憲法検討のコツ(権利選択編-平成25年公法系第1問を素材として-①)

司法試験の憲法に関して多く質問が寄せられるのが,「権利の選択をどうすればいいのか」という質問です 。

この質問に対して,端的に答えることは難しいものがあります。というのも,この質問をする多くの方が,各人権の内容を正確に押さえることなく,ただ闇雲に「あてはまりそうな人権」を選択しようとしていることが多いからです。

そうすると,「まずは,各人権の具体的な内容を正確に押さえる」というのが前提となるのですが,それは今後の皆さんの学習で補っていくことになるでしょう。

それらを体得できたとして,どのような思考過程を経て,権利選択を行っていくのかを明らかにしていきます。

なお,平成25年の試験についてネタバレがありますので,まだ検討していないという方は注意してください。


今回の記事で素材とする平成25年の問題(以下「本件ケース」という)では,前半の不許可処分については,憲法21条が問題となる。この点を外す方はそれほど多くないでしょう。

問題は,後半の不許可処分(以下「不許可処分②」とします。)です。この不許可処分②の検討において,「21条」を選んでしまう方が少なからずいるようです。もし,選んでしまったならば,なぜ,21条を選んだのか立ち止まって考えてみましょう。おそらく,21条の保障する「集会の自由」を「人が集まること自由」程度に理解しているのではないでしょうか。

以下では,平成25年の問題を素材として,「権利選択」の問題について検討をしつつ,憲法の学習方法等も同時に明らかにしていきます。

まず,この記事を読んでいる受験生の方は,「自由権」の定義を正確に述べることができるでしょうか

読み進めるのを止めて,一度書いてみてください。

自由権とは,「国家が個人の領域に対して権力的に介入することを排除して,個人の自由な意思決定と活動とを保障する人権である」とされます(芦部・83頁) 。

これを前提に不許可処分②を考えてみると,本件ケースの原告は,「大学の教室を使用したい」と申請した者です。すなわち,公権力が管理する大学の施設を「使いたい」と申し出をしているのであり,公権力に対して不作為を要求するというケースではありません。つまり,公権力に対し,原告が一定の行為をすることの補助を求めている場面であるといえます。

そうすると,不許可処分②に対して,「自由権」が侵害されたとするのは主張として難しいものであることがみえてくるはずです。そのため,「自由権」として規定されている憲法の条文を「単純に」用いることはできないでしょう。もしこのような規定を用いるのであれば,何かしらの説明が必要となります。

そこで,21条を使って,何かしら説明ができないかについて検討していきます。21条が保障するのも,国家から表現を邪魔されないという権利です。もっとも,集会の自由については,「公園,広場,公会堂,道路といった一定の場所の提供を正当な理由なしに拒んではならないという内容も含まれている。換言すれば,公共施設の管理者たる公権力に対し,集会を持とうとする者は,公共施設の利用を要求できる権利を有するということができる」 (伊藤・297頁,太字は引用者)とされています。

そのため,講演会を行おうとしている施設が,ここでいう「公共施設」といえるのであれば,21条の議論に乗せることも可能となってきます。そこで,大学の教室が「公共施設」といえるのかを考えていくことになりますが,「大学の教室」は,この例示の中に掲げられていません。また,大学の教室は,各大学が施設管理権を有している以上,例示されているものに類似もしていません

そうすると,大学の教室が,上記「公共施設」であるとの議論は採用できないでしょう。

このように,本件ケースの不許可処分②の局面では,21条を用いることはできないという結論になります。

今日はここまでにしておきます。また,次の更新をお待ちください。

【参考文献】

芦部:芦部信喜『憲法 第六版』(岩波書店)

伊藤:伊藤正己『法律学講座双書 憲法』(弘文堂)

佐藤:佐藤幸治『日本国憲法論 (法学叢書 7)』(成文堂)

***************************

ブログはこちらから→安田貴行法律学習ゼミ

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

司法試験憲法のコツ

司法試験論文式試験で「苦手だ」という方の多い憲法。 その対策のコツを少しずつ紹介していきます。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。