山下洋平

ローカルテレビ局で報道記者をしています。ノンフィクションが大好き。書評やジャーナリズム…

山下洋平

ローカルテレビ局で報道記者をしています。ノンフィクションが大好き。書評やジャーナリズム論などを綴ります。著書『ルポ ゲーム条例』https://amzn.asia/d/1HnHJHH『あの時、バスは止まっていた 高知「白バイ衝突死」の闇』

最近の記事

【書評】『わっしょい!妊婦』 笑えて、刺さる…出産を通じて社会を考える一冊

小野美由紀著『わっしょい!妊婦』(CCCメディアハウス刊)をご恵投いただきました。読みだしたら止まらず、一気に読み切りました。何度も笑ったし、ズシンと心の深いところにも残る傑作でした。 言葉選びのセンスと観察眼…笑える一冊 鈴木智彦さんの『ヤクザときどきピアノ』や近藤康太郎さんの『三行で撃つ』『百冊で耕す』(いずれもCCCメディアハウス刊)を手掛けた名編集者、編集Lilyさんが「自分の編集人生でいちばん笑った」とツイートしていて、これは絶対読まねばと気になっていた一冊。

    • 【映画感想】はりぼて 〜これぞ映像ドキュメンタリーの力!

      富山のチューリップテレビが制作したドキュメンタリー映画「はりぼて」を見てきました。 調査報道によって、富山市議会議員の政務活動費の不正が次々に明るみに出て、議員14人が辞職するという、むちゃくちゃな内容なんですが、同じローカルテレビ局の記者が作ったドキュメンタリーということで、どうしても撮影とか編集にばかり目がいってしまいました。 どの時点でドキュメンタリーにすることにしたのか定かではないですが、記者会見や議会などで、通常のニュース取材では絶対撮らないであろうカットが多く

      • 【番組感想】ETV特集「7人の小さき探究者~変わりゆく世界の真ん中で~」

        2月27日の夕方、会議中にスマホに流れ込んできたニュース速報を見て、目を疑った。 「安倍総理が全国の小中高校に臨時休校を要請」 共働き世帯は誰が子どもの面倒を見るのか?間近に迫った卒業式は?あまりにも唐突な政府の決定に、愕然としたのを覚えている。当時、私が住む香川県ではまだ新型コロナウイルスの感染者はゼロ。クルーズ船の集団感染や、北海道で感染者急増のニュースが連日報じられてはいたものの、あの要請がきっかけで一気に「新型コロナ」が自分ごと化したといってもいいと思う。 以来

        • 【書評】エンド・オブ・ライフ~「死」を見つめ「生」が輝く

          佐々涼子さんの『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)を読了。 在宅での「終末期医療」がテーマ。 読みながら、何度もボロボロ泣いた… 作品中に、いくつも「死」が描かれるが、そのどれもがキラキラと輝いている。いや、輝いているのは、その「死」に至るまでの最後の「生」。 「死」を見つめるということは「生」を輝かせるということなんだなと思う。 「生きたようにしか最期は迎えられない」 「長さでは測れない命の質というものがある」 「亡くなりゆく人がこの世に置いていくのは悲

        【書評】『わっしょい!妊婦』 笑えて、刺さる…出産を通じて社会を考える一冊

        • 【映画感想】はりぼて 〜これぞ映像ドキュメンタリーの力!

        • 【番組感想】ETV特集「7人の小さき探究者~変わりゆく世界の真ん中で~」

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          『牙』刊行記念イベント 三浦英之さんからの叱咤激励

          間違いなく今年上半期ナンバー1のノンフィクション『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』の刊行記念イベントに行ってきました! 著者の三浦英之さんと、ジャーナリストの大谷昭宏さん。尊敬する2人のトークということで、会場は大阪でしたが、香川から「えいやっ!」と行ってきました。学びや刺激にあふれた1日となりましたので、後半はごく個人的な話にもなりますが、書き留めておこうと思います。 離乳食みたいな記事があふれる時代にアフリカゾウの象牙密猟をめぐる取材の話ももちろん面白かったの

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          【書評】『マイパブリックとグランドレベル』能動性を引き出す場を

          「欲しいモノがない」と嘆く世代が出てきている。 それに抗うように、モノを欲しがってもらうためのあらゆる情報が押し寄せてくる。でももう限界だと思う。わたしたちは、モノに飽きているのではない、受動機会に飽きているからだ。 『マイパブリックとグランドレベル』(昌文社)という本の中で、著書の田中元子さんはこう述べています。 「受動機会」、そして「能動機会」とはどういうことなのか? この本は、帯の紹介文に「まちづくり実践テキスト」とありますが、もっと広く、深く「人の生き方と社会との

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          【書評】『本を贈る』 プロたちがつなぐバトンの先には…

          「本」が好きです。もちろん「読書」が好き、でもあるのですが、この2つはイコールではありません。 「本を読む」という行為のほかにも、本を知る、本を調べる、本屋さんに行く、本に出合う、本を買う、本を読むために仕事を早く終わらせる(でも、なかなか終わらない…笑)、旅に持っていく本を選ぶ、本の感想を書く、他の人の書評を読む、著者について調べる、本棚に置く、本棚を眺める、読んだ本の記録をつける…そんな諸々の行為すべてを含めて「本」が好きなのです。 『本を贈る』(三輪舎)は、そんな「本

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          セルフブランディングの鍵は?香川のアツい3人が語る

          「セルフブランディング」について、最近よく考えています。 ローカルTV局の記者として仕事をして15年ほど。「〇〇放送の山下です」と、取材のお願いをして相手が応じてくださる理由は「〇〇放送だから」であって、「山下洋平だから」ではない、という厳然たる事実。 記者個人としてのブランド価値をもっと高めなければならないと、Twitterやnoteでの発信を始めたところです。 そんな中、9月26日、この「セルフブランディング」をテーマにしたトークイベントが開かれたので参加&取材してきま

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          NHK「100カメ」が切り拓くドキュメンタリーの新地平

          9月17日(月)、NHKが新たなドキュメンタリー番組を放送しました。 ひとつの場所に100台の固定カメラを設置して、人々の生態を観察する番組、その名も「のぞき見ドキュメント 100カメ」です。 Twitterのタイムラインで初めてこの番組の存在を知ったときの私の感想は、「やられた…」でした。 TV界に君臨する巨大組織、NHK。放送枠の多さと、豊富な予算、多様な人材という強みを生かし、実験的な番組も多く生み出しています。 ドキュメンタリーのジャンルでも、1つの場所を3日間定

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          デザイナー前田高志さん 躍進支える「夢中」のチカラ

          香川県小豆島で、9月16日、デザイナー・前田高志さんのトークイベントが開催されました。トークテーマは「躊躇(ちゅうちょ)せずに人生を楽しむ」。 オンラインサロンで注目!前田高志さんとは…前田さんは、任天堂でデザイナーとして広告や会社案内などに携わったあとフリーとなり、現在、株式会社NASUの代表取締役。 幻冬舎の編集者、箕輪厚介さんが運営するオンラインサロン「箕輪編集室」のデザインチームリーダーとして注目を集め、自身もオンライサロン「前田デザイン室」を2018年3月に立ち上

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          痛快!「せやろがいおじさん」の言葉が心に響く

          最近、Twitterでよく目にする「せやろがいおじさん」の動画。見たことがない方は、まずは一度見てほしいです。 沖縄の海をバックに、時事ネタなどについて、思いの丈をぶちまけるYou Tubeの2分強の動画ですが、非常に痛快!一度見ると病みつきになってしまいます。 「せやろがいおじさん」とは…「せやろがいおじさん」は、沖縄の芸能事務所オリジンコーポレーション所属のお笑い芸人「リップサービス」の榎森耕助(えもり・こうすけ)さんが生み出したキャラクター。 時事ネタの風刺という

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          「カメラを止めるな!」に見る三谷幸喜”愛”【ネタバレ】

          映画「カメラを止めるな!」が私が住む香川でもようやく公開されたので観てきました。公開当初はたった2館での上映だったのが、SNSなどで絶賛の声がひろがり異例のヒット!私が最初にこの映画を知った時には、香川での公開予定はなかったのですが、いまや全国225館に。 SNSでは「ネタバレになるから内容は書けないが、とにかく見てほしい!」という熱い投稿が多く、なるべく事前に内容に接しないようこの日を迎えました。 Twitterなどのタイムラインでうっかりネタバレを目にする、ということが

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