心の滓と過去とラーメンと読めない空気、その他

1、夢を見た

たくさんの新しいものと出会った一カ月だった。

新鮮すぎる情報に脳や心はぶん回され、溢れて、眩暈を起こして倒れた。


夢を見た。

フランスの彫刻、警察。

逃避、燃える人間、マラソン。

夏の日照りと、湿った深夜、それからすがすがしい朝。


不安定で生々しいドラマに眠れなくなる夜。

何度もその夢の内容を反復しては、メッセージや心理を分析する。

そうしているうちに、壊れそうになる。

追われる。

2、あの頃の職場はまだそこにあった

ずっと行けなかった駅がある。

最初に働いた職場の最寄り駅だ。

ちょっとした予定ができ、立ち寄った。

職場の近くを通った。

ビルにまだ、その名前があった。

苦しくて煙草を吸い続けた非常階段も見えた。

呆然とベンチに座り続けていた、小さな公園も変わらなかった。


私が辞めたら甚大な被害を及ぼすに違いない。

私は辞めたらいけない。


そう思っていた職場は、きっと何も変わらず今も回り続けている。

私は信じたかったんだ、私がいなければ世界は回らないと。

自分が働き続けるために。

3、弱点を笑い合うラーメンの味

人は誰でも弱点があると話しながらなじみのラーメンをすする。

「自分に甘えちゃうところ」

出会ったころに比べてずいぶんと大人びた横顔はそう語る。

私は結局。

「人に情がないところ」


私は冷たい。

本当に。

だから、情を徹底的に研究して模倣した。

優しい人になりたかった。

熱く誰かと生きてみたかった。


「ああ、確かに。…自分に対しても情がないよね」

私に情をかけてくれる彼は、れんげを弄んだ。


「偽物はさ、本気で本物を目指すから、成長するじゃんか」

帰り道そんなことをお互い笑いながらうなずき合う。

「だから、いいんだよ、偽物で」


もう、憧れの何者かになろうと努力するのは、やめよっか。

じゃあ、何を目的に優しくなれるんだろう。

4、そこらじゅうに溢れた空気はもう読まない

異国で居続けると感じるのは言語のこと。

街中に溢れる謎、知らない響き、目に飛び込むメッセージも不明。

空気も読めない。

え?そこで怒るの?あ、ごめん、その常識知らない。

そんなのばっかり。


インターネットだけがわが故郷、日本を見せる。

知っている空気、言葉、裏に隠されたメッセージ。

やる気に満ち溢れた広告の裏で泣いている誰か。

直接責めたい気持ちを隠して婉曲した表現を使うツイート。

感動で一体感を醸成、寝るときは独り。


知らない空気、知り尽くした空気。

どちらのほうが息苦しくありませんか?

呼吸困難と自問自答。


唯一安心して吸い込める空気は、その胸の中にあって。

大丈夫、間違ってない、悪くないって。

とても小さな世界で、私は安心して生きていける。

この安心が私の生きる意味。


強烈なにおいを放つ空気は苦手。

知らない言語をまき散らす空気は読まない。


というか、読めない。

私には無理なんだ、ごめんなさい。

そのことを認めるまで、どれほどの時間をかけたことか。

5、まとまらない、まとめ

2018年2月。

やらなければならないことに手がつかないくらい悩んだ。

いつもなら楽しめることが、楽しくなくなった。

そのくらい、溢れるものが止まらなくて、不安定になった。


何をあきらめて、何を守るのか。

まとまらない想いを、必死でまとめようとした。


そしてようやく、まとまらない言葉なりに吐き出せるようになってきた。

少しずつ、回しだす。

それでも明日は来る。朝は来るから。




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エッセイ

ユキの日常を綴ったエッセイ。昔のことも、今のことも。思ったこと、感じたことが詰まっています。
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