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コミッションで版権リクを受けるのはアリかナシかを考える

最近日本でも徐々に広まりつつあるコミッション。多くの場合は「創作活動をする人が有償でリクエストを募って、注文してくれた一人のためだけに作品を作ること」をさします。現在主流になっているのはイラストのコミッションですが、もちろん絵に限らず、デザインや小説、ぬいぐるみ、歌、アクセサリー、写真等でコミッションをやっている方もいらっしゃるんですって!すごいねえ!!

私も色々調べて、ようやく自分のコミッションの受付窓口を開きました。現在の窓口はskebさんのみとなりますがよかったらどうぞ!ふだんからイラストを描いているので、もちろんわたしのコミッションもイラストです。
また、私のコミッションでは版権のリクエストもOKです。よかったらお気軽に。


ここから掲題の話。

たまに、「コミッションは元手が一切かかっておらず、同人誌のように『原価を回収するため』『物のやりとりをしているだけ』という口実が使えないので、版権リクを受けるのはかなり黒に近いのでは?受け付けをしようとすること自体よろしくないのでは?」というようなことを言っている人を目にします。

版権コミッション、とりあえず間違いなくシロではないです。
しかし、かといって「印刷費もかからず元手ゼロで儲けてしまえる、同人誌よりもヤバい存在」なのか!?というと……別に……そこまで言うほどのことは……ないと思うんですよね……。

なぜなら、コミッションにもちゃんと商品と原価が存在するからです。

デジタルなら電気代に道具代。そして最近ようやくこの認識が拡がりつつある気はしますが、人件費(イラストレーターなら正確には労務費ですが便宜上人件費とします)も原価に含まれます。精神論的な話ではなく法律でそう定められてます。人件費は経費であり原価の一部です。(確定申告においては個人事業主の給与という形では経費申請ができないのでどうしてもないがしろにしがちなんですけど、単にそれをできるようにしてしまうと事業主の給与を無限に増やして所得を隠蔽することが可能になるからで、本人の人件費が人件費として認められてないとかなかったことになってるとかそういうわけではないのです)
だから仮に、どこかの公式さんが「元手をかけずに不当に儲けを出している!あんなの犯罪だ!」という無茶な理由でコミッション受付主を訴えたところで、それは訴えとして認められないと思われます。なぜなら法律上、原価はきちんと存在するという”扱い”だからです。
作家本人が心境的に二次創作に人件費を乗せられないというケースは当然あると思いますが、他人に「特定のケースにおいては常に人件費はゼロとし、元手はかかっていないものと考えること」と強要することはできません。
これは創作でも二次創作でも同じことです。
また、やや脱線してしまいますが、よく言われる「電子書籍には元手がかかっていないので訴えられてしまう」も同じ理由で不当な儲けと認められるケースはそうそうありません。版元がきちんと規約を制定している場合は勿論それに準じるべきですが、そうでないなら印刷されている同人誌現物と基本的には同じ扱いになるかと思います。人件費やサーバー維持費、手数料等が原価に該当する為です。
(マジで「元手をかけずに不当に儲けを出した」という理由でコミッションが訴えられそうなケースについては後述します)

また、二次創作において一番ヤバく気をつけなければならないのは、海賊品、コピー品、類似品だと他人に思われるようなものを作ってしまうこと。
海賊品がなんでそんなにヤバいのかというと、版権元が本来儲けるはずだったお金を不当に横取りしてしまう存在だからで、著作権法はそもそもこの「版権元に納められるはずだった本来の儲け」を守るためにある法律なのです(超絶大雑把な見方ですが)。
コミッションは基本的に複製を行わず、1点ものを作ることが前提なので、どうしても得られる利益に限界があります。果たしてそれが版元の利益と競合するほどのものになりうるでしょうか。数十~数百、時には数千冊、複製(しかも外注で業者に依頼して…)する同人誌のほうが、よっぽどギリギリのところで…許していただいているのではないか…!?

日本ではWEBよりも先に同人誌の市場が大きく育ったため、どうしても「同人誌はOK、じゃあ同人誌とくらべてこれはどう、あれはどう」という考え方になりがちだと思うんですけど、むしろ海外だと「同人誌や同人グッズ?複製品を作るのはちょっと……コミッションなら一枚だけだからOK!」って感じで、コミッションだけは黙認どころか公認している公式がけっこうあります。私の大好きなゲーム UnderTaleもかなり明確に同人活動における規約を打ち出してくれている公式のひとつで、最初期は同人活動にかなり厳しい制限がありましたがそれでも「コミッションはOK」とずっと明言されていました。コミッション文化が発展していったご当地アメリカだからということもあるでしょうが、イラストレーターやデザイナーの人件費を当たり前のように勘定に入れてくれる人が多い土壌が故というのも大きい気がします。

というわけでリクボの波に逆行するようですがコミッションもっと日本でも流行ったらいいなー。ぜったい楽しいと思うなー!という話でした。
※ただしコミッションで版権リクエストを受けていない人のところに行って「問題なさそうだから版権リクも受けて!」って強要するのはやめような!にんげんの行動にはいろいろな理由があるんや!


追記※このnoteは「だからコミッションは認められるべき!」と版元その他に強要するような意図は一切ありません。みんな平等にグレーなのだということだけ伝わればと思い書きました。
あなたもグレー、わたしもグレー。



以下はオマケ。

もちろんコミッションならなんでもやっていいぞいというわけではない。「こんなコミッションはヤバいしヘタしたらガチで訴えられそう」と黒いコミッションについてボンヤリ考えました。参考までに。

・「ご注文の品です!」と言って他人の描いた絵を適当にネットでパクってきて渡しちゃう
アウト中のアウト。こうなるとさすがに「元手をかけず不当に儲ける」にあたる。つーかただのひょう窃。

・トレース許可されていないものからがっつりトレースして「自分でイチから描きました!」つって渡しちゃう
これも当然ひょう窃行為なのでアウト。

・つままれ、ぺたん娘、だる〜んなど登録商標商品のパロディイラストを引き受けると公言、宣伝する
発注側の希望であることを前提に、絶対に他の人のぶんは作らない、ネットにUPしないと前置きした上でこっそり楽しむくらいならOKじゃないかなあ…と思うんですけど、メニュー化してウリにしちゃうとおそらくかなりやばい。リアルに厳重注意とか受けそう。

・知名度のある他人になりすまし、その人のふりをしてコミッションを受けちゃう
労力はすごいがアウト。

・有名作品(アニメなど)のトレース作業をコミッションとして受注しちゃう
値段設定を超格安にしてあればあるいは…?と一瞬思ったけどたぶんふつうに複製品海賊品扱いになるのではないか。

・版元と絵柄が似過ぎている、クオリティが高過ぎて公式のグッズを凌駕している
悲しいかなすごすぎてやばくなってしまうタイプ。数を制限する、オリジナリティを追求するなどしてがんばるしかないけど万が一公式から直々に注意くらったら大好きな公式のために身を引こうね。

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