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【雑感】2022/8/22 浦和vsBGパトゥム(ACL-QF)

お互い中2日同士の試合となりましたが、パトゥムは陣形自体は恐らく普段通りでやり慣れているであろう4-4-2で入りました。正直、ある程度個々の力の差はあるので、その辺を勘案して最初から5バックにしてくるのではないかと想像していました。

ただ、「タイ勢初のアジア8強入り」「ホームスタジアムの浦和と、あのサポーターの前でやってみたいという話をしていた」といった、チームの中にある高揚感を前日会見で手倉森さんが話していたので、そうした流れを尊重するような意図もあったのかなと想像します。結局、パトゥムのスタメンは傑志戦とメンバーは同じでSHの左右を入れ替えただけでした。


試合開始早々に岩波が相手のSB-CB間から裏を狙うボールを出して松尾がネットを揺らしたたもののVAR介入でゴール取り消しになったり、10分に松尾がPA内で肩に手をかけられて倒されてもPKを取ってもらえなかったり、24分に関根のカットイン&シュートで再びネットを揺らすも今度は松尾がオフサイド判定を受けたり、得点やそれに近しい機会が3回も浦和にとって望まない判定になってしまいました。

それでも、序盤は酒井を最後尾に残して岩尾をアンカーにした3-1の形、岩尾をCB間に落として敦樹、小泉が相手の2トップ裏を漂う3-2の形、はたまたここ最近おなじみになっている2CB+岩尾の2-1の形と、あの手この手でパトゥムの4-4-2のブロックを揺さぶりにかかりました。


試合の中で変化したのは当然ビルドアップ隊だけではありませんでした。左側は大畑と関根が内外を固定せずに流動的にポジションを入れ替えていましたが、外側に開いている方が相手のSHを越えた位置でボールを持てたら、相手のSBがその選手へ出ていくことを見越してSB裏へ抜け出そうとするアクションが自動化されているといって良いくらい何度も行っていました。

また、岩尾が最後尾に落ちるとショルツが相手の2トップ脇でオープンになるのですが、この時に大畑がバックステップを踏みながらどんどん相手を押し下げるようなポジションへ移動するので、そうするとショルツがよりフリーでボールを持てるようになりました。

さらに、この大畑と関根の関係性に小泉もIHの位置から加勢していて、相手からすると人を捕まえるにはかなり難易度の高い作業だったのではないかと思います。


一方、右サイドは敦樹が内、モーベルグが外で試合が始まりながらも、敦樹が手前に下りればモーベルグが内側に入って、外側は酒井が前を覗くようになったり、単純にモーベルグと敦樹の内外を入れ替えたり、そこのポジション交換に松尾も加わったりしました。

酒井が最初から高い位置を取ることはなかったので、大外に人がいない状態で始まることは多かったですが、そこは酒井にしろ、敦樹にしろ、勢いを持って飛び出していけていたので、大きな問題にはならなかったと思います。

そして、この左右の初期配置とそれに続くアクション、各所のポジション入替が綺麗に結実したのが31分の得点シーンだったと思います。


パトゥムのビルドアップは基本的には2CB+2CHの4枚で、SBが開いて幅担当、SHが内側に絞った状態からスタートしますが、浦和がきちんと4-4-2のブロックで中を閉めていたのと、小泉・松尾がしっかりCBに対して横から追いかけて外へ誘導で来ていたので、手前から繋ぐなら外回り、そうでないなら前線の2トップどちらかへ蹴飛ばす、のどちらかに限定することが出来ていました。

前進経路が外回りになった時にパトゥム側はボール周辺に人数をかけていたので、サイドに追い込んだけどなかなか取り切れないという場面はありました。ただ、パトゥム側はサイドでボール周辺に人数をかけている分だけ内側にボールを刺そうとしてもそこで受ける選手が不足していたので、浦和がボールを取れないとしても内側へは通させずに、バックパスしてから逆サイドという循環にさせていたので浦和にとって危険な位置へ侵入されることは無かったと思います。

また、ロングボールに対してもショルツと岩波の安定した対応に加えて岩尾のプレスバックも早く、こぼれ球を拾われて展開されるということもあまり無かったと思います。前半はスコアこそ2-0でしたが、それ以上に保持/非保持の両面で力の差を見せつけられていたのではないでしょうか。


後半に入るところでパトゥムは選手を1人交代して5-4-1へ変更しました。相手の守備ブロックの形が変わってから、浦和のビルドアップで変化が見えたのはおそらく50'50だったと思います。その場面の前からパトゥムのビルドアップの形が3-4-2-1のようになっていたので、選手たちが相手の配置変更を察知したのかもしれません。

50'50は浦和のゴールキックから始まりますが、この時に岩尾がCF(99番)にロックされていて、相手選手がその脇に2枚いる状態でした。これを見て敦樹がスルスルとCFとシャドー(22番)のゲート奥に現れていて、その敦樹に対してCH(36番)が縦スライドした矢印の根元に小泉が入ってショルツからのパスを受けました。

選手たちがどのように相手の陣形とそれに応じた適切なポジションを認知しているのかは分かりませんが、4-4-2ならこれが基準、5-4-1ならこれが基準、そこから相手の動きに応じて対応する、といったイメージでフレームワーク的にプレーできているのかもしれません。自分がそうやって見ているのでそうなのかな?と想像しているだけかもしれませんが。

察しの良い方はこの図でピンときたかもしれませんが、岩尾が相手のCFにロックさせておいてショルツが運んでパスを出すコースを塞がないようにしていたり、敦樹が相手のシャドーの背中を取っていたりするこのアクションは4点目の前進と似ています。

しかも、上の図では敦樹にCHが出て行っていますが、4点目の方は左CHにいた選手がショルツからのパスを遮断するためにシャドー(22番)とCF(99番)のゲートを塞ぎに行っていたので、敦樹がシャドー(22番)の背中でボールを受けたところをチェックする選手はいなくなっていて、ターンした敦樹の前には大きくスペースが空いていました。

そして、4点目のゴール前でも相手DFに対して間と脇にしっかりポジションを取れていた、それだけの人数をかけられていた、というのはとても良かったですね。ある程度、ビルドアップ隊で数的同数になる部分を許容できるようになっていることで、ゴール前に人数を割くことが出来ているのはここのところ続いている良い部分です。


vs手倉森さんとなると、昨年7月の仙台でのアウェーゲームでミドルゾーンで4-4-2のブロックを構えられてなかなか前進できないという時間帯があったことを思い出します。あの時の雑感では以下のように書いていました。

「相手の動きを見ながら」というのが今年のスタイルの基本になるので、相手が動いてくれないと自分たちがどう動くべきかの判断が難しいのかもしれません。相手が動かない時には、いかに相手に1手目を出してもらうのかという仕掛けが出来たら良いですね。それがちょっとしたドリブルであったり、わざと自分たちも止まって相手が焦れて動くのを待ったりという方法になるのかなと思いますが。

67分に興梠が入って仙台陣内に押し込む時間が増えたのは、興梠が自らアクションを起こせるタイプの選手であることと、そのアクションが相手の裏のスペースへも向けられるということにあったと思います。スタートポジションが手前のスペースになる選手を1枚削って最前線から裏を狙う選手を入れたことによって、相手を押し下げた時に小泉に与えられるスペースは大きくなりましたし、相手を押し下げたことで仙台は中盤から前の選手が減って浦和が奪われてもすぐに奪い返すという構図が出来ました。ユンカーが入ってきたとしても興梠のキャラクターは浦和には大切な存在だと改めて感じます。

あの時は後半途中に興梠が入ってきて、彼のキャラクターによってやっと裏を狙うアクションが増えてきたという展開でした。それと比べて、この試合では(というよりはここ2ヶ月くらいずっと)裏へのアクションを起こす選手が特定の誰かではなく、その時によって色々な選手が、色々な場所から裏へのアクションを起こせています。

先月大興奮した飯尾さんによる岩尾憲インタビューでも、「速いサッカーが有効ならスピードのある選手を生かして勝つ、ボールを回すことが必要なら徹底的に回して勝つ、それを90分の中で選び続けなければならない」と話していた通り、手前も奥もどちらも使おうとすることが出来ています。

以前は相手が「手前か奥か浦和が好きな方を選んで良いよ~」というスタンスでミドルゾーンで構えられると「そっちが先に動いてくれないと穴が見つからないよ。。」となっていたのが、今は「じゃあ手前も奥もアクションを起こすからそっちが対応できてない方を使うね!」というイメージでしょうか。

となると、次は「ムハハ!先に奥のスペースは塞いでおいたぞ!お前らは手前しか使えないぞ!」といった感じで、手前か奥か、どちらかを先に埋めて浦和が使わざるを得ないスペースを設定しておいて、そこに対してのアクションを合わせて用意しておく、といったチームに対してどう対処できるのか、という課題が待っていそうな気がします。


いよいよ東アジアの最終決戦になりますが、相手の全北は2試合連続で延長まで戦っており、浦和に比べて疲労度は高いだろうと思います。浦和の前座試合の全北vs神戸は延長しか観られていないので、彼らの特徴についてはその試合を実際に現地で観た人に聞きたいところですが、やれることとやれないことを割り切って撤退守備で奥のスペースを埋めたところから始めて浦和に手前しか使わせない、というようなプランも想像できます。

あと1つ。次を勝たなければここまでの試合はただの思い出になってしまいます。必ず勝って決勝に進みましょう。


今回も駄文にお付き合い頂きありがとうございました。

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