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要塞監獄の星/白銀の塔

「なああんた、一つ聞いてもいいか」
男は相手の返事を待たずに一方的に話を始める。
「この星は見ての通りの氷と岩しかねえ場所だ。俺たちみたいな犯罪者を送り込むにはうってつけの惑星だろうな。ここにいる連中はどいつもおよそロクな人間じゃねぇくらいは見たらわかるだろうよ」
向かいの大男があからさまに不愉快な顔をした。護送車が大きく揺れる。
「あんたのその辺の事情にゃ興味ねえんだがよ、お前、どう見てもこの星に送られてくるようなゴロツキじゃあねえよなあ?」
尋ねられている当の本人は手足を組んだまま俯いて答えない。目を合わせることもない。
「それはそうとだ、あんたその囚人服はどうしたんだ。余計なものが隠せないようにだかでご丁寧にも全員にピッタリの服が支給されるってのがここの決まりだ。それがあんた、どう見たってサイズが合ってねぇんじゃねぇか?急に背が25センチも縮んじまいましたってか?ええ?」
男は足を組み替える。

この車で運ばれている囚人は合計6人。今5人全員が1人の男に視線を向けている。

その中の一人長身の男は一度喋り始めると抑制が効かない。
「あなた、本当にここの囚人ですか?いつ来たんですか?どこの部屋でした?IDは?看守に拷問されたでしょう?傷とかアザとかないんですか?何か隠してますよね?物騒なものはやめてくださいよ?何か言ったらどうなんですか!」
それでも男は答えない。
「てめぇ殺すぞ」
「それはよせ。揉め事を起こされるのは御免被りたい」
「これだから下卑た犯罪者どもと一緒にいるのはかなわねぇな」
それまで黙っていた残りの2人も口を開く。
「それはそうとあんた、そろそろ何か言ったらどうなんだ。そもそもあんたが黙ってるのが問題なんだろうが」

男はようやく口を開く。
「一応これでも、あんたらを巻き込むことになってすまないとは思っているんだぜ?」

男の発言が理解不能で全員が固まるのとほぼ同時、前方検問所から爆発音が轟いた。

【続く】


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