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大人への階段~恋~

あたしが高校生になってすぐ、あたしを好きだという人がいると噂でみみにした。その人は隣のクラスの中村くん(仮名)という背の高いバレー部の男の子だった。

一学期の中間テストが終わったころ、遠足があった。
あたしたちの行き先は大きな遊園地で、各クラスバスでの移動となった。
行く道中でその中村くんがあたしを好きだという話でバスの中の一部で盛り上がり、たまたま遊園地に到着したときに停車した位置が隣のクラスのバスと重なり、中村くんの姿が見えた。

ドキドキ。
あたしは何人からか告白をされていたのだけれど、中村くんを見たときだけ胸が熱くなった。その時の中村くんのこちらを見た姿はいまでも脳裏に焼き付いている。

遊園地で自由行動となると、何度か中村くんのグループとすれ違うことがあった。そのたびに仲良しの久美ちゃんが冷やかしてくるのだけれど、それも何となく悪い気はしなかった。

数日経って、久美ちゃんが遠足の時の写真ができたと学校にもってきた。
そして、「この夜蝶ちゃん、可愛く撮れてる!」といったかと思うと、隣のクラスに走っていったのだ。そして「中村くんにあげてきたよ」と。

もし噂が間違いだったらあたしの写真なんて中村くんが渡されてこまるやん!と顔から火が出そうになったけど、「すっと机の引き出しに隠してたよ」ということらしい。
そして、「もう、夜蝶ちゃんもいい感じに思ってるんやし、付き合ったら?」という流れになった。

その日は突然やってきた。
写真を渡して翌日の昼休み、クラスの男子が中村くんを、久美ちゃんがあたしを連れ出して告白の場を設けてくれたのだ。

体育館の裏に行くと、今まで遠くからしか見たことがなかった中村くんがいた。
ドキドキドキドキ……。

心臓が飛び出しそうなくらい、あたしは緊張していた。

中村くんの近くまでいくと「入学したころからずっとすきです。付き合ってください」と言われた。
「ありがとう」あたしは顔を見ることもできずにそう答えた。

6月初旬のとてもお天気のいい日、あたし達はつきあうことになった。
キラキラした木の葉や、中村君の学生服のボタン、二人のくっきりとした影が目に焼き付いている。時間が止まっているような、でも遠くで昼休みに騒いでいる生徒たちの声が聞こえてきて現実に戻る。

あたし、中村くんの彼女になったんだ。


夜蝶観音

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