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【書評】ギリシャ危機の真実

1.本の内容要約

毎日新聞記者である藤原章生さんのギリシャ危機考察。ギリシヤ人の国民性・文化にフォーカスした原因分析と現場(市民)の生々しい声がわかるルポ。

2.ギリシャ危機とは?

2008年に、リーマン・ショックのあおりを受けて、国外から借金がしづらくなった事に端を発したギリシャのデフォルト危機のこと。最終的には、2010年、財政緊縮化を条件にEU富裕国(ドイツ・フランス)などから支援金を得てデフォルトには至らなかった。

ギリシャ危機は2つの側面を持つ。国外と国内における危機だ。国外では、ギリシャの放漫財政のツケをどうしてEUがかぶらなければならないのだという主張に対し、ギリシャ首相の主張は、「資本市場や格付け会社がギリシャを食い物にしている、」「ポルトガルやイタリアだって同じ状況じゃないか」等の反省の色なしの対応をしたことにより、支援する風潮を遠のかせた。(ギリシャとEUの対立)

国内においては、緊縮財政(増税・社会福祉の削減等)を行うことを発表するやいなやデモが頻繁に繰り広げられた。(筆者は地域住民のインタビューの中で、軍事政権以降のギリシャ人のデモ好き、デモは文化といった国民性を見出している。)

3.本書で触れているギリシャ危機の遠因。

・経済的には(政治的腐敗度からしても)途上国に等しいのにの関わらず、EUの一国となっており、プレミアムな信用が与えられたことにより、国外から借金することができた。(=国外投資家に国債を買ってもらえた)

・必要以上の公務員数(更には年金等高待遇)。ギリシャの1100万人の人口に対し、公務員の数は114万人。事あるごとに外郭団体を設立する。(労働人口の20%)しかし、政府の統計はいい加減であり、数字を信用することはできない(例えば、政府の赤字はGDPの4%とずっといってきていたが、政権交代後、実は13%の赤字幅だったことが暴かれた。)。統計の正しさを調査をするための外郭団体設立(公務員増加)という皮肉の政策も。

・国民の脱税メンタリティ。ギリシャ人から徴税するのは何より難しい。「すべてをごまかし、政府をいかに騙すかが国民的なホビー」

4.その他

借金大国日本とギリシャの違い。マスコミは往々にして日本は赤字国債の発行による借金大国と煽るが、果たしてそうだろうか?やがてギリシャと同じ結末をたどるのだろうか?

答えは否である(と推測するのが現時点では確からしい)。なぜなら、ギリシャの国債(国の借金)は8割が外国に買われているものであるが、日本の国債はそのほとんどが国内の企業や個人である。したがって、日本という国全体の家計簿で見れば、国内での循環であり、対外的な借金には至っていないのである。しかし、本書では上記事実を混同されており、日本もギリシャと同じ台所事情であるとほのめかされているがこれは認識の誤りによるものであろう。

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