令和で進む「撤退戦」と「ギブ」文化

みなさん10連休はどのような過ごされましたか? 僕は、5月2日(木)にNewsPicksの「令和だけど、どうする?」というシリーズ企画の一つとして

#08 【安田洋祐】負けた平成。日本企業は「撤退戦」で生まれ変わる

というインタビュー記事を寄稿しました。令和時代の日本経済を、期待を込めて明るく(?)展望する内容です。以下で、そのダイジェストを(記事には無かった補足も少しあります)ご紹介させて頂きます。

悲鳴を上げる「平成の仕組み」

経済全体のパイが落ち込み、経済規模が縮小している中で、皆が拡大期と同じ発想でビジネスをしていても、どこかで立ち行かなくなる。つまり企業は、これまでの戦い方からの「撤退戦」を始めざるを得ない。もう、そのフェーズに入っていると思います。

コストカットで切り詰めるだけの、古いビジネスモデルの企業には、人が集まらなくなる。ところが、大胆な賃上げをすると、立ち行かなくなる企業も出てくるはずです。そうなると企業は、採算が取れない店舗などを閉めたり、他企業との合併や倒産という選択肢を検討することになる。ビジネスモデルを大転換するところも出てくるはずです。

その中で、いよいよ人や設備への投資が増えていきます。企業がモノやサービスを生み出していくために投入できるのは、人か機械しかない。この2つへの投資が本格化していくはずです。

【平成時代の「負のスパイラル」のイメージ】


【令和時代はこれがいよいよ逆転回するかも!】


撤退戦こそ再スタートだ

こうした「撤退戦」は決して後ろ向きなことではない。「新陳代謝」がどんどん加速することになるのですから。むしろ、平成時代には、あまりにも撤退戦をやらなさすぎた。それがマイナスだった。

ある企業の撤退によって、新しいベンチャー企業が出てきたり、既存のレガシー企業でも改革に成功すれば、世界市場で勝ち続ける。成功企業が、失敗した企業の人材やノウハウをうまく再活用できるのであれば、日本全体においても、全くマイナスではありません。

機械が人の仕事を奪う前に起きること

近年では「AIが人の仕事を代替して奪う」と言われますが、日本では、そこまで心配する必要はないと思っています。サービス業で突然レストランが無人になるとか、突然介護に人手が要らなくなることは、5年くらいのタイムスパンでは起こり得ない。少なくともその間は、かなりの程度、労働力の需要は発生し続けるはずです。

むしろ実際にスピーディに起きると思うのは、AIを含めた様々なテクノロジーを活用できる企業が、活用できない企業や組織を「のみ込んでいく」ということです。

「寄付」より「ギブ」を根付かせよう

「寄付」というと日本ではなじまないイメージなので、「ギブ」と言っているのですが、日本らしい形で根付かせることができるのではないか。つまり、信頼性や共感を軸にした「お金に頼らない経済圏」を作ることで、競争社会でも「安心感」や「生きがい」を持てるようにする。

市場経済と違う経済圏が増えてくると、「お金にそこまで頼らなくても、自分は生活できるのではないか」という安心感が生まれます。そうするとお金をため込まず、消費が今以上に回るようになることが期待されます。さらに、富裕層の中からは、新しいサービスに対するスポンサーのような人も出てくるかもしれません。そうやって経済全体も回っていくイメージです。

今はまだ、所得や資産など、手元に入ってくる「テイク」が指標になっている世の中です。長者番付が良い例ですね。この発想を転換して、「ギブ」を指標にする。ギブをおのずと引き出すようなソーシャルデザインができればいい。

若手のアイデアを潰すな

そもそも日本には、「新しいことをやろう」「社会を良くしよう」というイノベーター気質で、面白いアイデアを持っている若者は、たくさんいると思うんです。でも、平成時代になぜイノベーションや社会変革には至らなかったのか。それは、こうした若者を潰してきた「上の世代」がいたということに尽きると思う。

これも、「ギブ」のカルチャーがない、ということでしょう。令和こそは、周りのアイデアを潰すのではなく、引き伸ばすという意識を持っていきたい。上の世代には、次世代のアイデアをサポートし、さらに広げるようなことをしてほしい。スポンサーになる必要はなくて、SNSでポジティブなコメントをするだけでもいい。

「ポジティブな賛同」を広げていく。これが日本で一番足りていないと思う。僕もTwitterではネガティブなことはつぶやかず、ボジティブな賛同を徹底していくつもりです。


おまけコメント

最後の「ギブ」の文化について少し補足させて下さい。長者番付(資本主義)も「いいね!」の数(共感経済?)も、自分が獲得したもの、つまり「テイク」の見える化です。自分の与えるもの、貢献分である「ギブ」をうまく見える化する仕組みを作ることができれば、人々のインセンティブが大きく変わるのではないか、というのが着想です。(ただ、言うは易しで、実際にきちんとギブの指標や仕組みを作るのは簡単ではありません。なので、面白いアイデア募集中!)

本来は、こんなギブ指標なんかがなくても、利他的・互恵的な行動で支えられている「家族」や「地域共同体」が過去の姿を取り戻せば良いのかもしれませんが、個人的にはこうした昭和モデルへの回帰は難しいですし、目指すべきでもないと考えています。100%利己的な動機で動く市場経済と、それがほぼ0%の家族や共同体。ある意味で極端なこの両者の、「中間」にあたるような経済圏/コミュニティを、新しいアイデアやテクノロジーを活用して作っていくことこそが、我々が取り組むべき課題ではないかと考えています。

最後の方で言及したトークンエコノミー(ちなみに、これもテイク中心の経済圏ではあります)もそうですし、利己的な行動で支配されている市場経済にギブの要素を入れていくというアプローチも、どちらも「100と0の中間」を埋めていくための提案だと受け取って頂けると有難いです。まだ非常に抽象的ですが、令和時代にこうしたアイデアを具現化して行ければと思っています^^

【「物差しの多様化」で中間を埋めよう!】


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安田 洋祐

経済学者|大阪大学准教授 専門はゲーム理論とマーケットデザイン。関西テレビ「報道ランナー」(毎週火曜日)、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などにコメンテーターとして出演中。趣味はサッカー、マンガ、パンケーキ!

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