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SW!CH 3rd衣装

2019年12月24日のワンマンライブにて公開された株式会社ディスクユニオン発のアイドルユニット「SW!CH」の3rd衣装です。


プロデューサーさんのおっしゃっていた通り「最初期で話してたアイデアに1年かけていよいよ辿り着いた目標地点」の衣装です。

通常、依頼と衣装イメージを頂いてからデザインを組むのですが、この3rdに限っては2nd納品してすぐに大枠のイメージが浮かんでいて、打ち合わせで3rdのイメージを頂き、二つのイメージが合ったのでそれをベースにデザインを組みました。

大枠のイメージは線だけの絵型でしたが、プロデューサーさん提案のベージュのチェックや、完全なアシンメトリー配色もイメージに合致して嬉しく思った記憶があります。


以下、衣装の詳細と過程の話です。例がごとく長文乱文になるかと思います(なりました)ので、ご容赦ください。

1stのように言葉ベース、コンセプチュアルなデザイン構成は行っていませんが、王道系ではあるが、SW!CHはSW!CHとして唯一無二なんだ、という気持ちでデザイン組みをしました。ジャンルとしてはガーリークラシック、の様な。

今回の衣装の一番の特徴は、見た通り前後身頃の曲線のレイヤーです。
前回記事で書いた、360°デザインの硬のディテール。また、これまでよりもしっかりと色割したアシンメトリーデザインを採用しているのは、だんだんとアイドルとして大きくなり、大きな会場でライブをすることも増えてくることも想定して、引きで見ても際立つように、引きで見てもSW!CHだと分かるようにするためです。
また、それに合わせてメンバーカラーも視認しやすいように大きめに入れました。色部分はグログランテープを使用しており、フリルは分量を揃えて内側に倒した後手縫いでそれぞれの間を縫い付けています。
メンバーカラー上のチェック生地は全員同じ柄になっています。
曲線レイヤーはフェイクレイヤードになっており、曲線前端の下にはチェック生地の前開きがしっかりあります。また、曲線前端は比翼仕様になっていて、身頃とボタンで留める形です。また、白生地部分は全てレースとの二重仕様になっています。
このフェイクレイヤーですが、前端比翼の切り替え線まで下側にチェックが入っているのですが、チェックと白を重ねて内縫いしてしまうとシームが分厚くなってしまい、比翼と身頃の繋ぎがスムーズに見えなくなってしまう(段差が大きくなってしまう)ため、ベージュ生地と曲線レイヤーは前端比翼と身頃の切り替え線に落としミシン(継ぎ目に沿って叩くミシン)で縫い止めています。スカート部分も同様に、身頃とスカート部分の切り替え線に落としミシンで下のチェック生地を縫い止めています。チェック生地の前身頃、白生地レースの前身頃それぞれを作ってから一気にドッキングさせている形で、こう言うと簡単ですが、シームが厚くならない様に、表にあたりが出ない様にするための縫い順の複雑さ、着分の工程数の多さは学生時代込みでも断トツ過去イチのトップスです。
また、落としミシンはシームを強化する効果もあるので、一石二鳥です。


柄合わせに関してですが、チェック部分は不可能な部分を除いて柄合わせをしています。
余談ですが、柄合わせの裁断が200枚弱あり想像以上に時間がかかって制作スケジュールが狂った、という反省があります。ちなみに総裁断枚数は300枚越えで装飾と機能性の両方を求め、量産の様な効率化を図らず最良で行くので衣装の裁断枚数は多くなりがちです。もちろん無駄なシームは省きます。
曲線レイヤーの前身頃の部分は比翼部分と、身頃部分でパターンが別れているのですが、この部分のレースは柄を合わせています。高さを合わせるではなく、続いて見えるように合わせています。シームはあるが、パターンが割れているように見えない。白生地と重ねているので、レース重ねのテクスチャーは分かるものの、柄までは寄って見ないと見えません。(スカート部分はカーブ同士の接ぎ合わせなので柄がずれます。)
襟は全員同じ柄にし、また縦方向で身頃と合わせています(浮くので100%とまではいきませんが)。これはもう全く見て分からないのですが、トップスがロング丈でないメンバーのスカートは前中心でトップス前身頃と柄を合わせています。

襟は1stよりも大きめで、さらにアウターっぽいサイズ感にしています。
襟の大きさ、形は結構悩んで、丸襟にして可愛い感じにするものありでしたし、小さければスッキリした印象で、それも可愛い見え方をするのですが、すでに柄が可愛いので、大きめ角形のクラシックな雰囲気にしました。
メンバーが衣装での自撮り写真をUPしているのを見るたびに大きめにして良かった、、という気持ちになります。やはり SW!CHにはピシッとした形の襟が合います。

袖は、5枚接ぎにしていてユリの花の様に裾に向けて曲線でフレアが広がる形になる様にしました。
いつも通り凸型下袖で、袖の5枚の内下袖にあたる一枚が途中で伸縮生地切り替えになっています。身頃横をチェックでない別生地に切り替えていますが、ここにも伸縮生地を使用していて、SW!CHでは身頃に全く伸縮性の無い生地を使うのは初めてだったのでここで運動量を担保してもらっています。身頃からウエストの切り替えから下、確か5cmくらいまでを一枚で取っていて、動いた際にシームに締め付けられる様な感覚は軽減できるのでは無いかと思っています。とにかく衣装が動きの阻害になる様なことは減らしたい。

トップスの丈はロングとショート(通常丈)の2パターンで、ショート丈の場合はベージュの生地が一周スカートパーツで入っていますが、ロングの場合はアシンメトリーで、左身頃のみに付いていて、その端に紐がありウエストを回して右身頃曲線レイヤーの下で結んで留めて着用する形になっています。AsUさん、AkRさん、MyNさんはスカートではなく、ショートパンツとのレイヤーでなっていて、右側の曲線レイヤー下の二重の白生地フレアはパンツに縫い込まれています。
1stにも書いたのですが、分量の多いフレアで扇型のパターンを取る場合に、サイドの継ぎ目で柄が角形になってしまいこれが可愛く無い、と言うより個人的に好きでは無いのですが、今回は柄が大きく面割りを増やすとそれも違和感になってしまうため(扇型にせずウエストでギャザーを寄せて分量を取る方法もありますが、柄に強い凹凸ができるとそれもそれで視覚的な主張が強く良くない)、メンバーカラー入りの円形切り替えをサイドシームにあえて乗せて角形の緩和を図っています。また、円形内の柄は接するフレアのどちらにも合わせず、全員同じくらいの角度でずらして、柄合わせない遊び、をしています。


先に詳細なことを書いてしまい、順序逆だったかなと思いながら、全体的なデザインのことを書きます。
今回初めて暖色を使用しましたが、衣服に関わらず暖色は膨張色で、寒色よりも膨張して見える、膨張だと極端ですが、寒色の方が少しシャープな印象になります。また、横方向の別色の生地重ね、横方向の大きな切り替えは横に長く見えます。これが衣服だと着痩せ(とその逆)、みたいな話で出がちですが、デザイン段階だとニュアンスになってしまいますが、シャープな印象になるか、ふわっとした印象になるか、のような感じになります。
暖色や白のチュールとレースがたくさん重なったドレス、衣装のイメージが極端な例です。2ndでスカートを横方向に二重レイヤーにし、しかもその裾にグログランテープを叩いて目立たせたりしていたのですが、あれは寒色だからこそで、爽やかクリーンな印象だけにならないようにふわっと感を追加したイメージです。
SW!CH衣装では可愛い意味でのシャープさは外せないと考えているので、暖色且つ可愛いチェックだったこともあり、横方向の別色の生地重ね、横方向の大きな切り替えは極力避けるライン採りをしています。
基本的に縦か曲線、横向きは入っても少なめ、あとはメンバーそれぞれの印象に合わせて。
身頃の曲線レイヤーの特異性と調和の取れるラインを作りたかったという理由もありますが、ここが本当に感覚の話で、ひたすら絵型を書いて調整していた、としか言いようがなく、、

あと、最初期のデザインでは、トップスのベージュと白のレイヤーが逆の生地配置で、これはアウターとシャツの順当なレイヤーをイメージしてのものですが、順当さが目立ってしまい、衣装感を強めに出す為に逆にしたという経緯があります。また、チェックの生地が落ち感のある生地でもあったので、被せのレースはチュールの刺繍レースを使用していますが、刺繍部分がマットな質感で光を反射しにくく、マットな生地と重ねてしまうと照明が当たった際の印象がぼやっとしてしまうので、ベース生地の見える部分と見えない部分での差を出す為に(引きでは全く見えませんが)レース下のベース生地は張り感と若干光沢のあるグログランを使用して、パリッとした白色になるようにしています。チェックは柄でドレープの立体感が見えますが、白は陰影にしか頼れないので張りのある生地でドレープの凹凸が強く出るようにしています。硬さだけで言うならば、チェックの方が柔らかく、白の方が硬いです。
また、今回アウトラインと生地感に関わる話全部が、左右の極端なアシンメトリーの調和取りの為の要素にもなっています。イメージですが、普通の服、例えばワンピースが中心で左右別生地の作りの場合ドッキングしている感が強く出てきます。それはそれでデザインとしては可愛いのですが、今回それは必要がないので、これは本当製作者側の意見になってしまいますが、最初からこのデザイン、この生地配置だった、こうゆう衣装なんだと言うアウトラインを作ることを目指しました。ただ、左右でパターンが同じなのは袖だけで、曲線レイヤーを抜きにしても身頃の面割り左右で全く違うのですが、、これは曲線レイヤーに必要な面割り以外はしないようにした為でもありますが、、

前回の記事で書いた衣装の役割の推移の補強から下支えする衣装の役割へ向かう転換期?的な衣装でもあります。柔と硬のバランスで、硬のディテールに多めにステ振りしているイメージです。


最後に、この大変な状況下でライブも中止になってしまうことも多く、開催されても見に行くことが困難な方も多いと思うので、SW!CHがライブ映像を期間限定で公開しているので↓から是非ご覧ください。
https://youtu.be/3WuwuFmE1lE

あと、制作した衣装が狙った効果を役割をしっかり果たしているか、動画静止画関わらず、どうゆう動き、見え方をするか確認するのが日課になっていて、完全に衣装製作者目線で申し訳ないのですがAkRさんのTiKToKが個人的に好きなのでこちら↓も是非。
https://www.tiktok.com/@swich_akari/video/6803707873382698241




#SWICH

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