落合陽一先生講演@Medical Summer Fes

はじめに

8/18,19に開催されたMedical Summer Fes@日本医師会館に参加してきました。(リンクはこちら)この記事はその中で行われた「特別講演 落合陽一先生 ~現代の魔法使いから見る医療の未来~」について当日書いたノートから記事に書き起こしたものになります。
落合陽一先生って誰って方はこちら

1,自己紹介と最新のラボ事情

いつもの自己紹介に加えて、今年に入って落合ラボのメンバーが50人(昨年38人)になったことや、ファシリテーターを3人増やしたこと、ファシリテーターを増やすための手続きに大学の手続きに8ヶ月位かかった話などを最近の研究と合わせて解説していました。
その中で介護領域の研究をしていることや網膜投影型ディスプレイを作っていて網膜検査に興味があることを述べられていました。

いくつかの研究を紹介

落合ラボの学生さんが蝉の筋肉に電極を刺して鳴らしている動画を紹介していました。

(蝉(生命)が計算機(コンピュータ)に制御されている様子は医療関係者に異質に映ったようで、講演会後に話した医師や医学生から「あれ(蝉の動画)はグロい……」といった声が聞かれました。)

また、VR/AR/網膜投影の研究の話をしていて、現実には存在しない、羽が赤色のモルフォ蝶が飛んでいる映像を流していました。

中国に対する認識の話

7/31に行われた「平成最後の夏期講習」についての説明と中国に対する世代間の認識の差について話されました。

世界経済のネタ帳より

文科省に依存しているアカデミアとTechへの投資の話

文科省から出されるお金が予算の殆どを占めているアカデミアの世界に警鐘を鳴らしていました。特にすぐにお金になりにくいMathやAlgorithmsのような基礎領域にどうやってお金を回すかという課題を話していました。
一方でTech分野は省人化(注: 少人化かもしれません)への投資になるために文科省に頼らなくても出来る領域もあるということを話されていました。

落合さんが行っている例としてHMDで車椅子を動かすことが挙げられます。遠隔で車椅子を現実と同じように動かせるということで移動による時間的コストを削減することが出来ます。
また、2台動かせないかということでラジコンのコントローラーのようなものを介護師さんに持ってもらって、一人で2台動かすということをやっていました。これは一台目の裏にiPadを貼り付けてあって、それを目印に2台目が同じ経路を動くという仕組みです。iPadのような既に普及しているものを使うことは重要。(詳しくは後述)

自動運転が流行っていますが、公道を走らせようとすると法律や車の速さなどの問題が有る。そのためにまずは私有地で遅くても役立つもので実践投入しようという考えで車椅子を動かすHMDに取り組んでいました。これもスマホやiPad、PCなどでも出来ないかということをやっていって現実と変わらないように使えるのはHMDだったという実験を行っています。出来るならなるべく限界費用を減らしたいし、既に普及しているもので行えるのであればそのほうがいいわけです。
スマホやタブレットで何が動くかというと、学習が済んだAIのモデルが動かせるわけです。例えばeye trackingするモデルを作ってiPhoneに乗せればeye trackingも実現できます。
この流れの中で課題になると思っているのが、どうやってこのデバイスをプログラミングするかということです。例えばこのボタンを2回押したらこの機能が使えるみたいに決まっていますけれど、こんなことをいちいち覚えられない。メガネは拭いてメンテナンス出来るけれども、デバイスはメンテナンス出来ないのです。じゃあ、自分で設定ようにすればなんとか覚えられるのではないかと考えて、おじいちゃんとかにScratchでプログラミング教えてたりしています。

さて、このようなTech化が進むとどうなるかという話です。高齢者社会を迎えるのは日本だけでなく、所謂先進国で起きている問題です。また、お隣の14億人の人口を抱える中国も一人っ子政策により高齢者社会を迎えるわけで、日本がこの省人化のための技術を開発できれば中国への輸出産業になります。高齢者社会における省人化産業を輸出出来るかどうかが鍵になります。

AIの利用法

AIで職が取られるとかそういう話が聞かれますが、これから少人化していくのだからそういう文脈ではないのだろうと思います。機械学習は手元のPCやスマホで出来るほど計算量少なくないけど、機械学習したモデルをwebにおくことで手元のスマホで動かすことが出来ます。例えば機械学習したモデルをwebにおいて、そこに自分の声を入れると小さなvector(注: 個人用調整データのようなもの)が得られるからそれを使って自分の声を作成出来る。(注: 個人に合わせた音声入力が作れるだったかもしれません)
こういうふうに個人に合わせたサービスが作れるのがAIの使い方だと思う。

医療保育に見る個人に合わせたサービスの話

息子さんの例を出しながら、医療保育に興味があるんですよね。
医療保育は歯科→外科→言語療法士→全体と進むのですが、
歯科は個人に合わせたウェアラブルなものを作る場所で、
外科は外観デザインを作るところ。息子が口蓋裂なんだけど、それを治す場所
そうやって個人に合わせたサービスを行うスキームが出来ている。

SolutionとProblemの話


どっちもunknownなものはまぁ、problems known solution unknownなものはいわゆる応用研究だったりするわけです。日本人はすでにあるものを結びつけてなんの意味があるのかと、problems unknown solution knownなものを馬鹿にしてきた。けれど、どれだけ世の中に価値があるのかというのとTech的にどこがすごいかは関係ない。予めコストがわかっているのだからどれだけ回収できるかわかっている分野であるこの分野がビジネス的にはとても美味しい。iPhoneは既存技術の組み合わせですけど、とても大きな価値を生み出しました。これはそのかわりに難しくて、例えばカメラで何が解決できるかとかがここに入ります。

一方でどうやってもビジネスにならないところもある。例えば2本の手でマイクを持つということはだいたいの人は出来るのですが、1万人に1人くらい出来ない人がいる。だけど、日本には生存権があるので、こういうのは無くして行かなくてはいけない。ビジネスにならないことは税金を使って解決していくんです。CRESTでやっているXdiversityがここに入ります。

僕がどうやって大学と会社と国を使い分けているのかというと、大学でProblemもSolutionもわからないInvent部分を解いて、会社でDiscoverを解いて、DeployとScaleに投資しています。

そこでこの表にはないのですが、Problem Unknown Solution Simpleなものが医学には転がっている。Simpleというのはコンピュータ・サイエンスをかじっていれば知っていることで解決できるということです。(注: 後述の瀬尾先生との対談でこの話は深掘りされています)

ここまで話したことはコストの問題でしかないんですよ。
初期投資をしてどうやって限界費用、機会ごとのコストがかからないようにするかということです。例えば皆さんyoutubeのアカウントつくるときにハンコ用意して本人証明書類用意して記入終わったらそれでは1週間お待ち下さいなんてやりませんよね。でも銀行口座つくるときにはこれが行われているんです。
例えば3Dプリンタってすごい効率悪いんですよ。プラスチックをフィラメントにしてもう一度造形するのでひと手間増えている。だけれど、3Dプリンタを使うことで限界費用(人件費など)が減ればいいんですと。
これまでコストの話しかしていないんですけど、これが全てです。

今AIの話と並行してBIの話がもりあがっているじゃないですか。時々「日本にもBIは出来ますか?」って聞かれるんですけど、既に似たことは行われています。実は地方のインフラを維持するのにBIと同じくらいのお金が使われています。

(平成最後の夏期講習の 安宅和人さんのスライドから拝借 29:51時点のスライド)

つまり「海士町から東京に来てください。年間220万あげます。」っていうのは今の限界集落に住んでいる状態と同じコストしかかからないんですよ。これはもはやBIですよね。
つまり日本全体として、インフラを維持するコストがこれだけかかっているのをどうやって下げるかという問題があります。解決策はとりあえず2つあって、限界集落を潰して都市に来てもらってインフラを潰すか、このインフラ維持コストをTechを入れて減らすかのどっちかです。僕はTechの人間だし、前者はやりたくないんですよ。だから例えば「Tech入れてこの年間250万円かかっているコストを130万円まで減らすので、差額の120万ください。」ってやりたいんです。
先程も話しましたけど、これをやると中国に将来売ることが出来ます。

瀬尾先生との対談パート

(注: 講演の後半が瀬尾先生との対談に変更になりました。瀬尾さんってだれって方はこちら。)
瀬尾「医学生視点での質問をしたいのだけど、ダブルスタンダードを推奨するとしてどっちもやるとするとどれくらいの配分をするか。つまりダブルスタンダードをすると医学を特化している医学生には医学では勝てなくなる。一方でIT分野では情報系の学生に勝てない。というジレンマがあります。」
落合「うちのラボだとコンピュータ・サイエンス専攻じゃない子には4月にPythonをやらせて5月にハード、6月にC++やらせて7月にサーベイ、9月に研究テーマを決めるということをやっている。こういうフローやらせれば出来るようになっている。後は3年くらい続けてどっちも一流になるところまで走りきればいい。走り続けるのが重要。」

瀬尾「さっきのProblemとSolutionの話だけどあれはコンピュータ・サイエンス側の視点だよね。例えば情報系の人にはProblem Unknown Solution Known(Simple)でも医師からしたらProblem known Solution Unknownだよね」
落合「そう。だからこそ、Solutionを知っておくとその問題を解けるようになる。」

最後に

医療業界の人はとにかくデータを撮ってください。Problemがあるからコラボしてほしいという話はよく貰うのだけど、データくださいっていってもないことが多いです。データの形になっていないとなにも出来ない。だからとにかくデータを写真でもビデオでもいいので、撮ってください。

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