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取材記事:由利本荘市洋上風力発電海外先進地調査事業報告会③191006

秋田県由利本荘市の洋上風力発電海外先進地調査事業報告会③

これまでの記事2019年9月25日、10月2日、の報告会に続いて、報告会の取材を行ったので、第3報を記事にしたい。
4回目の開催は、2019年10月6日(日)

由利本荘市アクアパルの多目的ホールにて開催された。今回が市民向けの海外先進地視察事業報告会の最終回にあたる。

なお今回のアクアパルの取材は、事前に連絡しネット記事になること、録音する旨を伝え許可をいただいた。感謝したい。

最終回の市民の関心は高く、また洋上風力発電のレノバ社のアセスメントの準備書の縦覧が10月1日に開始され、地元ケーブルも入っており、これまでで一番緊張感のある報告会になったと感じた。

市民の参加は約150名で、質疑応答の時間では、すでに由利本荘市で稼働している風力発電で健康被害を訴える被害者が声をあげた場面もあった。この点は、今後重要な意味合いがあると考えている。

写真①:会場全体(山下撮影)

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市の視察報告詳細内容について、別の機会に、改めて記事にしたい。

後の質疑応答にも関係する以下は、解説が必要かと考えられる。

国である経済産業省(引用A)、国土交通省、環境省が連携し、いわゆる"国策"として洋上風力発電を推進する背景のことである。

国策に対して、地方自治体の置かれた立場について、"再エネ海域利用法"、

正式名称"海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律"
の内容で重要な部分を説明をしたい

②法律抜粋画像(再エネ海域利用法):引用B

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この基本理念は、かみ砕いた表現にすると、いわゆる国が率先して、再エネ海域利用法に従って、洋上風力発電を推進せよ、

地方公共団体は、"国の政策に協力せよ"

という主旨にもなる。

つまり、海外視察に行った、市長、副市長、市の職員や市議会の代表は、国に協力せよ

というミッションを受けた立場であることが法律で定められたということを説明しておく必要がある。

市の立場は、由利本荘市も市のウェブサイトで報告(引用C)されている

以下、由利本荘市のウェブサイトから引用

(引用始め)本市の取り組み
 再エネ海域利用法の施行により、今後、洋上風力を含む再エネ関連施設が全国の海域に整備されていくことになります。
こうした国のエネルギー転換政策を受け、市では、3月、市議会議員や市職員を対象に、同法の概要や今後の運用、風車の騒音と健康への影響などについて、内閣府や国土交通省、経済産業省、環境省の職員から学ぶ機会を設けました。

(引用終わり)

質疑応答の時間は11時20分から12時5分までとなった。

③写真(山下撮影)質疑応答

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主なものとして

・私は賛成する市民の立場ですが、もう一度聞きます、洋上風力発電の視察で問題はありましたか?

・すでに市内ある陸上風力発電があるのにそれを調べず海外に視察するのは、まるで足元を見ていないのではないか?

山で狩猟を45年しているが、風力発電の影響で鳥や動物に重大な影響がすでに出ているのに調査せずに海外に行って意味があるのか?

・視察の意義について疑問がある(風力はCO2削減効果に疑問がある)、ヨーロッパは電力網で繋がっていて、ある国では風力発電の比率が高くても、全体でバランスが取りやすい。それでも、風力発電の不安定性から火力のバックアップを行なっているはずである。と指摘。

・視察地の風向きは、海から陸ではなく、陸から海に行く地域であるように見える。そもそも海から陸に風が吹きやすい由利本荘市と比較になるのか?

・まるでバラ色の洋上風力発電の物語を聞くようだった。先進地のアセスメントから学んできたのか?手順は活かせないと意味がないように見える。

・由利本荘市の風力発電の電力は都会の為に見える。由利本荘市だけが環境負荷が高いなってよいと考えているのか?

・風力発電のブレードは、特殊な素材であり、海外では廃棄物としてきちんと処理できているのか?そもそも、企業が撤退や倒産したら、廃棄物はきちんと処理できる制度は海外ではあるのか?

というのが主な質疑応答の要旨である

ただ、一点、大切な質問があった

海外の海岸線を歩く住民に、健康被害はありますか?とヒアリングするのは、健康被害がない人だから海岸線を歩けるという視点がない、という内容である

回答に不満があったのか、質問者は

実は私は、今由利本荘市にある風力発電により健康被害を受けている

と告白した

視察地で"健康被害はない"、という海外視察に対して、

私は海岸線を歩くのが好きだが、風力発電が動いていたら、風力発電による健康被害により海岸線を歩けない、と。

由利本荘市市民が、"私は健康被害を受けている"

と告白するのは勇気がある発言である

150名の市民、地元ケーブルテレビ、市長、副市長、市の担当者、市議会代表がいる目の前である。もちろん、マスメディア(魁新報記者)や、事業者(レノバ社や合同会社関係者含)も会場に参加している中である。

対して、市議会のある議員は、以下の回答をした。

(環境省と)学識経験者は、風力発電のアノイアンス(煩わしさ)はあるが、

"低周波音による健康影響はない"

と学術的に証明されている

また、(環境省調査では)ノセボ効果といって、いわゆる思い込みで症状がでる場合があるのではないか。

また海外視察のヒアリング調査はあくまで中立であるという内容で回答した。

また、市の副責任者も同じく補足して、健康影響は学術的にないという認識で、被害はノーシーボ効果(ノセボ効果と同義※1)ではないか?と考えている。

という内容の回答をした。

この事象は、記事に書き留める必要があるかと記者として考える。

ノーシーボ効果とはつまり、あなたの健康被害は風力発電の影響でなく思い込みではないか、という意味合いで、被害を告白した人は受け止めたはずである。

オフィシャルな場である市民報告会で、行政や議会関係者が、被害者だと告白した人に、

ノーシーボ効果ではないか、学術関係者(と環境省)の調査では風力発電による健康影響はない、と回答したのは、ある意味で"環境省の模範回答に従っての回答"のであり公務上やむ得ないかもしれない。

ただ、会場に参加した人は、この発言を聞き流すことができるであろうか?

10月8日の協議会できちんと報告されるのだろうか?

海外視察で風力発電による健康影響はないとした報告会なのに、すでに由利本荘市で健康影響が出ている、と一人の市民が報告会で告白した。大変重大な意味合いがある。

本当に一人だけであろうか?

行政の役割は、環境省の調査結果をただ説明するだけなのであろうか?

市民団体である由利本荘・にかほ市の風力発電を考える会の取材をしたところ、由利本荘市とにかほ市も含めて現在10名の健康影響の相談を、市民団体は受けている。(19.10.06取材時)

由利本荘市では健康影響がない

のではなく

由利本荘市では調査が十分でない

もしくは

窓口で健康影響を訴えても相手にされないと住民は黙っているだけではないか、

と指摘されても不思議ではない。

報告会には多くの市民が参加し、また10月にはレノバ社のアセスメントによる住民説明会が予定されている。

由利本荘市の今後の対応が問われている、私はそう感じた。事業者も、環境省の見解を繰り返し、被害はノーシーボ効果ではないか?と回答することが懸念される。

由利本荘市は、行政としてこのまま、環境省の調査結果を繰り返すだけになるのだろうか?

環境省の見解は、以下を引用する。

風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会(環境省ウェブサイト:引用D)

および、
●「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」平成29年5月26日(2017年) (引用E)

環境省は健康影響はない

という指針を変えていない(2019.10.6時点)

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このテーマは、これまで2回取材記事で報告したが、続報も予定している。

取材記事①

https://note.mu/y_t_publishing/n/nd5c7946dd139

取材記事②

https://note.mu/y_t_publishing/n/n8ccff88db82b

記事配信19.10.06山下友宏(修正更新19.10.08)

【追記】20/7/31

由利本荘市の市民と議員(呼びかけに応じてくださった方がいます。

は現在、条例制定による対応を検討し始めました。

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↑学習会資料

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【引用一覧】

引用A、経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/press/2018/11/20181106001/20181106001.html

引用B、法律照会、e-Gov
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=430AC0000000089

引用C、由利本荘市ウェブサイト

"再エネ海域利用法が施行されました"
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/kurashi/eco/8203

引用D(環境省 ウェブサイト風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会)資料

http://www.env.go.jp/air/noise/wpg/conf_method.html

引用E「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」平成29年5月26日(2017年)
http://www.env.go.jp/air/noise/wpg.html

※1ノーシーボ効果の補足説明

特に偽薬によって、望まない副作用(有害作用)が現われることを、反偽薬効果(はんぎやくこうか)、ノーシーボ効果(nocebo effect)、ノセボ効果という。副作用があると信じ込む事によって、その副作用がより強く出現するのではないかと言われている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%BD%E8%96%AC






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