マガジンのカバー画像

「インセンティブ設計の理論」マガジン

16
大阪大学における同名の講義内容に関するノート集 講義ウェブサイトは以下です: https://sites.google.com/site/yosukeyasuda2/home/l… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

[第11回] 結果にコミットして優位に立とう --- コミットメント

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------
第11回目は,時間を通じた動学的なゲームについて勉強しました。自分の将来の選択肢をあらかじめ減らす,特定の行動を取ることを確約する,といったコミットメントが,相手のインセンティブや行動を変えることにより,自分にとって有利な結果をもたらし得ることを解説しました。

行動経済学で分析されている意

もっとみる

[第10回目] みんなと同じ行動を取るのはなぜか --- 協調ゲーム

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------
第10回目からは,いよいよ参加者たちの駆け引きについて分析するゲーム理論の勉強に突入です。初回は協調(コーディネーション)ゲームという簡単なゲームを用いて,現実に見られる様々な同調行動について分析しました。

【板書】 今までに勉強した,市場理論・意思決定理論・行動経済学・契約理論,そして今

もっとみる

[第9回目] 情報の非対称性が良貨を駆逐する --- アドバースセレクション

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------

第9回目は,前回扱ったモラルハザードと並ぶ,情報の非対称性に関する問題であるアドバースセレクション(逆淘汰)について解説しました。

【板書1】 アドバースセレクションの様々な問題。アカロフによって分析された“レモン”の市場では,情報の非対称が無ければ成立していた取引が,私的情報の存在によ

もっとみる

[第8回] 契約で失敗しないための心得 --- モラルハザード

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------

今回と次回は,情報の経済学や契約理論と呼ばれる分野について勉強します。前回までは,意思決定主体が直面しているクジ(不確実性)が最初から与えられている状況を分析しましたが,今度はそのクジが
・誰かの行動によって変化するものの
・他の人々はその行動を観察できない
ような状況を扱います。

この

もっとみる

[第7回・後編] 人は水準ではなく変化に反応する --- プロスペクト理論

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------

第7回目の後半は…

【板書】  to be written...

[第7回・前編] 人は水準ではなく変化に反応する --- プロスペクト理論

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------

第7回目のトピックは心理学者のカーネマンとトベルスキーによって提唱されえたプロスペクト理論です。これは,前回まで扱ってきた期待効用理論を土台とした新しい意思決定理論です。具体的には,
・客観確率 → 確率加重関数:π(p)
・vNM効用関数 → 価値関数:v(x)
という(重要な)変更を行

もっとみる

[第6回・後編] リスクの取り方・避け方を見える化 --- vNM効用関数]

講義ウェブサイトはこちらです。
第6回講義<前編>はこちらです。
-------------------------------------

第6回目の後半では,前半で学んだvNM効用関数を活用して,リスクに対する態度と,ゼックハウザーのパラドックスと呼ばれる面白い(?)問題について解説しました。

【板書】 vNM効用関数とリスクに対する態度の関係。不確実なくじxに対する(事前の)期待効用と,

もっとみる

[第6回・前編] リスクの取り方・避け方を見える化 --- vNM効用関数]

講義ウェブサイトはこちらです。
-------------------------------------

第6回目の前半では,前回の講義<後編>
・そのギャンブルにいくら払う?
で導入した期待効用理論について掘り下げました。

【板書】 期待効用を計算する際に,実現した結果に対する“効用”(のようなもの)を与える関数をvNM(型)効用関数と呼び,この講義ではvで表す。

vNMは期待効用理論の

もっとみる

[第5回・後編] そのギャンブルにいくら払う? --- 期待効用理論

講義ウェブサイトはこちらです。
第5回<前編>はこちらです。
-------------------------------------

後半では,
・そのギャンブルにいくら払う? ー 期待効用理論
のイントロダクション的な内容について話しました。

【板書】 不確実性下での意思決定における有名なパラドックスである
(1) サンクトペテルブルクのパラドックス
(2) アレのパラドックス
を解説。

もっとみる

[第5回・前編] 第4回講義の復習

講義ウェブサイトはこちらです。
第5回<後編>はこちらです。
第4回講義のリンクは→<前編・後編>
-------------------------------------

第4回目の前半では,前回の講義
・「頭は非合理だけど行動は“あたかも”合理的 --- 顕示選好」
を復習して,“あたかも”理論が何だったかをおさらいした後に,
A. あたかも合理的とみなせるような選択行動
B. 合理的とは

もっとみる

[第4回・後編] 頭は非合理だけど行動は“あたかも”合理的 --- 顕示選好

講義ウェブサイトはこちらです。
第4回<前編>はこちらです。
-------------------------------------

講義第4回目の後半では,
・一見すると非合理な行動も,合理性を前提としたモデルで説明できる
可能性があることを,「顕示選好」(“あたかも”)理論の考え方を使って説明しました。

伝統的な経済理論が前提とする「ホモ・エコノミカス」(合理的経済人)は
・すべての利

もっとみる

[第4回・前編] 第3回講義の復習

講義ウェブサイトはこちらです。
第4回<後編>はこちらです。
第3回講義のリンクは→<前編・後編>
-------------------------------------

第4回目の前半は、前回の講義
・「チケット転売は禁止するべきか --- 部分均衡分析」
の後半で扱った理論分析を復習し、より詳しく説明しました。

【板書】支払い意欲(W)、留保価値(V)、所得(I)の関係を整理。
第3回

もっとみる

[第3回・後編] チケット転売は禁止するべきか --- 部分均衡分析

講義ウェブサイトはこちらです。
第3回<前編>はこちらです。
-------------------------------------

講義の後半では、簡単な市場(部分均衡)モデルを使って、次の3つの分配メカニズムを理論的に比較しました。

(i) 行列・抽選
(ii) 市場
(iii) 行列+転売

【板書】需給が一致する価格で最初からチケットが売られた場合には(DとSの交点で)5万円の価格

もっとみる

[第3回・前編] チケット転売は禁止するべきか --- 部分均衡分析

講義ウェブサイトはこちらです。
第3回<後編>はこちらです。
-------------------------------------

第3回目は、チケットの高額転売問題をきっかけに、行列(や抽選)と市場の特徴の違いを余剰・公平性・善の腐敗など様々な視点から分析しました。同じサービスを、お金を払うことで優先的に早く受けることができる「ファストトラック」の実例をクラス内で質問してみたところ、

もっとみる