京する。しかし、この間の過労がたたったのか、731年7月病没した。


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