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過去と今とをむすぶ歴史本

歴史の勉強をすると、いま活躍している人から必要以上に影響されなくなる。

影響されることはあっても良いし、ヒトは生きているかぎりいつまでも誰かに影響され、誰かに影響を与えていく生き物だと思うけど、歴史の視点がないと必要以上に誰かを崇拝してしまう。影響が強すぎると誰かを神のように崇め、宗教のようになる。そこまで来ると、自分の頭で考えられなくなってしまう(本人はそう思ってない)ので危険だ。

歴史を学んでいて価値あるなと思うのは諸行無常を感じられるところ。奢れるものも久しからずというわけで、私利私欲に走っていた権力者も後に裁かれていく(裁かれないケースもある)。ある政策の影響は短いもの長いものあわせて考える必要がある。最初は良さそうに見えても、結果としてツケを後世にまわしていただけだったということもある。あるアクションの結果や影響は年単位のスパンで、歴史的に振り返らなければわからないことだ。

でも、歴史は過去だけを見ていてもあまり面白くない。これが学校の歴史があまり面白く感じにくい理由だと思っている。歴史は現代と無関係ではいられない。現代をまず理解し、そのあとで、現代はどのような経緯をたどって現代になったかがわかり、納得したときにこそ歴史の面白みは感じられるようになる。

日本は労働組合の力のなさが特徴的な国だが、過去の労働組合の闘争と挫折の歴史を見るとなぜ労働組合が力を失っていったかわかっていく。
労組についてはロバート・キヨサキが確か『金持ち父さん、貧乏父さん』(2000/ダイヤモンド社)で言及していたように、資本家でないのなら本当は何らかの組合に入るほうが良いと思う。アメリカにはハリウッドの映画俳優たちによる組合や監督組合などがあり、メジャーリーガーたちがストライキを起こしたこともある。そうやって選手や俳優たちは協力して資本家や企業と交渉する。協力しなければ、個人は容易に別の個人に置き換えられるわけだから、交渉に敗北するのは目に見えている。

まあそんなわけで、ぼくが読んだ歴史本の中からオススメ本をまとめた。
過去と現代との関係が良くわかるもの、という意味で、納得度の高い現代史の本だけをピックアップした。(ちょっとうろ覚えなところがあり、内容が間違っていたらぜひ指摘してください。)

池上彰『そうだったのか!日本現代史』(2008/集英社文庫)
これが1番、「いまある日本の姿はどのようにしてこうなったか?」がわかると思う。
米軍への依存、自民党一党体制、公害とか列島改造とか。自分が生まれる前のことについて知っておくと、今起きるさまざまな事象に対する納得感がある。「納得だけしてどうする!」というツッコミはさておき。

半藤一利『昭和史』(2009/平凡社ライブラリー)
1926-1945までと、1945-1989までの戦後編とがある。2冊とも分厚くてちょっと長いが、政治家や軍人らののひとつひとつの判断がどのような影響を国民に及ぼしてきたかがわかる。また、著者が語る明治から昭和〜平成にかけての40年周期説は、今後どうなるかが気になるところ。
池上彰氏の本がトピックごとにわかれていたのに対し、こちらは時代ごとに語られているため、自分が歴史という大きな流れの中にいることを実感する。自分が考えていることや、行動様式は、自分が独自に考えているのではなく、歴史的な流れに思いきり影響を受けて考えているのだ。
過去からの影響力はすさまじいが、その影響をいかに意識できるか?流れを意識し、そこからあえて脱却しなければ、著者の主張する40年周期は当たってしまうだろう。

吉見俊哉『ポスト戦後社会ーシリーズ日本近現代史⑨』(2009/岩波新書)

社会学者である著者が、高度経済成長期に起こった事件と、バブル期に起こった事件を比較して日本社会の変化を分析したり、電話機の発達と家族の崩壊を重ねあわせたりする本。歴史もトピックや流れで事実を知ろうとガリガリ勉強するよりも、こうやってそこから何が読み取れるのか、分析の対象にすると面白い。
岩波新書の日本近現代史シリーズは10冊あって(10冊目はまとめみたいな形)、そのどれもが通常の歴史観に対する反論になっている。だいたいの人は江戸幕府は黒船にビックリして全然交渉できずダメダメだったから明治維新が起きた、みたいに考えているかもしれないけど、冷静に歴史書を読み解くと江戸幕府の老中たちもなかなか国際感覚が備わっていて、違って見えますよ、という本になっている。そのぶん、通常の歴史観がわかっていないと理解しにくい箇所が多いのだが、吉見俊哉氏のこの本は、近現代史の最後だけあって、事件やモノが今もイメージしやすく、わかりやすい。

安藤達朗一気に学び直す日本史 近代・現代 【実用編】』(東洋経済新報社)

これはまるで日本史の教科書のように細部まで留意しながらも流れが書かれていてありがたく、かつ、幕末の1853年から始まらずに、100年遡って1700年あたりからはじめるところが素晴らしく、明治がなぜはじまるのか?そういえばなんで江戸幕府は末期状態にいたったのか?までわかる。

それから、大事なのは日本史だけの視点ではなく、「世界史の中の日本史」を意識しながら書かれているところも良い。日本の歴史は日本の中だけの話ではない、ということは、当たり前なのに忘れがちなことだ。

ところどころに年表が掲載されているので、前後関係どうなってたっけ?ということも確認しながら読むことができるところも優しい。ただ、教科書感が満載なので、一気に読むという感じはあまりないかもしれない。


(※12月22日午前中にアップしたものに、夜になってから修正を加えました)




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