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「ごっこ遊びが現実になる」アートとまちづくりと人生の関係

「ごっこ遊びが、いつのまにか現実になる」

豊田市で、とよた市民アートプロジェクト推進協議会事務局がやっている
Recasting Clubが主催したHYBRID BUNKASAIで、
このプロジェクトのアートマネジメントをしている3人のユニット
Nadegata Instant Party(以下、Nadegata)の中崎透さんが言っていた。


2006年から日本各地の地域コミュニティで『市民参加型プロジェクト』を仕掛けてきたNadegata。
町のまんなかの使われなくなった幼稚園に登り窯を作ってみたり、24時間テレビのパロディで、24時間限定のテレビ局を作ってネット配信したり。市民と一緒に「出来事」を作り上げ、その過程自体を作品にしているという。

「パロディから始める。みんなで、「ごっこ」から始めるんだけれど、それをやっているうちに、真似事ではなくて、それ自体の現実に変わる瞬間がある。それが作品づくりの面白さだ。」

そう中崎さんは言っていた。今回、豊田市役所の文化振興課から「市民を巻き込んだアートプロジェクトをやってほしい」という依頼で始まったRecasting Club。市役所が頼むということは、まちづくりにつなげたいという思惑があることは間違いない。

「まちづくりをやったことない僕らが、”まちづくりごっこ”をやっていくうちに、このプロジェクトが終わっても、いつの間にか、ホンモノのまちづくりにつながっていくと思うし、それを期待している」

中崎さんはこうも言っていた。

旧豊田東高校、使われなくなった旅館などを舞台に、「やりたいことがあるひと、何でもやっていいですよ!」と『アート』として始まったこのプロジェクト。万年青大好きな印刷屋さん、普段は美術館で作品の説明をしている人、ただのいけばなでは飽き足らず竹で巨大な作品を作る人、大学を出たばかりでインドに時々旅に出かける女性アーティスト・・・そして講師に惹かれてライター講座に参加し、広報部に時々出ることにした私など。

「まちづくりやるよ!」と言われたら絶対に集まってこないメンバーがそろって、何やかんや言葉を交わしている。そもそも「まちづくり」が人の居場所を作ることだとしたら、もうすでにその過程は、始まっている

アートが入口だから、できることがどうやらあるらしい。

HYBRID BUNKASAIに、テニスコーツという2人組の歌手が来ていた。ボーカルの女性が、そこに居合わせた参加者に、「自分が出した声と同じように、声を出してみて」とジェスチャーで示す。そこで、声を出すか出さないか。出してもいい。嫌なら黙っていてもいい。そこにいる参加者は、どこの誰でもいい。日常から離れて、何者でもない「ただの自分」になれる空間が、そこにあった。

ああ、これは。

日本でいちばん産業がすごくて、いつも「誰か」である役割を負わされている人の多い豊田市で、Recasting Clubが今活動していることは、すごく意味がある。

「ごっこがいつのまにか現実になる」というフレーズがしばらく頭から離れなかった。次女が、アレルギーで咳き込む。苦しくて、夜中の2時に起きて、その様子を見ている私。最初から母親じゃなかった私。最初から旦那さんの妻じゃなかった私。ひとりで会社帰りにスーパーで買い物をして、袋につめているとき、何だか心細い気がしたこともあった。考えてみれば、会社に行くことだって、まさか自分がすることになるとは、思ってなかった。

考えてみれば、わたしの人生も誰かの見ようみまねで「ごっこ」をしていたら、いつの間にかそれが現実っぽくなり、それが私の人生を形づくってきたのかもしれない。

私だけじゃなくて、多分、あなたの人生も。







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