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父のアップルパイ

年の瀬に、父がアップルパイを焼いた。

父がアップルパイを焼くのは三度目だといい、もうすっかり手慣れたものだった。カスタードクリームは前日につくったほうがなじみが良くなる、というのも学びのひとつ。小鍋を使ってちゃちゃっとつくっていた。

ただ、パイシートは三度目にしてようやく使い方がわかったらしい。ずっと説明書きを読まずにきたらしく、「そのまま伸ばしてください」とあるものを1枚ずつ剥がそうとしていたのだった。

りんごは、秋に買った紅玉。煮たものを冷凍して、取ってあったものだ。

秋に帰省したとき、たまたまアップルパイのご相伴にあずかることができた。妹に「実家でアップルパイを食べた」と自慢したら、「年末に帰るときに私も食べたい」と。父は「もうりんごの季節が終わっているから無理」と言っていたのだけれど、きっとふと思いついて、冷凍しておいてくれたんだろう。

「食べたいと言っていたから、アップルパイ焼いたよ」なんて父は言わないし、私も妹も「食べたかったからうれしい」とは言わない。ただ「おいしいね」とみんなで食べた。

そんなふうに、家族みんなでごはんを食べることが大切な時間になるなんて、家を出るまで知らなかった。当たり前に与えられていて気がつかないものが、きっとまだまだたくさんあるんだろうと思う。身近なもの、小さな声、そういうものをきちんと大切にできる人でありたいなと、年末の実家で思いました。

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