トライアングル・トライアングル

 めぐちゃん自身の失言により強さの三合目へ至る為に鍛錬の鬼となったひめちゃんへマイシスター梢から頼まれて明日の予定を伝える事になったのだが送ったメッセージに既読がつかない。たぶんふたりでbang bangしてる途中なのだろうけど散歩がてら口頭でも伝えておこう。二択なんだけれども決め撃ちで行っためぐちゃんの部屋には誰もいない。となると行くべき先はひとつだ
 食堂で晩御飯を食べて帰ってきた一年生が各々の部屋へ戻る列に紛れ込むがルリが用のあるお部屋は一年生棟の中でも入ってすぐ。五十音順なので「安養寺」は最前ではないが頭から五人以内にある。インターホンを鳴らして少ししたらチリンチリンと鈴の音が聞こえてきた。これは「今取り込み中なので手が空いたら五体投地しながらすぐ行くのでお待ちください」と以前ひめちゃんが言っていたサインだ。知っている人は知っていると思うけれどもひめちゃんがやってるゲームの1マッチはそこそこ長い。最長30分くらいかなあと思いつつドアの前で気長に待つことにした。『eスポーツの一芸で入学した』『毎日のように部屋から奇声が聴こえる』『一年生なのに三年生を鬼軍曹のように鍛えている』今年の新入生の中でも良くも悪くも一番目立っているひめちゃん。彼女が憧れているめぐちゃんのいなくなった来年、ルリはひめちゃんとどんなみらくらぱーく!を描いていくのだろうか
「っしゃあ!今晩はドン勝ですよめぐちゃん先輩!あっ、ちょっと待っててください!」
 この寮はどの学年の棟も防音の効いた部屋なのだがそんなの関係ないと言わんばかりに歓声が貫通してきた。ドタドタドタと足音が聞こえてきてドアが開くとそこにはスライディング飛び込み土下座を成立させたひめちゃんがいた
「即刻ケジメを致しますゆえ平に御容赦を…!」
「ちょっ、待ってひめちゃん落ち着いて。みんな見てるから…!」 
そう、すみっこでひとりで考え事をしているだけでここはまだ一年生が沢山いる寮の廊下の真ん前。奇異の視線がこちらを見てくる。充電がゴリゴリ削れてマジでヤバそう…
「人前でする話題じゃないし中で話そうか。ねっ」
 自分よりデカい後輩を俵のように抱えて半ば強引に姫芽ちゃんの部屋へ逃げ込むとそこには灰のように燃え尽きためぐちゃんがいた。ルリが近付くと何も言わずに抱きついてルリ吸いを始める。こんな状態ならメッセージに反応してる余裕なんてないよなあ。
「ぐふっ!」
こっちはこっちで許容量オーバーを起こして漫画みたいに鼻血をダラダラ流している。忙しない部屋の中でルリ自身の充電も切れそうになるが本来の用事を忘れてはいけない
「めぐちゃん、ひめちゃん。こずこず先輩から明日の練習についての伝言があってさ」
漸く本題を切り出した
「メッセージ入れてあるのに二人とも気付いてないからってるりちゃん先輩がアタシの部屋に…!人生の徳を使い切るのが早過ぎる…前世のアタシ何をしていたんだ…」
「わざわざありがとねるりちゃん。そろそろ私も晩御飯食べに戻らないとだし今日はここまでにしよう姫芽ちゃん。ありがとうね」
「お疲れ様でした!明日もビシバシ練習するんでよろしくお願いします!」

背中の方面からなんかよくわからない(理解したくない)祈りの言葉が聞こえてくるのをスルーしながら自分達の寮へと戻る最中にめぐちゃんが話しかけてきた
「そうだ聞いてよるりちゃん、今日は偶然配信中のVtuberとマッチングしたんだ。知ってる?アヤミャンって」
「何回か見た事あるかなあ…強い人なの?」
「本人はまあ私とどっこいどっこい位だけど周りのファンの人はできる人多かったなー。まあツマヨウ寺ちゃんが蹴散らしてたけど」
「めぐちゃんもそういうのがわかるようになっちゃったんだね…」
「まあねえ。ここ最近クラブの練習以外の時間ほとんどやってたから。おかげで今月のスタバの新作飲みにいけてないから今度行こうよるりちゃん」
「そうだね。ひめちゃんも誘ってみんなで行こう」
「賛成!それじゃあまた明日ねるりちゃん!おやすみー」
「おやすみー」



「んあーまた負けた!彩乃!親子丼!」
「アタシは親子丼じゃないっつの。材料はあるから作るけどさあ全く…」
「みーちゃん、のーちゃん、ただいまー。良い匂い、今日は親子丼?」
「そうだよ花菜!今すぐ作るから早くお風呂入っておいで!」
「温度差!ボロクソに負けた彩美ちゃんを慰めて欲しいのに!」
「またいつものゲームやってたんだみーちゃん。ってあれ…?」
「どうしたの花菜、もしかして花菜もやりたくなった?お姉ちゃんの機材貸そうか!?」
「そうじゃなくて…うんやっぱり。さっきみーちゃんをボコボコにしていた人、スクールアイドルだ」
「えっじゃあライバルって事!?強い上に可愛いとか最強の生き物じゃんズルい」
「『ツマヨウ寺』さんがこれで…もうひとりの『ぷりちーめぐちゃん』も多分この人だと思う。わたしと同い年の有名な人。普段ゲーム配信とかはそこまでしないタイプだけど3年目にして大胆な方針転換…できる…」
「ほら二人とも!ご飯できるから早く!」
「「はーい!」」

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