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ちょっと古いBMWに、ちょっとだけ乗ってみた(その3)

中古車レンタカーで BMW320i セダンE90)を借りました。ようやく走りの感触を味わえる道へと進みます。

前回(その2)からの続きです。


▲ 木漏れ日の旧道で

幹線道路から外れてみる

さあ、走りの感触はどうでしょう? モータージャーナリストのような運転のテクニックや感性は持ち合わせていないし、クルマ雑誌に見るような加速性能やコーナリング特性なども私の走り方・使い方ではほとんど関係がありません。

速度範囲なら、停止中のゼロからせいぜい110km/h程度まで。北海道の市街地や郊外で通常の流れに乗った走り方でストレスがなく、高速道路のランプが上り坂でも余裕をもって本線に合流できる、といった程度の、わが家の軽ターボ車でも十分できることを、この 320i でも確認してみました。

アクセルペダルはやや重めに感じます。だからと言って繊細な操作がしにくい重さではなく、意図するパワーを得るために必要な分だけ意識して踏み込むという感触です。

わが家の軽ターボ車のアクセルは、とにかく軽い! ペダルに足を乗せたかどうか分からないぐらいの(踏み込みではなく)面圧だけで飛び出していく、という感じです。だから常につま先を浮かせるコントロールが必須で、慣れるまで苦労しました。底の厚い冬靴などで運転するのは骨が折れます。

逆に、重すぎるアクセルで苦労したレンタカーも。マークXを借りたときのこと。わが家の軽ターボに慣れた右足をアクセルペダルに乗せても発進しません。ペダルが重いな、と踏み込むといきなり飛び出しました。あわててアクセルを緩め、踏みしろを調整しようとしても微妙な加減がしにくくてギクシャク、といった経験があります。その後の発進では飛び出さないように気を使わなくてはならず、信号で前の車に置いて行かれることしきり。

この 320i は、そういったアクセル加減をほぼ意識せず、最初から違和感なく微調整できました。とても大事な当たり前のことなのに、それができていない車が意外に多いかもしれません。そして、わが家の軽自動車にも付いているターボチャージャーが、この車にはありません。1995ccの自然吸気(NA)エンジンなのです。レスポンスが良く、アクセルを踏んだ分だけリニアに気持ちよく回転が上がり、パワーがスッと出てきます。気持ちイイ~ッ! ターボで絞り出すパワーとは違った、懐かしいNAエンジンの素直な反応がとても自然に感じました。

D(Drive)モードからレバーを左に倒してDS(Drive Sport)モードにすると回転数が高めに保たれ、オートマ走行でも反応がさらに良くなります。一般道の制限速度を超えない範囲で急加速してみたり、敢えてマニュアルでシフトアップ/シフトダウンしたり、と操作してみました。DSモードはエンジンブレーキも効果的。長い下り坂でも前車との距離を一定に保ちながら、フットブレーキなしで容易に速度コントロールできます。ちょこちょこ頻繁にブレーキを踏むような運転が嫌いなので、とても好ましいDSモードです。

ブレーキペダルはタッチが敏感で、とてもよく効きます。慣れないうちは減速が強くなり過ぎてしまうほど。ペダルの踏みしろに遊びが全く感じられず、効き始めの空走距離は短そう。わが家の車もこれぐらいにブレーキ調整してもらった方がいいのかな。


最も大きな違いを感じたのが走行中の安定感です。車高が低く広いトレッドを持つ 320i の外観だけを見ても 軽と比較するなんて論外なのですが、市街地の低中速ではもちろん、高速走行時もほとんどハンドルを動かす意識なくレーン中央を維持するのが容易です。足回りのいいクルマって、こんなに楽なんだね。

パワステは重いです。停止中に片手でクルクルってわけにはいきません。ところが、カーブや交差点などでハンドルを切るときは、その重さを感じることなく自然に操作できました。ネット情報によると、このクルマのパワステは電動(EPS)になっており、油圧ではないようです。その違いがハンドルの感触に表れていたのでしょうか。

動力源を覗く


▲ エンジンルーム

見てもよく分からないけど、一応、エンジンルームを覗いてみました。

エンジン型式「N43B20A」の直列4気筒DOHCエンジンを縦置きしています。その性能は最高出力170ps/6700rpm、最大トルク21.4kgm/4250rpm ですと。車両重量1.5トンを押し出す後輪駆動車です。

車外ではエンジン音がかなり大きく、ディーゼルっぽくさえ感じるうるささ。高精度ダイレクトインジェクション(直噴)+ リーンバーン(希薄燃焼)とうたわれていて、それが関係しているのかもしれません。早朝に出発するときは、ご近所に気を使いそう。さらにクーリングファンが作動すると、ドキッとするほど音が大きくなります。

上からのぞき込むと、電動パワーステアリングのアシストモーターが見えました。「ZF Lenksysteme」とドイツの社名が書いてあります(英語なら Steering System という意味らしい)。このラックアシストタイプは(コラムアシストタイプに比べ)「ステアリングギアとモーターの間の介在物が少なく、制御の精度が高い。また、ドライバーの操舵フィールという点でもダイレクト感が高い」という記述がネットにありました。

ところで、BMW車の特徴的な顔つきを「キドニーグリル」と言うようですが、「kidney」って「腎臓じんぞう」のことなんですね。2つの網目がそう見えるのでしょうか? 妻は「鼻の穴みたいで BMWの顔つきは好きじゃない」と若い頃から言い続けています。


▲ エンジンの配置

横から見ると前方(写真の右)のスペースが広くて、エンジンは室内側(左)に寄せられています。整備性は良くなさそうですが、前760kg/後770kg(車検証)という重量バランスを確保して操縦性を優先しようとすると、この配置になったのでしょう。6気筒エンジンを収める余裕も必要でしょうし。これでも室内の足元スペースが窮屈になるということがまったくないから不思議です。


▲ トランク右側のバッテリー

重量バランスを考慮してなのか、バッテリーは後部トランク(右側)に置かれていました。

右側面から見ると、エンジンよりも前に前輪があり、ドライバーは前輪と後輪のちょうど中央に座ることが分かります。運転の気持ち良さって、こういった基本的な設計の積み重ねから生まれてくるのでしょう。

▲ 重量バランスとドライビング・ポジション

サイズ感

わが家の駐車スペースには3台でもゆったり並びますが、普段は軽1台だけ。そこに 320i をバックで入れてみました。リヤカメラ映像は出ないし、もちろん全周囲モニターの類もなし。降りてみると、植木鉢ギリギリで止まっていました。左側サイドミラーはリバース(R)に入れると少しだけ下を向き、左後輪の辺りの確認に重点を置いてくれます。以前、BMW X1 を借りて1日運転したとき、駐車スペースの白線をサイドミラーで左右対称に見たい私は、この機能を余計なお世話…と思ったものでした。慣れると以外にいいのかもしれません。

この 320i は長さ4.5メートルちょっと、幅1.8メートルなので特段に大きいわけでもなく、取り回しに困ることはありません(最小回転半径 5.3m)。1.4メートル強という高さは、全高1.6メートルを超えるわが家の軽より20センチも低く、洗車しやすそうです。実際には、ちょっと窓を拭いただけですが…。


▲ 富内ヘリポートで

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長いので分けてお届けしています。今回は3/4。次が最終回です。


※ 写真はすべて、2023年5月の北海道で、やぶ悟空撮影
(ナンバープレートは画像処理しています)


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