取材記事:由利本荘市洋上風力発電海外先進地調査事業報告会④

これまで、3回報告してきた、由利本荘市洋上風力発電海外先進地調査事業報告回の取材記事の続報。

10月6日の報告会の取材の時の市民の声をうけて、記者として市に質問を行った。

令和1年10月21日に正式に回答があった。ここで紹介したい。

質問:「これまで由利本荘市は市議会などで、”由利本荘市では健康被害はない”と回答していました。由利本荘市では風力発電の影響が疑われる健康被害をきちんと調査する予定はありますか?」
由利本荘市 市民生活部 回答:
本市では、日々、生活相談や苦情など、本庁市民相談室、各総合支所において、様々な市民相談を受け付け、その対応にあたっております。
これまで、匿名を除き、風車による健康被害の相談は無いものの、そうした相談があれば、他の騒音相談、騒音苦情と同じように、その内容をお聞きし、音の発生源となる原因者へお伝えし、対応を求めることになります。
 また、10月6日の報告会場で、風車による健康被害を訴える方に対しては、西目総合支所を中心に、上記の対応を予定しております。
 平成30年度に市民課市民相談室で受け付けました市民相談や消費生活相談は、437件ありますが、いずれも適切に対応しております。

(図表1:ご質問、ご意見 令和1年10月9日 山下友宏)

海外先進地視察事業報告会の意見質問(山下)k


(図表2:由利本荘市市民生活部回答)

由利本荘市回答20191021

質問状は、記事として公開することを意図して質問し、由利本荘市にも回答を記事として公開する旨を伝えており、公開する前提での回答をいただけた。市の担当者の対応に感謝したい。

さて、質問の意図と背景は、前回の記事

「由利本荘市洋上風力海外先進地調査事業報告会③1006」

において、市民がすでに由利本荘市にある、風力発電施設によって健康被害をうけている。という告白があったからである。

前回記事でも指摘したように、環境省の調査報告および

「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」(平成29年5月26日)では、風力発電の低周波音による健康被害はない、と主張しているのが環境省の立場である。もちろん、地方自治体が環境省の方針を忖度するのは、今の時代では当然の流れかもしれない。

ただし、風力発電になぜ市民が反対するのか?その理由を行政担当者は今一度考える必要はあるだろう。

私の質問全文を引用したい。(以下長文引用)

質問文書
洋上風力海外先進地調査事業報告会における質問・ご意見

9月25日 岩城会館、10月2日 シーガル、10月6日 アクアパルでの報告会を取材させていただきました、フリー記者の下友宏です。
こちらの申し出や連絡方法など、私の不手際があり、申し訳ありませんでした。
 10月8日の協議会や10月1日より縦覧の始まったレノバ社環境アセスメントの準備書縦覧もあり、今後の由利本荘市の対応と事業者の対応について、
記者として記事を配信し、ネット記事を中心として報告することを考えております。
 私が記者としてネット記事を配信するのは、洋上風力発電計画があるのは、由利本荘市だけではないからです。秋田県の全県民にも関係します。また全国各地にも計画があります。
その状況下で、どんな説明があり、市民が何を質問したのか、行政や事業者がどう回答したのか。それを伝えることが、公共のために必要ではないかと信じております。
記事では厳しい視点で”批判的な文言”もいれております。これは、だれかの人権を傷つける意図はしておりませんし、事実と異なることを伝える意図もありません。
 ただし、私の文章表現等の力量不足により、不適切なものがありましたら、ご指摘、ご指導をお願いします。不適切な部分は即修正します。
 前置きが長くなりましたが、以下の質問をいたします。
西目シーガルでもすでに建設されている風力発電による健康被害が発生しているのではないか、と指摘され、またアクアパルでは私は健康被害をうけている、と発言された市民がいらっしゃいました。
市民の意見ではなく、記者の質問です。

 質問:「これまで由利本荘市は市議会などで、”由利本荘市では健康被害はない”と回答していました。由利本荘市では風力発電の影響が疑われる健康被害をきちんと調査する予定はありますか?」

 低周波音騒音被害および苦情は、風力発電によるものでなくても、工場騒音や高架橋騒音など各地の裁判の判例があり、また被害者の会もあります。
また騒音や悪臭を専門とする弁護士の方もいます。
 私は記者という立場で、被害者の会、弁護士に相談して、由利本荘の対応が適切なのか?を聞き取りする予定です。
 低周波音測定は、専用の高額な騒音測定器と技能が必要であり、また”風力の騒音測定結果”と被害を訴えるかたの聞き取りを元に、
”医師”が外因性(低周波音)による自律神経失調症もしくは不定愁訴と診断してはじめてわかるという認識です。
調査が不十分なまま、”環境省の指針と調査”の見解である風力発電の健康影響はない、被害者の健康被害はノセボ効果の可能性もある。とする市の対応を市民は見ています。
 市民が万が一、低周波音の健康影響がでた場合、由利本荘市が窓口になれるでしょうか?
私は生活環境課が窓口として機能があるけど、”相談にのってくれないような雰囲気を”市民が感じているのではないかと危惧しております。
反対する市民が最も心配しているのは、自分や家族や大切な友人にもしかして健康影響がでた場合、事業者や市役所が対応してくれないことを不安に考えているのではないでしょうか?

(以上、引用終わり)

住民が風力発電に反対する理由は、自分や自分の家族、大切な友人が、低周波音による健康被害を受けた場合、行政や国が本当に真摯に対応してくれるのか?

疑問に考えているからだと、私は指摘している。

今の環境省の態度は、予防原則に反し、環境基本法の法意にも反し、日本国憲法13条および17条および25条の原則にも反するものである。

これは、「転載記事:低周波公害ハンドブックQ&A(汐見文隆、低周波空気振動被害者の会)」

を読んでいただけると理解できる内容である。

https://note.mu/y_t_publishing/n/nd9eca459d4e8


私がこの問題を取材するのは、公害病として日本の問題となった水俣病と同じ構図の問題点があると疑念があるからである。

また、すでに被害救済を望みながら、黙殺されてきた被害者の声を、すでに聞いているからにほかならない。

被害者の取材は、プライバシーへの十分な配慮が必要であり、また被害者の会の関係者であっても偏見や孤立など、疲弊している現状がある。

由利本荘市の市民を代弁するつもりで、私は質問状を提出し、公開した。

由利本荘市の対応が、市民の為に、被害調査を真摯に検討してくださることを信じている。今後も、この案件は取材を継続したい。

なお、山下友宏出版でも低周波音測定器(検定付)RION NL-62による測定結果も今後の取材と併せて公表していきたい。

https://note.mu/y_t_publishing/n/ne244324e3918


環境省は、ノーシーボ効果(いわゆる思い込みの悪影響)を指摘する学識経験者の一見解を、あたかもすべての被害者に適用できるような運用指針を示している。

公害問題では、あくまで被害者の症状を医師が判断するだけでなく、低周波音の測定や、過去の被害事例、海外の被害事例と真摯につきあわせて結論を出す必要がある。

安易な、ノーシーボ効果の引用は、混乱を招くだけでなく、被災者を孤立化させる刃にもなる。

今一度、きちんとした調査を行うことを、環境省にも要求していく所存である。

記事配信19.10.24山下友宏

(更新19.10.29)

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