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『柔らかく搖れる』感想など(ネタバレあり)

先週、福名理穂さんの主宰する劇団ぱぶりかの『柔らかく搖れる』を観て感想をなんとか書こうと思っていたのだけども、なかなか筆をとることができなかった……終演後に彼女とちょっとお会いしてお話できる機会があったのだけど写真とか撮らせてもらって、あまり今観たばかりの芝居の感想を伝えられずにその場を後にしたのでした。

それは決して面白くなかったわけではなくて、作品に盛り込まれているテーマがあまりにも重たい題材ばかり扱っているので、なかなか今も筆が進まないし、そのまま作品の感想を語らずにスルーしようと思ったけども、それでは…と思い直し、戯曲本も読み直してみたりして感想は書いてみようと思い立ったのでした。


『柔らかく搖れる』戯曲本

正直に言うと僕は去年の『どっかいけクソたいぎい我が人生』方を面白く観たのですが、作品に詰められた、なんとも言えない広島の片田舎の風景というのは僕も同郷の広島の出身なもので、痛いほどよくわかるのです。
アルコール依存?の中年男の悲哀だとか、ギャンブルで借金してお金を、やり取りするくだりだとか、不妊で悩んだり、LGBTQに対する差別だとか、抑制されたセリフの中に、まぁ、よく詰め込んだなぁと思うほどに雑多な問題を扱っている脚本です。実に濃ゆい作品だなと、読み返した後感じました。

彼女自身がパンフレット見たいな紙に

コロナ禍でもう二度と演劇が出来ないかもしれない状況になった時に、ずっと描かなくてはいけないと思っていた事を出し惜しみせず書き上げた作品です。

と書かれているように、実に静かな反面、大変なことがたくさん起きている作品なんですね。面白い反面、そんな問題意識満載な重たい演劇なので、なかなか一言で「面白かった」と言える作品ではなかったですね。
持ち帰って、しばらく考えないとなかなか感想なんて書けなかったわけです。

岸田戯曲賞の選評も読んでみましたが、なんといっても野田秀樹氏がすごい文字数でこの戯曲を絶賛しているのが印象的です。

抜群に上手いと思った。作為を感じさせない「上手さ」だ。読み進むうちに、気がつくと日本の田舎の臭いがしていた。(野田秀樹)

僕も、広島の片田舎で育った身なので、そこで繰り広げられる雑多な出来事に対して、正直いってあまりいい思い出がないので語りたくもない現実がたくさんあるのも事実ですが、笑。彼女はそれを逆に武器として、広島の風景を作品として描いた(そして、これからも描いていくのだろうことを思うと)見事さは本当に賞賛に値すると思います。

とにかく、才能が花開いたということでしょうか。
彼女のこれからの活躍も、期待しています。





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