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装画を担当した本まとめ2018

2018年に装画を担当した本をバッとまとめました。
ご依頼の際の参考になれば嬉しいです。
挿絵だけの本や雑誌・ウェブのお仕事はここでは割愛していますが、もちろん受け付けています。

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<1月>

吉田敬一・著
『この問題、とけますか?2』(だいわ文庫)

2017年に出た『この問題、とけますか?』の2冊目。
前回はカタツムリをモチーフにした装画で、今回は砂時計をモチーフにしました。問題文に使われたモチーフを表紙絵の候補に選んで、デザイナーの根本佐知子さんとモチーフとか色とか場所とか相談しつつ、案を複数出してたどり着きました。
「2」だから人物も2人にするという。挿絵多め。

<3月>
ローレンス・J・ピーター・著
『[新装版]ピーターの法則』(ダイヤモンド社)

もはや古典にもなっている『ピーターの法則』の新装版。尊敬するイラストレーターの平田利之さんが旧版の装画と挿絵を担当しています。平田さんのイラストはひねりがあってユーモア満載で上品で完成度の高さが素晴らしいのですが、その新装版に抜擢していただいたのは、嬉しいような申し訳ないような複雑な気持ちでした。もちろんお断りすることなく受けるんですけど、挿絵が入る箇所が同じところもあり、「平田さんと比べてダメだね」と思われないように頭をひねりひねりしました。装画は、デザイナーの山田知子さんが挿絵を面白くあしらってくれました。

<4月>
小畑恒夫・監修
『マンガでわかるオペラの見かた』(誠文堂新光社)

オペラ50本くらいを、あらすじマンガと解説文で紹介する本。あらすじをテキストでもらって、それを2ページのマンガにするという仕事でした。
2ページという制約がある中、あらすじはそれなりの長さあり、どうやってそれを2ページに落とし込むかに苦戦…。ワーグナーの『ニーベルングの指環』って、4日間とかかかるオペラなんですが、それを2ページ×2の4ページにする、と言われたときはホントびっくりしました(それはラフだけでお蔵入りに涙)。セリフ多めではありますが、どんなあらすじが来ても全部流れを理解すれば2ページに落とし込めるぞ、という発見も。
マンガとは別で、作曲家たちの肖像も描いています。

パーシヴァル・ワイルド・著
『探偵術教えます』(ちくま文庫) 

数少ない小説の装画。同じ著者の『悪党どものお楽しみ』が2017年に出ており、その2作目。短編小説の内容を読み込んで、その中に出て来る小道具などを装画に盛りこみました。小説の装画はまだ手探りで、デザイナーの藤田知子さんの大きな助けがあって調整できたなあと。
文庫化にあたっての装画だったので、単行本ではベテランイラストレーターのイラストが使われていまして、そのプレッシャーをはねのけ、影響されないように気をつけながらアイデア出しました。

<6月>
安武内ひろし・著
『いきなり英語スピーキング 』(ジャパンタイムズ)

これは入れるか迷ったんですけど、帯にペリカンのイラスト入っているので入れました。とにかく挿絵の点数が多いのでビックリします。
日本人はスピーキングがなぜできないかといえば、言いたいことのイメージをそのまま英語にせず、日本語を介しているからだ、という著者の主張をもとに、絵を大量に掲載し、それを英語にしてみようという特訓ができる本。
英文がユニークで、そのユニークさを伝える絵にするのに苦心しました。オペラ本と同じくらい大変でした。

<7月>
矢沢久雄・著
『スラスラわかるC++ 第2版』(翔泳社)

翔泳社から出ているプログラミングの入門書「スラスラわかる」シリーズの第2版は装丁家の新井大輔さんからお声がけいただいてこれで3冊目。2017年に『スラスラわかるPython』、『スラスラわかるC言語』が出ており、毎回違うキャラクターになっています。同じような人ばかり描いていたらこの先もたないなと思うきっかけにもなった仕事。
元々は横向きだった人物を、編集者さんのご要望により正面を向かせ、笑顔を大きめにしたりしています。
本文には挿絵と、各章のトビラに4コマ漫画も。こちらのマンガは編集者さんがコマごとにセリフも全部考えてくださっていて、ぼくがやるのはその要素をどうにか絵にするところ。

<8月>
ふろむだ・著
『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社)

この仕事はJRの車内広告にも絵が使われたせいか、何年も連絡取ってなかった友人から「ヤギの絵、見たよ」と連絡が来たりしました。また、この本が出てから、会う人に「あの本のイラスト」ですぐに認知してもらえるようになりました。

著者のふろむださんからは「イラスト重要です」と最初に伝えられており、良い意味でのプレッシャーを感じながら取り組みました。挿絵も多めだったのですが、挿絵1点1点の重要度をふろむださんが教えてくれて、点数が低めのところは無理に考え込まないように進めていきました。
抽象度が高い内容の横に入れる挿絵を描くのは難易度高めだなあと思ったんですけど、何度も読んで理解して落とし込むことができてホッとしました。

装画はどこまで煽るかで悩んだ絵。最終的にちょうど良いところに着地できたと思います。
デザイナーの杉山健太郎さんが帯や本扉、目次などに挿絵をあしらってくれてます。その使い方が斬新です。

ユーキャンの資格本各種

ユーキャンの資格試験シリーズ。
2019年度版の社労士と行政書士、マンション管理士の装画も担当してます。

「社労士」「行政書士」を描き分けることの難しさについて考えた本。
フォーマットが先に決まっていて、空いているスペースにイラストを入れています。社労士だけでも「基礎・完成レッスン」「一問一答集」「速習レッスン」「過去&予想問題集」と4冊あるので、ここでは1冊のみ紹介。

<9月>
坂井建雄・監修
『想定外の人体解剖学』(エイ出版社)

臓器をここまでじっくりと見て描いたのはじめてだと思います。
人体の解説なので、あまり抽象化してしまうとリアリティがなくなり、解説にも役立たないということで抽象と具体のバランスに気をつけました。
精密に描くことの重要性を痛感しつつ、何度かご指摘を受け、修正を重ねながら完成。この本は子供向けに描かれた本でもあり、全編に絵が使われています。自分含めイラストレーター2人で分担するパターン。

田中靖浩・著
『会計の世界史』(日本経済新聞社出版)

こちらは挿絵から描いていって、最後に挿絵が装画にもなったパターン。
著者名の下のコインや帯の人物だけ描いているように見えるかもしれないけど、背景に敷いている地図も描いています。会計の歴史の舞台がヨーロッパからアメリカに移るところを記述した箇所に使われた地図。最初は普通にいわゆる地形をただ線で描くだけの地図にしていたのを、「世界史の本だし、海賊が壁に貼ってるみたいな雰囲気が出るようにしよう」と思いついて、海岸沿いに影の線を追加しました。それを見たデザイナーの新井さんが、これは装画に使えると判断してくれたらしく、線追加しておいたよかったなと。色味は新井さん任せでノータッチです。

<10月>
只野範男・著
『完全版 無税入門』(飛鳥新社)

フリーランスを専業に、会社員を副業にしてやりくりすると支払わなければならない税金を減らすことができる、という本。サラリーマンを読者とするので、税金という思い足枷から逃れて鼻歌うたってる男性を描いています。
他にも、机に向かって仕事している人やビール飲んでる人など案を出してました。

<11月>

五十嵐祐貴・著、岩永信之・著/監修
『スラスラわかるC# 第2版』(翔泳社)

スラスラシリーズ4冊目。打ち合わせで「乗り物使いましょう」という意見が出て、個人的に好きなクラシックカーを。オープンカーは人物の顔も見せられるので好きなモチーフ。他には小型飛行機の案なども描きました。

山口恵以子・著
『おばちゃん介護道』(大和出版)

小説家・山口恵以子さんの介護エッセイ。

自宅でひとりで親の介護をする山口さん。たまに会うお兄さんもケガをしたりしていて、大変さが重なるのだが、そんな中で親を介護することの意義について考えている本です。
表紙としては朗らかな感じを出すような絵になっております。飼い猫が3匹いるということで、猫3匹を表4に入れたり挿絵として章扉に描いたり。

<12月>
中原淳/パーソル総合研究所・著
『残業学』(光文社新書)

新書だけどカバーにイラスト入れるという珍しい仕事。

打ち合わせの最初から「何かしら吹き出しをつけてセリフを入れたい」というご要望ありました。

「人物に直接言わせるより、第三者から言われてる感じにしたらどうでしょう?」と提案してこのようになりました。色はいつも使っている系統の青。影みたいに色をつけるのも、オリジナルイラストでは良く試していた手法。ようやく仕事で使えて感慨深かったです。

印南一路・著
『交渉学が君たちの人生を変える』(大和書房)

『この問題、とけますか?』で編集者の方と打ち合わせをしていたとき、「もう少し上流から関わりたいんですけども…」と探りを入れたところ、この本の企画段階でお声がけいただきました。ありがたい話です。本文デザインは挿絵とセットで、どこに絵を入れるかも本文を読みながら考えていきました。「言葉とイラスト」の役割分担について考えながら、1見開き(2ページ)にだいたい1枚イラストを入れるイメージ。

カバーも、文字と調整して絵が入れられるのは一人でやっている利点。でも自分でやるならもっとイラストレーターならではの表紙にしてもよかったかもしれないなあと反省。

マイケル・ホワイト・著『ニュートンとコーヒータイム』(三元社)

コーヒータイム人物伝というシリーズものの装画。このシリーズはこれで4冊目。ある歴史上の著名な人物に対する架空のインタビュー本。それぞれ著者が違っていて、研究家がインタビューを行っています。絵としては毎回、その歴史上の人物の肖像を描いてます。

改めて考えると、シリーズものというのはイラストレーターにとってはありがたいもので、仕事がゼロになる瞬間が恐怖なのだけど、定期的に仕事があるのだと思えるだけで精神的な安定につながります。
2頭身とか3頭身のキャラを描いているいつものイラストと違って、このシリーズでは完全な似顔絵。年を重ねて人生が顔に刻まれている人の似顔絵を描くのは楽しいです。

難しいのは、歴史上の人物というのは残された肖像画によって全く別人に見えるというところ。その中から、見る人が「その人」とわかってもらえるポイントを探り、かつ、絵としての魅力を損なうことのないように気をつけています。

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ざっくりとですが以上が2018年の本関連の仕事でした。

ふろむださんの『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』や印南一路さんの『交渉学が君たちの人生を変える』のようにイラストの重要性を感じさせてもらえる仕事ができたのは本当にラッキーな1年でした。

本が売れないと言われる時代ですが、文章を読んで絵を描くのが好きなので2019年も書籍のイラストを軸にがんばっていきたいと思ってます。 (もちろん他の分野の方もぜひお声がけください)

絵としての魅力をあげていくために画力の向上を進めることはもちろん、難しいこともわかりやすく感じる絵が描けるように、パッと見「難しい」とされる分野に全方位的に理解度をあげていくつもりです。

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というわけで、何かお役に立てそうな案件がありましたら
下記アドレスまで、お気軽にご連絡ください(SNS経由でも大丈夫です)。
mail@yagiwataru.com

どんなイラスト入れたらいいかな〜みたいなぼんやりしているところからでも、まだ方向性定まっていない企画段階からでも、気軽にお声がけいただけると嬉しいです!

皆様ぜひよろしくお願いいたします

なかなか更新できていませんがHPはこちらです。
http://yagiwataru.com


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