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はじめに

ご覧いただきありがとございます、葉月と申します。

ゲーム業界に身を置き、早30年。現在も某社にてライター業をしております。

ゲームのシナリオというのは、小説と違い、どちらかといえば脚本に近いもので、セリフがメインで描写などほとんどありません。

放っておくと描写力が落ちてしまうので、たまに個人的に小説などを書いています。

話は変わりますが、近年のゲームは声が入ることが当たり前になりました。昔はゲームカセットの製造単価のために、会社側から「8メガビット以内に収めろ!」のような指示があり、容量を食うボイスなどは真っ先に断念するポイントでした。

媒体がCDになり、またROMの実装容量の桁が上がって、声を入れることが一般的になり、今やフルボイスがあたりまえの時代です。

ライターの業務は文章を書くだけでなく、台本の作成や、収録立ち合い、ボイスデータ管理の仕事が加わりました。

その中で、現場で何度も顔を合わせるうちに親しくなる役者さんが出てきます。

「俺さ、舞台やりたいんだよね」

あるときNさんに飲みに誘われ、そう言われました。

Nさんは声優業界でも大御所のクラスに入る方です。名前を聞けば「知ってる!」と答える方が多いと思います。そのNさんが舞台を考えているのだそうです。

「最近はさ、自分で演じるより、指導することのほうが多くなってるのよ。そうなるとやっぱり演りたくなるんだなぁ。そこでお願いがあるんだけど、オリジナルの本、書いてくれない?」

「面白そうですね、載らせてください。ちなみに、公演はいつ頃を考えてるんですか?」

「来年のGW明けあたり。メンバーには心当たりがあるし、小屋もあてがある。練習時間を考えて、まずは朗読劇にしたいと思うんだ」

そこから練習時間や打ち合わせなどを逆算すると年内には台本が完成している必要が出てきた。

「今は10月ですよ」

「無理は承知だから、書き溜めた奴でいい。最終的には3回目の公演で、アレを演りたいんだ」

Nさんの言うアレとは……私が数年前に書いたとある伝奇短編の小説だ。個人的に満足のいく出来だったので、他人の反応が見たくてNさんに読んでもらったところ、大変気に入られたのだ。

「だけど、アレを演る前に一座の知名度を上げないといけない。だから2回、アレの前に公演やらないと」

だから、その2回分の脚本が欲しい、そういう話のようだ。

「登場人物は4〜5人の話を2本ほど。一本30分〜1時間で。何かない?」

こうして書き上げたのが、以前にプロットだけ考えて着手していなかった「残されたものたち」と、この公演のため人演のために新規で考えた「謎の転校生」であった。

Nさんに話を聞いてから急いで着手し、通勤中と休日を使って書き上げ、なんとか年末までに納品できた。2017年末のことである。(実際は納品後のやり取りがあったので「謎の転校生」については2018年2月が決定稿になっている)

そこから4年近くの月日が流れた。

状況が変わり、予定通りいかなくなることはままあることだ。

そして一度延期された公演は、今では再開時期が未定となってしまいました。

私がよくやっている、暇つぶしと自己満足を兼ねたライティングのためではなく誰かに読んでもらうための「作品」として生み出したものなので、このまま埋もれさせるのは惜しいと思い始めた頃、noteの存在を知りました。

そこで一人でも多くの目に触れてもらいたいと「残されたものたち」「謎の転校生」を公開することにしました。

元々が朗読劇のために描き下ろしたものなので、ほんとうの意味での小説とは違うのかもしれませんが、あなたの暇つぶしのお役に立てれば何よりです。



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自己紹介

ゲーム業界に身を置いたのは、はるか昔…… ファミコンやゲームボーイのタイトルにも携わりました。 デジタルガジェット好きで、趣味で小説などを書いています。 よろしければ暇つぶしにでもご覧ください。