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迷走ピーチ

4月のある日、新千歳空港。着陸する航空機が不思議な経路を飛行していました。関西国際空港からやって来た「APJ111」、Peach Aviation 111便です。

▲ Peachの不思議な飛行航跡(flightradar24)

この機はエアバスA320JA201P。北側に誘導されて新千歳空港の滑走路19Lに進入したのに着陸せず、北へ南へ、東へ西へと振り回された後、ようやく反対側の滑走路01Rに着陸したように見えます。

この日の居場所からは飛行機が見えず航空無線も聞いていなかったので、実際の状況はよく分かりません。なので、以下は flightradar24 の航跡から想像した個人的見解です。


▲ 14時25分(flightradar24 に加筆)

ピーチ機は 14時23分ごろ(日本時間、以下同じ)ゴーアラウンド(GA)し、東へブレークしました。それにしても最終進入経路(緑の航跡)が不自然に曲がっていますね。天候のせい? それとも他機との関係でしょうか? これではスタビライズさせることが難しくてGAしたのかもしれません。

ピーチ機に続く、SJX(スターラックス)、SKY(スカイマーク)、ANA(全日空)、EVA(エバー航空)は、破線の経路で滑走路19Lに着陸しました。

このころ、新千歳空港の天候はどうだったのでしょう?

▲ 14時30分の気象レーダー画像(国立情報学研究所 北本朝展研究室)

13時ごろから空港の北に強めの雨雲が発生し、東に移動していたようです。一時的に黄色からオレンジ色になっている場所もありました。この雨雲が進入機に影響を及ぼした可能性があります。


▲ 当日の風(気象庁の画像に加筆)

アメダスの風は、この日はじめは北風だったのが昼前から南風に変わって強くなり、15時ごろから再び北風となっていました。ピーチ機が新千歳空港に進入していた時刻付近をもう少し詳しく見ると…


▲ 10分ごとの風(気象庁の画像に加筆)

風が北に変わって気温が急に低下していました。14時40分には ガスト26ノットを観測!

ガスト:平均風速を10kt(ノット)以上 上回る最大瞬間風速


▲ 新千歳空港のMETAR/SPECI

飛行場実況気象通報(METAR/SPECI)では、14時30分ごろ(たぶんそれ以前から)風向の変化が大きくなり始め、同45分に26ktのガスト(G26)が記録されていました。

14時00分 風向190°/風速12ノット
14時30分 風向170°(130°~ 230°変動)/風速9ノット
14時34分 風向230°(200°~ 280°変動)/風速10ノット
14時37分 風向300°(220°~ 330°変動)/風速16ノット
14時45分 風向340°/風速16ノット・ガスト26ノット
15時00分 風向340°/風速14ノット

※ 風向は真方位で10度単位


▲ JA201P, Peach Aviation


▲ 14時42分(flightradar24 に加筆)

14時40分ごろ、滑走路19L に進入していた ADO23(エアドゥ)がゴーアラウンドしました。風向きが急に変化してガスト26ktを観測したころです。最終進入中に背後から突風に襲われたのでしょうか。

いったん北上していた JJP(ジェットスター)、JJA(チェジュ航空)およびJAL(日本航空)の3機は、機首を南に向けています。たぶん着陸滑走路が01Rに変更されたのでしょう。

この時点で、ADO23(エアドゥ)に続く CPA580(キャセイ・パシフィック)が19Lに着陸直前でしたが…

▲ 14時51分(flightradar24 に加筆)

CPA580(キャセイ・パシフィック)も ゴーアラウンドしました。妥当な判断だったと思います。

赤色の航空機が着陸をやり直した3機です。着陸滑走路が19Lから01Rに変更されたことにより、他の機も含めて北から南に戻される複雑なレーダー誘導になっています。

ピーチ機(APJ111)は、このような状況の中で迷走のような飛行経路になってしまったものと推察します。


▲ このときの到着機と使用滑走路

整理してみると、こんな状況でした。運航乗務員だけでなく、アプローチ、レーダーそしてタワーの管制官も、臨機応変の対応お疲れさまでした。そして、乗客の皆さまも。


▲ 滑走路01Rに着陸するピーチ機


※ 写真はすべて別の日の新千歳空港で、やぶ悟空撮影

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