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原泰久「キングダム67」桓騎の生き様

原泰久「キングダム67」(集英社)。電子書籍版はこちら↓
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 趙北部に侵攻した秦の桓騎軍14万人。それを平原で迎えた李牧将軍率いる趙軍31万人。数で圧倒された桓騎軍だが、主翼の桓騎本隊が動かない。しかし突如として、軍略には存在しないX型の陣を敷く。真意が掴めない趙軍は様子を伺うが、これは桓騎軍が闇に乗じて突破する時間稼ぎだった。一方で孤立した李信(飛信)隊と蒙恬隊に、井闌車を携えた砂鬼一族が合流する。進退窮した李信たちは、手薄になった宜安城を攻城して陥落させる。
 今回の話のメインは若かりし桓騎と砂鬼一族の過去。奪われ続けて虐げられていた孤児たちが、桓騎の加入と共に、奪い返し怖れられる野盗集団に生まれ変わってゆく経緯。屍体を弄ぶとの評判に、砂鬼一族を拒絶していた李信だったが、その過去に息を呑む。「キングダム」で最も謎が多く、何を考えているか、皆目見当がつかない桓騎将軍。その行動の残忍さの根っ子にある怒りと悲しみが、砂鬼一族の古参メンバーによって語られる。弱い者たちが生き抜くためにはどうすればいいか。桓騎の行動には痛烈な批判が大勢だが、彼が弾圧者=虐殺者たちから組織を守ってきたのも事実。否、自立して生きてゆける集団に変容させたのである。そこには一切の妥協もなく、自らの信ずるところを徹底的に貫き通した桓騎の寡黙な生き様があった。


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