見出し画像

こんな斜面に滑走路?!

一見、この滑走路の図に特段の違和感は感じないかもしれません。でも「18.66%」という数値に気付いた方もいるでしょう。水平に100メートル進んで18.66メートル上がる(下がる)という傾斜を表しています。滑走路の勾配が「18.66%」という、とんでもない滑走路がフランスにありました。

今回はヨーロッパに飛びましょう(ネットの世界だけですが…)。冒頭の図は、フランスの航空情報サービス(SIA)のチャートを一部編集したものです。

▲ クールシュヴェル飛行場の滑走路勾配

断面で表すとこんな感じです。縦軸を拡大し強調していますが、実際の縮尺よりこの方が体感に近いかもしれません。

SIAのチャートを基に作成しています。全長536メートルの滑走路のうち、平らな部分は120メートル程度しかありません。チャートには滑走路中央付近の勾配が「18.66%」と記されていますが、標高値と水平距離から計算すると少し異なるので赤字で書いておきました。いずれにしても角度で表すと約10°という大きな傾きです。しかも、標高が2000メートルを超える山岳地域。こんな滑走路に着陸したり離陸するなんて、何だかワクワクします。(日本で最も標高が高い飛行場は、松本空港の標高657メートル)

10°の傾きがどの程度なのかを想像するのは難しいかもしれません。スキー場なら緩中斜面の初級コースといったところでしょうか。でも、この写真をご覧ください。

▲ 2013年8月のクールシュヴェル飛行場(出典:Wikimedia Commons

離陸滑走を始めた飛行機が写っていますね。パイロットにとっては谷底に落ちていくような感覚じゃないのかな。こんな下り坂で離陸中止なんて、できそうもないし。

このクールシュヴェル(Courchevel)飛行場、どこにあるのでしょう?

▲ クールシュヴェル飛行場の位置(SkyVector のチャートに加筆)

ここはヨーロッパのアルプス山脈。フランスとイタリアそしてスイスの国境が交わる地点のあたりに、最高峰モンブラン山がそびえています。クールシュヴェルはそのほぼ南50kmにある「フランスを代表する高級ウィンターリゾート」(Wikipedia)だそうです。もちろん、行ったことないっす。


LFLJ、クールシュヴェル飛行場(フランスのAIPから)

AIP FRANCE にクールシュヴェル(COURCHEVEL)が見つかりました。

  • 地点略号:LFLJ

  • 名称:クールシュヴェル

  • 飛行場標点:北緯45°23′45″、東経006°37′57″

  • 標点の標高:6583フィート(2006メートル)

  • 滑走路:04/22、536m×40m、舗装

  • 滑走路04末端:標高6583ft(2006m)

  • 滑走路22末端:標高6371ft(1942m)

  • 備考:使用制限あり


▲ クールシュヴェル飛行場のVisual Landing Chart(SIAの Aerodrome VAC から)

スキーリゾートだけあって、リフトやゴンドラの数がハンパないっすね。このチャート内の最高峰が標高8986フィート(2739メートル)の“Dent de Burgin”。道内最高峰の旭岳2291メートルと比べ、かなり高い山岳地域です。このエリアは、リゾート全体の端の方のほんの一部。Googleマップでは飛行場より高い場所にいくつかフランス料理店もあり、山頂まで続く車道も縦横に見えています。さすがは世界中から観光客が集まる高級リゾート地、山の斜面に滑走路を造ったって不思議じゃないでしょう。

直線で75km以内には、冬季オリンピックの開催地で聞き覚えのあるグルノーブル(1968年)やアルベールビル(1992年)がありました。スイスのジュネーヴでさえ、わずか100kmの距離です。


AIP : Aeronautical Information Publication
SIA : Aeronautical Information Service
VAC : Visual Approach Chart

-+-+-+-

次回は、この飛行場に着陸するつもりでチャートを詳しく見ていこうと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?