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クラウド時代のオーパーツ Google App Engine

Google App Engine(以下GAEと呼びます)とはGoogleが提供するPaaSです。

2008年というクラウド的な時間軸で言えば先史ともいえる時代から提供されているサービスなのですが、日本のスタートアップ界隈では当時人気のなかったJavaとPythonのみの提供での開始だったこと、サービス仕様的にメジャーなウェブアプリケーションフレームワークを利用するハードルが高かったこと、課金体系が分かりづらかったこと、また、盛り上がりを見せてきたタイミングで値上げを行い、いわゆるエヴァンジェリスト的な人々の離散を招いたこと、日本にサーバ拠点がなく、レイテンシの観点で日本の技術トレンドを牽引しているゲーム関連の企業での採用がほとんどなかったこと、このあたりの要因のため、特に日本では現時点でもほとんど普及は見られません。

(注)2016年3月22日に「East Asia (東アジア) リージョン - 日本(東京)」の追加がアナウンスされました。

ただし、個人的にはここに来て流れが変わってきたように感じています。

Pythonの復興

Pythonは米国の学術機関で最も支持されているプログラミング言語です。

Python is Now the Most Popular Introductory Teaching Language at Top U.S. Universities | blog@CACM | Communications of the ACM

一方で近年に至るまで、日本のIT産業において学問としてのコンピュータサイエンスとの連関はほぼないに等しい状況でした。実際に学術系(ビジネス系も)のソフトウェア・ライブラリが極めて豊富なPythonの存在はほとんど無視され続けてきました。結果的に技術的にはともかく人材の需給という観点で経営的に選択肢となり得る言語ではなかったのです。

ところが、近年、データサイエンスやAIのブームを受けて、Pythonが急速に注目を集めつつあります。数年はかかると思われますが、国内でのPythonエンジニアの需給も改善されるのではないかと思われます。

GAEは現在開発言語としてJavaとPythonに加え、GoとPHPを選択することが可能ですが、経営的な観点から見ても、Pythonの採用の障壁は下がっており、また、それを利用したGAEの採用も現実的な選択肢となりつつあります。

(2016年3月24日追記)GoogleがGCP Next 2016にて、GAEでのRubyとNode.jsのサポートを発表しました。

[速報]Google App EngineがRubyとNode.jsのサポートを発表。GCP Next 2016

もう一点、Pythonは経営者が覚えておいて損がない言語としても最右翼に浮上してきたとも言えるかもしれません。

JavaScript+APIという構成の主流化

サーバサイドレンダリングからJavaScriptによるレンダリングというウェブインタフェースの技術的な潮流、モバイルアプリケーションへのAPI提供という技術的要請などもあり、サーバ側で実装すべき機能はAPIだけでよいのではないかという考え方があります。

この流れを決定的にしたのが、2014年末からのGoogleによるJavaScriptでレンダリングしたコンテンツの検索インデックスへの登録への対応でした。

Google ウェブマスター向け公式ブログ: 技術に関するウェブマスター向けガイドラインを更新しました

それまでは、主にSEO対策のためにJavaScriptによるレンダリングに全面依存した構成は取りにくかったのですが、今となっては大きな障害とはなっていません。

そうなると、サーバサイドにフル機能のアプリケーションフレームワークは必要ないということになり、GAEのデメリットの一つは解消されるということとなります。

それどころか、APIのみを提供するにあたっては、GAEは極めて実装しやすい環境と言えます。

Google Cloud Platform内のサービス統合の動き

筆者は以前よりGAEをもっと広く啓蒙したいと考えていました。それを妨げていたのは非常に些末かつテクニカルな問題点でした。

本格的にウェブサービスを提供しようと考えた場合、独自ドメインにてサービスを運用したいということは当然の要求だと思います。しかし、昨年まで、GAEにて独自ドメインを利用する場合、Google Appsという名前は似ていますが、全く目的や性質の異なる(恐らくGoogle内での管掌部署も異なる)サービスを利用する必要がありました。

そのインタフェースや操作自体も非常に分かりづらいものでしたが、それに加え、GAEは基本無料で利用できることに対して、Google Appsは有料という本末転倒な状況があり、細かい点とはいえ、他人にお薦めする際にクリティカルな問題点となっていました。

ここ数年、GoogleはGoogle Cloud Platformというブランドの下、関連サービスの統合を進め、2015年から独自ドメイン設定をGAEのコントロールパネルから出来るようになりました。

加えて、従前はnote.muのようにwwwのないドメイン、ネイキッドドメインの利用が出来なかったのですが、そちらも利用可能となっています。

結論

Google App Engineは日本国内では極めてマイナーな存在にとどまっていますが、その理由としては、本質的な機能やコストパフォーマンスの問題というよりも、外部環境含め歴史的経緯が大きかったのではないかと思われます。

現在では、ほとんどの課題が解決済み、もしくは非エンジニアが試してみる上ではそもそも課題ですらないという状況ですので、検討してみてはいかがでしょうか。

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