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七色のポエジー(書きとめておきたい古今東西の詩句)

第259回 ドーヴァーの浜辺(マシュー・アーノルド)

The sea is calm to-night.
The tide is full, the moon lies fair
Upon the straits; ― on the French coast the light
Gleams and is gone; the cliffs of England stand,
Glimmering and vast, out in the tranquil bay.
(今夜の海は穏やかだ。潮が満ち、美しい月が海峡に浮かぶ。
 フランスの沿岸に灯がともり、やがて消える。
 静かな入江に臨むイングランドの岸壁は、広々と照らし出される)
 
 英国の詩人、マシュー・アーノルド(Matthew Arnold, 1822~1888)の「ドーヴァーの浜辺(Dover Beach)」の冒頭。詩人は恋人とともにドーヴァー海峡を見下ろす部屋にいる。そして、高鳴る波の音を古来人間につきまとう悲しみの曲と聞く。
 アーノルドは英国南東部のサリー州で生まれる。父はラグビー校で校長を務める聖職者だった。アーノルドもラグビー校を経て、オックスフォード大学で学んだ。
 卒業後、政府の視学官として国内外を広く視察した。その間に各国の教育事情や社会問題を観察し、1869 年に名著『教養と無秩序(Culture and Anarchy )』を発表。社会批評家アーノルドは一貫してヴィクトリア朝の頽廃を批判した。
 詩人としては、哀感に満ちた瞑想詩を多く書き、イギリス耽美派の代表と目されている。

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