なぜミュージカル『レ・ミゼラブル』は何度も見たいと思うのか。

4月から帝国劇場などで上演される『レ・ミゼラブル』の制作発表が24日にあった。その日は出演者のほぼ全員がドレスやスーツ姿でステージに上がる。私はウェブ記事でその様子を知るだけなので詳しくはないのだけれど、おそらく全員が紹介され、少なくともプリンシパル(主要キャスト)は一人ひとり挨拶をしたようだ。楽しみなのは新たにキャスティングされた俳優たちの歌唱披露だ。これはウェブ上で公開される。ここ数年は長いこと応援していた俳優の出演が続いているので、歌唱動画のチェックは欠かせない。

最初に開いた動画はジャベール役伊礼彼方だった。彼のミュージカルを見たいとずっと思っていた。なかなか映像配信されるミュージカルに出演しなかったので、彼の歌を聴いたのは2008年1月のこまつ芸術劇場うらら以来だ。2014年3月の歌劇座で上演された『Paco ~パコと魔法の絵本』では歌がなくて本当に残念だった(出演者を見てミュージカルだと思い込んでいた)。体格がよく、彫りが深い顔立ちで、憎まれ役感が満載である。

アンジョルラス役小野田龍之介はミュージカル『ミス・サイゴン』でクリス役を演じた俳優だ。革命のリーダーで学生でもあるアンジョルラスだが、小野田龍之介の歌には貫禄があって今回の革命は勝つ予感がする(勝ちません)。思わず上手いなぁと声を出して言ってしまうほどだ。かつて奇跡の高校生と言われた小野田龍之介も27歳。最後に見たのは2011年歌劇座で上演された『モーツァルト!』でのアンサンブルだけど、しっかり歌声を聴いたのはシアター・ドラマシティで見た2010年『マグダラなマリア』以来。

なぜこの並びだったのか。次に流れてきた動画はジャン・バルジャン役佐藤隆紀。国立音大声楽科卒。文句の付けようのない歌唱力。その歌声にシュガーさん(佐藤の愛称)の人柄がにじみ出ている。2017年いまだて芸術館での『キューティー・ブロンド』ではシュガーさんの全体から包容力が放出されていた。こんな優しそうな人に拷問のような刑務所での生活やその後の逃亡生活をさせるのは忍びない。というか想像が付かない。だからこそ、彼のジャン・バルジャンをこの目で見て確かめたい。

そして男性プリンシパルとしては大抜擢だと思う、マリウス役三浦宏規。現在19歳(公演時は20歳)。映像配信で見ていた当時、ほんの1~2年で急激に歌唱力が上がったと感じたし、何より全国バレエコンクールで1位を取る実力の持ち主だ。いずれ帝劇で大活躍するのだろうとは思っていた。ただ童顔なので今出来る役はないとも思っていた。実力者にはそういうのは関係ないのね。レミゼにダンスシーンがないのが本当に残念だ。今回の歌唱を聞いた限りでは、ちょっと難しい歌をチョイスしたかなとか、初々しくて良いのではとか、まだ日があるしとか、そういう感想です。身体はがっちりしているし、舞台に上がると存在感がある。歌は先日生で聞いたけど、かなりタイプの違う曲調だったしダンスもないし、どう判断していいのか分からないけど、何より若いのでもしかしたら大化けするかもしれない。なぜか期待してしまう俳優だ。

テナルディエ夫妻は知らない人はいないのではないかと思われる二人だ。夫がトレンディエンジェルの斎藤さんこと斎藤司。夫人がアニメ『鋼の錬金術師』エドワード役などの朴璐美。斎藤さんはなんでも卒なくこなす雰囲気なのであんまり驚かなかったんだけど、トークを聞いていると軽口の中にかなりご苦労されている様子が伺える。驚いたのは朴さん。声優ファンの方にとっては周知のことなのかもしれないけど、めちゃくちゃパンチの効いた歌声でこれはしびれる。さすがとしか言えない。

ところで、伊礼、小野田、三浦の3人はミュージカル『テニスの王子様』に出演した経験を持つ人たちだ。通称テニミュは今2.5次元といわれる舞台の先駆けとなった作品だ。初演から16年、一公演につき主役校が11人、対戦校1校当たり5~8人のキャストが出演する。テニミュからはかなりの人数が演劇界(だけではないけれど)に輩出されていることになる。ただ出演した時期によって俳優たちの2.5次元舞台に対するスタンスが違うのが面白い。前回からアンジョルラス役で出演している相葉裕樹と伊礼彼方は、テニミュ以来2.5次元の作品には出演していない。前回から出演しているマリウス役内藤大希と小野田龍之介は目立つ作品ではないがサラッと2.5作品の出演を混ぜているイメージがある。去年の夏までテニミュで人気の高いキャラクターを演じていた三浦宏規は、レミゼの制作発表直前まで刀剣男士として紅白に出演し、レミゼ後もミュージカル『刀剣乱舞』の舞台出演が決まっている。いままさに旬の2.5次元作品に出演中なのだ。彼は2.5もそれ以外も舞台作品には変わりないとどこかのインタビューで答えていた。これはテニミュに出演した時期を考えると本当に面白い。初期のキャストにいったい何があったんだろうとか、演劇界が2.5を無視できなくなったということかなとか、もしかしたら内藤大希と小野田龍之介はテニミュより前から舞台で活動していたから捉え方が他のキャストとは違うのかもしれないとか、考えるといろいろ面白いんだけど、普通興味ないですよね。ここら辺でやめておきます。

さて、この『レ・ミゼラブル』ですが、観劇の予定はありません。前々回は富山公演があったので、今回石川公演を期待していたのですがありませんでした。前回は大阪まで遠征したけど、今回は2月と4月に他の舞台のために遠征するので自粛です。新キャストたちを生で見たかった。それと、内藤大希のマリウスがものすごく良かったので、もう一度見たかった。公演が始まったらレポを探して見た気持ちになることにします。


ミュージカル レ・ミゼラブル
https://www.tohostage.com/lesmiserables/

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