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きのホ。4th衣装

2/25に公開された株式会社古都レコード きのホ。の4th衣装です。
ナンバリングは仮称です。

今回要素多めでデザインの組み方もある程度言語化したので、とても長くなってしました。
毎度ながら長文乱文誤字脱字あります。何卒ご了承ください。

*今回ミリタリー由来の要素が出てきます。戦争を肯定する意図はこれまでも今回も一切ありません。前回和装の要素を細かく記載したのと同じように、現在に広く知られている物たちが由来する歴史と文化、それらを紡いだ先人たちへのリスペクトをもって記載と紹介をしています。
大量生産と短期的な消費により価値が揺らぎつつありますが本来衣服は歴史と文化そのものです。時勢もあり書きました。

引用記事は参考です。興味のある方は是非。
「5.デザイン リサーチ」は読み飛ばして大丈夫です。

前置き

オーダーは着物袖継続であとはお任せで頂きました。とはいえデザイン資料をお送りし、打ち合わせしたうえで製作しています。

前回は衣服の作り方で作る和服ベースの衣装で、着物袖を除いても和服以外の要素が強く出ないように組んでいます。対して今回はジャパンメイドのマッシュアップ、着物袖がなじむ形でのジャンルミックスの衣装を目指しています。これをもってのデザインの組み方を要素紹介後に書きます。

前回記事で日本人は世界で最も和の要素を鋭く感じ取れる民族と書きました。その視点とデザインを組む視点で見ると着物袖はとても印象が強い。
布の分量が多くなるのでその扱いの難しさもありますが、その反面それだけで作れる印象の強さがある。露出やボディコンシャスを除けば分量は多くの場合見ごたえに直結します。それを良しとできる場合とノイズに見えてしまうこともある。
しかしながらそのノイズというか違和をデザインとする場合も多々あります。着物袖を違和として扱うのは違うなーが最初。最初というか日本人だから上手く扱いたいよね(違和が下手ということではない)。
完成した時に着物袖ではない袖の場合を考えて成立しなければ成功です。

2nd衣装は初の夏と全国ツアーに向けて名刺になるような衣装を作ろうとしていました。3rd 夜衣装(仮称)はTIF参戦への武装。オーダーの黒とストライプもあってシンプルながら華やかで印象の強い衣装になりました。
今回はどうしよう。からスタート。

先に今回取り入れた要素を。
〇和服
〇スカジャン
〇セーラー服(制服)
〇水引
〇折形(おりがた)
以上の5つです。

1.スカジャン

今回はどうしようと思いながら、最初から入れたいものが一つありました。
スカジャンです。きのホ。のパフォーマンスみながら直観でスカジャンのイメージ合うなーというタイミングが多々あり。
衣装では光沢サテン生地、刺繍位置、ボーダーリブ等で要素採用しています。

スカジャンは横須賀ジャンパーの略とされています。諸説あるそうですが主には横須賀基地駐留の米軍人が自分のジャケットに和風の刺繍を入れてお土産として持ち帰ったことが発祥といわれています。だからアメリカではスーベニア(お土産)ジャケット。この点で日本発祥といわれることもあります。
歴史と文化の交わりによって生まれた衣服ですが、当時の日本のテーラーや刺繍職人の腕によって生み出されたものであることは確かなので日本発祥と言って良いと個人的に思います。
大量に作られたスカジャンたちは後に古着として沢山日本に戻ってきています。
昨年には横須賀美術館でスカジャン展も開催されていました。行けなかった。

自らのジャケットに刺繍をしたものが発祥ではありますが、引用記事内にもあるように日本人がアメリカ人に親しみやすいようにベースボールジャケットを模したジャケットに刺繍して販売した歴史もあります。軍人の持ち込みで多かったのかな。この選択が現在のスカジャンに繋がっています。
後に在日米軍基地の売店でも販売されていたようです。

余談。同じようなルーツでベトジャン(ベトナムジャケット)があります。ベトジャンは生地一種類でリブ使われておらず、襟があります。軍用のテントやパラシュートをジャケットに仕立て直して刺繍を入れたものなので生地は一種類、生地がタフで硬めなのでリブ仕様が合わなかったのかも。単に流行り廃れかも。

またスカジャンの刺繍は特殊なミシン、横振りミシンを使用して制作されています。まさに職人技。超絶技巧。

今では横振りミシン風の刺繍もコンピューターミシンで作れるようにはなっています。とはいえ手作業の強さは健在です。
衣装はコンピューターミシンによる刺繍です。いつか、、

2.水引とロゴグラフィック

次は刺繍で入れた水引とロゴグラフィックについて。
まずは図案を。

水引のあわじ結びと、きのホ。のロゴを融合させたようなグラフィック、図案。
刺繍図案
上のグラフィック、図案の塗りつぶし部分を逆転させたり、少ない変更の入っている物。
差分

日の出ロゴと呼んでいます。3rdは雲隠れロゴでした。
水引のあわじ結び、ときのホ。のロゴを融合させたようなデザインです。
デザインを作る前に日本の物を手当たり次第にリサーチをしているなかで見つけて何かに使えそうだなと思った水引。意味合い的に良いと思ったあわじ結びがきのホ。ロゴの下側っぽいなと思い、ラフ書いて行けそうだったのでそのまま採用。ほかの全てのデザインより先に決まりました。これで勝てる!みたいなテンション。
刺繍図案右のロゴ風を作った時に日の出(水引きから顔をのぞかせる太陽)っぽいなと思ったので日の出ロゴ1。せっかくなので日の昇らせてみたらいい感じで左の図案が出来ました。日の出ロゴ2。おめでたい雰囲気ありますね。差分は図案が細かく刺繍と生地の相性が悪かった場合に対応できるように作りました。
また余談。3rdが夜衣装、2ndを昼衣装として、今回は日の出だから朝衣装なのか、、今思いついた。朝っぽくはないな。こんな感じの言葉とヴィジュアルの連想ゲームは大切です。ロゴグラフィック構想段階でこれを思いついていたら多分候補としてテーマ朝衣装で衣装デザイン作った。

水引きの歴史を。
飛鳥時代、遣隋使小野妹子が帰国の折に返礼使として同行した斐世清が携えた天皇への贈り物が紅白で染められた麻紐で結ばれていた、これが水引の起源だそうです。1400年前、、
室町時代の日明貿易での明側が輸出品と他の物を区別するために箱に紅白の紐が縛り付ていたものを、日本側が贈答に使用する習慣と誤解した説もあるようです。日明貿易は1400年代~1500年代前半。遣隋使とだいぶ差があるな。
現在水引は和紙をこよりにして糊で固めて着彩していて、その形になったのも名称が水引になったのも室町時代以降。水引になる前の名称は「くれない」=紅。白は?

水引きは結びの解けにくさに意味が由来していて、あわじ結びと同じように解けにくい結び切りは今回限りのお祝いやお礼、弔辞。あわじ結びは結び切りより複雑な結びなので、末永く続くようにといった意味も込められています。結婚式でのご祝儀で使いますね。
同じ結びで一度きりと永続が両立しているの面白い。末永く続くようにの意味合いと見た目の華やかさ、ロゴの形とのマッチングがドンピシャな感じがします。

蝶結びは解いて結びやすいことから何度も繰り返せる祝い事に使うので、チェキはやプレゼントは蝶結びで、ファンクラブなどはあわじ結びや結び切りで、、となりますね。例えです。

昨今意味の分からない慣習やマナーが取り沙汰されることがありますが、こういった相手への思いやりの比喩的な造形表現は美しいですね。

刺繍位置はスカジャンに準じています。トップス左右前身頃に日の出ロゴ1、後ろに日の出ロゴ2。
タイトな衣装では刺繍のサイズ制限が大問題で、前身頃は限界サイズでなんとか、後ろ身頃にはダーツもあり刺繍を入れるスペースが無いのでセーラーカラーを活用しています。入れるならスカジャンのように大きく刺繍入れたい。よってセーラーカラーの後ろ側は背中をほぼ覆うサイズです。

日の出ロゴ2の刺繍は過去最大サイズです。使える一番大きい刺繍枠に収まらないので〇はプリントにしようかと考えましたが、テクスチャーの印象的に許せなかったので2回に分けて刺繍。1着で4回刺繍打ってます。

身頃の刺繍糸は白ではなくグレー、刺繍糸は光沢あるのでシルバーグレーな見え方。とはいえシルバーの色番よりはずっと控えめな光沢です。
FUJIX KING STAR 120D/2(No.40) 色番604。工業用なので店舗よりネットで探した方が早いかも。
色番604の方が白で入れるより上品に見えた。白サテンの陰(影は地面や床に落ちる出来る物、陰は光が当たらない目立たない部分)に寄せた色選びです。上品に見えたのは刺繍は糸の密集で表面に凹凸があり真正面かかなりの眩しい乱反射の環境下でない限り常時細かく陰が出来ていてそれと糸の色のコントラストが気持ちグレーの方が少ないからなのか。
何故が難しい。直観です
とはいえ陰は色や生地選びで大切な要素です。

3.折形

水引きを紹介したので次は同じくジャパントラディショナルカルチャーの折形(おりがた)です。

金品や贈答品を和紙で包むための折り方。室町時代に足利義満が武家独自の礼法として制定したものが現在の折形のはじまり。現在遊びとして広く普及した折り紙の源流です。
江戸時代に遊びとして普及し礼法としての作法や意味が失われていく中で、礼法としての折形を文献に残し世に広めたり、折形の読みを折る方法と誤解されないようにオリカタでなく、オリガタでの辞書の記載、一般に広めるために活動した方々によって現在に受け継がれています。
ウィキペディアに詳しく記載あって面白い。

折形その物よりも、巫女さんが髪飾りとして折形(熨斗)を用いていたの過去に見て覚えていて、そこからイメージ拝借しています。
何か特別な意味があるのかと思い調べたのですが、出てこなかったので装飾的な意味が強いのかもしれません。

今回折形はセーラーに結ぶタイ(リボン)を模した装飾として採用しています。細いサテンリボンでの蝶結びの装飾は折形に水引きを結んでいるものからそのまま引用しています。
水引き装飾としてのサテンリボンとセーラーカラーによく見かける縁に沿った白線の装飾とヴィジュアル的に関連つけているイメージ。襟に縫い付けたサテンリボンも蝶結びのリボンもすべて2本です。(スカジャン引用のリブも2本線の物にしました)
紅白2枚の紙で作る折形引用でネイビーとメンバーカラー2色で作っています。ネイビーを表地、メンバーカラーを裏地としていわゆる額縁縫い仕様。折った形を優先で平面に展開しているので正方形や長方形ではありません。平行四辺形っぽい。
紙垂は違和を良しとする装飾ですが(2nd衣装記事に記載)、折形も同様に元の形そのまま採用しているのに馴染ませる方向です。紙垂を継続させた影響もありますが、色割と形、印象調整の結果です。

4.セーラー服(制服)

次はセーラー服(制服)です。
既出の引用記事をご覧の方は実はすでに発見しているかも。起源に近い物がすでに登場してしまっています。

セーラーの名の通り船乗りの甲板衣が起源で19世紀にイギリス王室を起点に当時の船乗りが好んで着用した服装の特徴を抽出したデザインの子供服が流行、20世紀初頭にかけて世界的なものになったようです。
屈強(そうな)船乗り御用達から可愛い物として現在に広まった経緯が良く見えますね。

制服としての日本での広まりを掘ります。
何故か、衣装は制服的な意味合いもあるからです。というのは分かるけど飛びすぎ。
日本では船乗りより学校制服のイメージ強いですからね。今回は船乗りではなく学生の制服のセーラー。よって要素一覧でセーラー服(制服)と記載しています。
余談ですが、セーラーカラーの女子学生の制服はSailor Fukuとしてコスプレ文化と共に広まっているようです。面白い。知らなかった。制服としてのセーラー服が現在ほど広く浸透している国は日本だけで、アニメや漫画での輸出も相まってFuku表記で広まるのも頷けます。

とはいえこの部分、しっかり書くと長くなりすぎてしまうので、かなり崩して書いていきます。
制服として最初にどこの学校が採用したのか明確に出来ておらず時には論争にもなっているようで。ただ概ねワンピースタイプは1920年、現在主流のセットアップタイプは1921年に採用され始めたようです。
ワンピースタイプの元祖であるミッション系スクールの平安女学院は当初和装の制服を採用していたが高価なうえに運動がしずらいために制服としてセーラー服を導入しています。導入当時のセーラーワンピース超かっこいいです。
またセパレートタイプの元祖の一つである金城女学校(現・金城学院)のセーラー服の歴史が個人的に好きです。守られて受け継がれたものであると分かる。↓

この辺りを調べているときにデザイン段階でセーラーカラーが上位候補に急浮上します。
ワンピースタイプのセーラー、制服でのセーラーカラー(襟)導入の元祖といわれている平安女学院、京都なんですよ。京都なんですって。これは採用したい。

超かっこいいセーラーワンピースの写真が引用記事内にあります。
正直このことを知らずとも他の要素と相性良いのでセーラーカラーを採用した可能性が高いです。ただ、知らずに印象を拾った場合と、知って意味も込めた場合で衣装としての意味やデザインの価値が変わる気がしませんか?そうであって欲しい。

あと個人的な話で、過去に衣装でセーラーカラー制作した物は依頼主から指定があった物のみで能動的な採用が無い。デザインの作り方的にすこし入れ難かった。今回超かっこいいセーラーワンピースと制服としての文化的な側面を知れたおかげでセーラーカラーへの信頼が高まりました。
和衿の重ねモチーフの洋服の重ね襟を継続する前提であったので選択肢が広く早い段階でセーラーにも目が向いたのがリサーチのきっかけです。

セットアップタイプのセーラー服で定番のプリーツスカートも動きやすい制服スカートを開発をする中で採用されたそうです。
衣装ではプリーツ"風"スカートです。

要素説明と要素からダイレクトに拾ったデザインのことを書きました。
他のデザインや生地、資材、デザインの組み方、考え方について書いていきます。感覚に由来する部分が多くなる為これまでより具体性がなくなります。何卒ご了承を。

先に書いたようにジャパンメイドのマッシュアップ、着物袖がなじむ形でのジャンルミックスの衣装を目指しています。
また前回までに比べ和洋折衷な印象が強いですが、洋の部分がかなり日本寄りというか文化の交わりによって日本で生まれた物です。よってジャパンメイドな訳です。

5.デザイン リサーチ(読み飛ばしても大丈夫)

デザインを作る前段階のことを書きます。
まずはリサーチ、参考資料探しです。衣服とか、上で書いた文化とか、何でも良いです。本当に何でも良いです。
日常ふと良いなと思った風景とかでもいい。スーパーの鮮魚コーナーからイメージ派生させかっこいい衣装も作れる。
言葉とイメージと印象とヴィジュアル。見立ての連想ゲーム。
広く時々深く。過去の資料も受け取れるものは変わるので見直す。思い出す。
衣装の仕上がりにとって後に書く印象の部分も重要ですが、リサーチはもしかしたら一番重要かも。基本的に見たことのある、知ってることしか扱えないジャンルですからね。語彙力をつけるみたいな工程。

抽象的なことから上で紹介したような具体性100のとこまで広ーく収集していきます。

合せてざっくりと印象を考えます。例えば可愛い、かっこいい、シック、クラシック、華やか、煌びやか、、、のどれか、あるいは複合か、そのためにはニュートラルなのか特定ジャンルの想起させる物がいいのか。
他に衣装ならではの部分で、ライブパフォーマンスのあのタイミングでどう見えて、照明にどう映えて、アー写で、自撮りで、チェキで、のような想定と経験則の願望みたいのも揃えていきます。
衣装を作っているけど、最終作る物は衣装ではない。物を作るに専念しすぎると提供できるものが購入の選択肢と同じになってしまう。恐ろしい。
だからこの期間はライブ映像やMVを何度も繰り返して見ていたりもします。
文字と曖昧な印象&イメージと画像とか、それら全部ひっくるめて進む方向性を組んでいきます。このタイミングではまだ暗闇で目が慣れたみたいな感じ。候補は集まったが具体的なことは何も決まってない、良くなるかもわからない。楽しくなりそうな方向に進む。
とはいえこれは自由度の高い条件で0から始める場合で、今回は和イメージの京都、着物袖、何となく合いそうだなとおもってたスカジャン、継続の紙垂と重ね襟、それらの引力に引っ張られながら方向性を組みます。グループごと案件ごとに何かしら確定要素や上位候補が最初からあるので全くの暗闇スタートなことは無いです。
こんな感じでどこに向かうのか考えていきます。
これがデザインを作る前段階。目に見えない部分。

次に具体性を持たせて行くのが順当ですが、まぁこれらはあえての言語化で実際は上のイメージとか印象方向性を組む中で思い付きで具体的なところに飛んだりします。今回では水引きモチーフの日の出ロゴ1です。具体的な物としては一番最初に決まっている。そこから日の出ロゴ2が決まり、刺繍向きなグラフィックだな、刺繍ならスカジャン相性良いね。というような引力が印象組みに働きます。
という事で印象と部分的な具体性は若干印象先行くらいでほぼ同時に進んでいきます。

6.デザイン 生地

そうするとだんだん生地をはじめ資材が見えてきます。
生地選びは見えてきた順当な生地、それらと関連のある生地、何となく組んでいるイメージ的に合いそうな生地をピックします。
今回だと色と柄で20種類くらいピック。全部スキャンしてillustratorで色々な組み合わせを作っていきます。初めに色だけで組むこともありますが色の方向性はイメージと印象で組んでいたので今回は生地から。

最終的に採用した生地、リブは副資材扱いなので除くと3種類4色。
数は多くも少なくもないくらいですが、サテンは光沢で2色、ちりめんは八重桜柄、先染めツイルはチェックでそれぞれ主役級のテクスチャーなので皆強い。
サテンはスカジャンから引用、ちりめんは数多の和装生地候補からの勝ち上がり、チェックは制服イメージの派生の派生。
ちりめんとチェックが色柄的にもテクスチャー的にも相性が良いことを発見したことは今回の生地選考最大の肝です。しかも違和じゃなくて馴染む方の相性。
サテンの濃紺は一般的なセーラー服からの引用ですが、ちりめんとチェックに寄せての白紺、後に書く形を生かすための2色でもあります。

下の画像が生地組をしている画面です。、これは最後の方なのでスカートっぽい形や衣装と似た生地配置になっています。映ってる範囲の外側にもたくさんある。生地パレットと呼んでいます。

スクショをそのまま

生地パレットでは生地の選考も行いますが、特に今回のように強い生地を複数入れる場合に検証することを画像を見ながら。

すべての生地を使う、色彩のコントラストが強い部分を作るが条件で、左が実際の衣装に寄せたパレットです。真ん中は暗め、右は明るめ。
同じ生地でも結構印象変わりますね。これで生地と色割で作る印象を組みます。生地選考と同時にやります。
絵型や着彩絵型作成中に変更入ることはありますが、この時に組んだ印象は衣装に仕上がりにかなり影響します。
アートボードの外でパレット組んでいるのは白を入れないため。

背景をグレー。また印象変わるね。
途中でメンバーカラーも入れてみます。

生地のテクスチャーは再現できそうな部分は作って(上のパレットの光沢みたいなグラデとか)、あとは見えてることにします。実際の生地もちょいちょい見ながら。

絵型、衣装の形も作っていきますが、生地パレットと同時に進めるか生地候補をピックしたタイミングである程度絵型出来ていることがほとんどです。
形と色と生地(テクスチャー、特性、風合い、柄)は全部で一つ。
だから六角形のレーダーチャートで全ての項目が高い条件を探す感じで進める。これが良いではなく、これ以外はダメが理想。
印象とかイメージから組むのはこれ以外を作るためかもしれません。
最終的には全体としての印象が大切なのに、具体的な、特に形から決めて色や生地を当てていくと印象は結果出てくる物になる、そうだった気がする。元々形にしか興味のない時期があったのでそう思います。

とはいえ印象から組んだのに、あまり意識してない印象が出てきて面白くなったりする。
今回だとノスタルジックな雰囲気が思ったより強くなった。ホ。フェスライブでの背景のステンドグラスと相性良かった(そう思っている)のはこの部分の為かなー、と。
ノスタルジック、懐かしさ、、既視感。既視感は超重要です。

7.デザイン 形

形について。主に線で作る部分。絵型、デザイン画。生地と色以外。
形の組み方はシンプルです。セーラー服にスカジャン羽織って、そこに和装のフォーマットを乗せて調整。
衣装に採用したそれぞれの要素をざっと書き出します。

〇スカジャン:ラグラン、刺繍位置、玉縁ポケット、リブ仕様、表地突合せのファスナーが隠れる前開き仕様。ステッチ(部分的に省略)。
〇セーラー服:セーラーカラー(襟)、タイ(折形)、プリーツ(風の面割)スカート、2本の白線装飾。
〇和装:着物袖、右前のかさね(斜め切り替えで引用)、和衿の重ね(洋服の重ね襟)。紙垂、折形、水引きもここに含めます。
ハトメベルトは宮﨑の好みで入れました。

上記以外もたくさんあるそれぞれの要素も込みで色々な組み合わせを全体と部分でひたすら試す。良さそうな物を選別して足し算引き算組み直し。編集と調整。
別で組んだ印象やイメージ、生地パレットの引力に引っ張られたり、逆に印象と生地を引っ張ったりしながら組んでいきます。

切り替え線について。切り替え線は最低限に組みたがる傾向にあります。増やすと手が込んでいるように見えますが、増やすのは簡単で作業量も簡単に増える。

トップス前身頃の斜め切り替えは和装の右前の重ね。スカートの縦割りはプリーツ引用。華やかな雰囲気にしたかったのでイメージカッチリする折りは無しで切り替え。
袖はスカジャンのラグラン下側に別生地で着物袖分量を追加するイメージ。スカジャンの袖の切り替えを見ると何となく伝わるかと思います。
着物袖下側のちりめんへの切り替えはヴィジュアル効果先行とちりめんがサテンより重いので振り子的な動きを期待して。
(振り子は2ndからの継続です。3rdは生地そのものが動きが良いので色替えとしての継続とヴィジュアル効果先行の柄方向変更です。)
ペプラム(身頃下のリブが縫い付けられているスカートパーツ)の切り替えはヴィジュアル効果先行でイメージ薄いけどプリーツの引用してスカートと関連付け。
ヴィジュアル効果先行は、切り替え線の意味より見た目的に別生地(色)をここに追加した方が良い、を優先している状態です。ペプラムに切り替えが全員同じでないのはこの為です。

沢山書きましたが、きのホ。から受け取った物あってのデザインです。
現場で見て感じてくれ!の一心であえて書かなかったことがいくつかあります。
今回はここまでになります。ありがとうございました。

2023/03/05追記
袖のチェックとちりめんの間にパイピングを噛ませています。これはスカジャン引用です。ない物もあります。古いものは少ないイメージ。
あまり目立つとカジュアルに寄りすぎるのでサラっと入れています。


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