見出し画像

年間コース観察会 第1回 (3/9土・3/10日)

少し間が空いてしまいましたが、観察会の備忘録と雰囲気を伝えるために、ちょいちょい書いていこうと思います。

2024年3月9日午前10時。待ちに待った年間コース観察会が始まりました。
天気はあいにくの晴れ時々曇り。強風(!)最低気温2℃、最高気温12℃。
私は1時間前に到着して下見をしましたが、予定していた「早春の虫」は…いません!

天気くん、雨は降ってないけどさあ…

2023-4年の冬は「暖冬」と言われていたのですが、いっこうに気温が上がらず、私の体感では1週間から10日ぐらい季節が遅い印象でした。(結局、東京のソメイヨシノの開花宣言は5日遅れ、前年より15日遅い春になりました。)
観察会の1週間前には「見られる予定の虫」の資料を準備して、現地で「なぜその虫がそこにいるのか?」をみんなで考える、という流れを予定していたのですが、いないのではお話しになりません。テーマを「冬の虫」に寄せて、どんな所で越冬しているかを考えることにしました。初回から綱渡りです。

準備した資料が役に立たない…

定刻となりメンバーの方が集まりました。土曜日クラス、日曜日クラス15人ずつ、年齢は8歳〜70代の方までと幅広く女性の方が多めです。過去の私の観察会に参加された方もいれば、虫を探すのはほぼ初めてという方も、す別分野ですがプロの方もいます(おっかない)。驚いたことにかなり遠方から時間とお金を費やしてくれた方もいました。ありがたい話ですが同時にズーン!と責任がのしかかります。

初回は配布した観察会の手引き書を元に、年間スケジュールやルールについての説明を行いました。途中、私の紙資料が強風にあおられて小川に水没するハプニングもありましたが、いよいよ出発です。隊列を組んで観察ポイントを回っていきます。ちなみに観察会の様子は、日曜クラスに参加してくれたサポートスタッフのtameさんが撮影してくれました。

寒風の中話をするわたし

本来であれば、ショカツサイの花が咲く斜面でハナアブを観察したり、タチツボスミレに吸蜜するビロードツリアブの観察をしたり、日の当たる手すりでもふもふのネコハエトリにワーキャーするなどの光景を夢想していましたが、なにしろ春が来ていません。

ネコハエトリは15℃以上ないと出て来ない

こんな時は手すりです。手すりさえあればなんとかなります。
全員でじっくりしつこく手すりを見ながら進んでいくと、そこここから「こんなに真剣に手すりを見るのは初めて…!」という声が聞こえてきます。脳が「そんな意味のない行為はやめろ!」と拒否しているのです。しかし手すりに引っかかった一本の松葉がクモだと分かった時に世界は変わります。

実はオナガグモというクモなんです

ほとんどの虫は予想よりもはるかに小さく、身を隠すのがとても上手です。しかし一度小さい虫を認識できるようになると、私たちの脳や目はしっかり対応して極小の世界を識ろうと働き出します。私はこれをマクロモードと読んでいます。ちなみに一度マクロモードに入ってしまうと、移動スピードが時速数センチになってしまうので、私は質問に答えつつ、隊列を時間内に進ませるよう声かけをします。

手すりに取り憑かれた人々

植物上でも同じように虫を探します。葉裏や、葉同士が重なっている所、枯葉の中などを丹念に見ていくと、植物に寄生している虫や、越冬中の虫が見つかります。ここなら雨がかからないかな?とか、この葉は暖かそうだな、と虫の気持ちなって見つけることも大事です。
この時は事前に見つけてあったワタフキコナジラミの一種を紹介しました。ちょっと気持ち悪さもありつつ拡大すると美しい昆虫(の幼虫)です。

ワタフキコナジラミの一種。白いのはワックス

ちなみに私の観察会では「目に入るオールジャンルの虫をローラー作戦で識ってゆく」という方針で進めます。きれいないチョウがいいとか、大きなコウチュウがいいとか予断を持たずに、目の前にある虫にひとつひとつ向き合い、虫の多様性を丸ごと受け入れていきます。(実際虫が多い時期は難しいのですが…)とか言いつつ人気の虫が出てきました。エノキの根ぎわで越冬するゴマダラチョウの幼虫です。みんな大好きです。

糸で台座をつくって落ち葉にくっついています

芝生の広場でお昼休憩を挟み、この日は午後3時まで合計5時間行いました(通常は4時間)その後は希望者の方を連れてプラス1.5時間ほど隣接するフィールドを案内しました。みなさん健脚でしたがさすがに疲れたそうです。とにかく風が吹くと寒かったですからね…。

アオキに集まるヤマギシモリノキモグリバエ


観察会後は、SNSの会員グループに、各自撮った写真をあげてもらいました。後日私が種名を簡単なリストにして、写真と一緒にした資料にしてメンバーに配布しました。その日の体験だけで終わらせずきちんとレポート化しておけば、次回観察する時や振り返る時に役立つのではないかと考えています。

また、その月々の「課題」がありメンバーそれぞれの地元で探してもらっています(強制ではありません)。3月の課題は今回は見れなかった「ビロードツリアブ」と「タチツボスミレ」さらにバナナムシとして有名な「ツマグロオオヨコバイ」の3種です。なかなか晴れた日がないのですが、こちらもSNSの会員グループに提出してもらっています。

タチツボスミレで吸蜜するビロードツリアブ

実際に観察会を始めてみると、自然相手なのでなかなか思い通りにはいきません。しかしたくさんの目があることで、観察地に通い詰めている私も見たことがない虫が見つかったり、考えたこともなかった質問をもらうことで、自分の不勉強さに気づくこともあります。
4月はどんな虫が出るのか、メンバーの方々が、そして私がどう変わっていくのかとても楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?