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カートリッジの楽しみ

趣味のオーディオの話です。

不注意で針を曲げてしまったオルトフォンMC-Q20を修理に出している間、代車ならぬ代カートリッジとして、昔DJをする時に使っていたコンコルドをつけてみるもののイマイチしっくり来ず。試しにオーディオテクニカのモノ針AT-MONO3を試してみたところ、これはこれで面白い音がしたので、しばらくモノ針で行くことにした。これはモノ針でありながらも垂直方向のコンプライアンスにも対応しているので、ステレオ盤もモノ再生できるのだ。ちなみにステレオ盤は水平垂直両方に音溝が刻まれているのに対し、モノは水平方向のみという構造の違いがあり、垂直方向の溝の動きを許容しないモノ針がものによってはあったりする。

ふとMMのステレオカートリッジで何か良いものが一つあると楽しいのではと思い、オーディオ師匠の野々村文宏さんに訊ねてみた。以前オススメされていたオーディオテクニカのVM-760の感想を伺ったところ、「MMの中域の伸びとMCの繊細さを併せ持つ」とのことで俄然購入意欲が高まる。オーテクの製品群の中でもVM式とはいえハイエンドの製品なので多少値は張るものの、オーディオユニオンに状態良さそうな中古品がたまたま出ていたので、勢いで注文してしまった。

針が変わると音もがらっと変わるので、レコードを聴くのがますます楽しくなる。家にあるモノ盤を色々と引っ張りだしてあれこれ聴く。ロイ・オービソンの”Only the lonely”とかキャロル・キング”It might as well rain until September”とか大瀧詠一の「青空のように」をかけてみて、改めてやっぱり良いなあと。新川忠”sweet hereafter”は元々は2003年の作品ながら、4トラックのカセットMTRで録音された独特の音づくりでモノ再生にばっちりハマった。

そういえばB.J.トーマスの”Raindrops keep fallin on my head”も確かモノだったはずと引っ張りだしてみると、”Stereo-Monic”という見慣れない表記があった。気になって検索すると、アメリカのオーディオマニアが集まっていそうな掲示板に”Stereo-Monic”についての投稿を見つけた。「1968〜69年の間だけセプターレコードが謳っていたマーケティングハイプ(笑)」とのことで、要はモノ針ステレオ針両方に対応している盤ということらしい。モノラルの終焉を感じさせる、時代の徒花的な中途半端感にしみじみとしてしまった。

こうなったらGyrodecをダブルアームに改造して、モノカートリッジも良いやつにアップグレードするか!と考えたところで正気に戻った。こういうのはキリがないので、どこかで一線を引くのが肝要なのである。しかし、いつかモノラル専用の再生システムを作ってみたいものだ。部屋の真ん中に鎮座する一本のスピーカー。プリアンプはマランツ7で、ガラード301にデッカのカートリッジをつけて……


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