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#2i2 2nd衣装

2021年3月28日に公開にした
株式会社ゼロイチファミリア HASHTAGRECORD 発のアイドルグループ
#2i2 の新衣装です。
デビュー衣装である1st衣装は担当しておらず今回が初回ですが、 2つ目の衣装なので2nd衣装とします。

*今回デザインについてなるべく詳しく書きましたが制作する中で全て言語化できるレベルで考えていたわけでは無く、感覚、なんとなくで考えていたことも記事のために改めて言語化しています。言語化できる物が良い、正しい、ということではないです。


オーダー内容は、完全アシンメトリー、初期衣装ではエナメルで使用されていたオーロラカラーの使用、レースや硬質な素材を使用した異素材MIXもあり。他はお任せでした。お任せと言ってもしっかりデザイン提出してチェック頂いた上での制作です。
あと、#2i2特有のモチーフのアンドロイド、アンドロイドは何か役割を持つ機械生命みたいなイメージがあったのでストレートにアイドル、タレントとしての象徴的な意味合いでのアンドロイドなのかなと思っていたのですが、#2i2のコンセプトにあるように今の時代を背景とした意味はもちろん、名詞的な意味合いよりも思いや意志的な意味があるのかなと感じました。だから衣装における#2i2のアンドロイドは#2i2のメンバー達=一般的なイメージのアンドロイドではなく、#2i2としてのアンドロイド像である方が良いです。ちなみアンドロイドはモチーフとしてありふれてしまっているのであえて深堀りしています。
というわけで衣装はこの#2i2のアンドロイド像をテーマに形作ることになりました。またここでの#2i2のアンドロイド像は断言できない曖昧な物であるので、色々と想定しながら枠組みを作るイメージでデザインを進めました。
(Twitterに書いた、#2i2のアンドロイド像を枠組む想定の塊のような衣装、はこう言った意味です。)
アンドロイドの意味合いが分かりにくくなりそうなので、一般的な意味合い、イメージで使うアンドロイドはヒューマノイドと表記します。ヒューマノイドは人型のアンドロイド。


今回上記の通りヒューマノイド的な衣装ではなく、テーマの#2i2のアンドロイド像を枠組むためにサブテーマをハイコントラストとして制作をしています。またハイコントラストは、
「着用者と衣装のコントラスト」
「衣装の中のコントラスト」
上記2種類で設定しています。ハイコントラストに設定した経緯と、衣装と着用者のコントラストの部分を書いていたら衣装その物にほとんど掛からないのにとても長くなってしまったので、興味のある方以外は
戻ります。まで飛ばしてください。そこより先が衣装の詳細です。

#2i2のアンドロイド像とはいえ、曖昧な部分を形に起こすことはできないので、分かりやすい部分から拾います。まずは人間とヒューマノイドです。
ヒューマノイドはアシモやペッパー君のような機械的な見た目の物から、映画アイロボットのようにまさに不気味の谷と言った少し人に近い物、映画エクス・マキナに登場するエヴァのようなほぼ人間の物まで様々ですが、ヒューマノイドと人間で決定的に違うのは、どんなに見た目が人間その物でも中身が機械という部分です。最初ここを形にできないかと考えていましたが、衣装ないし、衣服制作は身体上から外側に向かう、あるいは身体の外側の空間から身体上に向か物で、身体の内側に向かう物ではありませんし、身体の内側から外に向かう物でも無いです。この時点でヒューマノイドのイメージをダイレクトに形に落とすことをやめました。
とはいえ、即やめた、となったわけでは無く内側に何か機械的な物を想起させられそうなデザイン案があったのですが、そのためにどうしても使いたい類の生地が手に入らなかったり、このあとに書く他の要素と相性が悪かったりで不採用に至りました。もしかしたらいつか採用する日が来るかもしれませんのでその時は今回のことも書きたいですね。

そんなこんなで、ヒューマノイド的な衣装を作る方向では無く、先に書いた#2i2のアンドロイド像を枠組む方向になりました。
理由は上の部分もありますが、見た目がどうであれ、彼女はヒューマノイドです、と言われてしまえばヒューマノイドなんです。
例えばヴァーチャルタレント(Vtuber)のキズナアイはめちゃくちゃ人間ですがAIです(めちゃくちゃ人間味のあるAIなのかもしれません)。でも現実の人間がキズナアイと全く同じ設定で活動するよりもヴァーチャルの画面の中の存在としている方が説得力?が高いです(メタい話ですみません)。そしてキズナアイという存在はAIのキャラクターとしてどんな衣装でも成立します。別にキズナアイに限った話では無く、現実世界に存在しないモチーフ、特性のキャラクター全般に言える話だと思います。実写も同じく。
そして#2i2はすでにヒューマノイド(アンドロイド)と設定が公にされています。なのでそれを味方につけて、一般的に皆がどんなほぼ人間の人間モチーフの物にヒューマノイドないし、人間でない、人間とは違う印象を持つのだろうか、という部分から考えて形に落とすことで#2i2のアンドロイド像を枠組もうといった算段です。
設定として公にしているなら衣装はなんでも良いではないか、と思われそうですが、キズナアイがヴァーチャルだからどんな衣装でも説得力が保たれることの逆で、#2i2のメンバーは人間なので衣装にはヒューマノイドと認識される要因がある程度必要です。あとは楽曲やパフォーマンス、全体的なヴィジュアル的には絶対にその方が良いです。

先に書いたエクス・マキナのエヴァをはじめとする実写映画に登場するヒューマノイド、知ってた範囲だと、アークナイツのキャラクターや艦コレのキャラクター、あとメカ娘と呼ばれるジャンルのキャラクター達、アークナイツと艦コレのキャラクターはヒューマノイドではないと思いますが、人間に近いが人間でないように思ってしまう感覚はある方だと思います(ファンの方で良く思わない方すみません)。この辺りのヴィジュアルから見ると、単純な共通項としては無機的な要素が含まれていること(有機的と無機的な物達の対比)、あと一番強いなと思ったのは人物そのものと衣装、装備とのコントラストの強さです。これは自分の性別由来の価値観でもあるかと思いますが、例えば華奢な少女がでっかい銃持っているの、あれ、ありえないですからね、撃っ反動で腕折れちゃうよ。(でも人間じゃなかったら可能かもしれない。)しかしながら、その類のキャラクター見てかっこいいなーと思う部分もあり。ほぼ毎回書いている柔と硬のバランスもここ由来な部分もあります(大部分はファッションの、特にモードからですが)。
#2i2の皆さんは着用者としてのポテンシャルがとても高いです。グループのコンセプトも相まって上記に書いたような部分は割とダイレクトに落とすことができると判断しています。
よって今回の衣装のサブテーマをコントラスト、では足りないのでハイコントラストとしています。
ややこしいですが、このハイコントラストは衣装単体の話では無く、着用者と衣装のハイコントラストです。そしてハイコントラストを作るために衣装の中でもハイコントラストを作ります。さらにややこしい。衣装のハイコントラストはあとで。


衣装を作ることはそこに合う像を作ることです。似合う、はそこの一部です。今回重要なのは着用者本人とのコントラスト、この先書いていく衣装の中でのコントラスト。それらが#2i2の像として成立することです。

ここまでをぼやっと頭の中で考えていたわけですが、言語化して説明しようとすると長くなりますね、、ここから先もこんな感じです。



戻ります。



普段衣装では毎回、柔と硬を意識してデザインをしています。
*柔と硬は印象柔いと印象硬いで分けてデザインをしよう!という物です。宮﨑の性格に合う為毎回そうなっているので正しさの根拠とかは無いです。

それを視覚的に強く分かりやすくした物が今回衣装におけるハイコントラストです。

柔=#2i2コンセプトからアイドルとしてパフォーマンスをする時=人間
硬=#2i2コンセプトからアイドルとしてパフォーマンスをする時以外=ヒューマノイド
の様相です。この二つをアシンメトリーで一着に落としていきます。


トップスでダブルのライダースジャケットの形を採用しています。これはヒューマノイドの硬から現代衣服でタイトで硬質なイメージをもたれていて、#2i2に絶対必要だと思ったカッコ良さのある物は何かと考えた結果の採用です。スカートのベースはライダースならではのファスナーディテールを採用したシンプルな形にしています。

なぜ硬を表現するために既存の衣服から選ぶのかと思う方がいるかもしれませんので少し書くと、今回のライダースに限らず過去に採用した物でトレンチコートやモッズコート。採用してない物だとデニムジャケットやMA-1など衣服の中でもカジュアルダウンされていてもその衣服としての印象が強い物があります。ニュートラルになってないということでもありますが、例えばテーラードジャケット、デザインとしての汎用性が高くデザインの派生先でそれぞれ別の印象を与えることが多いですが、先に書いた衣服達はかろうじて元の衣服のディテールが残っている程度でもアイテム名を想起させるくらいには元の衣服の、固有のディテールの持つ印象が強いです。(そう感じる人が多いだろう、アイテム名を想起する人が多いだろうという認識です)。

衣装をデザインする上で先に形の大枠を決めます。今回はライダースになった訳ですが、これが同じような前の重なり幅が広いダブルのテーラーカラーだったり、さらにニュートラルなシャツベーツだと強さの度合いが全く異なってきます。大枠は衣装の印象を大きく作用する部分なので既存の衣服の持つ力を借りてより多くの人に伝わりやすくすることを目指しています。
ライダース(既存の衣服)を知ってる、見たことがある人はめちゃくちゃ多いのでその認知度の力を借りて衣装を見やすくする、見やすい=伝わりやすい、です。そしてライダースの印象はご存知の通りで、大体皆同じ印象を持っています。
余談ですが、ジャンプ漫画の有名な主人公はシルエットだけで見分けがつく人物が多いらしいです。衣装のシルエットをそこまで固有のものにすることは難しいですが、シルエット以外でも同じようなことは言えると思います。
今回かなりわかりやすく既存の衣服の形を借りていますが、わかりやすさが正義では無いと思います。強さを借りてきたように、連想ゲームや言葉遊び的な部分でもあるので。

アイドル衣装は広報資材としての役割もあるので、伝わりやすい、認識しやすい要素を組み込んで少しでも多くの人に伝わりやすい形にすることも必要だと考えています。なので宮﨑が作る衣装は衣装と言いながらコスプレ感の無いどこか衣服っぽい感じです。

ということでライダースを採用しているのですが、実はこのライダース 、本来のライダースとは違う作り方で制作していて、いわばライダース風です。上に書いたようなことを守るならば元来の物に忠実であるべきですが、今回はアシンメトリーデザインとして半分しめて着用(十味さんと青木りささんのみフィッティングの結果開けた方が似合うので開けて着用)であったり、ライダースはファスナーと開き止まりの位置が下襟の大きさに影響する特性があ流のでタイトな衣装ではファスナーの開きの止まり位置をバストラインより上にしないとした下襟が途中で曲がってが崩れてしまう。なのにそうすると下襟が小さくなってしまう。仮にそのまま大きくしても下襟先が鋭角になってしまう。でも襟先直角で大きい方が可愛い、、など様々な事情から着用時にカチッと理想の形に落ち着けるためのライダース風です。
襟周りのパターン(型紙)の作り方的にはライダースは本来テーラードジャケット寄りなのですが今回はトレンチコートの方が近いです(ナポレオンカラーと言うらしい。インターンスタッフが教えてくれた。)パターンを作りながらヒューマノイドも人間の模造ではあるのでこのライダースが模造であるのもコンセプト的に合うな、とも後付けで思いつつ、、思いつつもこれを前面に出したらつまらなくなるのは目に見えています。

ベースの形からは一切余分な物を削いで硬を呈するためにトワルフィッティング(形や寸法の確認のための試作品での試着)後にメンバーそれぞれに合わせて着用ではなく硬い鎧を装着するようなアウトラインを目指して補正をかけています。(パターン半分独学で今のところの技術でできる範囲+αくらいなので専門職の方には甘く見えるかもしれません。引き続き尽力します。これは予防線です。)
例えば、トップス裾とスカートのウエストラインが直立時に横から見て並行になるように、後ろから見たアームホールのラインが真っ直ぐに見えて背幅がスッキリ見えるように、肩の見え具合が全員同じくらいになるように、直立時に肩部分が身体から浮かないように(肩の傾斜や奥行きは全員違うのでそれぞれに合わせないと硬い生地は浮いてしまうことがあります。)とにかく無駄なシワがよらないように(毎度一人ずつ原型から引いていますが人間の形は全員違うので何かしら不都合が出る。ちなみに文化式原型を改造して使ってます)。他にも多数、、鎧のように、布では無い硬い素材で作ったボディーカバーを装着するような形を目指しました。

また前あきのファスナーに関してはライダース特有のデイテールであり強さの部分でもあるのでエクセラというYKKファスナーの所謂高級ラインの一番太い8号サイズを採用しています。通常タイプよりも金属部分に光沢があり、その光沢も通常タイプより鈍く重めな雰囲気で寄りで見た時の印象が全然違います。
スカートのファスナーは通常タイプですが、通常タイプで一番太い10号サイズを採用しました。少し引きで見てもファスナーだと分かるサイズ感です。
メンバーにも好評だったベース部分の生地ですが、白黒共に張りのあるライトグログランに中肉厚のラッセルレースを重ねて使用しています。このレース生地はカレンダー加工という加工が施されているため独特の光沢感があります。高圧で熱プレスして光沢を出すという加工ですが、既製服でアイロンをかけて生地がテカってしまった経験はありませんか?あれと同じような仕組みです。
先に書いたライダースの硬質さを表現するためには硬い生地やレザーを使うのが手っ取り早いですが、どちらもタイトな衣装や熱量のあるパフォーマンスに向かないので中厚地くらいに収める必要があります。
中厚地でパフォーマンスに使える硬質さのある光沢生地、滅多にお目にかかれないタイプだなーと思います。過去に自分が作った衣装では光沢の強い生地をほとんど使用していません。個人的な意見ですが厚地でない光沢の強い生地は安っぽく見えやすい傾向にあり、アイドル界隈と無縁だった自分から見るとかなり違和感を感じる類の生地が多いです。高い生地ならそうは見えないのでは?と思うかもしれませんが予算の兼ね合いもあるのでそうもいかないところで、でもどんな衣装も上品に仕立てたいので光沢生地を使う際はかなり選考して使っています。
そして今回のレース生地、実は2年?くらい前に一目惚れしてサンプルだけ頂いていつか使おうと温めていた物で、ここぞとばかりにメイン生地に据えました(在庫あって助かった)。引きで見るとレザー調にも見え、無駄なシワを排除したおかげで硬質さも強くなったと思います。

余談ですが、サンプルは20cm角くらいのサイズで、いざ発注して広い面で見てみると想像以上に印象が強かったため当時のデザインでは印象がごちゃつきそうだったので後に書くギャザーパーツのデザインを変更し、生地を1種類減らしています。Twitterに絵型を掲載すると思いますが、それが変更前のデザインです。

今回生地の印象が強い衣装です。当然生地は自分がデザインしているわけではなく生地会社様がデザイン生産している物で自分はそこから選んで使わせて頂いています。衣装は量産衣料に比べ作業分担されていない制作環境ではありますが、それでも辿れば自分以外の人の手によって作られ支えられている部分も大いにあります。




縦方向に3種類の柄で構成されたレース生地ですが、トップス、スカート共に背中心で柄がシンメトリーになって全員柄が同じ位置に来るように裁断しています。なのでスカートとトップスは前後中心で柄続きです。トップスの切替線とダーツ部分は全て柄合わせをして違う柄を跨がないように位置を調整しました。スカートのサイドのみ前後の分量を変えている関係で柄あわせ不可能なので合わせていません。
上襟、下襟も柄は全員揃え、それぞれ襟端と柄を並行にして、左右の柄が対照の位置になっています。またトップスのベルトとスカートのウエストベルトは同じ柄で作りました。引きで見ても全く分からない寄り見用の仕様です。引きで見るとレザーのような硬質な素材に見え、近づくとレース。可愛いコントラスト。面白いですよね。

ベーススカートは腰まではタイトラインで腰から下を少しフレアにしていますが、制作した衣装の中で一番分量が少ないです。これは#2i2の印象的に分量の多いスカートが合わない、硬の部分なので分量を減らしたい、あとに書く柔の分量とのコントラストを作るためです。

今回のサブテーマの柔と硬のハイコントラスト、様々な要素でこれを支えています。一見で分かる部分で白と黒、上に書いたライダース、スカートと後に書くギャザーパーツの分量比、これも後に書く金属パーツ、有彩色と無彩色。

次は今回衣装の分かりやすい部分、ギャザーパーツと袖について書きます。
アイドル衣装はパフォーマンス衣装であり、パフォーマンスと着用者のためのツールなので、デビュー衣装でない限りそのアイドルのパフォーマンスを見てデザインを考えています。
ハイコントラストを呈するために、ヒューマノイドという人間に近しいながら異質?な感じ、且つ華やかで上品なデザインを作りたい。
#2i2は腕や上半身を使うクールな振り付けが多いので、パフスリーブやフレアスリーブのような分量袖は合いません。ノースリーブや半袖はあっさりしすぎている。今までは分量やドレープの出方に気を遣って、というのが信条でもあったのですが(バンビの袖はその中でも分量感を強く意識した袖です)、#2i2にはこれまでのような物合いません。長袖で腕の動きを華やかに飾りたい。コントラストを強くするために分量も欲しい。結果、伸縮のシースルー生地でタイトスリーブを作ってそこにギャザーパーツをドッキングする両取りのデザインになりました。ハイコントラストを呈するために馴染ませることなくドッキングしました(デザインソース的に遠いですが日本舞踊の扇子踊りは印象的に近しい物があるかもしれません)。これは衣装そのものよりは、腕とのコントラストを作る方向です。
シルエットや分量における身体とのコントラストは身頃部分のように身体線をそのまま活用する、身体の上に布を配置するではなく、
身体の外に布を配置する、身体曲線と衣装や布のアウトライン同等に扱う、布の奥に身体がある様な感覚です。
布の奥に身体がある様な感覚は、今や薄れていますが、元は着物文化等に由来する日本人的な感覚らしいです。かなり意訳していますが。
この袖によってスカートとトップスにも共生地の分量パーツをつけることが決まりました。このギャザー生地は表地に使われるような生地ではなく、主に裏地やパニエなど下に着る衣服に使われるトリコット生地で、なかでも固めで張りのある物を採用しています。
#2i2のアンドロイド像を枠組むにあたって、コンセプトにある、この瞬間は人間らしくありたい、の、この瞬間は主にライブであるので、この部分を形に落としたいと考えていました。ヒューマノイドである時は何か抑圧されているのだろうか、だとしたら人間である時はどうなる?ヒューマノイドである時の心情、人間である時の心情、そのようなことをオーダーであるアシンメトリーや、表と裏、衣服の中に既にある要素で作れないかなー、と。

結果の形で説明していきますと、ダブルライダースの前は片方がもう片方に覆いかぶさりファスナーで止める仕様でこの覆いかぶさる上の部分をヒューマノイド、覆いかぶさられる下の部分を人間としました。ギャザーパーツはパフォーマンス用=ライブ用のディテール=人間です。これが覆いかぶさる部分から外に向かって溢れ出ています(実際はファスナー と一緒に縫い込んでいますが)。硬のヒューマノイドディテールの下から柔の人間性が溢れているようなイメージ。先に書いた通り裏地に使われる生地なので本来は衣服の裏にある生地なのに、、。
スカートに関しては下に履いているパニエごと切って裏返してライダースから流用したファスナーディテールを使って接ぎ直したイメージです。レースレイヤーのベーススカートにはパフォーマンス用のディテールはなく、裏側にはパフォーマンス映えする分量がある。内側に分量があるのに表側はそれを生かせるほどの分量はなく、分量の少なさからパニエを抑えてしまう(見栄え的に良くないのでレースレイヤー部分下にパニエ入れてません)、という想定。押さえつけられた人間性(ライブ映えの分量感、柔の印象)と上から押さえ付けるヒューマノイド(低分量、硬の印象)、それらの一部ひっくり返った様相です。右側から見ると人間、左側から見るとヒューマノイド、正面と背面から見るとまだヒューマノイドの部分が多い。デビューしたばかりですしね(想定)。
今回衣装のギャザーパーツがないライダースとタイトスカートのシンプルな状態で普段過ごしていて、ライブの時ににトップスと袖からポンとギャザーフリルが出て、スカートが一部切れて裏返ってフリフリになり再びドッキングされるみたいな、プリキュアの変身シーン?みたいなことになったら面白いなー、誰か3DCGで作ってください。
ここまでをまとめると、既存の衣服ある要素を言葉遊び的に色々掛け合わせながら、素材を絞り、それぞれのディテールの役割を明確にして今回の衣装のテーマ、#2i2のアンドロイド像を枠組むためのハイコントラストを作っています。

少し袖のギャザーについて追記すると、ヒューマノイドがライブを通して人間に成れると知って、そのためにライブ用に身体上に何か作り出すとしたら、もしかしたら身体の形に馴染まないそれは少し異質な物かもしれない。デビューしたばかりですしね。トップス、スカートのギャザーと違い既存の衣服にないオリジナルの仕様なので、この袖のギャザーはパフォーマンスに由来して唯一自ら作り出した物でもあるかも、、そんな意味での異質さです。

次は伸縮仕様のタイトスリーブ、ずっと追いかけている凸型下袖について書きます。専門的な話で出来るだけ丁寧に書いたつもりですが文章だけではどうしても難解ではあると思うので興味のある方以外は、戻ります。まで飛ばしてください。

今回の袖、肩周りはパフォーマンス時の身体と衣装両者のストレスフリーのための凸型下袖3種目の新型です。凸型下袖については前回バンビ衣装生地中頃に詳細を書いています。前回のバンビの下袖は一部を内側で身頃裾に縫い付け支える仕組みでしたが、今回はプリンセスラインの袖側全ての部分に袖が続いています。なので、今回トップスはノースリーブではなくフェイクレイヤーです。袖部分、身頃部分の2枚構成で、身頃部分は脇に切り替え線があり、肩側は切り替え線がなく、袖側に向かって凸型です。袖部分下側は身頃側に向かって凸型、脇(下)側に切替線はなく、肩(上側に切替線があります。身頃部分肩側の凸型は肩関節及び三角筋の動きを担保する面、下袖部分は脇の下の皮膚の伸縮に追従する面です。この二つの凸型は脇の下の横、身体の正面と背面側で皮膚の伸びが少ない部分に通した切替線でぐるっと一周つながっています。この二つの凸型とそれら繋ぐ切替線は、ある程度の想定をつけた上で自分の身体にペンで切替線をなぞりシームに負荷の少ない、適切な位置を探った結果の物です。身頃部分がプリンセスライン袖側全てに広がっているのは、肩を前後に動かす運動量を担保するためです。袖は上下の運動量しか担保していませんが、腕は全方向に動きますし、肩から動きます。伸縮なら普通の袖でもいけるんじゃ?と思われそうですが、普通の袖では確実にシームに負荷がかかりますし、身頃部分も袖部分もどこかに切り替え線が入ることになります。長い切り替え線は生地の伸縮を妨げます。しかもパフォーマンスの熱量は日常の動作とはかけ離れた物なのでシームは強固にする必要があります。また今回のようなシースルー生地は裏処理が荒れるので伸ばして縫うこともできませんし、伸ばして縫った時に下の寸法に戻りきるとは限りません。だから動きの中で面として捉える部分、線として捉えられる部分を探してシームに負荷の少ない、負荷の分散しやすい場所で切替線を作る必要があります。また今回外側から見える切替線はデザイン線としても作っています。袖部分はギャザーパーツを縫い込むため、肩部分の凸型は三角筋の様相で機械的、ヒューマノイド的な切り替えとして。
とはいえ今回作ったこの切替線はデザイン線より機能的な物なので今後も使います。
ちなみにバンビで使用した下袖、今回の袖は完全オリジナルの仕様ですが、文字や写真で読み取れる分に関してはサンプリングしていただいて構いません。個人、商用に関わらず使用する際はご一報ください。


戻ります。


次はここまで完全にスルーしていたスカートのポーチと備品達について書きます。
このスカートポーチ、名前がないのですが連ねているのでチェーンポーチとします。
スカート左側、レースレイヤー部分の分量を少なくすると決めていた時から、ハイコントラストにするには硬が足りないなーと思っていました。
インターンスタッフにも言われたのですが、正直このディテールはなくても衣装としては成立します。でも#2i2は#2i2として唯一無二で(毎回どのグループでも思ってます)、今回のサブテーマであるハイコントラスト、単純な見栄え的に何かもう一つスカートに動きがある物が欲しいと思っていましたが、動きやすい分量、柔を追加することができない。じゃあ硬を動かそう(どうやって動かそう)。

ということでチェーンポーチができました。元々バッグやポーチ的な物は入れる気だったので、それを動く様にした感じです。バッグなどに使用されるナイロンオックスを採用し、オーダーでもあった異素材MIX、ようやく布で異素材らしい異素材が加わりました。金属備品の多用が可能になり、無彩色は布地で、有彩色は非布地での採用に振り切ってエナメルでの使用を想定していたオーダーのオーロラカラーをエナメルではなく金属パーツのみで採用しました。エナメル、個人的な偏見で小さな面で使用したく無く、大きな面は熱量のあるパフォーマンス衣装では厳しい、またエナメルのシワは取れず見た目的にもよろしくないので、運営さんはオーダー時点では生地での使用を想定していたと思うのですが、こちらから金属のみでの使用を提案して承諾を頂きました。
チェーンポーチに使用した備品はカラビナ、サイドリリース、Dカン、カシメ、ネジ式カシメ(シカゴネジ)の5種類でサイドリリースのみがオーロラと黒で他4種類はシルバーとオーロラです。ちなみにネジ式カシメは名前の通りネジで止める仕様で、本来ネジ面は裏にするのですが#2i2なのでネジを表側にして使用しています。ライダース襟にあるのも同じ物です。こうゆうキャッチーなヒューマノイドっぽさ、機械っぽさもありかなと思い。あと単純に可愛い。
ちなみにオーロラカラー備品は白側のみに配置しています。これは白にのる金属の有彩色は柔らかく、黒にのる金属の有彩色は硬く見えるので(偏見)、全体の印象を鑑みての配置です。黒は既にレースが強いので金属は一色で十分。

オーロラカラーのパーツ達ですが、どこかで見たことがあったのですが、いざ探すとカラビナ以外使いたい種類、サイズが日本で扱いが無いことが判明(駆けずり回って見つけられませんでした、もしかしたらあったのかも)。なので海外から取り寄せました。
衣装で海外から資材取り寄せたのは初めてでした。最悪届かない可能性もありますからね。最終的にポーチの数をメンバーそれぞれ一つ減らしていますが、ポーチは60個制作。中綿入れてふっくらさせています。
金属備品を多く採用した理由ですが、#2i2のアンドロイド像はヒューマノイドとは違う意味合いを持っているにせよ、ネジ式カシメのようにある程度のキャッチーな分かりやすい要素を持たせるため、着用者本人とのコントラストを作るためです。カラビナは服飾備品ではないのでホームセンターとかで同じ物売ってると思います。niteizeというメーカーの商品です。見た目カッコいいのでおすすめ。サイズ展開もあります。


異素材MIXないし、異質感、ハイコントラストを呈するためにも金属備品は最適なのでライダースの襟やサイドリリースのように使って当然の部分だけでは無く、ポーチをできるだけ数を多くして備品の使用量も増やしました。
結果布だけで作るよりかなり重いスカートになり、フィッティングの結果によっては金物備品を減らす覚悟でしたが、、大丈夫でした。
メンバーそれぞれに一つ採用しているオーロラーカラーのサイドリリース(バックル)、届いて見た時それまで知っていたサイドリリースと印象違いすぎて笑ってしまいました。あれが妙に重いです。
このチェーンポーチは#2i2のアンドロイド像を枠組む物の中で衣装の中でのコントラストよりも着用者と衣装のコントラストを生む役割の装飾です。先に書いた通り衣装としては無くても成立してしまう物でもあります。ただ着用者と衣装のコントラストに重きをおいた今回の衣装では必要な物でした。
あともう一つ使用している備品があります。
カールコード(コイルチェーン)のストラップです。落下防止用に使ったり、パスケースをバッグにつける時に使ったりするあれです。
ポーチは縦方向の連結は容易ですが横方向には難しい、難しいというよりは、動いた時に広がらなければ意味が無いので直立時より動いて広がった時の寸法を考えなければなりません。その分をテープや紐類で入れるとぶら下がって邪魔になります。動いた時に伸びる何か、チェーンポーチの硬質さを損なわない、何か伸縮することが役割の物は、、ありました。カールコードです。この備品に関しては本当に#2i2でなければ使用できないなと思いながら、衣装と全く無縁のところにいる物を衣装に使うことができるワクワクが凄かったです。自分で調べている限りでは見つかりませんでしたが、この衣装が発表される以前に発表されているアイドル衣装でこのディテールを採用している物があったら教えてください。悔しいので。

採用の流れは以上ですが、それと別にヘッドホンしてたら格好良いだろうなと思っていて、撮影のみでもヘッドホン装着するならシールド線?はカールコードの物が良いなーと思っていて、そこからの引用でもあったりします。

次は照明に掛かる部分です。衣装使用時に想定される照明の種類は既製服より遥かに多いです。特にライブでは何種類もの色、方向、動きで照明さんが様々な演出をしてくれます。これを利用しない手はないです。ライダースのエクセラファスナーギャザーパーツのトリコット、金属パーツ達が主な照明利用のディテールです。
トリコットの生地は採光量多めの遮像カーテンと同じように、逆光照明を受け光を和らげてライブ中暗い中に逆光が当たるとギャザー部分のみが明るく見えるので採用しています。人体と他の生地は光を通さないので良い感じのコントラストです。
トリコットは編み地で織り地よりほつれにくいので、端処理の必要が無いです。今回必要なのは布とドレープの陰だけで端処理の陰は邪魔でした(端処理、今回生地なら三つ折りですが三つ折りすると3枚重ねになってしまい端の影が濃くなる)。
初期案では部分的にオーガンジーを考えていたのですが、オーガンジーは端処理が必要ですし、透明度が高いので後ろの光源が透けて見えます。逆光をイメージした時に光源が透けて見えるより若干透光する方が雰囲気に合うなと。ギャザーを可愛くしすぎないためにカットオフのエッジの効いた雰囲気も今回欲しかった。

ファスナーと金属パーツ達は単純に光沢の種類を増やすためです。光沢の種類を増やすことの利点は言葉で説明しにくいのですが、デザインをする中で、無機質な物が欲しいな、となることがあるので、柔と硬のバランスなのだと思います。布で作るのが当たり前なのに、上がった服やデザインを見てマイナスな意味で布っぽいな、、と思うことがある。布は有機的、身体は有機曲線、すごく個人の感覚に由来する部分なので機会があったら詳しく書きます。
とはいえ金属パーツの主な採用理由は先に書いた通りなので、照明の方はついで達成された感否めません。

アシンメトリーデザインはオーダーでもありますが、パフォーマンス衣装として良い効果のある物だと考えています。過去作った衣装アシンメトリーの物が多いのはこれ故です。
ライブ中は前後左右から衣装は見られるので視覚的に流動性があった方がパフォーマンスも映える。視覚的流動性は他所の言葉をそのまま流用している訳ではありませんが、某ロシア・アヴァンギャルドの作家の言葉の影響をモロに受けてそれらを衣服制作に落とした結果の物で衣装制作にも流用しています。

衣装の使用前提は本当に多く、自撮りをはじめとする接写や特典会のように近距離の物から、全身アー写やアクキー、アクリルスタンドのような引きの静止画、ライブ会場でも客席位置によって距離も変わりますし、MVのような動画もあります。
想像以上に衣装のヴィジュアル的な役割、責任大きくないか?アイドル衣装を作るようになって思ったことです。
なので先に書いた広報資材的な役割も上の一部です。
アシンメトリーデザインの多くはメンバーの顔がはっきり見えないくらいの距離で見ることも前提としてデザインを組んだりしています。というよりは、寄りでしか見えない部分以外は引きで見るのを前提にするべきかもしれません。


今回デザインを詳しく順序立てて書きましたが、順番に考えてていくことよりも、色々な方向から一番ベストである形を探るような進行であることがほとんどです。六角形のパラメーターでそ全ての値が高い部分を探るようなイメージ。


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
衣装についてはここまでです。ここから先はあとがき的な文章です。

今回特に長くなってしまい、デザインについて細かく書いたので作る側の人間がすごいように思われてしまうと嫌なので改めて書きますが、衣装制作はそもそもクライアントワークなのでメンバーの皆様をはじめとする運営の皆様によって支えられ成立しています。
また途中書いたように、衣装の中のそれぞれの素材が作られる過程で多くの人が関わっています。自分は最後に組み立てる役割で、その組み立てもインターンスタッフの手助けも入り成立しています。

#2i2は初回だったので初めてここに来てくださった方もいるかもしれません。ここでは制作した衣装や、衣装制作という物をより知っていただくために詳しく書く試みをしています。
これは試みで、目的があります。とはいえついつい仕様のことばかり書いてしまうので今回のようにデザインメインに軌道修正したりしながら、、まともな文章になるようにしていきます。
基本的に衣装を担当する度に書くのでまた読みに来ていただけると嬉しいです。

ありがとうございました。

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