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「いらすとや」のやばさについて

「いらすとや」、みなさんご存知ですよね。
たぶん日本で最も有名な無料のイラスト提供サイトです。
先程こんな記事を見て、いろいろ考えるところがあったので書きます。

「いらすとや」がどれだけ画期的なのか現役のデザイナーの立場で説明します
2016年の記事ですがここに書いてあることは変わらず、むしろより「いらすとや」は世の中に不可欠なものとしてどんどん広がっています。
下記は記事の引用です。

“しっかり戦略が練られた上で無料公開されており、「いらすとや」のサイトはれっきとしたビジネスとして成立しています。
サイトにはアドセンスの広告が出ていますので、収益は広告費、そしてLINEのスタンプの売り上げ、高解像度のイラストの販売が主立った所です。”
“サイト内で無料で素材を配布することでどんどん利用者が増える、それに伴って広告収入なども増加して行くという仕組み。”

これ、現代アート的な観点で見たらとんでもなくやばいサービスだなと思ったんです。

現代ではアートは美術の領域に留まらず、それに触れる人々の価値観や常識を解体/再構築する行為と言えると思います。
例えば、トイレを横向きに置いただけのデュシャンの「泉」が発表されたことによって、アートの概念がなんでもアリになってしまったように。

「いらすとや」はサービスであって、現代社会的な枠組みの中でビジネスとして成り立っています。
でもやっていることは、世の中の価値観や常識を変え、誰でもお金をかけず簡単に成立させることを可能にする「普通の基準の底上げ」だと思いました。
いらすとやが既存の有料サービスより普及した要因を思いつく限り挙げてみます。

①質

なんと言ってもイラストのクオリティが高いということ。これが無料で利用できることで、有料のイラストはいらすとや以上のメリットを要求されるようになるでしょう。

②種類の豊富さ

ご存知かと思いますがこんなの使う場面ある?みたいなものまで多種多様です。リクエストすれば足りないイラストを描いてもらうこともできます。
(全部でいくつくらいあるのか調べましたが特に書いておらず、数えるのは気が遠くなるのでやめました)
調べていたらペンギンのイラストがめちゃくちゃ細かくて怖かったです。

③統一性

この超大量のイラストを、みふねたかしさんという一人のイラストレーターさんが全て描いています。そのためもちろんここのイラストを使えば統一感のある仕上がりになります。
従来のようにいろんなサイトから解像度もテイストもバラバラの素材を無理やり組み合わせる必要はありません。
(ちなみにこのみふねたかしさんはインタビューなども全て断り、素性を一切明かしていません。徹底している……)

これがビジネスとして利益を上げ、ユーザーが増えれば増えるほどいらすとやにとってもユーザーにとっても良い流れを産んでいれば、従来のサービスはぐうの音も出なくなってしまうなと恐ろしくなりました。


「普通さ」の底上げ

さらにすごいのは、それが感度の高い一部の人や都会のような一部地域の人、SNSやインターネットに慣れたリテラシーの高い人や若者だけでなく、地方の自治体や高齢者にもちゃんと普及しているということです。
また、HTMLやCSSが使えなくても簡単な操作だけで無難なウェブサイトが無料で作れてしまう「Wix」というサービスなど「普通に成立させること」に技術やノウハウやお金がいらなくなるサービスは増えています。

先日、あるデザイナーの方が「デザインを綺麗に成立させるにはセオリーに載せればできるのだから、僕らが考えるのはその先の部分」と言っていました。
「いらすとや」や「Wix」が提供しているのは、「ワンランク上の普通さ」であり、「セオリーの共有」であり、それが誰にでもわかるレベルが上がるほどその先を考えるレベルも総体的に上がっていくのでは無いかと思います。

そういえば無印良品のビジョンにも似たような事が書いてあったので引用します。

“無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり「が」ではなく「で」なのです。
 しかしながら「で」にもレベルがあります。無印良品はこの「で」のレベルをできるだけ高い水準に掲げることを目指します。「が」には微かなエゴイズムや不協和が含まれますが「で」には抑制や譲歩を含んだ理性が働いています。一方で「で」の中には、あきらめや小さな不満足が含まれるかもしれません。従って「で」のレベルを上げるということは、このあきらめや小さな不満足を払拭していくことなのです。”

さいごに

いらすとやのことを思うと、今はアートより製品やサービスの方が世の中の価値観や常識を変える力は強いかも知れないと思いました。
ちゃんと持続可能なビジネスになって、広く普及するシステムに載っていて、ユーザーの生活と地続きであること。そういう意味ではアートは生活ともインターネットとも今は少し距離があるように思いました。
あと、Wixが普及し始めた頃、困惑する技術者も結構いたのではないかと思いますが、きっとこれからは一部の技術者がすごいのではなく、みんながすごくなっていく時代だと思うし、それがどんどん深まっていくといいなと思います。

いらすとやについての私の勝手な推論を終わります。

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schappe

HYGE Interface Inc. ( https://hyge.co.jp/ )という会社で働いています。ユーザーインターフェイス設計。

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