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屍竜戦記II 全てを呪う詩

徳間SFコレクション電子復刻第10弾。片理誠「屍竜戦記II 全てを呪う詩」(トクマ・ノベルズ・エッジ)。真ヴァ・シ・ド教の司祭フレイ・ランダート(フレイ)は、恋人のジュリルラーナ(リル)らとともに、ナフリ王国に屍竜使いとして着任した。フレイは、本国の次期法王派ロンフォルグ枢機卿から、密命も授けられていた。ナフリ王国の不満分子であるギンギルスタン元老院議員らと通じて、王国内に革命を誘発うことだった。双刀の剣士バランシェルに悩まされながら、フレイは工作任務に没頭する。
 前作「屍竜戦記」に続いて、またしても人類を脅かす竜との戦いが続く。新たに現れた装甲竜・太啖(たいたん)。その巨大さは前作のアンチヒーロー棘黒に匹敵する。六匹の屍竜を以ってしても、太啖には全く歯が立たない。竜に苦戦する一方で、革命工作も上手く進まない。行く先々で刺客が待ち構え、度重なる裏切りで暗礁に乗り上げる。工作に暗躍するフレイに、リルは疑心悪鬼となり、恋人たちの心は離れてゆく。前作のエンディングで示された「銀の竜」で示された竜族の優れた知性。物語のあちこちに銀の竜が目立たない形で登場するが、とうとう人間界には接触しない。国家間の宗教間抗争、王族と教会の派遣争い。我欲を丸出しにした人間たちの醜い争いを、竜たちはジッと空から俯瞰して見ているようだ。そして人間界の阿鼻叫喚を収束させるために、竜族から送り出されたのが太啖だったのかもしれない。
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