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論壇委員がスタート

本年度から、朝日新聞の論壇委員を務めることになりました。雑誌や書籍、ネット記事などに掲載された様々な論考に目を通してまとめ用メモを作り、月に一度のペースで会合にする、というのが主なお仕事です。(自宅に膨大な量の雑誌が送られてきてビックリしました…(^^;)

メモや会合でのディスカッション内容を踏まえつつ、リーダーである津田大介さんが朝日新聞オピニオン面にて「論壇時評」という記事を執筆します。また、論壇時評の中で直接言及されていない論考の中から「論壇委員が選ぶ今月の3点」というオススメ論考も掲載されてます。

4月25日(木)に掲載された紙面において、私は次の3論考を<経済>分野のおすすめ記事として選びました。メモを添えてご紹介させて頂きます。


▽羽生祥子「IMFラガルド氏、経済再生は女性エンパワーメントで」(日経ARIA4月11日)

国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事によると、少子高齢化により日本の40年後の実質国内総生産(GDP)は直近の成長トレンドと比べて約25%減少すると予測されている。しかし、もし日本が女性の活躍推進を進めれば、減少幅を10%にまで減らすことができる。その実現のために、保育・介護施設の拡充、税制や社会保障の改革と並んでラガルド氏が強調するのがコーポレートガバナンス改革を通じた過剰残業対策。「あらゆる会社で会議を午後6時以降に開くことをやめましょう」という斬新な提案は、男女を問わずライフワークバランスの改善に繋がる妙案だ。 

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(グラフはリンク先の記事からの引用)


▽クレイトン・M・クリステンセン他「市場創造型イノベーションがフロンティア経済を活性化する」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー5月号)

「市場創造型イノベーション」とは、インフラ、司法・立法機関、金融市場などが全く整っていない段階で生まれ、成長の過程で社会を発展させていくイノベーションのことを指す著者たちの造語である。本論考では、映画館がなかったナイジェリアでVHSテープ販売され大ヒットし、ナイジェリアの映画産業を躍進させた映画、貧しい新興国向けの携帯電話を介した保険などの例を挙げ、市場創造型イノベーションがいかに世界を変えたかを詳しく解説する。さらに、実現のための5つの指針を示しながら、重要な課題の解決に役立つ製品やサービスを見つけられずにいる何十億人もの非顧客層に向けて、新規市場を創造することこそが重要であると強く主張する。これからの時代の企業戦略について、従来とは全く異なる指針を提案した大論考。

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(写真はリンク先の記事からの引用)


▽中田大悟「軽減税率は導入すべきなのか」(経済セミナー4・5月号

今年10月の消費増税に合わせて導入が決定している軽減税率制度。この政策変更が経済に与える影響を、最適課税理論という経済学の枠組みに沿って整理したレビュー記事。課税によって生じるロス(死荷重)という効率性の視点に加え、労働供給を通じた生産活動への影響、公平性という3つの角度から分析し「軽減税率が正当化される状況もあり得るが、理論通りの効果が得られるとはとても期待できない」と結論する。軽減税率を巡っては、事務負担の高さや、実は高所得者優遇であることから、財政や経済の専門家からは反対意見が根強い。我々の生活を大きく左右する具体的な政策について、専門的な見地から分かりやすく解説する本稿の意義は大きい。

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『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』と『経済セミナー』は、昨年まではおそらくほとんど論壇時評では論考を取り上げていない専門誌だと思います。日経ARIAはそもそも論壇誌ではなくオンライン媒体です。

というわけで、今年度は従来とは少し違った視点を入れながら、私なりに重要だと感じた論考を選んでいきたいと思います。と言っても、ネット記事まで含めると対象数は膨大ですので、「これはっ!!」という面白そうな記事がありましたら、ぜひこっそり教えて下さい。お願いします(笑)

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